my way of life   作:桜舞

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44話『今日が僕の命日かもしれない』

「うーん…何…? どうしたの、アオ…」

「ごめんだけど、もう朝なんだ。ユエ、何もなかったってユーリおじさんに口添えしてもらえないかな…? いや……うん。潔く死んでくる…短い間だったけど、幸せだったよユエ…」

 

ベッドから降り、トボトボ歩きながら扉に手をかけた。

とんでもない殺気が、つい先程からひしひしと感じ取れていたから。

 

扉を開けると、やはりというかユーリおじさんがにこやかに笑い、仁王立ちで僕を待ち構えていた。

その隣には父様もいて、こちらも不機嫌そうだ。

 

僕は速やかに二人に向かって土下座する。

 

「本当に!! すみませんでした!!」

「グンジョウ君、君これで二回目なんだけど。何? 悪い記録を更新し続けたいのかい?」

 

ユーリおじさんの声音は穏やかだが、僕に放ってくる殺気が尋常じゃない。

一般の人なら気絶しているレベルだ。

 

「グンジョウ、お前…昨日シャルに暴力を振るったそうじゃないか。シャルは笑っていたが、俺は許さんぞ」

「ごめんなさい!!」

 

昨日イライラし過ぎて、母様に八つ当たりした自覚はある。

それは、母様を大事にしている父様も滅茶苦茶怒る事態になるだろう。

 

冷や汗が止まる事なく、流れ続ける。

今日が僕の命日かもしれないと思った。

 

「パパだってママと一緒に住んでたくせに、私がアオの所で一泊しただけでそんなに怒るの? 何もやましい事してないのに」

「学生の頃、寮の部屋で一緒に生活はしていたけど、あの時は葵もいたからね? 話をすり替えるんじゃない、ユエ」

 

僕の頭上で、ユーリおじさんとユエの親子喧嘩が勃発してしまった。

父様の方は、本当に不機嫌になると無言になってしまうらしく、今は言葉を発していない。

本気で怒っているのだと、圧で感じる。

 

自分がやらかした事なんだけど、誰か助けて欲しい…。

 

そんな時だった。

 

「グンジョウ、母様連れてきたよー。あのさ、朝早くから念話のチャンネル開けて喚かないでくれないかな。煩い」

「シャ、シャナぁ…」

 

いつもアホの子のシャナが、救世主かどうかわからない母様を連れてきてくれた。

あと開けたつもりはないんだけど、無意識にシャナへ助けを求めていたようだ。

少し顔を上げると、母様が父様を見て呆れている。

 

「ナズナ、あのね。グンジョウが怒ったのは仕方ない事なの。それにグンジョウ程度の力であたしが傷つくと、本当に思ってるわけ? 今でも貴方、あたしに勝てた事ないじゃない」

「それでも心が傷ついただろ、シャル。お前を傷つける者は、たとえ息子であっても許さん」

 

父様が母様の肩を掴んで、そう言う。

しかし、母様の目が少し細められた。

 

シャナが床に跪いている状態の僕を立ち上がらせる。

一体どうしたのだろうと思った瞬間、この場の気温が下がったのに気付いた。

 

「ナズナ、いい加減にしろ。貴様政務はどうした。投げ打ってでも、息子に噛み付く方が大事か? ほぉ…そうかそうか。ならば好きにするがいい、私も実家に帰らせてもらおう」

「ちょ、待て! シャル! それは怖い…いや、俺が悪かった!! 離婚はしないでくれ!!」

 

母様の冷たい目で見られた父様は、踵を返した母様を慌てて追いかける。

気温が下がったのは、母様が少しイラッとして魔力を放出したからだろう。

廊下の端が少し凍っている。

 

「裕里も、いい加減にしろ。グンジョウが悪いのはわかってはいるが、今回は不可抗力だ。許してやれ」

「おや、優しいねカヅキ。妬けてしまうじゃないか」

 

母様と一緒に来ていたカヅキおばさんが、ユーリおじさんに苦言を言う。

そんなおばさんの腰を抱き、おじさんは自分の妻を抱き寄せた。

朝からそんな光景を見せられ、居た堪れなくなった僕は目を逸らす。

 

「おばさん。学校遅れそうだからグンジョウ連れてっていい?」

 

シャナは意にも介さず、ユーリおじさんに言い寄られているカヅキおばさんに尋ねた。

 

「あ、あぁ。裕里、朝なんだが…」

 

顔を赤らめているおばさんを尻目に、シャナが僕とユエの手を取って、学校近くの歩道に転移した。

 

「助かった…。ありがとう、シャナ」

 

流石にあの場に居続けたら、僕の精神が潰れていた事だろう。

来てくれたシャナには感謝しかない。

 

「うん、だって朝から煩かったんだもん。『やばいまずい、どうしよう誰か助けて』なんて…グンジョウ? お姉ちゃんが助けてあげられるのも、学生の間までだって覚えておいた方がいいと思うよ?」

「本当にごめん…助かった。ありがとうシャナ」

 

少し呆れ顔のシャナに、両手を合わせて謝る。

いつもは僕の方が助けてる事が多いけど、こういう非常事態だとシャナの方が頼りになる事が多い。

流石、僕の姉である。

 

「結婚したら、今度は私がアオを助けるからね。シャナちゃん、安心して?」

「いや、あの、それはありがたいんだけど…」

 

僕の腕に抱きつき、ユエはニコリと笑った。

 

僕だって、君が困っていたら助けるぐらいの度量がある…と思いたい。

情けない姿ばかり見せている気はするけれど。

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