my way of life   作:桜舞

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43話『好きになったのは前世とは関係ない』

「なら、あの事態を引き起こしたのは僕という事ではないか! もっと詳しく立花卿に言っておけ!! 一人で行けば、ユエもユタカも傷つく事は無かったではないか!!」

「…それが、いい判断だって、王妃様も思ったから。だから私達を寄越したんだよ、アオ」

 

静かに、背後から声がかけられた。

そちらをゆっくりと振り返る。

 

「ユエ…」

 

一体いつの間に来たのか。

ユタカがいない所を見ると、一人で来たようだ。

転移の魔力の揺らぎもわからないほど、僕は頭に血が昇っていたらしい。

 

「後の二つは、私が言うね。あの子は神無月桃華(かんなづきとうか)。前世での貴方の妹で、私はあの子に殺された。私の前の名前は、遠李雪那(とうりせつな)神無月夕陽(かんなづきゆうひ)君の、彼女だったの。それが気に食わなかったんだって、トウカが私を突き飛ばす前に言ってたよ。ねぇ、アオ。私が前世を思い出したのは、つい最近なの。だから、貴方を好きになったのは前世とは関係ない。それは信じてね」

 

寂しそうに笑う彼女に近寄り、抱きしめた。

そんなユエを、見ていたくなかったのだ。

 

「貴方は夕陽君。でも、今はグンジョウって名前がある。私はどっちの貴方も大好き。ごめんね、黙ってようって思ってたのに、トウカが現れて止まらなくなっちゃった」

「………」

 

そう言って、ユエは困ったように眉を下げた。

僕は無言で彼女を抱き上げ、母様の横を通る。

 

「グンジョウ、オイタはダメよ」

「宣誓を覆すつもりはない。元の僕に戻るためだ、黙ってろ」

 

母様の忠告に一睨みだけして、僕は自室へと向かう。

部屋に入り、ユエを乱暴にベッドへ投げた。

小さい悲鳴が聞こえたが、僕はユエに覆い被さる。

 

そしてその唇を奪った。

 

「ん…っ! んぅっ!」

 

さらに深く口付けをすると、ユエの口の端から熱い吐息が漏れる。

最初僕の服を掴んでいたユエだったが、だんだん握る力がなくなっていき、その手はベッドへ落ちた。

 

「ユエ…ねぇ、僕とユウヒ、どっちがキスが上手い…?」

「………」

 

彼女の耳元で囁く。

息が上がってぼんやりと僕を見るユエだったが、ポツリと

 

「…夕陽君と、キスした事ない…」

 

と呟いた。

 

「え…?」

「夕陽君、結構硬派で…そういうのは、結婚出来る年齢まで、しないべきだって…。だから、夕陽君とキスもした事ないし、それ以上もない、よ…? アオ…もしかして、夕陽君に、嫉妬してた…? 知らない私を知ってるって、思ってた…?」

 

指摘されて、僕は顔を真っ赤にする。

 

このイラつきの元はそれだったのか。

僕には前世の記憶がない。

むしろ僕に前世があると思ってなかった。

前のユエと、自分が恋人同士だったのは素直に嬉しい。

今世でも、ユエと恋人になれて嬉しかった。

 

だが、前のユエを知っている僕に、自然と嫉妬してしまっていたらしい。

 

僕は彼女に体重をかけないよう、彼女の胸に顔を乗せた。

 

「…ごめん。そうかも…」

「ふふ…嫉妬に駆られるアオも、格好良かったよ…?」

 

情けないの間違いじゃないのかな、それ。

 

息が整ってきたようで、紅潮していたユエの頬も元の色に戻っている。

 

「ナズナおじ様に、本当にそっくりだったよさっきのアオ。もっと歳を取ったら、おじ様みたいに格好良くなるんだろうね」

「…怖くなかった? シャナからは別人みたいって言われるんだけど」

 

ううん、とユエは首を横に振った。

 

「私にとっては、アオはアオだもん。ナズナおじ様に似てるアオも、いつものアオも、こうやって恥ずかしがってるアオも。みんな大好き」

「…ユエ…君、聖母か何か…?」

 

少し体を起こし、ユエの頬に自分のをくっつけて頬擦りする。

そんな僕の頭を、彼女は撫でてくれた。

 

「聖母なら、ユタカと喧嘩なんてしないでしょ? こんな事をするのは、貴方だけだよアオ」

 

慈愛のこもった声で言われ、僕は彼女を抱きしめる。

 

「ユエ…僕がもし、また君を怒らせるような事をしても、許してくれる…?」

「程度には寄るよ。でも、怒っても泣いても、最後には許しちゃうかな。だって、貴方が大好きなんだもん」

 

抱きしめる力を強め、僕は目を閉じた。

好きだ、と呟いて僕は意識を手放す。

今度は夢も見ずに、僕は深い眠りに落ちた。

 

◆◆◆

 

朝の光に目を開けると、目の前にユエの寝顔があって固まった。

昨夜の記憶を思い出し、僕は冷や汗が流れ落ちるのを感じる。

 

やばいユーリおじさんに殺される…!!

 

彼女を夜遅くまで拘束して帰さなかった事。

前回それでしこたま怒られたばかりだというのに。

 

多分、ユエは添い寝してくれてそのまま寝てしまったか、僕の拘束が解けなくて寝てしまったかのどちらかだろう。

 

「ユエ、ユエ…っ! 起きて…っ!! ヤバい、僕死ぬかもしれない…っ!!」

 

起き上がり、彼女を揺り起こす。

穏やかに寝ている所を起こすのは心苦しくはあるけど、流石にこの状態はまずい。

何もやましい事はしてはいない。

神に誓ってそれは言える。

だが、状況的にそれを言ったところで誰も信じないだろう。

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