my way of life   作:桜舞

58 / 408
58話『よろしくなおにーさま』

「信用はする。君は僕だ。確かに戦闘において、僕が後方に下がる事は出来ない。ツルギやユタカに任せっぱなしだと、そこを崩された時次に危険なのはユエ、そしてシャナだ。僕がユエと同じ位置に居られればいいんだけど…」

 

僕はそこで区切り、シンクを見る。

 

「だから、後方で指示を出してくれるのは正直助かる。シャナには人を指示して動かす程の才能はない。まぁ、なんで君の髪色がそんなになってるかは知らないけど…僕のはずなのにな…」

 

最後の疑問に、シンクはニヤリと笑って僕の耳元に口を近づけ、囁くように言った。

 

「失恋したユタカが、お前を思い出さないようにするためだよ。顔は一緒だが、髪色が違えば別人だと思うだろ? 俺はユタカが大事だ。お前がユエを大事に思うようにな。まぁ、そういうこった」

 

パンパン、と僕の肩を叩き、シンクは離れるとニッと笑った。

 

「てわけで、よろしくなおにーさま」

「それやめろよ、シンク。むしろ君の方が兄のようだけど」

 

やめてくれ、とシンクは笑う。

自分は王になるつもりはない、と続けて彼は言った。

 

「雑談はもう終わったかしら? はいはい、みんな起きてね。授業が始まるまであと2時間きってるわよー」

 

倒れてたユタカや、ツルギ、シャナが起き上がる。

若干嫌そうだ。

それはそうだろう。

母様の攻撃から逃れられた事はないし、母様に一撃入れられた事もない。

 

「よーし、今日の目標は母様かカヅキおばさんに一撃入れられるようにする、だ! 良いか、お前ら。俺の指示に従え! そうすりゃ、勝利とまではいかないが、良いとこまでは行かせてやる!」

「はっ! 言うじゃないか。やってみろ、シンク」

 

母様とカヅキおばさんに、杖を向けてシンクは宣言した。

それに対して、おばさんは本当に面白そうにニヤニヤ笑っている。

 

「はい開始」

 

母様がぽん、と自分の手を叩く。

母様の周りに、四方八方色んな色の球が浮いた。

 

「今日は、敵が全属性の魔法が使えるという想定でやってもらいます。さて、あなた達はどれくらいまで保つのかしらね?」

 

そう言った瞬間、球が僕らに襲いかかってくる。

 

魔盾(マジックシールド)!!」

 

シンクが魔法を唱え、僕らの周りにシールドが張られた。

球はそれに弾かれて霧散する。

 

「ユタカ、ツルギ! お前らはおばさんの方の注意を逸らせ! グンジョウ、お前は母様! ユエ、弾幕張れ! シャナ、前衛に再生魔法(リジェネレイト)つけろ! 俺は魔法攻撃を防ぐ!」

 

シンクの指示通り、僕らは動く。

脚力強化で母様に接近する。

僕の攻撃を阻もうとカヅキおばさんが動くが、そこをツルギとユタカが強襲した。

 

「くっ…!」

 

カヅキおばさんの注意が僕から逸れる。

その隙を縫って、母様に剣を叩き込む、が。

 

「グンジョウ、私が誰の専属護衛をやっていたか、覚えているな?」

 

母様は指先一つで、僕の剣を止めていた。

顔は笑っているが、目が笑っていない。

マズいと思った時には遅かった。

僕の腹部に、母様の魔力を乗せた重い蹴りが突き刺さる。

そのまま吹っ飛ばされるかと思いきや、母様は僕の腕を握り、地面に叩きつけた。

 

「アオっ!!」

「ユエ、弾幕切らすな!! シャナ、グンジョウに

回復魔法(ヒール)使え!」

 

ユエの悲鳴が聞こえる。

その直後、シンクはユエへの叱責と、シャナへ指示を出す。

地面に叩きつけられた衝撃で眼鏡は吹っ飛び、全身に痛みが走った。

 

「ぐっ…う…っ」

「やりすぎだ馬鹿」

 

ぼんやりした視界で、ユタカとツルギの攻撃をいなしていたおばさんが、母様に注意する。

だが、母様はそれを鼻で笑った。

 

「私が魔法だけだと思って攻撃を仕掛けてきたこいつ…よりは、シンクが悪い。安心しろ、グンジョウ。骨は折れても、治してやる」

 

そう言い、母様は僕の利き腕である左腕を持ち上げ、腕の根元に足をかけそのまま折った。

 

「ーーーっ!!!」

 

悲鳴にならない悲鳴が僕の口から出る。

激痛がその場所から全身に広がるようで、気持ち悪くなり僕は吐いた。

 

母様は、僕に興味がなくなったように手を離す。

 

「さて、少し本気で遊んでやろう。死にたい者からかかってくるがいい」

 

その後は阿鼻叫喚とでもいうのだろうか。

母様の魔法に加えて、母様自身も前線に参加したのだから。

倒れる前、シャナがポツリと

 

「バーサーカーじゃん…母様…」

 

と言っていた。

それは僕も思う。

死屍累々とでも表現するべき状態の僕らを見て、カヅキおばさんは母様の頭を殴った。

 

「やりすぎだこのクソ馬鹿!! ショック死したらどうする!!」

「すぐに蘇生するわよ。そんなに目くじら立てないでちょうだい、カヅキ。だけど、ちょっと焦ったわ。軍師の才能あるんじゃない? シンク」

 

そう言いながら、母様は僕の治療を始めた。

痛みが引いていくが、動けそうもない。

 

「悪い、グンジョウ…」

 

僕の近くに転がされたシンクが僕に謝ってくる。

少し腕を動かして、僕は彼の手に自分の手をくっつけた。

 

「いや…的確な指示だった。流石僕だ、頼りになるよ…」

「そりゃ…お褒め頂いて…光栄だな…」

 

この状態で、朝から授業を受けなければならないのか、と若干うんざりした。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。