my way of life   作:桜舞

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60話『いや、本当に引率するじゃん…』

おばさんは胸ポケットからエリクシールが入った缶を出し、一本出した後火を付けて吸い始める。

母様は煙草もそうだが、煙が出るこういう系は嫌いらしい。

何でも、嫌な記憶が蘇るから、とか何とか。

だから父様は絶対こういう系は吸わない。

匂いだけで母様にバレて、一時期夜の営みどころか公務の同行も拒否られたとか。

 

『ちょっと興味本位で、一本だけ吸っただけなのに…シャルから、臭いが完全に消えるまであたしに近寄らないでっ!! って強く言われてなぁ…』

 

と、肩を落としながら言っていた。

両親のそんな事情、知りたくはなかったが、母様の嫌いなものが知れて良かったとは思う。

 

絶対に僕も吸わないでおこう、と心に決めていた。

 

おばさんのエリクシールも煙は出るが臭いはつかないタイプのようで、ちゃんと窓も開けて換気をしている。

母様が嫌がる事は極力しない信条のようだ。

 

「ふーん? なら、旅行に行く準備してから行くか」

「旅行ではないけど、何泊するかわからないから…まぁ、荷物まとめるのはそうだよなぁ…」

 

服と下着と替えの服以外、僕は別にいらないとは思うのだけど、シャナの準備に時間がかかるだろうなぁ…。

 

「お前ら、遊びじゃないんだが…」

「わかってますって、おばさん。俺が引率するんで心配いらないっすよ」

 

その言葉に、僕とシャナはえっという顔をした。

 

同い年の君が引率?

むしろ出来るの?

ユタカの事しか頭にないのに?

 

◆◆◆

 

ユエとユタカ、ツルギにもユーラ王国に行く事を伝えた次の日、空港に僕達は集まった。

 

「はーい、御一行様こちらですよー」

「いや、本当に引率するじゃん…」

 

ガイドの旗を持ち、シンクがニヤッと笑いながら手を振っている。

その様子に、僕とシャナは少し引いた。

 

「引くなし。ガイドの服着てねーだろうがよ」

「それは無理でしょ。何そのテンション」

 

ユエが、ユタカの手を引いて現れる。

ユタカはロングスカート、ユエはパンツスタイルで、二人ともダッフルコートを着ていた。

 

「ユタカ、いつ見ても可愛いなお前は」

「シ、シンク…あの、褒めすぎじゃ…」

 

シンクが旗を僕に渡し、ユタカを抱きしめる。

編み込みされ、ウェーブがかけられている髪は崩さず、彼女の頬に自分の頬をくっつけて楽しそうだ。

 

「……これは、何というか…」

「バカップルってやつでしょ。アオ、ごめんね。ユタカが服決まらないって煩かったから、コーデ決めてやってたら遅くなっちゃって」

 

ユエの方はポニーテールにしているようで、ユタカの服がゆるふわ系なら、ユエはスタイリッシュ系だろうか。

 

「いや、搭乗時間に遅れてなかったら別にいいんだけど。ユエ、その服似合ってるよ。いや、君は何着ても似合うんだけど」

 

ユタカみたいな服を着ても似合うし、この姿も似合っている。

…結婚したら、色んな服着てもらおうかな…。

 

「はい馬鹿弟共ー。もうそろそろ搭乗口開くから準備してー」

 

僕らの様子に呆れたのか、シャナが声をかけてくる。

多分、僕の考えにも思い至っているようで、殊更僕の方を呆れた目で見ていた。

それに、僕とシンクは反論する。

 

「何が馬鹿弟だよ、馬鹿姉」

「お前より、こっちはいい成績しかとったことねーよ」

 

何ですって、と怒るシャナの肩をツルギが掴んだ。

それによって、姉が大人しくなる。

 

「姫、行こう」

「う、うん…」

 

シャナの手を取り、彼は搭乗口に向かう。

その様子に、シンクが二人を指差した。

 

「あれ、付き合ってないの?」

「付き合ってないんだって。むしろ、シャナの片想いだってさ。一回ツルギに振られてるし、シャナ」

 

嘘だろ、とシンクが呟く。

まぁ、僕もシンク同様の感想ではある。

シャナを振っているはずのツルギだが、うちの姉の事を結構大事に扱ってくれていた。

護衛だから、と言われればその通りなのだが、動作がそれ以上なような気がしてならない。

 

「んー…無自覚?」

「自覚があったら、アオみたいに慌てふためいてるだろうし」

 

ユタカは少し首を傾げ、ユエは腕を組みそんな事を言う。

 

それはどういう意味だろうか、ユエ。

前世の記憶と合わせて喋ってないかい、君?

 

「俺らも遅れる前に行こうぜ」

 

ユタカの肩に手を回し、シンクは彼女を連れて行く。

その場には僕とユエが取り残され、僕はため息をついた。

 

「今から魔王の遺物回収に行くっていうのに…なんか本当に旅行みたい…」

「まぁ、ずっと緊張してても仕方ないよ。気を引き締める所は引き締めて、緩めるとこは緩めようって意図じゃない? アレの考えが解るって、本当に嫌なんだけど。同じ解るんだったら、アオの考えてる事が解りたい」

 

ジト目で、ユエはシンクを見る。

そしてそんな事を言う彼女を愛しく思った。

僕はユエの手を取り、耳元で囁く。

 

「僕の考えてる事が解ったら、君は卒倒するかもね。君を愛しく想う反面、君を暴いて滅茶苦茶にしてやりたいって思ってるんだから」

「ーーっ?!」

 

耳を押さえ目を見開き、顔を真っ赤にさせるユエを見て苦笑する。

おばさん達には内緒だよ、と彼女の手を引きながら自分の口元に手を当てた。

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