my way of life   作:桜舞

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56話『初めまして、もう1人の俺』

珍しい事もあるものだと、今日はユエを寮に返し、僕はそのまま自室で寝る事にした。

そして早朝、訓練場に来て僕は目を丸くした。

 

「…誰?」

 

赤い髪で、ユタカと談笑している男の子がいた。

結構大きめの杖を軽々と持って、彼女に笑いかけている。

 

「おはよう、アオ。どうしたの?」

「おはよ、ユエ。いや、あれ誰? 見た事ない人いるんだけど」

 

僕の背後に転移してきたユエに朝の挨拶をし、ユタカの方を指差す。

ユエは僕の後ろから顔を出して、固まった。

そして顔を俯かせ、肩が震え出す。

 

「…ユエ?」

「っ!! ユタカぁっ!! あんた何やってんの?! 別次元のアオを呼び出すなんて!! そんなにアオの事諦められないの?!」

 

ユエが駆け出し、止める間も無くユタカに掴みかかろうとする。

だがしかし、赤髪の男の子がそれを止めた。

 

「おいおい、ユエ。俺の愛しい彼女に暴力を振おうとしないでくれ。それに、ユタカに呼び出されて俺は幸せだぜ? あんなクソみたいな世界にいるなんて、ごめんだったんでな」

 

そう言い、赤髪の男の子は指を鳴らす。

ユエの体が宙に浮き、僕の上まで来るとそのまま落下した。

 

「ユエ!!」

 

なんとか彼女を抱き止めたけど、僕は訳がわからなくて、男の子を見つめてしまう。

その視線に気づいたのか、男の子は恭しく僕へ頭を下げてきた。

 

「初めまして、もう1人の俺。俺はグンジョウ・デルフィニウム・ブリリアント。まぁ、ここでのグンジョウはお前だから、便宜上俺の事はシンクとでも呼んでくれや。これから宜しく、おにーさま」

 

もう1人の僕…シンクは人を馬鹿にしたように笑った。

というか、今何と言った?

 

「おにー、さま?」

「そそ。ほら、俺もグンジョウじゃん? 一応王族になるわけ。でもグンジョウなんて二人も居ないだろ? だから、都合良く俺はお前の弟って話になったわけ。シナリオはこうだ。三つ子を産んだ母様だったが、そのうちの一人が病弱で手元で育てる事が出来ず、地方に療養に出す事になった。そして元気に健康に育った俺を、城に戻す事に決めたってシナリオだ。それは、こっちのカヅキおばさんと母様、そして父様も了承済みだ。そういうわけだから、弟が増えたぞ喜べよ」

 

頭が理解を拒んでいる気がする。

とりあえず彼は、ナツキ叔父さんと同様に僕の異次元同位体という事なのだろう。

だからって、はいそうですかと納得できる訳がない。

 

「でも、アオなら魔法は使えないはず…」

「異次元同位体がまるっきり同じってわけないだろ? 母様に聞いたけど、男の母様がこっちにいるんだろう? なら、魔法に特化したグンジョウがいてもおかしくはない。それに、リューネの元々の位置は南だったってきいたぞ。俺が育ったのは北の方、雪が降って寒さが厳しいとこだったの」

 

くぁ、と大きな欠伸をしたシンクは、ユタカに抱きつく。

抱きつかれたユタカは、少し嬉しそうに口元が笑っていた。

 

「おはようございます、殿下。あの、あの方は?」

 

ツルギも、眠そうなシャナの手を引いて、訓練場に現れる。

その姿を見たシンクが片手を上げて、ツルギに挨拶した。

 

「よぉ、ツルギ。久しぶり。なんだ、お前も死んじまったのか。災難だなー」

「え…どちら様で…」

 

ツルギが戸惑った声をあげた。

ユエの方から、まさか、と呟きが漏れる。

 

「俺俺、夕陽」

「夕陽君はそんなチャラくなかった! 嘘つかないで!!」

 

キッと、ユエはシンクを睨みつけている。

だがそんな目線を向けられているシンクは、馬鹿にしたように笑った。

 

「あのな、ユエ。異次元同位体って、並行世界の自分なんだよ。少しの誤差で、同じ自分なのに別の力を得ていたりな? 俺とそっちのグンジョウは、前世も一緒だったらしいけど? だが、お前の知っている夕陽と、俺は違うんだよ。なんてったって、並行世界の自分だからな。てか、その言いよう…お前雪那か。あー、やだやだ。俺の可愛い彼女はユタカだけだってのに、元カノが出てくるとか」

 

シンクはそう言い、ユタカの頭に頬擦りする。

ユエの方を見ると、拳から血が滲んでいた。

 

「ユエ、落ち着いて」

「アオ……ごめん。大丈夫。私の知ってる貴方は、アオだけだもんね…」

 

彼女の手を開くと、爪が食い込んでいたようだが、それも瞬時に治っていく。

流石カヅキおばさんの娘である。

 

「というか、ツルギと知り合いだったのか?」

 

僕の質問に、シンクは肩を竦めながらユエを見た。

 

「何言ってんの? 雪那とも知り合いだったろ? なぁ、ユエ」

「気安く呼ばないでくれない? 私は…夕陽君と、別の高校だったから。ツルギとは会った事ないよ。夕陽君から話は聞いてたけど」

 

なんか、僕だけ置いてけぼり感すごい。

いや、シャナもか。

何を話しているのか、全く理解できていないような顔をしている。

 

「そ。俺は普通に会わせてたけど。あ、おばさん達来たな。んじゃ、訓練始めっか」

 

訓練場の入り口を見ると、母様達が入って来たのが見えた。

 

「おはよう、みんな。シンクとの挨拶は…なんか険悪な雰囲気なんだけど、貴方何かしたの?」

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