my way of life   作:桜舞

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79話『あれどうやって運ぶつもりなの?』

シルフ2の月。

ユエ達と登校して、自分の下駄箱辺りを見た僕は固まった。

 

「うーわ…雪崩起きてら…。グンジョウ、多分お前だけじゃねぇぞ」

 

エミル君がその惨状を見つつ僕の肩を軽く叩いて、親指で何処かを指差す。

そちらの方に目線を向けると、僕と同じようにシンクが軽く口を開けて唖然としていた。

そういえば、シンクの下駄箱は結構向こう側だったっけ、なんて目の前の光景から現実逃避をする。

 

「アオ、これ全部私が預かっていいかな。大丈夫、妃教育の時に親衛隊の人に渡すから…包みだけ」

 

ユエも僕の後ろからその惨状を見、僕に聞いてきた。

笑顔を浮かべてはいるが、その顔が少し怖い気がする。

 

「あぁ、うん…別に良いけど。ユエ、中身どうするの」

 

僕がそう聞くと、ユエはニコリと笑うだけで何も言わない。

これ中身捨てるか、最近遊びに来たっていう、オーシアの龍種の義理のイトコにあげるかするんだろうな、なんて察しがついた。

 

この月は、おばさんの家である立花家が運営する製菓会社が、チョコレートなるものを異性にあげる風習なるものを掲げたせいで、甘い匂いがそこら中に蔓延してて、あまり甘いものが好きじゃない僕は気持ち悪くて仕方がない。

 

シャナにお願いして、その匂いをシャットダウンしてもらうというのが毎年恒例の事だった。

 

「アオ、大丈夫そう?」

 

僕が、甘いものがあまり得意じゃない事を知っているユエは、心配そうに僕を見上げてくる。

 

「朝からシャナに魔法かけてもらってるから、大丈夫。というかユエ、あれどうやって運ぶつもりなの?」

 

僕はあの山を指差し、彼女に尋ねた。

 

まぁ、あの山をどかさない限り、僕は室内靴に履き替えられないわけなんだけど。

 

ユエはスタスタと山に近づくと、一回指を鳴らす。

山積みになっていたチョコだと思われる数々が、一瞬にして消えた。

そして僕の下駄箱の中に突っ込まれていた物も取り出して、また指を鳴らして消す。

 

「ユエ、力増してきてない? そんな芸当、前は出来なかったよね?」

 

カヅキおばさんや、母様がやっているのは見た事あるが、まさか彼女も出来るようになっているとは。

尋ねた僕に、ユエは苦笑を返す。

 

「妃教育と並行して、王妃様から王妃の業務とか教えてもらってる傍ら、魔法の理論とかも教えてもらってたら、魔力量増えたみたい。王妃様やママの足元にも及ばないけどね」

 

苦笑するユエの手を握る。

最近城へ一緒に帰る事が多くなってはいたが、そこまでしていたなんて。

 

「大丈夫? 無理してない?」

「してないよ。潰れそうになったらアオに泣きつくから、その時は覚悟しててね」

 

僕にウィンクしてきた彼女に、頷いた。

 

泣きつくなら思う存分甘やかすだけだ。

彼女が別の意味で泣くまで。

 

シンクの方を見ると、ユタカを抱き上げてイチャついている所だった。

 

「…何やってんの、あれ」

「多分、私と同じであの山消したんだと思うよ。ユタカの場合、ママ由来の影魔法だろうけど」

 

ユタカもそんな能力に目覚めてるの?

君達姉妹凄くない?

 

それに比べて、僕はただ筋力が増してるだけで、魔力なんて全く増える気配がない。

やっぱりシャナに持ってかれてるんじゃないだろうか。

 

◆◆◆

 

室内靴に履き替え、教室前でユエと別れて入ろうとし、僕はすぐさま踵を返した。

 

「ユエ、待って!」

 

自分の教室に入ろうとしていたユエが察して、僕の所に駆け寄ってくる。

苦笑いをしている所から、多分シンクも僕と同じ状況だと推察できた。

 

「アオ、まさかだと思うんだけど…」

「そのまさか。助けて、ユエ…」

 

彼女の肩に手を置き、僕は頭を下げる。

うんと頷いたユエは僕の方の教室に入り、指を鳴らした。

瞬間、僕の机の上に山積みになっていたチョコらしきもの達が消える。

 

「本当助かる…」

「私って婚約者がいるのに、よく出来るなぁ…あぁ、イラつく…!」

 

今にも舌打ちしそうなユエの頭を撫でた。

学校だからこの程度しか出来ないけど、城ならキスして押し倒すくらいはしている。

本当に僕の恋人は、なんでも出来てしまうなぁ。

 

「アオ…あとでご褒美ちょうだいね?」

「わかってる。嫌だって言うまで甘やかすから覚悟してね」

 

抱きついて来たユエへ、僕は小声で囁く。

少し頬を染めて微笑む彼女が愛おしくて、ここが城だったらなぁ、なんて思ってしまった。

 

「おい、バカップル。もうホームルームの時間だぞ。不純異性交遊するなら別の場所でやれ」

 

出席簿を持ったカヅキおばさんが、僕らを見ながらそんな事を言う。

やるな、ではなく、別の場所でというあたり、流石カヅキおばさんというか何というか…。

 

それを聞いたユエが、少し顔を染めてカヅキおばさんに怒鳴る。

 

「その発言、パパに密告するからねママ!!」

「あ、おい、ちょっと待てユエ! 裕里には言うんじゃない!!」

 

ベー、と舌を出しながら、自分の教室に入って行くユエを見送り、僕も自分の教室に入った。

 

席に着くと同時に、カヅキおばさんが入ってくる。

いつも通りのホームルーム、そしていつも通りの授業を受け、昼休みに入った。

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