my way of life   作:桜舞

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75話『人にやられたってどういう事?』

シルフ1の月。

冬休みに入って、僕とシャナ、シンクの誕生日パーティーを終えてから数日後。

王宮が所蔵している本を読もうと、図書室で読書をしてて、そういえば昨日の夜と今日の朝の鍛錬にユエ来なかったな、なんて思っていた時だった。

 

ユエの怒鳴り声と、ユタカが笑っている声が図書室の中に入ってきた。

 

「ちょっと! 私、今から妃教育が…っ!! てか、あんたもでしょユタカ?! アオの護衛から外れて、シンクの婚約者になったくせに!!」

「その髪、グンちゃんに見せてから行けば良いじゃん。その髪のせいで夜と今日の朝の鍛錬、出来なかったんでしょ? それに、私はユエと違ってそこまで厳しくないもん」

 

声が近付いてきて、僕は本を閉じてその方向へ顔を向ける。

本棚の影から現れた二人を見て、驚いた。

 

ユエの髪が、昨日の朝会って見た時より明らかに短くなっていたからだ。

腰まであった黒髪が、肩口までになっている。

 

「え、ユエ、それ…」

「ほらー! アオが驚くから、せめてメッセージで話してから見せたかったのに!!」

 

自分を押して来たユタカを睨みつつ、ユエは怒鳴った。

 

いや、別に驚いただけでそんなに怒るような事なのだろうか?

 

僕の様子にユタカはニヤニヤして、ユエに言った。

 

「自分で短くしたならともかく、人にやられたって泣きつけば良いのに。可愛げないとグンちゃんに呆れられるよ、ユエ?」

「喧しい! アオに横恋慕まだしてるくせに!」

 

もうしてませーん、とユタカはユエから手を離し、僕に手を振ってくる。

 

「ユエよろしく、グンちゃん。私、シンクに会ってから妃教育の教室に行くから」

 

ユエをその場に残し、ユタカは図書室を出ていく。

自分の姉を睨みつけ、姿が見えなくなると少し肩を落とした。

 

というか、僕らの誕生日パーティーの後から、ユタカとシンクの仲が急に仲睦まじくなった気がする。

一体何があったというのか。

まぁ、僕としては安心要素しかないので、別に構わないのだが。

だが、先程のユタカの話の中に聞き捨てならない単語があって、僕は彼女の腕を掴む。

 

「人にやられたってどういう事?」

「…ユタカめ…余計な事を…!」

 

僕の方を見ないようにしていたユエだったが、話すまで僕が自分を離さないと理解している彼女は、ため息をついてポツリと呟くように言う。

 

「冬休み中の学校に少し用があって、校舎を歩いてたら…アオを好きだった別クラスの子達が、すれ違った後、私の髪を掴んでハサミで切ってきたの。複数人だったから、反撃するの遅れちゃって。あ、もちろんボコボコにはしたよ? ママも、その人達の親に損害賠償請求してたし。学校で魔法使っちゃったけど、正当防衛で私はお咎めなしだし。ザンバラ頭になっちゃったから、ママに整えて貰ってこんな感じに…」

「……はぁ?」

 

自分の眉が吊り上がるのを感じる。

 

僕が好きだからと、ユエに危害を加えるとか頭おかしいんじゃないのか?

どこのどいつだ、そんな事した馬鹿は。

僕も危害加えて良いんじゃないのか?

 

「もう…そうなるの分かってたから、穏便に伝えたかったのに。ユタカめ、後で殴る」

 

ユエはそう言い、僕の頭を抱きしめ撫でてくる。

落ち着いて欲しいという意思を感じて、僕は彼女の腰に腕を回した。

 

「アオ、この髪型似合うかな?」

「うん、似合ってるよ。むしろ、雪那もそんな感じじゃなかったっけ? あまり長いの好きじゃないって言ってたろ? ユエはなんで伸ばしてたの?」

 

少し顔を上げて彼女を見る。

すーっ、とユエの目が泳いだ。

 

「いやー…あのー…アオ、ロングの方が好きかなって思って…」

「? 別に、その人に合ってればどんな髪型でも良いと思ってるけど? なんでそう思ったの?」

 

確かに、母様もシャナも髪は長い方だ。

母様は髪を横に流して括っているし、シャナは左上に一纏めにしている。

その髪型なんていうの、って一回シャナに聞いたら、サイドポニーテールって言ってたっけ。

母様も低めのやつだよって聞いてもないのに言ってたっけか。

 

「…冬夏ちゃんが、髪長かったから…」

「…ユエ、それ忘れてもらえるとありがたいんだけど…」

 

若気の至りというか。

ユエに抱いているものと、冬夏さんに抱いていたものは全く違う事は理解している。

あれは、憧れでしかなかった。

 

「まだ僕の初恋の話を引っ張るのか、君は…。今思えば、あれは初恋じゃなかったよ。ただの憧れだ。冬夏さんとこうなりたいとは思ってなかった。ただ、ずっと一緒に鍛錬出来たら楽しい、としか思ってなかったよ」

「…じゃあ、アオの初恋って誰?」

 

不可解そうな顔をしていたので、僕は彼女に笑いかける。

 

「君に決まってるだろ、ユエ。ベッドに組み敷いて、ぐちゃぐちゃにしてやりたいなんて、冬夏さんには思えないんだから」

「ーーーっ?!!」

 

顔を真っ赤にして、ユエは僕から離れようとした。

腰を僕に抱かれている時点で、離れられないんだけど。

 

「やっ…離して、アオ…っ!!」

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