ユエは僕の手に自分の手を添え、微笑んだ。
「だからね、アオ。もしもの時は、私達を切り捨てて良いからね。誰も貴方を責める事はない。それが王太子としての貴方の判断なら」
「そんな事…っ!!」
出来るわけがない、そう言おうとするが、ユエは首を横に振る。
真剣な目になった彼女を見て、僕は口を噤んだ。
「アオ。貴方の心に私がいるのは嬉しいよ。でも、私の代わりなんていくらでもいるの。それこそ、ツェリちゃんとかね。アオ、もうそろそろ甘さは捨てよう? 酷い言い方かもしれないけど、そうでなければ、私もユタカも、貴方の為に命を散らす事になるかもしれない。私達はそれでも良いけれど、貴方は嫌でしょう? 今日は良くても明日、明後日と最悪な事が起こるかもしれない。それは、アオが望まない事でしょ?」
彼女の言葉に、僕は頷く。
その最悪を避ける為に、訓練し続けているというのにだ。
それでも足りないと、彼女は言う。
「貴方の判断に、私達は従う。だから、貴方は気にせず私達を使って欲しい。戦いの間だけは、私達を人と思わないで欲しい。ユタカも多分、そう思っているはずだから」
「でも、僕が指示を出すわけじゃない。それはシンクに任せて…」
「シンクに任せると決めたのは、アオでしょう? アオの判断に、シンクだって従うはずだもの。大丈夫なんて、安易な言葉で励ませはしないけれど。貴方一人の責任ではない、とだけは言っておくね。その指示が嫌だったら、ちゃんと言っているもの」
ニコ、と微笑む彼女の手を握る。
なら、嫌だと言えばいい。
自分と一緒に、安全な所にいて欲しいと、そう言って欲しかった。
でも、ユエは絶対そう言わない。
僕と一緒に歩むと、言ってくれた彼女は。
「…君を守りたいのに、守られるなんて不甲斐ないな」
俯く僕に、ユエは明るい声で言った。
「婚約者だけど、私は立花の娘だよ? それに、多分組み手したらアオより強い自信あるよ、私」
え、いやそれは嘘でしょ。
顔を上げ、疑いの眼差しを向けてみるが、ユエはニコニコ笑うだけだった。
「帰ったら証明してみせようか?」
「そうだね。なら、賭けをしようじゃないかユエ」
賭け?
と首を傾げる彼女に、僕は微笑む。
僕は彼女から手を離し、頬杖をつきながら足を組んだ。
「僕が勝ったら、休み時間の度に僕の教室に来て、僕の膝に乗る事。シンクがユタカにやってるやつだね」
「じゃあ私が勝ったら…お休みの度に、デートで荷物持ちしてもらうから。ふふふ、覚悟してね、アオ」
それはこっちのセリフだよ、と返して、朝食を食べ終えた。
◆◆◆
ガーナ山中腹までは登山道を行くみたいで、僕らは黙々と山道を登る。
「ちょ…待って…早い…っ!」
「…………っ」
シャナとシンクが最後尾で、二人は少し息が上がっていた。
シャナはわかるけど、シンクまで?
と僕は少し驚いた。
「…お前の…思考…分かるけど…お前みたいな…体育会系じゃ…ねぇんだよ…」
「そんなにきついなら喋らない方がいいんじゃないの?」
ユタカが慌ててシンクの方へ行き、水などを飲ませている。
昨日の話からいって、シンクは運動も特にしていなかったようではあった。
「シャナとの魔力量ってどうだったのさ」
「…おま…喋んなって…言ったくせに………はー…ありがとな、ユタカ。んで、シャナとの魔力量? 俺の方が多かったけど? あいつ、小手先の魔法でしか俺の事いじめてこなかったし」
シャナの方にもツルギが行き、水を飲ませているようだった。
シンクの話を聞いていた姉は、少し眉を寄せているようで話に割って入ってくる。
「なんでそっちのあたし、シンクいじめるような真似してたのよ。自分の半身じゃん。大切に想うのが当たり前じゃないの?」
「そう思わなかったのが、あっちのシャナなの。次期女王になるわけでもなし、魔力量だってそこそこ、頭の方は良けれどもそれだけ。自分が美人だからと、周りからチヤホヤされて付け上がったクズ。だからこそ、幽閉されてた俺を見下していじめてたんだろうさ。憂さ晴らしってやつ? 知らねぇけど」
肩を竦めそう言うシンクに、シャナの眉が更に寄る。
シャナからしたら、僕をいじめているのと同義なわけで、やはり理解が出来ないようだった。
「あっちに行けたら、あたしがぶっ飛ばしてやるのに…」
「その心意気だけ受け取っとくよ」
シンクが苦笑する。
自分の事で憤慨している姉を見て、嬉しいようだ。
「そんなにきついなら、休憩する? 別に急ぐわけでもないだろうし」
「いや、足引っ張って悪いが、急いだ方がいい。母様ほどじゃねぇが、俺も少し星読みの力がある。嫌な予感がするんだ。グンジョウ、シャナ抱えて先に行け。ユエもだ」
シンクの真剣な目に、僕は頷く。
シャナを抱き抱えて脚力強化をし、山道を一気に駆け抜ける。
僕の足音の他にもう一つあったから、ユエが付いてきてるのだろう。
中腹辺りに来たが、洞窟っぽい穴が一つ開いているのが見えた。
「ここかな?」
「多分。でも、雪も降ってないのに他に人いないね…」
うちの子達勝手に喋るから
後付け設定とか色々大変なんですけど…
相方の方ちゃんと書けてて羨ましい…
めっちゃとっ散らかってるのは
わかってるんですけど
行き当たりばったりで書いてるから
どうしようも出来ないのです…