my way of life   作:桜舞

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42話『別人レベルだって言ってんの!』

蹴った瞬間、トーカが目の前に現れた。

彼女の口元は笑っていたが、目が驚愕に見開いている。

それがスローモーションで流れていった。

僕は左に持ったノワールを振り上げ、そのままトーカの脳天から振り下ろす。

続いて右に持ったブランシュでトーカを斜めから斬り上げる。

トーカを粉微塵にするまで、止まるつもりはなかった。

 

「くっ、くっ…このアタシは、最弱…今に、次の…アタシが…」

「貴様の戯言など、聴く耳持たぬ。黙れ」

 

トーカからの返り血で僕の全身は赤く染まる。

グシャ、とトーカだったものが崩れ落ちた。

物言わぬ骸を、僕は踏みつけた。

 

「……ちっ」

 

錆臭い。

気分が悪い。

僕は顔にまで飛んだ返り血を拭き、上半身の服を脱いで燃やす。

 

全身の身体強化を施すと、筋肉痛をもっと酷くした痛みが全身を駆け巡る。

あまり使いたくはないが、別に構わないだろう。

 

そう考えていた直後、僕の背後に現れた存在に僕は魔力を込めた回し蹴りを叩き込む。

だが、その存在は僕の回し蹴りを止めた。

 

「グンジョウ、その状態久しぶりだね。そんなに追い込まれたの?」

「…シャナか」

 

金色が見える。

眼鏡を外しているから、ちゃんとした姿が見えるわけではないが多分姉だろう。

 

「何故ここにいる。立花卿から、お前は来れないと聞いていたが」

「午後の授業が終わった途端、携帯にカヅキおばさんから連絡きて、母様が凄く焦ってるからグンジョウの後を追えって言われて来たの。ねぇ、グンジョウ。その状態になった時、元の状態に戻るまで何ヶ月かかったか、覚えてる?」

 

それはどちらの状態を言っているのだろうか、シャナは。

僕はとりあえず、目を細めて姉に尋ねた。

 

「どっちの事だ。体か、精神か?」

「どっちもだよ。とりあえず、ユエちゃん達はツルギ君が介抱してくれてるから、命に別状なさそうだけど。それ、ユエちゃんにも見せた事ないよね。だってなったの、ユエちゃん達と別れて直ぐだったし。あの時は何だっけ、母様の攻撃に対抗しようとしたんだっけ」

 

そういえば、これを初めてやったのは6歳の時だったか。

あまりにも母様に勝てなさすぎて、癇癪ではないけれど、子供ながらに頭を回して回して…気付いたらこの性格と、さっきの全身強化をしていた。

性格の方は一週間くらい戻らなくて、全身の方は筋組織がズタボロになって一ヶ月くらいベッドから起き上がれなかった気がする。

多分今の僕は、無表情だと思うし。

 

「そうだな。シャナ、流石に鈍いお前でも察して着替えは持ってきてるな?」

「母様に持ってけって言われたから持ってきてるよ。その性格のグンジョウ、口悪いから好きじゃない。二重人格レベルだよ、母様より酷いよ」

 

服を投げつけられた。

それを普通に受け取り、着る。

ついでに落ちていたであろう眼鏡も投げられて、かけてみた。

幸いにも、フレームもレンズも傷一つなく、流石ルカさんが作ったものだと感心する。

 

「別に、僕は僕だろ。別人になったわけでもなし。それだけで人を判断するな、シャナ」

「別人レベルだって言ってんの! いつものグンジョウなら困った顔で笑ってんだよ? 今本当に無表情過ぎて、ユエちゃんとユタカちゃん泣くんじゃないかな…」

 

泣かせておけ、と僕は言い、ふと思ったことを姉に聞いてみた。

 

「母上は城にいるのか? いるなら連れて行け。聞く事がある」

「そう言うと思ったよ。でも、二人を立花邸に送ってからね」

 

僕とツルギを置いて、一回シャナは二人を連れて転移する。

すぐに戻ってきて、今度は僕らを連れて城に戻ってきた。

 

「…母上」

 

僕は眉が吊り上がる感覚を覚える。

シャナが転移した先、城の玄関口に母様がいたからだ。

母様は僕達を見て微笑んでいる。

僕は母様に近寄り、その肩を掴んだ。

 

「聞かせてもらおうか。何故僕をあの場に行かせた? あの女は何者だ? 何故ユエは、僕を見て別の男の名を口にした? 答えろ、母上」

「その口調、ナズナそっくりねグンジョウ。流石彼の子だわ。そうね、まずは…」

 

母様は一回目を伏せ、再び上げると僕の目を見据え、告げる。

 

「初代の魔王が復活しました。今代は貴方方に討伐してもらいます」

「……は?」

 

魔王が復活?

何の冗談なんだ?

 

だが、母様の顔は真剣そのものだ。

 

「母様、それって…」

「魔王が復活した時の王太子が、それを討伐する。これはリューネ王家に課せられた宿命です。前回は私が行いましたが、それはイレギュラーだっただけ。わかりますね? グンジョウ。今代は、貴方が討伐するのです。私達は手を貸しません」

 

戸惑うシャナの声を置いて、母様は淡々と僕を見ながら言葉を紡いでいく。

僕は母様を睨みつけた。

 

「だからなんだと言うんだ。それとこの事態に関係があるというのか」

「あるから言っているのです。貴方の疑問に答えましょう、グンジョウ。あの場に行けば、貴方は自分の前世との繋がりと邂逅する事になっていたからです。それは遅かれ早かれ、貴方に襲いかかってくるもの。ならば早い方が良いと判断しました」

 

ふざけるな、と僕は母様を突き飛ばす。

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