my way of life   作:桜舞

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84話『今日何の日だか覚えてる?』

無茶をさせたのは誰なのだ、という目なのは理解出来たので、僕は困ったように笑うしかない。

 

ユエを抜いたパーティで母様達に挑むが、いつも通り全滅させられる。

やっぱり、中衛であるユエが抜けると、とても連携にヒビが入るようだ。

 

シンクも少し僕らを動かしづらそうに、眉を寄せていたし。

 

「アオ、大丈夫?」

 

倒れている僕の側に座り、ユエは頭を撫でてくれる。

それが心地良くて、僕は目を閉じた。

 

「うん、いつも通り…」

「…アオ、さっきの事だけど」

 

ユエの首を絞めてしまった事についてだろうか。

僕は目を開け、彼女を見上げる。

 

「ちゃんと、私がアオより弱いのわかってくれた? アオより強く見せてるのはただ単に、魔力を利用してるだけなんだよ? …流石に、今日はショックだったよアオ」

「…本当にごめん…」

 

それでも愛想を尽かさず、僕の傍にいてくれる彼女に感謝した。

普通なら、嫌われて別れを告げられていてもおかしくはないのに。

 

僕はそっと、ユエの方に手を伸ばす。

それに気付いた彼女が、僕の手を取り自分の頬へ添えた。

 

「あんな事されて、怖いとか感じないの?」

「あれは戦闘時だからで、いつものアオは優しいじゃない? それに、甘さが捨てられてきてるって事じゃん。良い事だと思うよ?」

 

そう言い、彼女は微笑んだ。

 

流石立花の娘。

よくカヅキおばさんに訓練されているようだ。

 

そしてふと思い出す。

 

「ユエ、今日何の日だか覚えてる?」

「覚えてるけど…。アオ、その状態で物を食べるのは、お行儀が悪いと思うよ?」

 

それは確かにそうだけど。

 

僕は起き上がり、少し不機嫌そうにユエを見る。

首を傾げる彼女へ、僕は言った。

 

「少し恋人らしい事しようと思ってたんだけど。君の膝枕で、チョコをもらうっていう。そっかー。ユエはしたくなかったかー」

「なっ?! し、したくないと言えば嘘になるけど! で、でも周りの目が…」

 

僕は訓練場を見回す。

母様達はおろか、シンク達もいなくなっていた。

訓練場にいるのは、僕とユエの二人だけ。

 

誰の目を気にするというのか。

 

「ユエ? したくないって普通に言えばいいと思うよ?」

「え? あれ?! みんないつの間に?! え、嘘?! 違っ、違うのアオ!! さっきまでみんないたんだって!! あっ、ママだな?!」

 

魔力の痕跡から、おばさんがみんなを影に引き込んだのはわかっていたが。

多分、僕と喧嘩したユエに気を遣ってあげたんだろうな、と察する。

 

「無理にとは言わないよ。帰ろうか、ユエ」

「ーっ!! やだぁっ! アオとイチャイチャするぅっ!!」

 

立ち上がった僕に動揺したのか、ユエがお祖母様の教育を受ける前の彼女の口調に戻り、僕に抱きついてくる。

そのまま重心をかけて、僕を押し倒した。

風魔法を使ったのか、衝撃が僕にくる事はなかったが。

 

「ちょっと、ユエ…アクティブ過ぎるよ…」

「んっ!!」

 

自分の口に咥え、僕にキスをするついでにチョコを食べさせてくる。

僕の事を考えて、ビターな味だ。

そこまでは望んでなかったのだけど、ユエが多分勇気を振り絞ってしてきたので、僕は受け入れる。

 

深いキスをした後唇を離し、僕はニヤリと笑った。

 

「ユエ、誘ってるの?」

「……っ、そうだって言ったら、どうするの?」

 

頬を染め、僕を見つめるユエから、顔を背ける。

多分聞いた僕の顔も、真っ赤になっている事だろう。

腕で顔を隠しながら、彼女に言った。

 

「ユエ…あまりそういう事言わないで。ユーリおじさんに殺される…」

「アオが殺されたなら、私も後を追うよ。もう離れるのは嫌だもん」

 

僕の胸に頬を埋め、目を閉じるユエをとても愛おしく感じ、僕は照れ隠しで乱暴に彼女の頭を撫でたのだった。

 

◆◆◆

 

ユエとしばらくイチャついた後、彼女が屋敷に帰るのを見送って、僕も自分の自室に帰る。

帰る途中、カヅキおばさんが僕を待ち受けていた。

 

やばい…絶対さっきの見られてただろうし、怒られるかも…。

 

「あの、カヅキおばさん…」

 

怒られるなら怒られるで、先に口を開いてしまおうとした僕に、おばさんは何かを投げて寄越す。

それは少しの燐光を帯び、回転しながら僕の方へ向かってくる。

 

暗い廊下に差し込む月光に照らされたそれは、短剣だった。

 

柄の部分を片手で受け止めそれを見、そして顔を上げておばさんに尋ねる。

 

「自害しろって事ですか?」

「違うわ阿呆。お前専用の強化アイテムだ。今回の動きを見てて、成長していないのはお前だけだと感じてな。精神的にも、肉体的にも。他の者を見習えと言われた所で、お前が努力しても真似できない芸当ばかりだろう。だから、切り札というものを授けてやろうじゃないか」

 

おばさんがニヤニヤと、僕を見て笑う。

 

それは、僕も感じているところだった。

ユエを大切だと言いながら、力加減を間違えて模擬戦で殺しかけるなど、愚の骨頂だろう。

少し彼女に負けたくらいで落ち込み、ユエを悲しませるなど。

おばさんの言う通り、肉体的にも精神的にも、僕だけ成長出来ていないと感じる。

 

ユエやユタカは、自分の足で自分の人生を歩いている。

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