母様と躯体のパスが繋がったのがわかった瞬間、躯体の方の母様の目が開いた。
「んー…よく寝たぁ…」
「よく寝たじゃねぇよ馬鹿野郎!!」
母様が起き上がり、伸びをする。
カヅキおばさんが先の宣言通り、母様の頭を一発殴った。
「ちょっと、痛くはないけど衝撃は来るのだからやめてよ」
「うるせぇ…っ!!」
おばさんは母様を抱きしめ、その肩を震わせている。
母様は苦笑しながら、おばさんの背を撫でていた。
「シャル…」
「ナズナ、心配させてごめんなさい。子供達も。だけどこの星読み、使い方が少しわかってきた気がするわ。グンジョウ、気付いてくれてありがとう。取り乱している二人は、多分気付いてくれなかったでしょうから」
自分の肩に手を置いている父様の手に、自分の手を重ねながら母様は微笑み、僕に礼を言ってくる。
「シャル、お前な…っ!!」
「わかってるから怒鳴らないで、あなた。あたしを襲ってきたのは魔王よ。槍で腹部を貫かれたの。あいつ、宮塚の顔で話すものだから嫌悪感が酷くて…遅れをとってしまったわ」
はぁ、とため息をつく母様。
宮塚の名前を聞いた瞬間、おばさんから魔力波が放出された。
多分、怒りからくるものだろうと推測される。
それに当てられて、ツルギやユタカが座り込んでしまった。
「カヅキ、抑えて。貴女のおかげで、あたしはまだ生きてるの。ありがとう、あたしの事を大事に想ってくれて」
「……おう」
カヅキおばさんを、母様が強く抱きしめる。
それによって魔力波は無くなったが、今度は父様が母様の頭を抱きしめ始めた。
「シャル…」
「カヅキに嫉妬しないでちょうだい、あなた。もう…あなた達、あたしの事大好き過ぎない?」
母様がそう言った瞬間父様とカヅキおばさんの声がハモって、僕らは吹き出すのを我慢する。
「「何を当たり前な。お前を大事にしない馬鹿はいないだろうに」」
◆◆◆
母様があの状態なので、今日の夜の訓練は無しになった。
久々に自分のベッドに横になった僕は、先日見た自分の前世を思い出す。
あの後、僕は…夕陽はどうなったのだろうか。
僕がここにいるという事は、亡くなっているのは確実だが。
雪那も亡くなっているし……ん?
僕は記憶の違和感を覚え、起き上がった。
そう言えば、グランドラント遺跡で、ユエは何と言った?
桃華が僕に何をしたか、知っていると言ってはいなかったか?
僕は携帯を取り出し、ユエにコールする。
数回のコールの後、ユエが電話口に出た。
『どうしたの? アオがかけてくるなんて珍しい』
「ごめんユエ。嫌な記憶を思い出させる質問をしようとしているんだけど、良いかな?」
少しの沈黙の後、彼女はため息を吐きつつ良いよと返事を返してくる。
「グランドラント遺跡で、桃華が夕陽に何をしたか知っていると言っていたよね? 君…雪那が亡くなった後、何があったか聞いても良い?」
『それを聞いてどうするの? 桃華に同情でもするつもり?』
ユエの言葉に少し棘がある気がする。
僕は彼女には見えないだろうが、首を横に振った。
「同情なんてしない。あいつがした事は、僕から大切な君を永遠に失わせた。それを許すつもりは全くない。嫌な事なら話さなくて良い。遅くにごめん」
そのまま携帯を離し、通話を切ろうとした。
『貴方にとっては嫌な事かもしれない。それでも聞きたい?』
携帯から少し耳を離した時、ユエがそう言う。
彼女の言葉に、僕は頷いた。
「その為に、君に電話したんだ」
『わかった…。私、死んだ後、少しの間だけ夕陽君の側にいたの。夕陽君、私が死んだって、それが自分の妹のせいだって知って、凄く落ち込んで…家から出れなくなっちゃったんだ。その間も、桃華は夕陽君に、酷い言葉ばかり言って…。桃華の言葉を遮るように、部屋からも出れなくなっちゃった夕陽君に、業を煮やしたんだろうね。桃華、部屋に押し入って、夕陽君を殺そうとしたんだ。でも、夕陽君が抵抗した弾みで、逆に桃華が死んだ。夕陽君の行動は正当防衛が認められたけど、それで精神を病んでしまった夕陽君に、悪霊化した桃華が取り憑いて…。私、桃華を引き離す事が出来なかったの。もう転生しなきゃいけなかったから。多分、その後夕陽君は取り殺されたんだと思う。ごめん、アオ』
少し涙声になってしまったユエに、僕はごめんと謝る。
僕に魔力がもう少しあれば、彼女の所に転移して抱きしめる事が出来るのに。
「ユエ、辛い事思い出させてごめん。教えてくれてありがとう」
『アオ…会いたいよ…会いに行っても良い…?』
勿論、と答えると、魔力の揺らぎが目の前で起こり、ユエが転移して僕に抱きついてくる。
通話を切り、彼女を抱きしめた。
「アオ…アオ…っ!!」
「うん…泣かないでユエ。僕の大切な君。僕は今、ちゃんと生きて君の隣にいるから」
泣かせた原因は僕なのだが、僕は彼女を慰めるようにキツく抱きしめ、頭を撫でる。
そして、やっぱり桃華は一度叩きのめさなければならないと誓った。