my way of life   作:桜舞

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64話『大変ですね、殿下…』

「でも明日の天気予報、吹雪だって出てるけど行けると思う?」

 

シャナが携帯を弄りながら、僕に聞いてくる。

調べてあるんなら、分かり切った事を聞かないでもらいたいんだけど。

 

「行けないでしょ、それ」

「だよね。うーん…ホテルの中に缶詰とか…なんか遊ぶ場所あったっけ?」

「館内案内見れば? シャナちゃん」

 

オレンジジュースを片手にぼやくシャナに、ユエが苦笑する。

二人の様子を見てたら、どっちが年上だかわからない。

同い年のはずなんだけど。

 

「山の天気だから、もしかしたら晴れる可能性もあるかもしれないよね? 晴れたら行ってみようよ」

 

ニコニコと僕に笑いかけながら言ってくるユタカへ、ユエは瞬時に面白くなさそうな表情をした。

シンクの方をチラッと見れば、彼は素知らぬ顔でコーヒーを飲んでいる。

 

あれ?

おかしいな…。

ユタカはシンクの彼女になったんじゃないの?

 

「そうだね…晴れたら様子でも見に行こうか…」

 

ユタカから目を逸らして、彼女の言葉に僕は肯定の意を示した。

 

◆◆◆

 

「シンク、ちょっと良い?」

 

アオ達と一緒に部屋に戻ろうとしていたシンクを呼び止める。

 

各自解散となって、ユタカはシャナちゃんと一緒に大浴場の方へ向かった。

私も誘われたけど、後から行くとだけ伝えてある。

今はそれよりもこいつだ。

 

アオがどうしたのだろうという顔で見てきたので、大丈夫という風に笑顔を見せ、手を振る。

 

「何? グンジョウがいるのに浮気か? ユエ」

「そんな戯言で私が揺らぐとでも? それに私はアオ一筋なの。他の男に懸想するなんて有り得ない」

 

私はシンクを睨むが、こいつは飄々とした態度を崩そうとしない。

アオはツルギと一緒に立ち止まって、こちらを心配そうに見ている。

シンクは、私がアオがいる前で出来る話をして来ないだろうと高を括っているのだろうけど、お生憎様。

いくら姉妹でも、やって良い事と悪い事の区別くらいつけて欲しいから。

それを許しているこいつを、私は許せない。

 

「ユタカのあの行動。あの子、まだアオの事好きなんでしょ? 何の為に、アオの身代わりとしての貴方を呼んだのよ。なんで、あの子の行動を許してるの? ユタカに執着心とかないわけ?」

「ピーピーピーピー、ガキみたいに喚くなよ雪那。身代わりなのは俺自身も納得の上だ。それに、お前っていう女がいるのに、グンジョウが揺らぐわけないだろ? それもユタカは承知の上でやってんだよ。少しはユタカの気持ちにもなってやれ。十年の片思いなんて、そうそう気持ちが切り替えられるとでも思っているのか?」

 

鬱陶しそうに、シンクは私を見る。

そしてその言葉は、私に刺さった。

私は自分の服の裾を掴み、俯いてしまう。

 

「そんなの……仕方ないじゃない。私だって、アオの事が好きなんだもの!」

「ごめん、話に割って入る形になるけど。君はそれで良いの? ユタカが僕を今でも好きなのは、仕方のない事だと、君は本当に思っているの?」

 

アオが私の隣に来て、抱きしめてくれた。

見上げると、真剣な顔をしてシンクを見つめている。

シンクは肩を竦めた後、アオと同じ真剣な顔になった。

 

「俺は、ユタカの為だけに生きると決めた。こっちに呼ばれた時から、俺はユタカの物だ。ユタカがしたいようにすれば良いと、本気で思っている。お前らがどう思おうが、俺はこういう生き物だ。ユタカがお前の身代わりとして、俺からの愛が欲しいというのなら、俺は彼女に愛を捧げるだけだ」

「…それ、虚しいだけじゃない」

 

思わず涙が溢れる。

どうして私の姉は、誰かを犠牲にしてまでそんな事をするのだろうと。

本当に、わからなかった。

 

シンクは私の顔を見て少し驚き、苦笑する。

 

「ユエ、お前優しい奴だな。こんな奴放って置けば良いのに。グンジョウ。そんなに睨むなよ、悪かったよお前の彼女泣かせて。まぁ、俺は生き方を変えるつもりはねぇし、彼女が前を向けるまで道化を演じるだけさ」

 

そう言って、シンクは私達の横を通り過ぎ様、私の頭を優しく撫でてから歩いて行った。

私の気のせいかもしれないけど、彼はその時少し傷付いたような表情をしていた気がする。

 

ユタカ、あんた…優しい人を傷つけてまで、アオの事諦められないの?

シンクだって、アオなんだよ?

人なんだよ?

心が傷付いたりするのに、どうしてそれがわからないの?

 

「ユエ…」

 

アオが心配そうに、私を見つめる。

私は彼の服を掴み、思い切り泣いた。

 

◆◆◆

 

泣き止んだユエを、部屋まで送り届ける。

自分達の部屋に戻ると、シンクはまだ戻ってきていないようで、僕とツルギの二人だけが部屋にいる状態だ。

 

「…あの、なんて言ったらいいか、分からないんですが…大変ですね、殿下…」

「慰めてくれてありがとう、ツルギ…」

 

僕はベッドにダイブすると、盛大にため息をつく。

そしておもむろに頭を少し掻きむしった。

 

「あぁ、もう!! 魔王の遺物だけでも厄介だっていうのに!! ユタカのあの行動なんなのさ?! 絶対カヅキおばさんの教育のせいだと思うんだけど?! そのせいでユエも不安がるし!! 絶対不和の原因じゃんこれ?! パーティって連携大事なのに!! それを僕に何とかしろって…無理だろ、これぇ…」

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