my way of life   作:桜舞

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48話『無理…動きたくない…』

「…っ」

 

走馬灯のようなものを見ていたらしく、僕が姫役に決まった時の事を思い出していた。

体の痛みは引いていて、多分僕らが全員倒れた事により、母様が全体回復魔法で回復させてくれたのだろう。

 

頬に柔らかいものが当たっており、横を向いている状態から、正面に体を動かし上を見上げると、ユエの顔があった。

どうやら、僕に膝枕してくれているようだ。

 

「アオ、起きた?」

「うん…今何時…?」

 

ユエに時間を尋ねると、近くに置いていただろう鞄から携帯を取り出し、時間を確認する。

 

「えーと、まだ7時だね。訓練始まってから、一時間しか経ってないよ」

「…みんなは? 母様達は?」

 

体がだるくて、動かしたくない。

せめて少し寝たくて、ユエに尋ねる。

 

「ママ達はもういないよ。まぁ、二人とも忙しいし。シャナちゃん達はシャワー浴びに行った。流石に砂埃ついた状態で登校出来ないからって。アオも浴びてくれば?」

「無理…動きたくない…」

 

うつ伏せになり、ユエの腰に腕を回して目を閉じた。

だがそんな僕の背中を、彼女は軽く叩いてくる。

 

「朝ご飯も食べないと。アオ、開会式の後すぐ体育館で劇するんでしょ? こんな状態だとまずいんじゃない?」

「……ユエと夫婦だったら、お風呂にも一緒に入れるのに…。体洗ってもらって…少しいちゃついて…朝ご飯も…食べさせて…もらって…」

 

眠くなりながら願望をつらつら言うと、ユエが吹き出した。

 

「それ、もう介護だと思うんだけど。やだなぁ、アオ。おじいちゃんっぽいよ」

「………だね」

 

まだ10代なのに、願望がジジくさいとか…。

でも、あーんしてもらった事ないんだよ、ユエに。

デートも、そんなにしてないからかもだけどさ。

そんな場合じゃないし。

 

僕は起き上がり、自分の頬を思い切り叩いた。

その動作に、ユエは目を丸くしている。

 

「起きた、目が覚めた。膝枕してくれてありがとう、ユエ。城のシャワー室、使って。僕自室の方に帰るから」

「え、あ、うん…アオ、後で迎えに行くから、寝ないでね」

 

お風呂に入った後、何もかも忘れて寝たいんだけど。

 

僕はユエに笑いかけながら、

 

「寝てたら叩き起こして」

 

と言って、自室に帰る。

備え付けの浴室に入り、体全部を洗ってお湯が張ってある浴槽に入った。

浴槽の縁に頭を乗せて、上を見上げる。

 

「あー…ユエと一緒に入りたい…」

 

また願望を口にした。

結婚しないと、そういう事はしちゃダメだと頭ではわかっている。

婚姻が出来るのも、高等部卒業後。

あと、2年と4ヶ月我慢しなければならない。

 

「もう…誰か…僕の煩悩封じて…」

 

両手で顔を覆う。

 

ユエにもっと触れたい。

キス以上の事がしたい。

四六時中一緒にいたい。

ずっと、ユエと繋がっていたい。

 

そんな事ばっかり考えてしまう。

 

はぁ、とため息をついたのと、浴室の扉がノックされたのは同時だった。

 

「アオ? もうそろそろご飯食べないと間に合わないよ? まさか…寝てる? 反応なければ入るよー?」

「起きてる! 起きてるから! 待ってユエ! 入ってこないで?!」

 

起きてるなら入らないよ、との彼女の返答に、僕は安堵する。

流石にこの状態を彼女に見られるわけにはいかない。

 

「ユエ、ごめんだけど部屋で待っててもらえない? すぐ行くから」

「うん? うん、わかった」

 

鎮めてからじゃないと、ユエの顔絶対見れない自信が僕にはあった。

深呼吸を何回かして心等を鎮めてから、僕は浴室から出る。

 

「ごめん、お待たせ」

「結構長かったけど、大丈夫? 逆上せてない?」

 

扉の前で待ってたユエは、僕の様子を見て心配そうにしていた。

大丈夫と返して、彼女の頬に触れる。

 

「どうしたの?」

「…ううん。キスしていい?」

 

聞かないでよ、と頬を赤らめたユエは目を閉じた。

彼女の唇に触れるだけのキスを落とし、目を開けたユエに笑いかける。

 

「じゃあ、行こうか」

 

◆◆◆

 

朝食を食べ、おばさんに学園まで送り届けてもらう。

それぞれの教室に入り、荷物を置いて体育館に向かった。

聖・メリーディエース学園の学園長をしている、おばさんの知り合いの娘であるアイラ学園長が、開会式の挨拶をする。

いつもは眠そうにしている学園長だが、今日はちゃんと起きているようだ。

 

「あー…緊張する」

「シャナは裏方だろ。僕なんてガタイがいい男なのに、姫役…シャナがすればよかったのに…実際姫なんだから…」

 

少し悲しくなって、両手で顔を覆う。

まぁまぁ、とシャナは僕の肩を軽く叩いてきた。

 

「今日だけじゃん。それに、通し稽古でやってたお芝居、ちゃんと上手かったよ? 後で、ユエちゃんと学園内デートしてきたらいいじゃん。それで心の傷癒しなよ」

「…そうする」

 

学園長の挨拶が終わり、僕らは舞台裏に行く。

そこでサイズ合わせしていた衣装を着るのだ。

 

「グンジョウ君…」

 

王子の格好をしたツェリが、僕に話しかけてくる。

黒髪で長髪のウィッグをつけている途中だったので、ツェリの顔が見えなかった。

 

「ん? どうかした? ツェリ?」

「ううん。今日は、よろしくね?」

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