my way of life   作:桜舞

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62話『ツルギは見るなよ』

彼も小声で返し、僕がいた席に座る。

そして僕は、ツルギが座ってた席に座った。

 

「ちょっと、グンジョウ…!」

「はいはい、文句は起きてから聞くから今は寝なよ。そんな寝不足で観光出来るわけ無くない?」

 

シャナの頭を抱き寄せ、僕の肩に乗せる。

姉はまだブツクサ文句を言っていたが、そのうち寝息が聞こえてきた。

僕の服を掴み、幸せそうな寝顔をしている。

たまに笑ったりしているので、良い夢でも見ているのだろう。

 

「おーおー、間抜け面で寝てら」

「あまり言ってやるなよ。シャナの未来の夫は、この顔を見て可愛いと思うかもしれないだろ」

 

シンクが席を立ち、僕とシャナを眺めに来てそう言った。

そしてツルギが席を立つ気配がして、僕は彼の方を振り返る。

 

「ツルギは見るなよ。何のために席交換したと思ってるんだ」

「…御意」

 

彼はそのまま、後ろの方に歩いて行った。

どうやらお手洗いに行こうとしていたらしい。

僕の早とちりだったか、と思ったが、シンクがニヤニヤ笑いながらツルギを見ながら言う。

 

「あれ、普通に見ようとしてたな。全く、無自覚って怖いねぇ」

「じゃあ自覚させてやればいいんじゃない? あんたなら出来るでしょ、ツルギの事分かってるんだろうし」

 

ユエが、シンクに突っかかる。

 

一体何が気に食わないのだろうか。

自分の中の夕陽が、崩れてしまうのが嫌なのだろうか。

それとも、ユタカの事だろうか。

 

多分聞いてもはぐらかされてしまうんだろうな、と僕はこっそりため息をつく。

 

「わかるって言ったって、俺の知り合いのツルギじゃねぇし。一番付き合い長かったの、こいつだろ」

「僕は前世の記憶を持ってない。だから、ツルギの事は知らないとしか言えない。思い出せるなら…思い出してみたいかもだけど…」

 

多分、辛い記憶も一緒に思い出す事になるだろうから、あまり乗り気ではない。

母様の前世を見てしまったから、余計に。

 

「思い出させてやろうか?」

「断る」

 

ニヤニヤしながらシンクが言うが、僕は即座に断った。

思い出すなら、絶対国に帰った後にしてもらいたい。

いったい何が起こるかわかったものじゃないから。

せめて、何かあった時に対処出来る人の近くにいた方が、僕としても安心なわけで。

 

そんな時艦内のアナウンスで、もうそろそろユーラ王国に着く事が流れ、ツルギが戻ってきた。

僕はジェスチャーで、そのまま座れと指示を出す。

シンクも元の席に戻って行った。

 

「シャナ、起きて。もうそろそろ着くって」

「んー…ツルギ君…好き…」

 

僕はツルギじゃないんだけど。

幸せそうなとこ悪いが、デコピンして起きてもらう。

 

「いったぁっ!? って…あれ?」

「寝ぼけてないでシートベルトして。着陸するから」

 

僕の言葉に、シャナは素直に自分の席のシートベルトを締めた。

さっきの言葉はツルギにも届いていただろうが、後でユエにどんな反応だったか聞かなくては。

 

そんなこんなで、僕らはユーラ王国に足を踏み入れたのだった。

 

◆◆◆

 

航空艦から降りて搭乗口を潜り抜けると、車とかは走っているものの、辺り一面雪景色で僕は驚く。

 

「真っ白だねぇ…」

「リューネより降るんだね、こっち」

 

事前に情報を手に入れてて良かった。

今年のユーラ王国は寒波に見舞われていて、結構雪が降っているって現地情報の天気予報が言っていたから。

うちの方は南方に位置しているから、雪が降っても積もる事はない。

防寒具持ってきておいて正解だった。

 

「……ちっ」

 

この景色を見て、シンクが舌打ちする。

嫌な記憶でも思い出したのだろうか。

とりあえず僕らは、拾ったタクシーでホテルへ向かう事にした。

 

「さむーっ!!」

「寒いね…」

「いや、舐めてた。寒冷地の寒さ、舐めてた…」

 

女性陣がホテルに備え付けの暖房器具の前で暖を取っている。

入った途端これだ。

その傍でツルギが、心配そうにシャナを見ていた。

三人にはちゃんと防寒着の準備しておいてね、って伝えていたはずなんだけど。

多分僕が心配して、大袈裟に言っていると思っていた節さえある。

 

僕とシンクはと言えば、ホテルへのチェックインの手続きをしていた。

おばさんはどうやら、僕の名前で手続きをしていたらしい。

三人部屋を二つ、期間は無制限ときたものだ。

 

「無制限って…一応学校あるんだけど…。いつまで居させるつもりなのさ、おばさんは…」

「部屋の期限を気にすんなって事だろ。一週間って期限付きだと、お前焦んじゃん? おばさんの優しさだと思えよ」

 

確かにその通りだし、期限が一週間とかだと下手したら強行軍をしかねない。

最悪の場合、僕一人で行くと僕の思考なら言い出しかねない。

流石おばさん、僕の事をよく理解しておられる。

 

女性陣に声をかけ、与えられた部屋へ向かう。

結構最上階の方で、部屋は隣同士みたいだ。

女性と男性で別れ、それぞれの部屋に入る。

中に入ってみると結構広めの部屋で、ダイニングテーブルみたいな物も置いてあった。

 

「キッチン付きなのか…」

「こん中に料理出来る奴いる?」

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