my way of life   作:桜舞

80 / 408
80話『ケーネじゃん』

「ユエがお昼持ってきてくれるって言ってたから、僕ユエと食べようと思うんだけど、シャナはどうする?」

 

座学の授業が終わって、僕は立ち上がりながら伸びをする。

それをしながら姉に聞くと、シャナは首を横に振った。

 

「あたしは屋上でお昼食べるから、そこ以外で食べなよ。なるべく二人きりになりたいんでしょ?」

「そんな気遣いしなくていいよ…」

 

苦笑いを浮かべるシャナに、ツルギとまた何かあったのだろうかと思ってしまう。

あと、この校舎で二人きりになれる場所なんて、校舎裏か、空き教室くらいではないだろうか。

そこもこの学校の生徒全員が知っているので、その場所に行った所で、カップルだらけではあるとは思うのだが。

 

まぁ、時間が限られているので僕は教室を出て、ユエを迎えに行く。

中庭でお昼を食べようという話になり、僕らはそこへ向かった。

 

「…ん?」

 

中庭のガゼボに、黒髪の幼児が座って暇そうにしているのが見える。

幼等部の制服を着ているが、この学園のものではなさそうで、スカートを履いている事から女の子だという事がわかった。

 

「ユエ、あの子…」

 

誰だろうね、と話しかけようとして、ユエがいつの間にか僕の隣からいなくなっている。

見れば、暇そうにしている女の子に駆け寄っていた。

 

「ケーネじゃん。何してるの?」

「よ、ユエ。義母さんがアイラさんに用事だってんで着いてきたんだけど、あんまりにも話長いから散歩してここに落ち着いたとこ」

 

ユエを追いかけると、二人のそんな会話が聞こえてくる。

あの子、ユエと知り合いだったのか。

 

「ユエ、その女の子…」

 

そう言いかけると、二人から同じ事をステレオで言われる。

 

「「男だけど?」」

 

予想外の返しに、僕は固まった。

 

「は?」

 

女の子の制服着てるのに、男の子?

髪も長いのに?

 

僕の疑問が顔に出てしまっていたのだろう。

ケーネと呼ばれたその子がケラケラ笑い出した。

 

「うちの教育方針でよ、似合ってる格好するべきってやつでな。だからスイカも、数年前まで女の格好だったろ? てかユエ、こいつお前の彼氏?」

 

こいつ、のところでケーネ君は僕を指差す。

それに対して、ユエは頷いた。

 

「アオ、この間話した義理のイトコ。龍種の。あと、ケーネ。スイカは願掛けで女装させられてただけで、本人嫌がってたよ」

 

そう言いつつ、ユエは僕の腕に抱きついてくる。

腕に柔らかいものが当たって、僕は思わず顔を背けてしまった。

 

「私の恋人のグンジョウ。この国の王子様なの。格好良いでしょう?」

 

僕の事を自慢してくるユエの言葉を聞きつつ思う。

 

スイカ君の女装、二人が面白がって、着せ替え人形の如く女の子の服着せまくってたの、僕覚えてるからね?

彼、本当に嫌そうにしてて、アンナからも女の子だと思われてるの本当に嫌だって、若干半泣きだったよ?

あれ本当に可哀想だったんだけど?

 

ケーネ君は、僕の周りを半周しながらジロジロ見た後、

 

「うーん、イケメンだな。俺には劣るけどな!」

 

と宣った。

それに対し、ユエが不満そうに言う。

 

「龍種の中ではでしょう? 人の中だったら、アオほど格好良い人いないよ」

「褒められて嬉しいとは思うんだけど、僕ぐらいなんていくらでもいるでしょ?」

 

父様然り、ユーリおじさん然り。

僕なんてそこら辺にいても存在感あるかどうか、って程度だと思う。

 

その発言を聞いた二人が、少し驚いていた。

 

「え、自己肯定感低くね?」

「アオ、自信持って。アオ程格好良い人いないよ? 顔が良いし、性格も良いし、高身長で頭良くて、優しいし、甘えて来る所はとっても可愛いし…」

 

指を折り畳みながらユエが言ってくるので、僕は軽く彼女の口を塞ぐ。

わかったのでそれ以上言わないでほしい。

二人きりならともかく、今はケーネ君が目の前にいるわけだし。

 

「ユエ、わかったから。それ以上は言わないで」

 

僕の言葉に、彼女は頷く。

そっと手を離すと、ユエは何かを思いついたようにケーネ君に言った。

 

「ケーネ、チョコあるけど食べる?」

「ユエさん?」

 

そのチョコ、僕宛で来たやつだよね?

いくら龍種って言っても、幼児に食べさせて良いものなのか?

 

だが、ユエの言葉にケーネ君の目が輝いた。

 

「いるーっ!」

「個包装と、出して一纏めにしたの、どっちが良い?」

 

ユエが二択を出し、ケーネ君は個包装でと答える。

彼女は指を鳴らして、ガゼボ内にあるテーブルに乗り切らない程のチョコを転送してきた。

更にケーネ君の目が輝き、包装を剥いでチョコを口の中に入れ噛み砕き始める。

 

すごい音がしてるなぁ、なんてのんびり見ていたが、ユエがテーブルと椅子を転送してきて、その上にお昼ご飯を並べ始めた。

 

そういえば、今お昼休憩の時間だったと今更ながらに思い出す。

 

「簡単なものだけど…途中でお腹空いたら、購買とか行ってね?」

「いや、美味しそう。ありがとうユエ」

 

サンドイッチやサラダとか、あんまり量を食べない僕に対しての気遣いが伺えた。

しかも、ケーネ君よりテーブルとか風上に設置してあるおかげで、甘い匂いもこちらには来ない。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。