my way of life   作:桜舞

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81話『この王子様メンタル弱くね?』

「ユエ…君、女神?」

「前もそんな事言ってたけど、私が女神だったらユタカと喧嘩してないし、貴方に群がる女の子達に嫉妬もしないでしょ? 私はただ、アオの事が大好きな一人の女の子だよ」

 

椅子に着席したユエは、そう言いながら微笑む。

あぁ、本当に城の中だったらユエの事口説き落とすのに。

残念で仕方ない。

 

ケーネ君の方をチラと見ると、個包装の包み紙に何か走り書きをしている。

何をしているのだろうと少し首を傾げると、ユエも同じ事を思っていたのか、彼に尋ねた。

 

「ケーネ、何やってるの?」

「んー? 味の感想書いてる。あと、何か入ってるやつにはその成分も書いてる」

 

何かってなんだろう?

 

疑問に思って更に首を傾げると、ユエの顔が険しくなった。

彼女の顔を見て、僕は察する。

 

あぁ、僕に何か盛ろうとしていた人がいたという事か、と。

 

なんと旧時代的なのだろうか。

 

僕は嘆息して、ユエが作ってくれたサンドイッチを頬張る。

 

「何入ってんのそれ」

「媚薬、惚れ薬、毒薬エトセトラ」

 

ケーネ君があげた上位三つに、怒りでユエの肩が震え出した。

僕の事が大好きで、大事に想ってくれてるからこその怒りなので、僕は可愛いなぁという感想しか抱けない。

 

「ユエ、怒ってくれるのは嬉しいけど、お昼休みもすぐ終わってしまうよ。君が食べないなら僕が全部食べるけど」

「食べていいよ」

 

即答かよ。

そこまで怒ってるのか。

というか、そんなものケーネ君に食べさせて大丈夫なのだろうか?

 

「ケーネ君、それ食べて大丈夫?」

「あー? 俺龍種だぜ? 人間用の毒とか媚薬とか効くわけないじゃん。俺用に調合するんだったら、これの数千倍持ってこないと」

 

そ、それは安心、なのか?

 

「あ、そう言えば。シンクにも僕と同じようにチョコが送られてきてたよね。ケーネ君にお願いして食べてもらったらいいんじゃないかな?」

「シンク?」

 

あの短時間で全て食べ終えてしまったらしい。

彼の足元には空の包装紙の山が出来上がっていた。

 

「ユタカの婚約者でね、僕の弟なんだ。多分困ってると思うから…」

「わかった。今日は甘いものいっぱい食えていい日だなー」

 

すごくニコニコしているので、甘いものがとても好きなようだ。

僕としては、あんな砂糖の塊美味しいとは思えないんだけど。

 

調味料で少しの甘さを感じる程度なら平気なんだけど、ガッツリ甘味ですって感じのやつは苦手なんだよな…。

 

「グンジョウ、お礼に俺の鱗やるよ」

 

ケーネ君はそう言い、僕へ何かを差し出してくる。

手を差し出すとその上に何か置かれ、見れば黒々とした鉄球のようだがあまりの重量で、体が傾いた。

 

「おっも!!」

「ユエにも」

 

ユエにも同じ物を渡したようだが、彼女は軽々とそれを持ち上げ眺めている。

 

え、嘘だろ…?

 

腕力が上がっていると思っていたが、ユエのあの様子を見て少し自信をなくした。

僕、彼女と力比べしたら負けるんじゃないかな…。

 

「アオ? なんでそんなに落ち込んでるの? …あ。いやいや、あの、魔力値が上がったから、身体強化してケーネの鱗持ってるだけだから! ケーネ、人化の術使って人になってるけど、本来20メートルくらい巨大な龍だから! 本当なら私持てないんだって! 重いって言いつつ持ってるアオの方が凄いんだからね? ね?」

 

僕の様子に察しがいったのか、慌ててユエが慰め始めるが、それ慰めになっていない気がする。

魔力値が上がっても上がらなくても、ユエは僕より強いのだから。

 

それに可愛いし、芯も強いし。

ユエに惚れている男子生徒だってたくさんいるだろう。

 

僕が恋人で、本当に良いのだろうか。

僕より、ユエと釣り合う人がいるのではないだろうか。

 

落ち込んでしまった僕に対して、ケーネ君はケラケラ笑い出した。

 

「え、この王子様メンタル弱くね?」

「黙ってろケーネ! アオ、落ち込まないでー?!」

 

ユエは僕を抱きしめてくるが、僕の思考は下方気味に落ちていった。

 

◆◆◆

 

ユタカの所にも行ってくると言うケーネ君を見送り、僕はユエ手製のお昼ご飯を食べ終え、彼女と共に教室に戻っている最中。

僕はユエに尋ねる。

 

「ねぇ、ユエ。ずっと前に組み手したら君の方が強いって話してたよね? それに賭けをした事も。有耶無耶になってしまってたけど…しなくても、君の方が強いってわかったよ…」

「ちょっ、だから身体強化してたって言ったじゃん! 普通なら私、アオより非力なんだよ? …アオは、こんな女の子嫌い…?」

 

立ち止まったユエより数歩先に行ってしまった僕は、彼女の泣きそうな声に振り返った。

涙目になって、ユエは僕を見つめている。

 

「嫌いではないよ。姉と母親がそんな感じだからね。僕が情けないってだけ。君を守りたいって思ってるのに、君からどんどん離されていくような気がしてて。ごめんね、ユエ。そんな顔させたいわけじゃないんだ。君の隣に、僕はいてもいいのかなって思っただけなんだ」

 

ユエの頬にそっと触れた。

ボロボロと涙を溢し始めたユエに、僕は苦笑いしか返せない。

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