my way of life   作:桜舞

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83話『人の事ゴリラかなんかだと思ってんの?!』

「わかってるわよ。そんな情けない顔にならないで、あなた。グンジョウ、約束を違える男になってはダメよ? 将来こうなるから」

 

ニコリと笑いながら、母様は父様の肩を叩いた。

今そうなりかけているから、笑う気にもなれない。

でも、父様の話から得られるものもあった。

 

「ありがとう、父様、母様」

 

僕が礼を言うと、母様は苦笑する。

どうせ全て見えているんだろうな、と思った。

 

◆◆◆

 

母様とカヅキおばさんの訓練の前に、ユエと勝負する旨を、訓練場に集まったパーティのみんなに伝える。

アホか、と呟いたシンクが、呆れたように肩を竦めた。

 

「なんでそんな事になってるの?」

「グンジョウの馬鹿が、ユエちゃんの気持ちガン無視して傷つけるような事言うから。ユタカちゃん、あれと付き合わなくて良かったね。もしかしたら、ユタカちゃんが泣かされてたかもしれないよ」

 

首を傾げるユタカに、シャナが昼間の出来事を凝縮して伝えるが、ユタカはうーんと更に首を傾げる。

 

「ユエも意固地になってるだけじゃないかなぁ…。グンちゃんにか弱いとこ見せておけば、こんな事にならなかったと思うし」

「うっさい、ユタカ」

 

準備運動を終えたユエが、ユタカを軽く睨みつけた。

僕の方も準備運動は終わっていたので、ユエを見る。

 

「やろうか、アオ」

「そうだね」

 

シャナがため息をつきつつ、腕を上げた。

 

「はい、始め」

 

腕を下げた瞬間、ユエが僕に向かって走り、飛び上がって蹴りを叩き込んでくる。

それへ腕を使って防御するが、僕は驚いた。

 

重さがない?

 

少し痛いだけで、ユエの蹴りには全く重さが乗っていなかった。

シャナも非力な方ではあるが、身体強化を使えば僕の蹴りも難なく止める事ができる。

それどころか、身体強化なしで僕を蹴って来る事があるが、結構痛い。

そんな姉を見てきているからこそ、僕よりも魔力量が多いユエは、身体強化を使わなくてもとても強いと思っていた。

 

その認識が誤っていた事を、今この瞬間理解する。

 

でも、彼女との約束を違えるわけにはいかない。

 

僕は防御している方向と同じ足で、彼女に足払いをかける。

重心がその足に全てかかっていたので、ユエは体勢を崩した。

彼女の腕を引っ張り、その腹に向けて拳を叩き込む。

 

「う…ぐぅっ!!」

 

腹を抱えて、崩折れる彼女の首を掴んだ。

僕の手のひらから少し余るくらいで、ユエの首はとても細い。

 

「降参する?」

「…誰が…するもんか…っ!」

 

足を振り上げて抵抗しようとするが、それをもう片方の手で止めた。

更に腕を振り上げて殴って来ようとしたが、それも首を少し捻るだけで避けられる。

ユエの首にかけている手に少し力を込めた。

苦しそうに眉を寄せるが、それでも彼女は僕を睨みつける。

 

無駄な抵抗だな、なんて考えがよぎった。

 

「はい、そこまで!! グンジョウやり過ぎ!! そのままだとユエちゃん死ぬよ?!」

 

シャナが僕の背中に蹴りを入れてくる。

その痛みで僕はユエの首から手を離した。

ユエが自分の首を押さえ、蹲って咳き込んでいる。

 

自分がやった事なのだが、少し驚いた。

僕って、結構残忍性ある?

宮塚のあれ見たせいかな…。

 

「ユエ、ごめん。苦しかったよね? 大丈夫?」

「…げほっ!! だ、だいじ…げほげほっ!!」

 

強く押さえ過ぎたようだ。

ユエの咳き込みが止まらない。

 

シャナが慌ててユエに回復魔法をかける。

僕も彼女の背を撫で、ユエが落ち着くまで撫でていた。

 

「ごめん、ユエ。シャナ基準で考えてた。僕が間違ってた。本当にごめん」

「…ちょっと待てグンジョウ。聞き捨てならないんだけど。人の事ゴリラかなんかだと思ってんの?!」

 

僕の胸ぐらを掴み揺さぶってくるシャナに僕は首を横へ振る。

目線は横を向いてはいるが。

 

「思ってるわけないじゃん」

「こっち見て言いなさいよ?! あたしだってか弱いレディなんだからね?!」

 

それはわかってる。

しかもシャナをゴリラとか思ってしまうと、それ以上の母様はどうなるというのか。

 

「グンジョウ、あたしの事ドラゴンレベルとか思ってる?」

「思ってません、母様。父様に殺されるのでやめてください」

 

母様がニコニコしながら、カヅキおばさんと共に訓練場に入ってくる。

少し思考しかけた事を言い当てないでもらいたい。

流石に怖いです、母様。

 

あと、そんな事を父様の前で言おうものなら、僕の命なんてそこら辺の虫以下だ。

 

蹲っているユエを見て、カヅキおばさんはため息をついた。

 

「ユエ、あまり無茶をするんじゃない。お前は冷静そうに見えて、昔から頭に血が昇りやすい性質がある。それにグンジョウ、お前もだ。頭良さそうに見えて、若干脳筋なところは直せ。さっきの戦闘を見ていたが、本当にシャナが止めていなかったら、お前はユエを殺していたぞ」

「……反省してます」

 

胸ぐらを掴むシャナの手を外し、僕はユエを抱き上げる。

 

「アオ、大丈夫だから、降ろして…」

「無茶したから、ユエは今日見学で良いですよね、おばさん?」

 

僕の視線を受けたおばさんが、呆れた目で僕を見た。

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