メイドが持ってきたテーブルに食事が並べられ、椅子に座りそれをいただく。
ユエの食事の所作がますます綺麗になっていて、努力してくれているんだなと感慨深くなった。
「アオ? そんなに見られていると食べづらいというか…」
「…あぁ、ごめん。ユエ、本当に変わったなと思って。それが僕の為なのが、とても嬉しいんだ。君を更に愛しく思うよ、ユエ」
ニコリと微笑むと、ユエの頬が染まり目を背けてしまう。
そんな反応も可愛くて、僕は笑みを深くした。
「…アオ、面白がってるでしょ」
「いいや? 君はとても可愛いとしか思ってないよ。僕の未来の妻は、努力家で可愛くて愛おしい存在なんだなって」
ユエはスプーンを置き、自分の顔を覆って俯いてしまう。
耳まで真っ赤になっていて、そんなに恥ずかしがる事だろうかと苦笑した。
「…そんなに口説かないで…慣れてないの…っ」
「照れてるユエも可愛いよ。口説いてるつもりはない。思ってる事を言ってるだけだから」
女たらし、なんて不名誉な言葉が聞こえたので、立ち上がって彼女の横に行き、その腕を掴んで顔から手を外させた。
「誰が女たらしなんだ、ユエ。君にしか囁いていないぞ、僕は」
「違…っ! 言葉のあや! 言葉のあやだから!! ちょっと、離してアオ…っ!」
顔を真っ赤にさせ、涙目なユエの腕を一纏めにし、顎を掴んで問答無用でキスをする。
少し乱暴だったかな、なんて思ったが、僕を女たらしと言ったユエへのお仕置きと考える事にした。
唇を離すと、息が少し荒くなったユエが僕を涙目で睨みつけてくる。
嗜虐心がそそられてしまい、僕は彼女の肩に額を乗せて呟くように言った。
「ユエ…その表情、僕以外に見せないでね…」
「アオの馬鹿…ドS…鬼畜…っ! 誰が…貴方以外に、見せるっていうのよぉ…っ!! もう、離してぇ…っ!」
少し悪戯心が芽生えてしまい、彼女を抱きしめる。
ビクッと肩が跳ねた彼女に苦笑した。
「ごめん。嫌いにならないで欲しいな、ユエ」
「…嫌いにはならないけど……意地悪だよ、アオ…周りに人がいるのに、こんな事…」
そう言われて、はたと僕は動きを止める。
見て見ぬ振りをしてくれているとはいえ、メイドとか親衛隊の人が控えているというのに、僕はユエしか見えていなかった。
チラリとそちらの方を見ると、皆顔を背けてくれている。
「……ごめん」
「少し反省して。周りの人達、陛下と王妃様で慣れてるかもしれないけど、私達もって…流石に居た堪れないんじゃないかな…」
全くもってその通りなので、僕はユエから手を離した。
まだ食事の途中だったので、僕らは大人しく食べる事にする。
ユエもその間無言で、これ怒らせたかなと内心冷や汗をかいた。
◆◆◆
ユエをお祖母様の所へ送り届けて、僕は図書室に戻る。
ずっとここにいたのか、それとも僕より早く戻ってきたのか、同じ場所にシンクはいた。
ただその傍ら、僕が座っていた場所に見慣れた金髪がグッタリと、机に頭を乗せている。
「シャナ、ここに来るなんて珍しいじゃん。冬休みの宿題終わらないからって泣き付きにきたの?」
「そのとーり…グンジョウに教えてもらおうと思ってきたら、シンクもいるなんて…あたしラッキーだよね…へへ…」
顔が憔悴し切ってるんだけど。
何がラッキーなんだ、この姉は。
「シンク、教えてたの?」
「まぁなー。分かる範囲だけだけど。こっちのシャナ、こんなに頭弱くて大丈夫か? 将来悪い男に騙されそうで、弟としては心配な限りなんだが」
別の場所から椅子を持ってきて、二人に向かうような位置に座る。
机の上には、数日前に終わらせた宿題の数々があって、僕はシャナを見た。
「ほぼほぼ終わってないじゃん。何してたの」
「……向かっては悩み、向かっては悩みをしてたら、こんな事に…」
馬鹿なのかな、この姉。
と、悪態を吐きそうになるのをすんでのところで抑える。
シンクも同様のようで、自分の口を押さえて目を泳がせていた。
「馬鹿って言えば良いじゃんかよぉ…どうせあたしは馬鹿だよぉ…」
「ツルギに教えて貰えば良いのに。結構頭良い方でしょ、彼」
泣き言を言い始めた姉にそう言っては見るが、無理と一言返ってくる。
「今もあたしの護衛って名目で側に居てもらってるのに、これ以上我儘言えないよ…」
「そのツルギどうしたのさ。今は側にいないようだけど」
シャナの護衛だし、帰る場所といったら今の所学園の寮だけ。
誕生日パーティーの時に、シャナの隣にいたのは見ているので、城の何処かにはいるんだろうけど。
「んー…? 旧友に会って来るって言って、朝から出掛けてるけど…。城の中だし、カヅキおばさんが構築した結界もあるから、少し側を離れて良いかって聞かれたから、良いよって…」
「シャナ、この馬鹿!! この世界にツルギの旧友なんざいねぇよ! あいつが旧友って言ったら、一人しかいねぇだろ! 本当に頭足りねぇ姉ちゃんだな、お前は!!」
そういきなり怒鳴って、シンクは何処かに転移して行った。