「え、嘘…シャナ、ツルギの事…」
「いやー、告白したけど振られちゃったんだー。今はお友達だから。大丈夫!」
はははと笑うシャナを見た僕は、ユタカを突き飛ばし、シャナに駆け寄ると抱きしめた。
「ごめん、気付かなくて…辛かったはずなのに、心が痛かったはずなのに…ごめん…」
「ちょっと前の話だから、大丈夫だよグンジョウ。でもありがとう、心配してくれて。本当に優しい子だね、グンジョウは」
僕の背中を撫でてくれるシャナだが、さっき見た顔は少し傷ついたような笑顔だった。
確か少し前、シャナが泣きながら僕にぶつかってきた事があった。
多分、あの時だったんだろう。
ツルギに好きだと言って、断られたのは。
「…ごめん」
「今は気にしてないから。それよりユエちゃんが驚いた顔してるよ? グンジョウ、お姉ちゃんよりも彼女を大事にしなさい。ほら、離れた離れた」
シャナを離し後ろを見ると、確かにユエもユタカも驚いた顔をしている。
だが、すぐにその顔は真反対のものになった。
ユエは仕方ないなという風に苦笑し、ユタカは羨ましいと顔に書いてあるくらいに、唇を引き結んでいる。
確かに僕とシャナも双子だが異性だ。
似る事はないだろうけど、ユエとユタカは一卵性だ。
こうも違いが出るものなんだろうか?
「とりあえず、グンジョウはあたしとツルギ君と一緒に周ろうか。気にしないで良いからね。別にデートじゃないし」
「…ユエ、ユタカと周るって言ったら怒る?」
振られても、シャナはまだ諦めきれてないようだ。
なら、姉の気の済むようにしてあげたい。
そんな僕の意図を汲んでくれたのか、ユエはため息をついてユタカの肩を叩く。
「…アオに変な事したら、パパに告げ口して本当にオーシアに帰ってもらうから」
「変な事って何の事? ユエやらしいー」
僕のベッドの上で、また姉妹喧嘩が勃発してしまった。
少しため息をついて、僕は朝食を食べるためにシャナと食堂へ向かうのだった。
◆◆◆
「グンちゃん、はいアーン!」
「一人で食べれるから、しないから」
僕にクリームが乗ったスプーンを差し出して、ニコニコしているユタカへ、僕は少し不機嫌そうに返す。
普段の僕からは考えられない様な事だが、テーブルに肘をつき、足を組んでユタカから顔を背けた。
「グンちゃん、デートなんだよこれ?」
「デートだとは思ってないし、君はツェリ避けだろ。勘違いしないで欲しいんだけど」
それにそれ、すごく甘そうじゃないか。
僕、甘いの苦手なの知ってるくせに。
僕に差し出していたスプーンを自分の口に入れ、ユタカは困ったように笑った。
「グンちゃん、本当にユエの事好きなんだね。私同じ顔なのに、何が駄目なのかな?」
「同じ顔でも少し違うじゃん。ユエの方が可愛いし、気遣いだって出来るし、少し我儘言う時に口を尖らせる所とか、何を着ても似合っている所とか…って、なんでユタカにそんな事言わなきゃいけないの」
僕が横目でユタカを見ると、少し寂しそうに笑ってて胸が少し痛んだ。
いやいや、駄目だ僕。
甘えを見せたら、すぐつけあがるんだからユタカは。
「とにかく、これはデートでも何でもないから」
「…ねぇ、グンちゃん。ユエみたいに振る舞うから、今日だけ私の恋人になってくれないかな」
何を馬鹿な事を、とユタカに顔を向けると、少し目が潤んでた。
「ユタカ…」
「諦める。今日だけ、今日だけデートしてくれたら、諦めるから。ユエにも話してくるから、お願い…」
そう言って、ユタカは顔を俯かせた。
俯いた顔から、涙が零れ落ちていく。
「…ユエが許してくれたら、ね。多分許さないだろうけど」
「それならそれでいいよ。一緒に見て周ってくれるだけでいい。ごめん、グンちゃん。うちのクラスまで来てくれる?」
ユタカが椅子から立ち上がり、泣き笑いをしながら僕に手を差し出した。
僕はそれを無視して、二人のクラスに向かう。
確かに昨日ユエが言っていた通り、僕の女装なんてまだマシな方だと実感した。
筋肉隆々な男子が、メイド服を着て給仕している姿は、滑稽を通り越して恐怖を抱く。
やる気があるのはいい事だが、そのやる気を別の事に向けられなかったのか。
「あれ、ユタカちゃん。今日一日オフだって言ってなかったっけ?」
「忙しいとこ、ごめんね。ユエは? ちょっと話あるんだけど」
受付をしていたクラスの子が、ユエを呼びに行った。
奥の方から、黒髪をポニーテールにし、執事服を着たユエが、お盆片手に現れる。
うわ、似合ってる。
本当に僕の彼女は、何を着ても可愛いな。
「ユタカ、何の用? もうデートは終わり?」
「それなんだけど…」
ユエに先程僕に伝えた事を言う。
それを聞いたユエの眉が吊り上がった。
「は? 許すわけないでしょ。アオは、私の恋人なの。恋人を姉に1日貸す馬鹿がどこにいるって言うのよ。戯言も大概にして」
「…だよね。いこ、グンちゃん。大丈夫、ちゃんと諦めるから」
ユタカは僕の手を取って、歩き出す。
ユエがイライラしていたようだったので、僕は彼女に声をかけた。