「信用はする。君は僕だ。確かに戦闘において、僕が後方に下がる事は出来ない。ツルギやユタカに任せっぱなしだと、そこを崩された時次に危険なのはユエ、そしてシャナだ。僕がユエと同じ位置に居られればいいんだけど…」
僕はそこで区切り、シンクを見る。
「だから、後方で指示を出してくれるのは正直助かる。シャナには人を指示して動かす程の才能はない。まぁ、なんで君の髪色がそんなになってるかは知らないけど…僕のはずなのにな…」
最後の疑問に、シンクはニヤリと笑って僕の耳元に口を近づけ、囁くように言った。
「失恋したユタカが、お前を思い出さないようにするためだよ。顔は一緒だが、髪色が違えば別人だと思うだろ? 俺はユタカが大事だ。お前がユエを大事に思うようにな。まぁ、そういうこった」
パンパン、と僕の肩を叩き、シンクは離れるとニッと笑った。
「てわけで、よろしくなおにーさま」
「それやめろよ、シンク。むしろ君の方が兄のようだけど」
やめてくれ、とシンクは笑う。
自分は王になるつもりはない、と続けて彼は言った。
「雑談はもう終わったかしら? はいはい、みんな起きてね。授業が始まるまであと2時間きってるわよー」
倒れてたユタカや、ツルギ、シャナが起き上がる。
若干嫌そうだ。
それはそうだろう。
母様の攻撃から逃れられた事はないし、母様に一撃入れられた事もない。
「よーし、今日の目標は母様かカヅキおばさんに一撃入れられるようにする、だ! 良いか、お前ら。俺の指示に従え! そうすりゃ、勝利とまではいかないが、良いとこまでは行かせてやる!」
「はっ! 言うじゃないか。やってみろ、シンク」
母様とカヅキおばさんに、杖を向けてシンクは宣言した。
それに対して、おばさんは本当に面白そうにニヤニヤ笑っている。
「はい開始」
母様がぽん、と自分の手を叩く。
母様の周りに、四方八方色んな色の球が浮いた。
「今日は、敵が全属性の魔法が使えるという想定でやってもらいます。さて、あなた達はどれくらいまで保つのかしらね?」
そう言った瞬間、球が僕らに襲いかかってくる。
「
シンクが魔法を唱え、僕らの周りにシールドが張られた。
球はそれに弾かれて霧散する。
「ユタカ、ツルギ! お前らはおばさんの方の注意を逸らせ! グンジョウ、お前は母様! ユエ、弾幕張れ! シャナ、前衛に
シンクの指示通り、僕らは動く。
脚力強化で母様に接近する。
僕の攻撃を阻もうとカヅキおばさんが動くが、そこをツルギとユタカが強襲した。
「くっ…!」
カヅキおばさんの注意が僕から逸れる。
その隙を縫って、母様に剣を叩き込む、が。
「グンジョウ、私が誰の専属護衛をやっていたか、覚えているな?」
母様は指先一つで、僕の剣を止めていた。
顔は笑っているが、目が笑っていない。
マズいと思った時には遅かった。
僕の腹部に、母様の魔力を乗せた重い蹴りが突き刺さる。
そのまま吹っ飛ばされるかと思いきや、母様は僕の腕を握り、地面に叩きつけた。
「アオっ!!」
「ユエ、弾幕切らすな!! シャナ、グンジョウに
ユエの悲鳴が聞こえる。
その直後、シンクはユエへの叱責と、シャナへ指示を出す。
地面に叩きつけられた衝撃で眼鏡は吹っ飛び、全身に痛みが走った。
「ぐっ…う…っ」
「やりすぎだ馬鹿」
ぼんやりした視界で、ユタカとツルギの攻撃をいなしていたおばさんが、母様に注意する。
だが、母様はそれを鼻で笑った。
「私が魔法だけだと思って攻撃を仕掛けてきたこいつ…よりは、シンクが悪い。安心しろ、グンジョウ。骨は折れても、治してやる」
そう言い、母様は僕の利き腕である左腕を持ち上げ、腕の根元に足をかけそのまま折った。
「ーーーっ!!!」
悲鳴にならない悲鳴が僕の口から出る。
激痛がその場所から全身に広がるようで、気持ち悪くなり僕は吐いた。
母様は、僕に興味がなくなったように手を離す。
「さて、少し本気で遊んでやろう。死にたい者からかかってくるがいい」
その後は阿鼻叫喚とでもいうのだろうか。
母様の魔法に加えて、母様自身も前線に参加したのだから。
倒れる前、シャナがポツリと
「バーサーカーじゃん…母様…」
と言っていた。
それは僕も思う。
死屍累々とでも表現するべき状態の僕らを見て、カヅキおばさんは母様の頭を殴った。
「やりすぎだこのクソ馬鹿!! ショック死したらどうする!!」
「すぐに蘇生するわよ。そんなに目くじら立てないでちょうだい、カヅキ。だけど、ちょっと焦ったわ。軍師の才能あるんじゃない? シンク」
そう言いながら、母様は僕の治療を始めた。
痛みが引いていくが、動けそうもない。
「悪い、グンジョウ…」
僕の近くに転がされたシンクが僕に謝ってくる。
少し腕を動かして、僕は彼の手に自分の手をくっつけた。
「いや…的確な指示だった。流石僕だ、頼りになるよ…」
「そりゃ…お褒め頂いて…光栄だな…」
この状態で、朝から授業を受けなければならないのか、と若干うんざりした。