my way of life   作:桜舞

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72話『言うの遅いよ』

いつも通り、雪那と別れ自分が乗る電車を待っている時だった。

別のホームから悲鳴と騒めきが聞こえ、続いて電車が急ブレーキを踏んだ時の甲高い音が聞こえる。

誰かが電車に飛び込んだ、という話が聞こえてきたが、人身事故かー、大変だなー、電車遅れてかわいそー、なんてぼんやり思っていた。

 

雪那とメッセージのやり取りを学校に着くまでやっていたのだが、その日はこの騒ぎの後メッセージが途絶えて、僕は首を傾げる。

一体どうしたのだろうと思っていると、後ろから声をかけられた。

 

「雪那は死んだよ、お兄ちゃん」

「…は?」

 

振り返ると、フードを目深に被った桃華がいる。

 

こいつ、今日風邪引いたから学校休むとか言ってなかったか?

 

と僕は思った。

 

「桃華?」

 

ニヤニヤ笑う妹に声をかける。

顔を上げた妹は、目が狂気に染まっていた。

 

「これで、やっとお兄ちゃんはあたしを見てくれるね?」

「何を言ってるんだ? お前風邪引いて…いや待て。今なんて言った?」

 

桃華は僕に抱きつき、耳元へ唇を寄せ、囁く。

 

「雪那は死んだよお兄ちゃん、って言ったの」

「っ!!」

 

桃華を突き飛ばし、僕は雪那がいるであろうホームへ向かう。

 

あいつが言った事は全部嘘で、ホームには雪那がいて。

息を切らした自分を見て、驚いた後困ったように笑うのだ。

一体何事なの、夕陽君って。

 

ホームに着くとちょうど警察が到着し、電車に飛び込んだという遺体が運ばれていく所だった。

遺体袋に入れられたそれは中身が見えないようになっていて、それは僕にとってどうでも良かった。

 

雪那はどこだと、人だかりの中から彼女を探す。

しかし彼女が見つからず、焦る中線路が見えた。

 

雪那の持ち物が、線路の中に散らばっていた。

いつも使っていた彼女の鞄。

自分がデートの際に彼女にあげたキーホルダーは特徴的で、小さいクマのぬいぐるみなのに目付きが悪く、夕陽君みたいだね、なんて笑っていた彼女を思い出す。

そのクマに、この間誕生日にあげた指輪が首にはまっていた。

学校にはつけていけないし、でも持ち歩きたいからクマの首輪にしたよ、なんて笑っていたっけ。

 

そんな彼女の持ち物が、全て血に濡れている。

 

「嘘だ…雪那…」

 

僕はその場に崩れ落ち、目を閉じて涙を溢した。

 

◆◆◆

 

次に目を開けると見知らぬ天井で、ここは何処だと首を動かした。

隣のベッドに腰掛けながら、ユエが心配そうにこちらを見ていて、僕は彼女に手を伸ばす。

 

「アオ、気が付いた? 気を失ってたんだよ。私が分かる?」

 

ユエは僕の手を取り、自分の頬に当てた。

僕は、彼女の体温を感じながら言葉を紡ぐ。

 

「雪那…ごめん、守れなくて…」

 

僕がそう言うと、ユエの目が大きく見開かれる。

ユエの姿がはっきり見えるという事は、今僕は眼鏡をかけた状態なのだろう。

彼女はユエだと認識しているのに、僕は雪那への謝罪を口にした。

 

「ごめん。桃華を止められなくて、ごめん。痛かったよな。あのクマのキーホルダーと指輪、付けててくれて、嬉しかった。雪那、プライドが邪魔して言えなかったけど、お前の事本当に好きだったよ。今も、お前を愛してる」

「……っ!! …夕陽君、言うの遅いよぉ…っ」

 

大粒の涙を溢し、ユエは泣き始める。

前世では言えなかった事が言えて、良かった。

僕は少し眉を下げて、彼女に言う。

 

「前世の記憶、少し戻ったよユエ。でも、僕は夕陽ではないけど、それでも良い?」

「…っ、うん…っ…うん…っ! 私は、前の貴方も、今の貴方も…大好きだから…っ!」

 

そう言われ、僕は安堵する。

少し指を動かし、彼女の涙を拭き取った。

号泣している彼女からは、また新たな涙が零れ落ちていったが。

 

「彼女泣かせるなんてサイテー。って、茶化す雰囲気でもねぇな。気が付いたか、グンジョウ。起きれそうか?」

 

扉に寄りかかり、シンクがこちらを見ていた。

僕は彼に謝罪する。

 

「シンク…迷惑かけてごめん」

 

気にすんな、と彼は僕のベッドに座り、床に座り込んで泣いているユエを見た。

その目が少し優しげだったので、やっぱりシンクも夕陽なのだなと思う。

 

「あげないよ、シンク」

「いらねーよ。俺にはユタカがいるからな」

 

僕に対しては、自分だからか若干呆れた目を向けられたけど。

 

起き上がった僕を支えるように、ユエが泣きながら背に手を添えてくれる。

 

「あの後どうなった?」

「取り敢えず、魔王の遺物である剣は粉砕して回収済み。シャナが預かるって言ったけど、少し怖かったんで今は俺が持ってる。お前が眠っている間、ユエはずっとここに居たし、シャナ達は今観光に行ってる。俺はお前が起きた時に、シャナ達へ連絡する役でここにいるだけ」

 

そう言いつつ、シンクは携帯に目を落とし何かメッセージを書いていた。

多分シャナに連絡しているんだろう。

 

「あとおばさんから連絡きた。事態が終息したら、すぐにリューネへ戻って来いってさ」

「珍しい。普段なら、観光がてらその国の文化でも学んでこいって言うのに」

 

何か国で問題でも起こったのだろうか。

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