痛いは痛いけど、母様達のあの訓練に比べたら微々たる物だ。
本当、訓練様々である。
「後でシャナとか、サカネ先生に治してもらうから良いよ。それより、体調は大丈夫かい? まだ体が辛いようなら、寝てないと」
「大丈夫。転生者二人の娘だもん。体は頑丈だから」
ユエはそう言い、僕の手に回復魔法をかけてくれた。
見る見る綺麗に治っていき、治療を終えた後は普通に動くようになる。
「流石ユエ。治すの早いね」
「これくらいって言いたいけど。まぁ、あの戦いがあったからね。そう言えば、アオ。私達の子供、何処?」
寝落ちする前、ベッドで運ばれるユエに付き添っていた時。
看護師からされていた説明を思い出した。
確か保育室と呼ばれる部屋で、産まれた子達は母親が起きるまで預かっているんだったか。
それを彼女に話すと、会いに行こうと言われる。
僕も、もう一度我が子に会いたかったので、ユエと手を繋いで保育室に行く。
保育室に辿り着くと、自分の子と同じ日に生まれた子達が、赤ん坊用のベッドに寝かされていた。
ガラス越しだったけれど、僕は一目で自分の子がどの子か分かった。
「蒼髪…アオと一緒だね」
「うん…そう、だね」
ベッドの中で、小さな体を動かしながら生きてる我が子を見て、僕はまた涙腺が緩みポロポロと涙を零す。
とても愛おしい、僕とユエの子供。
ユエも嬉しかったのか、同じく涙を溢れさせていた。
「アオ。名前、何にしたの?」
僕と寄り添いながら、繋いでいる手の力を少し強めて、ユエが聞いてくる。
期待半分、不安半分といった所だろうか。
産まれるまで内緒って、伝えてあったしなぁ。
「女の子なら、ユズリハ。縁起物の木の名前なんだ。親が子を育て、代々続いていきますようにって願いを込められた木らしくてね。名前も可愛らしいしと思って」
「うちの子、男の子だって言ってたよね?」
分かってますって…。
そんな睨まないでよ、ユエ…。
コホン、と僕は一回咳払いをする。
「男の子なら…クオン。ユズリハと願いは一緒だよ。父様から受け継いだものを、僕が受け取り、子供に渡す。それがずっと続いていきますようにって、願いを込めて」
「クオン…久遠、か。うん、良い名前だと思う。私達の想いが、愛情が、クオンから後の世代にまで続いていけば良いなって、私も思うよ」
お互いに涙を拭いながら、微笑んだ。
家族が増えて嬉しいという気持ちと、父親になったという責任感。
そして、家族を守っていこうという決意。
僕はユエと寄り添いながら、我が子であるクオンを見つめた。
数日後、退院したユエとクオンを迎えにいき、初めての子育てを彼女と四苦八苦しながら過ごしていく。
大変だけど楽しいと感じていた、イフリート2の月。
クオンが産まれてから約四ヶ月後、ユエの妹が産まれた。
それを聞いた彼女は、頭が痛そうにしていたけれど。
母様の星読みで言われていた事だったから、僕は別段驚きはしなかった。
名前は裕夏ちゃんというらしく、クオンと同級生だな、なんておばさんがゲラゲラ笑っていたっけ。
それと母様が妊娠六ヶ月あたりで、父様が出張から帰ってきて駄々をこね始めたのには流石に困った。
うちだって子供出来たんだから、出張行きたくない、と。
だが。
「うっさい。子供も七人いて、孫も出来たジジイのくせに、妻可愛さで息子に迷惑かけるんじゃないわよ。そんなに言うなら、本気で離婚する。良いわよね、熟年離婚?」
と、にこやかに父様を脅し、母様と離婚したくない父様は渋々といった感じで大人しくなる。
流石母様、これぞ鶴の一声。
子育ても少し慣れてきて、もうそろそろ離乳食かなぁ、なんてユエと話していたウンディーネ3の月。
今度は僕の妹が産まれた。
奇しくも、その日はクリスマスイブで、そんな日に産んで大丈夫かと少し心配になる。
だって、七罪の悪魔の一角なのに…。
神様の生誕祭の日に産まれるとか、大丈夫なわけ?
神託の悪魔だから、良いのかなぁ…?
一応、父様の代わりに母様の見舞いと、妹の様子を見にいく。
母様の横で寝かされているその子の気配は、間違いなくベルゼビュートで。
しかも目もちゃんと見えているようで、覗き込んだ僕としっかり目線を合わせている。
蒼髪紫目と、母様と一緒の色で少し驚いた。
「母様の正統な後継者って言われても、驚かないレベル…」
「何馬鹿な事言ってるの、貴方は…」
呆れた様子の母様へ、僕は苦笑いを浮かべた。
妹の名前は、ヘンリエッタという。
ベルゼビュートと名前を付けられるより、可愛らしい名前で良かったなと感想を抱いた。
後は、シンクが大学を卒業したらテレジアを継げと父様から厳命されて、萎えていた事だろうか。
「確かに、ユタカとマナを養っていく為には、もうちょっと金を稼げる所が良いかなぁ、って思ってたけどよ。領地経営…? やった事ねぇんだけど…これ、誰に教えを乞えば良いと思う? グンジョウ…」
シンクのところの子は、マナちゃんというみたいだ。
まだ会った事はなかったが、多分ユタカに似て可愛らしい子なんだろう。
そんな事を、僕は窓の外を見ながら思い出していた。
「アオ? どうしたの?」
クオンを抱っこしながら、ユエが首を傾げる。
僕は彼女に笑いかけながら、何でもないよと返した。
一歳になったクオンは最近好き嫌いがはっきりしてきて、父親である僕は嫌なのだそうだ。
だから、寝ている時くらいしか息子に触れる事が出来ない。
僕はクオンの頭を撫で、ユエに言う。
「ユエ、愛してるよ」
「何、いきなり? ふふ。でも、私もだよアオ。私も、貴方を愛してる」
満面の笑みを浮かべる彼女にキスをした。
この幸せがずっと、ずっと続きますように。
彼女から唇を離し、僕はそう願った。
my way of life
これにて終了です
ここまで長々とお付き合い下さり
ありがとうございました
この後グンジョウやクオンがどうなったかは
相方や他の所で語られたりしてますので
よければそちらもご覧ください
お読み下さりありがとうございました
桜舞