太もも辺りにスリットが入っていて、これを着たユエに誘われたら、理性などすぐ崩壊して襲う事だろう。
もう一つはキャミワンピースと呼ばれるもので、白いワンピースに青いジャケットが付いて、腰あたりに灰色のリボンがついていた。
「うーん…アオ、どっちがいいと思う?」
「どちらも似合うし着て欲しいから、二つとも買おうか?」
ブティック内にある椅子に座り、足を組んでユエを眺めていた僕に彼女が聞いてきたので、僕は微笑みながらそう答える。
世間一般的には、こういう質問には最適解というものがあるらしい。
そんなもの知ったこっちゃないし、ユエが欲しいと言ったものは、僕のお小遣いの範囲内で買えるものばかりだ。
「…成金」
「ユエ?」
誰が成金だ。
笑みを深くすると、なんでもないと返される。
そのまま服を戻そうとしたので、僕は立ち上がって彼女の手を掴む。
「なんで戻そうとするの?」
「いや、あの…私がここにある服全部欲しいって言ったら、アオ全部買いそうだなと思ったらちょっと…」
僕は少しため息をついて、彼女の肩に顎を乗せた。
「君が本当にそれを望むなら、それをするだけの資金を持ってはいるよ。でも、服が二着だろ? それくらいなら普通に買ってあげられるって言ってんの。少しは贈り物させてくれない? ユエ」
「アオ…。うん、わかった。お願いします」
ユエは先程持っていた服を僕に渡してくる。
他に欲しいものを聞くとそれ以外ないというので、会計に持って行きそれが入った紙袋をもらった。
「アオ、自分で持つから」
「持たせて。代わりに、手を繋いでもらえると嬉しいんだけど」
手を差し出すと、ユエは嬉しそうに僕と手を繋いでくれる。
そしてこっそりと、僕に耳打ちしてきた。
「今日可愛いのつけてるんだけど、見る?」
「…ユエさん、ここ公共の場だから。少し自重しましょうか…あと、誰に聞かれてるかわかんない状況で、それ言うのやめようね」
はーい、と返事してユエはニコニコしている。
さっきの意趣返しのつもりなんだろうな。
可愛いからいいけど。
いや、良くない。
「ユエ? 城に帰ったらちょっと話し合おうか?」
「え…」
僕から離れようとしたユエの手を少し強く握る。
ニコリと笑いかけるが、彼女の目が泳ぎまくっていた。
冷や汗もかいているところを見るに、まずい事を言ったという自覚はあるようだ。
「アオ、目が笑ってない…」
「うん。ユエの可愛さに気付いた男が、君をそんな目で見るかと思うと…ちょっとね」
ブティックを出て少し歩いてはいるが、チラチラ何人かこっち見てるんだよなぁ…。
僕が彼女から離れた瞬間ナンパするつもりなんだろうけど、誰がさせるか。
「顔怖くなってるけど…。大丈夫だよ、アオ。そんな奴らが来ても、私ぶっ飛ばせるから」
「うん、わかってるけど少しは僕にも守らせてね」
一般市民には、彼女は可愛い女の子としか映ってないだろう。
しかし、ユエは人類最強である立花夏月の娘だ。
腕力だけで彼女を屈服させようとしても、無駄である。
「僕が襲おうとしても、君は受け入れるんだろうなぁ…」
「何当たり前な事言ってるの?」
少し拒否してくれてもいいんだよ?
なんでそんなに受け入れるの君。
立ち止まってジッとユエを見る。
彼女は不思議そうな顔で、僕を見つめ返した。
「アオ?」
「…いや。君は、嫌なら嫌だって、ちゃんと言うもんね」
多分、想像ではあるけど、僕が彼女に無体を働こうとした時とか。
拒否られるだろうし、泣かれるだろう。
「アオに対しては嫌だって言うつもりはないよ? アオに乱暴な事されても私…」
「だから、公共の場だってば。顔赤らめて言わないで、可愛いから」
少し我慢の限界を超えた僕は辺りを見渡し、死角になっている部分を見つけ、彼女を連れ込む。
そしてユエの唇を自分ので塞いだ。
腰あたりに腕を回し抱きしめる。
「っ?!」
ユエが少し驚いた声を上げたけど、無視した。
深いのをした後、唇を離す。
ぼんやり僕を見上げているユエが愛しくて、僕は微笑んだ。
「アオ…」
「あんまり煽るとこうなるって覚えておいてね」
こくりと頷いた彼女は、僕の胸に顔を埋めて目を閉じた。
◆◆◆
次は何をしようとユエに聞くと、お腹が空いたと返答が来たので僕は考える。
あんまりがっつり系だと、女の子だし嫌かもしれない。
かと言って、サンドイッチ系だと大体いつも食べてるし。
麺類って、ユエ好きだっけ?
うーん、と悩んでいると、ユエが僕の服の裾を引っ張ってくる。
「ん? どうしたの?」
「アオ、魚介類って平気?」
ユエが指差した先。
回転寿司と書かれた看板があった。
「平気だけど…」
カヅキおばさんがこちらに来た時に、一回握ってもらって食べた事がある。
シャナは少し苦手なようだったが、僕や父様は平気で、ネタがとても美味しかった。
母様は少し感動して涙ぐんでいたっけ。
しかし、僕は看板に疑問を覚える。
回転?
寿司が回転するの?
どうやって?
寿司が高速で、縦横無尽に回転しながら飛び交っている様を想像した。