my way of life   作:桜舞

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55話『ありがとう…私に恋を教えてくれて…』

「ユエ! それ似合ってる! 可愛いよ!」

「…そんな大声で言わなくても」

 

恥ずかしそうに、ユエはお盆で自分の顔を隠してしまった。

ユタカが角を曲った事により、その姿は見えなくなってしまったが。

 

「…ユタカ」

「わかってる…。ごめんね、グンちゃん。あともう少しだけ…」

 

僕と手を繋いでユタカは校舎を出、店を見て回る。

話しかけても何も反応しない僕へ、彼女は寂しそうに笑いながら。

 

あー、僕今凄く嫌な奴じゃん…。

 

別にユタカにこんな顔させたくはないけど、僕にはユエがいるから、彼女の気持ちに応えられない。

それは、ユタカ自身もわかっているだろうに。

 

そのうち、学園祭が終了だというアナウンスが流れ始める。

ユタカが僕の手を引き、校舎の影に連れて行った。

一体なんだと思った瞬間、キスをされる。

 

「…っ! …やめてくれない? ツェリといい君といい、いい加減にしてくれよ。僕はただ…っ!」

「…ユエと幸せになりたいだけ、だよね。わかってるよ、グンちゃん…ごめんなさい。ありがとう…私に恋を教えてくれて…」

 

ユタカの肩を掴み、引き剥がす。

そのまま僕は、顔を下へ向け気持ちを吐露すると、彼女は静かに僕へ感謝を述べた。

 

顔を上げると、大粒の涙を流し、微笑んでいるユタカの姿があった。

 

「…ユエにさっき、メッセージ、投げといたの…玄関口で、待ってるはずだから、行ってあげて…ごめんね、グンちゃん…」

 

僕はユタカから手を離し、玄関口へ向かうために歩き始める。

後ろからは、声を殺した泣き声が聞こえていた。

 

◆◆◆

 

「アオ、お疲れ様。ユタカなんだって?」

 

玄関口で落ち合った僕らは、そのまま校舎の屋上に来ていた。

憩いの場としても使われるそこは、ベンチなどが置いてあり、僕は今ユエに膝枕をしてもらっている。

 

「…ありがとうって言われた。恋を教えてくれて、ありがとうって…」

「そっか。私達、アオに会った時からアオにずっと恋をしていたから…最初ね、とても綺麗な子だなって思ったの。アオの事。でもね、見ているうちにアオが凄く格好いい男の子だって気付いたんだ。シャナちゃんの世話焼いてる時とか、一緒に誘拐された時、自分だって怖いだろうに犯人に交渉してくれた事とか」

 

そんな事もあったなぁ…。

結局、母様とカヅキおばさんが助けに来てくれて、僕自身何もしてないんだけど。

 

「世界がくっついちゃって、ママが王妃様からの要請でリューネに行くって言った時、アオに会いに行けるって、リューネ語を必死に覚えたの。私もユタカも。今はちゃんと喋れてるでしょ?」

「うん。すごく聞き取りやすいよ。頑張ったね、ユエ」

 

腕を伸ばして、彼女の頬を撫でる。

僕の手へ自分の手を添え、寂しげにユエは笑った。

 

「私だけじゃなくて、ユタカも頑張ったんだよアオ。あのね、アオ。やっぱり私、ユタカだけじゃなく、他の女の子にもアオの事渡したくない。貴方の隣は、私だけでいい。今日、ユタカに連れられて行ったアオを見て、そう感じたんだ」

「ユエ……うん、僕もそう思うよ。君の隣は、僕だけでいい」

 

外が暗くなり始め、後夜祭が始まった音がした。

僕は身を起こし、ベンチから立ち上がる。

 

フェンスに寄り下を見ると、校庭の真ん中で炎が上がっていた。

何かの音楽が鳴ってて、炎を囲むようにみんなが踊っている。

僕と同じように立ち上がっていた、ユエが首を傾げていた。

 

「アオ、どうかしたの?」

「ん? いや、みんな下で踊ってるからさ。あの中にシャナもいるのかなって思って。ほら、僕目が悪いからあんまり暗いとよく見えなくて」

 

苦笑すると、ユエが僕に手を差し出してきた。

 

「ユエ?」

「私と一曲踊っていただけませんか? グンジョウ殿下」

 

暗がりの中だけど、彼女が微笑んでいるのがわかる。

僕はフッと笑って、眼鏡を外すと胸ポケットにそれをしまう。

そして、彼女の手を取ってそこへ口付けを落とした。

 

「喜んで、僕の姫」

 

ユエの腰に手を回し、片方の手を彼女の手と繋ぐ。

ワルツのリズムで、ユエと踊る。

暫く踊っていると、彼女がポツリと呟いた。

 

「ずっと、こんな時間が続けばいいのに…」

「…そうだね。僕もそう思うよ、ユエ。ずっと君と踊っていられたらいい」

 

ユエが顔をあげ、困ったように笑った。

そんな事叶うはずがないと、彼女もわかっているのだ。

 

「でも、数年後か数十年後か分からないけど、きっと今日の事を思い出す時が来るよ。あの時は、時が止まればいいと思ったねって。その時、僕の隣に君がいればいいと思う」

「私がアオから離れるなんて事、絶対無いから。こんなに大好きな人と別れるなんて、もう出来ない」

 

その言葉に僕はステップを踏むのを止めて、彼女の頬に手を添える。

 

「僕もだよ…愛しいユエ。君と別れるくらいなら、僕は…死んでしまっても構わない」

 

後夜祭最後のフィナーレである、花火が上がる。

僕らはどちらからともなく、口づけを交わした。

 

◆◆◆

 

ユエと共に城に帰って狂化訓練を受けようとしたのだが、ツルギからの伝言で、カヅキおばさんの方が都合が悪いと言う。

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