my way of life   作:桜舞

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85話『自分の心臓に親指を突き立てた』

シャナも、ツルギを想いながらも頑張って成長しようとしているし、ツルギは言わずもがなだ。

 

シンクは…どうだろう。

もう一人の僕だけど、考える事は読めても何を思っているのかわからない。

あの薄ら笑いを浮かべた彼は、何を思ってここにいて、僕らと一緒に戦ってくれるのか。

 

「それを使えば、神殺しをしてもお釣りが来るぐらいの能力が手に入る。全リミッターを解除した私と同等以上の力をな。ただし、使用時間はお前の万全で30分。満身創痍なら10分しか保たないと覚えておけ」

 

おばさんから渡された短剣をマジマジと見る。

そんな風には見えないのに、おばさんにそう言われると、重みを感じる。

 

「使い方は?」

「自分の心臓に突き立てろ。それで発動する。ただし、使用回数はたったの一回。自分も含め、周りが窮地に立たされた時、死期を悟り、しかしどうしても退けない時に使え。言っておくが、それを使った後お前は指先一つ動かせずに倒れるだろう。努努(ゆめゆめ)、忘れるな」

 

おばさんが真顔になり、自分の心臓に親指を突き立てた。

いつものおばさんらしからぬ固い声に、柄を握る手に力が籠る。

冷や汗が、僕の頬を滴り落ちていった。

 

「…切り札をいただけるのは、ありがたいと思います。ですが、他の者にもこれを渡しているんですか?」

「いいや。お前にだけだグンジョウ」

 

何故だろう。

僕が未熟だというのなら、能力が低い僕ではなく他の…例えば、自分の娘達に渡せば、生還率は上がるのではないだろうか。

それを見越して、おばさんは僕に言う。

 

「これは、お前が主人公の物語だからだ」

 

それは一体どういう意味だろうか。

また母様から何か言われたのだろうか。

 

疑問が僕の頭を駆け巡るが、問いかける前におばさんは踵を返した。

 

「おばさん…っ!」

「精々励めよ、グンジョウ。それを使う事態に陥らないよう鍛えてはやるが、使わざるを得ない時は躊躇なく使え」

 

それと、とおばさんはこちらを見つつ続けて言う。

 

「シャナの方にも先程会って伝えてきたが、周りが死に絶えても、グンジョウだけは生還させるよう言い含めてある。泣かれてしまったが…最終的には頷いてくれたよ。お前も、自分が生き残る事だけを考えろ。甘さは捨てろと、私は前から言い続けていたな? 覚悟を決めろグンジョウ」

「………」

 

僕は無言でおばさんを見つめるしか出来ない。

そんな僕の様子に、おばさんは表情を真顔から苦笑いへと変えた。

 

「お前達に重荷を背負わせてしまって、申し訳ないと思っている。私やナツキが出れれば、何も問題はないのだが…ナツキは今あの状態だ。私も若い時に無茶をしすぎてな。前線に出られる状態ではない。すまんな」

「いえ…」

 

おばさん達が出られないのなら、城の兵士や騎士団、魔法師団、ギルド員、全てを動員して総力戦をした方がいい。

だが、それをしたところで、魔王には敵わないのだろう。

それで片がつくなら、既に父様が動かしている。

 

これは、僕達でどうにかしなければならない問題なんだと感じた。

 

僕はおばさんに向かって、深々と頭を下げる。

 

「ありがとうございます、立花卿。魔王に勝てるよう、これからも精進致します」

「あぁ。あと、その切り札の存在は全ての者には伏せておけ。何処からそれが漏れるかわからんからな」

 

カヅキおばさんの気配が消える。

顔を上げると、そこにはもうおばさんの姿はなかった。

 

◆◆◆

 

自室に帰り、ベッドに寝転がりながらおばさんから渡された短剣を見る。

光に照らしてみると、若干透けているのがわかった。

 

触るとちゃんとした刃が付いている。

指を滑らせてみるが、指には傷一つ付かない。

 

おばさんの手製だろうから、説明通りの効果があるのだろう。

 

「…はぁ」

 

僕はため息を一つついて、自分の収納空間に短剣を投げ入れる。

横向きに体勢を変えて、目を閉じた。

 

今日の事を思い出す。

全てにおいて、ユエに酷い事をしまくっていたような気がした。

いや、いつものほほんとしているシャナが注意してきた時点で、酷い事をしているのだ。

 

「ユエ…なんで君は…」

 

なんで君は、そんなに僕に優しいの?

僕が夕陽の生まれ変わりだから?

 

「そんなわけないじゃん」

 

ユエの声がして目を開ける。

目を開けた先、僕の目に映るのは青々とした草だった。

どこかの草原にいるようで、風を感じる。

 

え?

僕、さっきまでベッドにいたのに…。

 

少し戸惑っているとクスクスと笑う声が聞こえ、僕は起き上がって寝ていた方向とは逆の方を見る。

 

そこには、白いワンピースを着たユエが僕を見て笑っていた。

 

「ユエ…? ここは…」

「アオの夢の中だよ。夢渡りを覚えたから、使ってみたの。アオ。私は、貴方が貴方だから好きになったんだよ? 夕陽君とか関係ないって前も言ったじゃん。貴方がもし夕陽君じゃなくても、私は貴方が大好きになっていたよ?」

 

さっきのを聞かれていたらしい。

少し恥ずかしくて、僕は彼女から目を逸らした。

 

「アオ、貴方が夢を見ている時は、ここに来てもいい? 多分ママとかにはバレてるから、あんな事やこんな事は、出来ないだろうけど」

「別に良いけど…って! 夢でも君には手を出さないからね?!」

 

えー、と不満げなユエに、僕は苦笑するしかなかった。

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