my way of life   作:桜舞

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70話『アタシが魔王の手先だからだよ』

その横で、トーカが足を組んでこちらをニヤニヤ笑って見ていた。

 

「おっそーい。待ちくたびれちゃったよ。退屈すぎて死ぬかと思ったじゃーん?」

「そのまま死ねば良かったのに」

 

ユエがぼそっと、トーカに暴言を吐く。

それも聞こえていたようで、トーカはニヤニヤとユエを見た。

 

「わー、お兄ちゃんがいる前でそんな事言うなんて、幻滅されても知らないよー? あはっ! お兄ちゃんが何も言わないの、そういう事なんじゃないの? 可哀想ー!」

「こんっの…っ!!」

 

ユエが魔武器を取り出し、トーカに向ける。

瞬時にシンクが固定魔法を半径2キロに張ったようで、空気が淀むような感覚を覚えた。

 

「桃華、お前暴言ヤバくね? てかそもそも、グンジョウの報告書読んだ限りじゃ、お前死んでんだけど。なんで生きてるわけ?」

 

ユエがトーカに向かって銃を撃ちまくり、左右からユタカとツルギが攻撃を仕掛ける。

銃弾をどうやってか避けたトーカは、ユタカの剣に自分の剣を当て、ツルギの拳には足を上げて対抗し、二人を弾き飛ばす。

 

「お兄ちゃんモドキもいるんだー。アタシが生きてる理由? そんなの決まってんじゃん。アタシが魔王の手先だからだよ。アタシの命は、魔王が握ってんの。だからアタシを生かすも殺すも、魔王次第ってわけ。アタシの血飛沫を浴びたお兄ちゃん、格好良かったなぁ…」

 

恍惚とした表情をするトーカを、僕は素直に気持ち悪いと感じた。

シャナが魔法を唱える瞬間、僕は駆け出す。

 

「シャナ!」

「わかってる!」

 

ブランシュとノワールに、シャナが魔法付与をしてくれた。

光と闇を付与された2対の剣をトーカに叩き込む。

 

「あぁ、お兄ちゃん。やっとアタシのとこに来てくれたのね。周りが鬱陶しいし、お兄ちゃんとお話ししたい事いっぱいあったの。てーことで、アンタら足止めよろ」

 

二本の剣の攻撃を、トーカは片手剣一つで受け止めている。

彼女が空いた片方の手で指を鳴らすと、異形の人型が影から現れた。

 

「精々耐えて見せなよ。お兄ちゃんとアタシの邪魔はするんじゃねぇぞ」

「この馬鹿女!! アオに何かしたら、魂までぶっ殺してやるんだから!!」

 

ユエさん、暴言凄い。

これ、カヅキおばさんの影響かなぁ…。

 

なんて頭の片隅で考えながら、トーカと拮抗状態に陥る。

ニヤニヤ笑う彼女が気持ち悪すぎて、思わず足が出た。

トーカの顔側面に、蹴りを叩き込んでしまう。

彼女はそのまま吹っ飛んで、遺跡にぶつかった。

 

「いったーい! お兄ちゃん、妹の顔に足を上げたわね! お父さんにもやられた事ないのに!」

「そんな事を日常的にやる父親は、虐待で訴えられても仕方ないとは思うけどね」

 

岩でも蹴ったかのような感触に、僕は眉を寄せる。

骨は折れてはいないが、痛いものは痛い。

 

シャナ達の方を見ると、ツルギやユタカが二人を守るように戦っている。

ユエもこちらに来ようとはしているようだが、異形の人型に阻まれて来られないみたいだ。

 

「トーカ、お前は何がしたいんだ」

「アタシ? アタシがしたい事かぁ…」

 

立ち上がったトーカは、口元に手を当て首を傾げた後、ニヤリと笑う。

 

「お兄ちゃんが絶望してくれたら、アタシは嬉しい。アタシが味わった絶望の一欠片くらい、お兄ちゃんも味わったって良いでしょ? それが、アタシのしたい事」

「…悪趣味過ぎる。僕が絶望? させられるものなら、させてみろ」

 

トーカに剣を向ける。

ケラケラ笑うトーカだったが、一瞬で顔が真顔になった。

目に光も灯っていない。

深淵を覗いているかのような不気味さを感じる。

 

「なんでアタシがここまで来たか、考えてみなよ。いや、思い出してみろよ。なぁ、グンジョウ。アタシを殺した感覚、思い出せないの?」

「何を言って…」

 

トーカの言葉に、僕の視界がグラつく。

シンクが何か叫んだが、聞こえない。

倒れるわけにはいかず、僕は唇を噛みちぎった。

痛みで視界はマトモになったが、トーカの声以外聞こえてこない。

 

「アタシのお腹に包丁を突き立てたよね? その感触はどうだった? お肉を切るようだった? 硬かった? それとも…楽しかった?」

「何を…馬鹿な…」

 

頭がぐらついて、思わずブランシュを地面に突き立て、手をついた。

その時だった。

バリンという音がして、トーカ以外の声が僕の耳に入ってくる。

 

「あぁぁぁあっ?! それ持って帰れって言われてたのに、何壊してんの?! 魔王に怒られんじゃん!!」

「グンジョウに気を取られてた、お前が悪くねぇ? グンジョウ、無事か?!」

 

シンクの声が聞こえたが、僕は動けそうもなかった。

トーカの先程の言葉が、僕の頭の中をぐるぐる回っていたからだ。

グンッ、と腕を引っ張られ、僕の体はトーカから離される。

一体誰がと思ったら、身体強化を使ったユエだった。

 

「アオ、しっかりして! それを考えるのは後!! 今はあいつをどう殺すか考えなきゃ…っ!!」

 

僕を抱き抱えながら、ユエはトーカを睨みつけている。

その表情を見たトーカは肩を竦め、やれやれと首を横に振った。

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