はい、とツルギが手を挙げて僕とシンクは彼を見る。
なんなら僕は、女性陣にご飯作ってもらって、彼女らと一緒に食べるつもりだったのだけど。
「お前、料理出来たっけ?」
「一応、
誰それ。
僕とシンクが首を傾げると、ツルギは少し申し訳なさそうな顔をする。
「立花先生のお兄さん方です。篠原の侍従たるもの、料理も出来て当然という感じで…別に俺、篠原の侍従になったつもり、無いんですけど…体術と料理は仕込まれました」
「…ツルギってさ、もしかして生前のお祖母様に会った事ある? ハセガワイクミって名前だったって、聞いた事あるんだけど」
その名前に彼は首を傾げ、腕を組んで少し考えているようだった。
多分思い出しているんだろうけど。
「長谷川……あぁ、姿は何回かお見かけしましたよ。次期総帥の女性に、厳しく何かを教えているようでした。何の言語で話していたかは、分かりませんでしたが。ある時なんて、部屋の扉が少し開いていて、声が聞こえてきましたが…次期総帥の女性がキレてましたね…。私とお姉様を比べるんじゃない、お姉様が異常なだけで私は一般人だ、とか何とか…すごい剣幕で、そこは覚えてます」
「うわ…それはすごいね…」
お祖母様のレッスンは厳しいものがあったが、それだけではないのに。
ちゃんと愛情を持って教えてくれていたからこそ、僕もシャナも今ちゃんとマナーとかを扱えているのだから。
それを突っぱねるとか…。
「話聞いててもよく分かんねぇんだけど。一体何の話してんだ?」
シンクがベッドに座り、僕を見ながら尋ねてくる。
その様子に、僕は首を傾げた。
「え? 母様の話聞いた事ない? 少し大きくなってから、僕とシャナは母様の生前の話とか聞かされたんだけど」
「一切聞いた事ないし、うちのとこは性別も逆転してたから。ここ男が後継ぐんだろ? うち女だったの。母様は父様だったし、父様は母様だった。それに、ここにはもう一人上の姉がいないし、双子も不吉の象徴じゃなさそうだし。あーあ、俺も生まれんならこっちの方が良かったなー」
ボスン、とシンクはベッドに大の字になって寝転がる。
え、今重い情報ぶっ込んで来なかったか、こいつ。
「あのさ、シンク…」
「身の上話聞きたいなら聞かせてやるけど。飯食い終わってからにしねぇ? 俺腹減った」
時刻を見ると、確かにもうそろそろ夕飯の時間である。
国を出てから、9時間程経っていた。
「どうする? 一応ラウンジも開いてるっぽいけど」
「食堂でビュッフェ食おうぜ。んで、今後どう動くか話そ。あー、腹減ったー」
シンクはベッドから起き上がり、そのまま立ち上がって部屋の玄関まで向かう。
僕とツルギは顔を見合わせた後、シンクの後を追った。
◆◆◆
「んー! これ美味しい!」
ビュッフェ会場で、自分が持ってきた料理にシャナは舌鼓を打っている。
各々性格が出てるような盛り方をしてきていたが、ユエが僕の皿を見て怪訝そうな顔をしていた。
「どうかした?」
「いや…アオ、お肉は?」
何か変だろうか、と自分の皿を見る。
サラダに、エビとアスパラのパスタ、吾妻の国に伝わっていたという肉じゃがと里芋の煮っ転がし、大根の煮物、ポテトサラダ、ラタトゥイユ、そして口の中をサッパリさせたくて、ピクルスときゅうりの浅漬けを持ってきていた。
肉じゃがは、ジャガイモだけ持ってきている。
「…? 何かおかしいかな?」
「いや、育ち盛りなのに野菜中心って…シンク見なよ、肉ばっか」
シンクの皿を見ると、確かに肉料理ばかりだ。
ここでも対比が出るのか、面白い。
「あとでちゃんと肉も持ってくるよ」
「えぇ…?」
ユエはシャナを見るが、見られている事に姉は気付いていないようだった。
それに対して、シンクは少し呆れた目でユエを見ている。
「お前、グンジョウの母親かよ。好き嫌いしないで何でも食べましょう、ってか?」
「そんな事言ってないじゃない。あんまり卑屈的に受け取らないでくれない?」
なんで喧嘩に発展するのかなぁ…。
「まあまあ、人の好き嫌いとかその人の勝手じゃない? ユエも、シンクにあまり突っかからないでよ。グンちゃんも少し困ってるよ」
そう言われ、ユエは僕の方を見る。
少しバツが悪そうだ。
「グンジョウがあんまり食べないの昔からだよ。多分保有魔力量が少ないのが原因じゃない? あたしとか結構食べるけど、太った事ないし。ね?」
「そうだね。スタイルはいい方だよね、シャナは。あとちゃんと食べてるだろ。少食みたいに言うのやめて?」
ごめん、とシャナはニコリと笑いながら謝ってくる。
やっとこっちの話に耳を傾けられるくらい、お腹が膨れたらしい。
「んで、今後どうするよ?」
食事が終わり、僕らは各自飲み物を取ってきて席に着く。
口火を切ったのはシンクだった。
「反応があったのは、ユーラ王国のガーナ山という所らしい。山の中腹辺りに遺跡があって、そこは観光地化している、っておばさんが渡してきた資料には書いてあったけど」