my way of life   作:桜舞

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71話『寝言は寝て言えピンク頭』

「まぁいっか。持って帰れって言われたけど、どうしてもって言われたわけじゃないし。それより、そんな獣じみた顔、よくお兄ちゃんに見せられたものだね雪那。女として見てもらえなくなるんじゃない?」

「喧しい!! この性悪女!!」

 

ユエは魔武器である銃をトーカへ発砲する。

だが、彼女の姿が揺らぎ、弾はあえなく貫通していった。

トーカの笑い声が遺跡に轟きながら、彼女の姿はなくなる。

どうやら撤退したようだ。

 

「ユエ…」

「アオ、無事、だよね?」

 

僕を抱きしめぎこちなく笑うユエは、先程トーカに言われた事を気にしているようだった。

 

憎悪に表情が染まった彼女を見ても、別段僕の気持ちに変わりはない。

ユエが好きだ、という気持ちだけは。

 

ただ、その表情がいつもの可愛らしいものから、美しく凛々しいと思うものに変化していたのには、少しばかり驚いてしまったが。

 

「うん…ごめん、面倒かけた」

「全くだ。何惚けてんだよ、お前は。つーか、これか、嫌な予感ってやつ? 母様みたいに、ちゃんとしたビジョンが見えるわけじゃねぇから、困るんだよなぁ…何が起こるか分かんないってのは…」

 

シンクが嫌味等を言ってくるが、僕は彼を見て苦笑いをする。

さっきから頭痛が酷くて起きているのもやっとなのだ。

だからこそ、もう一人の自分であり弟でもある彼に謝罪する。

 

「シンク、ごめん。先に謝っておく。限界かも。シャナ呼んで…」

 

精神的負荷が先程かかったせいで、僕はそのまま倒れた。

シャナが慌ててこちらに駆け寄ってくる姿を視認した後、僕の意識は暗転する。

意識がなくなる前、ユエが悲痛な声で僕の名前を呼んだのが聞こえた。

 

◆◆◆

 

夢を見ている気がする。

僕の目の前にはトーカがいるが、嫌悪感は無く、むしろ弟妹に抱いているような親しささえ感じられた。

 

「お兄ちゃん、お母さんが早く降りてこいって。朝ご飯出来てるってさ。起きなよー」

「うーん…あともうちょっと…」

 

布団ごとトーカから背を向けると、思い切り揺さぶられてしまう。

この重さは、体ごと乗っているなと感じた。

 

「おーにーいーちゃーんー! おーきーてー!!」

「わかった! わかったから!! 退け桃華!!」

 

僕は起き上がり、髪を掻きむしる。

チラとトーカを見ると、今の姿と遜色ない感じで、夢の中の僕はため息をついた。

 

「お前、その髪校則違反じゃねぇ?」

「地毛で通した!」

 

そんな馬鹿な、と呟く。

夢の中の僕の記憶では、トーカと僕は別の学校に通っているようで、彼女は僕の一個下みたいだ。

こいつの学校どうなってんの、と僕は言う。

 

階下に降りると、黒髪の女の人が朝食を並べている。

多分母親なんだろうが、母様よりは素朴な顔をしていた。

 

いや、母様が美人過ぎるだけか。

僕もだが、うちの一族みんな美形過ぎる気がする。

ナルシストは気取ってないが、よく言われるのでそうなんだろうと思っているだけだが。

 

「はよー、母さん。今日の朝飯何?」

「お弁当詰めた後の残り。あんた、早く支度しちゃいなさいよ。表に雪那ちゃん待ってるのに」

 

それを聞いた僕は、自分の母親にため息をつく。

 

「なんで上がってもらわねぇんだよ」

「あんた、そんなだらしない格好見せたいの? 雪那ちゃんに呆れられるわよ」

「そーそー。振られれば良いんだよ、お兄ちゃんは」

 

トーカが味噌汁を飲みつつ、僕を見る。

その目に何かの感情があったが、僕は見て見ぬ振りをした。

 

「うるせっ。母さんおにぎり作って。もう出るわ俺」

 

僕は踵を返し、自分の部屋に歩いて行く。

部屋に着くなりクローゼットを開け、制服を取り出した。

クローゼットの内側に姿見があり、僕はそれを見ながらネクタイを締める。

黒髪黒目、中肉中背の男の子が映っていた。

これが僕なのだろう。

 

制服を着終え、学生鞄を手に取る。

途端、部屋の扉が開かれた。

 

「お兄ちゃん、あたしも一緒に行く! 待ってて!!」

「待つわけねーだろバーカ。大体お前の学校、俺らとは別方向じゃん。寝言は寝て言えピンク頭」

 

トーカの頭を軽く叩いて、僕は階段を降りていく。

靴を履き、玄関の扉を開けると塀の外側、こちらに背を向けている女の子がいた。

 

「悪い、雪那。待たせた」

「大丈夫だよ、夕陽君。夕陽君がこの時間になるのはいつも通りだもの。待ったとは思ってないよ」

 

声をかけると、女の子は振り返り僕に対して微笑む。

その顔には見覚えがあった。

 

ユエの前世である、セツナだ。

 

ならば今見ているこれは、僕の前世という事なのだろう。

 

「言うじゃん。流石、中学で才女だった人ですねー」

「そんな人を彼女に出来て、喜ぶべきじゃない? 夕陽君は」

 

そう言われた瞬間、僕らは笑い合う。

セツナに手を差し出し、彼女と手を繋いだ。

駅で別れるまで手を繋いで登校するのが、僕らの日課だった。

 

「今日小テストなんだよね。夕陽君の所は、どう?」

「俺? 先生によってあったりなかったりだなー」

 

他愛無い話をしながら、駅まで行く。

帰りもここで落ち合って帰るのだ。

それが、僕は楽しいと思っていた。

 

あの日までは。

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