my way of life   作:桜舞

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86話『誰が悪い顔だ馬鹿姉』

シルフ3の月。

今日はメリーディエースの各学校で卒業式が行われている。

生徒数がとても多いここでは、卒業生とその保護者だけが卒業式に出席する事となっていた。

在校生である僕らは昨日が終業式ということもあり、ノーム1の月の10日までは春休みだ。

 

春休みだからといって宿題がないわけではなく、僕は今日のノルマである自分の宿題を終わらせ、シャナのを見てあげていた。

 

「だから、この公式に当てはめてこの式を解くと…この答えになるの。わかる?」

「わかんない。何があってこうなって、なんでこの式でこうなるの? え? 数学ってなんか意味あるの?」

 

それ、世の数学を研究している人達に喧嘩売ってないかな…。

 

シャナの数学への理解力は、多分初等部四年の時に止まっているので、僕も強気では言わない。

苦手な分野に頭を悩ませるより、得意な分野を伸ばす方が効率はいいだろうから。

 

「シャナって何が得意だっけ」

「うーん…魔法理論学?」

 

それも数学の一部だろうに、なんでこっちは苦手でそっちは得意なんだ。

シャナの頭の中どうなってるの?

 

はぁ、とため息をついた時、僕の携帯が鳴る。

短い振動と音だったので、電話ではなくメッセージの方のようだ。

 

「誰からだろ」

 

携帯を持ち上げ、パスコードを打ち込んで画面を開く。

ちなみに、今のパスコードは安易にユエの誕生日にしている。

前は面倒くさかったので、初期のままだったが。

 

「ユエからだ」

 

アプリを立ち上げ、ユエからのメッセージを見る。

中身を見た瞬間、へぇ、と僕は口角を上げた。

 

「グンジョウ、悪い顔になってる。ユエちゃんなんだって?」

 

呆れた目で僕を見てくる姉に、僕はニコリと笑う。

誰が悪い顔だ馬鹿姉。

恋人からのメッセージに笑って、何が悪いというのか。

 

「先月チョコあげたから、そのお返しとしてデートがしたいってメッセージがきただけだよ。まぁ、四日後の14日にだけど」

「へー、いってらっしゃーい」

 

自分が聞いてきたくせに、シャナは気の抜けた返しをしてくる。

目の前の問題に頭を悩ませているのか、それとも別の問題か。

 

「シャナ、まさかとは思うけど。ツルギにアレンジしたチョコとかあげてないよね?」

 

数年前、手作りチョコに興味を示したシャナが、料理長やメイド長が止めても言う事を聞かず、アレンジした手作りチョコを作った事があった。

そのまま作ったのだろうという先入観で、それを食べた僕と父様は少しの間悶絶する事になり、母様が怒って何を入れたかシャナに問いつめたところ

 

「香辛料だよ?」

 

と悪びれず言うものだから、姉は母様に頭を殴られていたっけ。

 

「作ってないし、あげてない。ツルギ君が甘いもの平気か分かんなかったし、あたしからなんて迷惑でしょ」

「そんな事ないと思うけどなぁ…」

 

次の日に会ったツルギは変わりないようだったけど、内心落ち込んでたらどうするんだこの姉は。

むしろ、一般的に言う両片思い状態なのでは?

と思ってしまうのも仕方ない事だと思う。

 

早く告白すればいいのに、ツルギ。

 

そう思ってしまうのも無理はない。

シャナから彼へのアプローチは、もうないだろう。

 

前のユエと同じだ。

相手が幸せになってくれれば、それで良いのだ。

ツルギの幸せが、自分の幸せだと。

 

自分は二の次で良い、というように微笑む姉は痛々しかった。

 

「それより、ここの問題どう解くの」

「…シャナの偉いところって、僕に問題解かせて答えを知ろうとしないとこだよね。解き方は教えてもらうけど、自力で解こうとするの」

 

僕がそう言うと、シャナはキョトンとしながら首を傾げる。

何を当たり前な、とその表情は物語っていた。

 

「楽な道ばかりを選んでると、途中で困難に当たった時自分では解決出来なくなる。それを避ける為に、将来の自分の為にも苦労はしておけ、ってお祖母様も言ってたじゃん」

「そうだね」

 

それを実行出来る人間って、多分一握りだと僕は考える。

大体は楽な方へと流されていくだろう。

敢えて、苦労する道を選ぶシャナはとても偉いし、尊敬出来る。

この人が、僕の姉で良かったと思った。

 

「シャナが良い女だって、ツルギも気付けばいいね」

「ははは、褒めても何も出ないぞぅ」

 

シャナが笑いながら、僕の腕を小突いてくる。

とりあえず、数学は春休みが終わるまでは手伝おうと思った。

 

◆◆◆

 

朝の9時。

寮の門辺りで、僕はぼーっとしていた。

今日は、ユエとの約束の日である。

 

昨日の鍛錬キツかったなぁ…。

 

まさか、春休みを利用してケーネ君を呼び寄せているとは思わなかった。

しかも、ドラゴンの姿で僕達と戦闘するなんて。

 

今回は対人ではなく、対ドラゴンでやってみましょう。

なんて母様は軽く言ったけど、本当に命の危険を感じる戦闘だった。

 

おばさんから転移無効の結界を張られるわ、徒歩での脱出は不可能と来て、ドラゴンと戦闘しろとくる。

 

最近色んな出来事があって、若干スパルタ気味なのだろうか。

 

その鍛錬の本来の意味は、どうやって生き残るか考える事だった。

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