「…しみじみ飲んでる…」
「歳の割には、ジジくさいとは思ってるよ…」
僕が拗ねてそう言うと、ユエがクスクス笑い出した。
とりあえず頼んだ物は全て食べて、お会計をした僕らは店の外に出たのだった。
◆◆◆
もうそろそろ日が傾いて、寮に帰らなければなとユエと手を繋いで歩いている最中思った。
「帰りたくないなぁ…」
「帰りたくないって気持ちはわかるけど、そうもいかないでしょ。ユーリおじさん達が、僕らが外泊をしても何も言ってこないならまだしも、ちゃんと怒られるし、これから訓練じゃん」
そうなんだよねぇ、とユエは僕の腕に頭を付けてくる。
その動作が可愛らしくて、僕は彼女の頭を撫でた。
気持ち良さそうに目を細めて笑うユエにキスをする。
「アオ…だから…」
非難めいた目を向けられて、僕は微笑した。
ユエが可愛いのがいけない。
目でそう語ると、ユエはこちらから顔を背けてしまった。
「ユーエ?」
「知らないもん」
怒らせてしまっただろうか。
何回か彼女の名前を呼ぶが、それでも顔を見せてくれない。
少し困った僕は、ユエに提案した。
「ねぇ、ユエ。ちょっと寄り道するのと、このまま帰るのどっちが良い?」
「…どこ行くの」
ユエからの返答だけで、僕は彼女への愛しさで自分の表情が綻ぶのを感じる。
「この近くに、かなり大きい観覧車があったろ? それに乗らない? 確か、乗車時間15分くらいだったかな……嫌ならこのまま寮に帰るけど」
「…乗る」
やっぱりこっちを見てくれないユエに苦笑し、僕は携帯でチケットを取り、観覧車へと向かう。
乗り場に到着し、携帯のチケットを見せて彼女と乗り込んだ。
観覧車の窓から外を見る。
だんだん地上から遠ざかっていく景色が、夕陽と相まって綺麗だと感じた。
「……」
ユエはこちらを見ず、ずっと窓の外を見ている。
無言がこの場を支配していたが僕はそれが心地よく感じ、彼女自身も一枚の絵のようで、僕は窓からユエの方に視線を向けた。
「…そんなに見ても、何も出てこないよ」
「出してもらいたくて、見てるわけじゃないんだけど……悪かったよ。もう人前で君とイチャつこうとはしないよ。周りの男への牽制だったんだけど、君の機嫌を損ねるならやめるさ」
僕は両手を上げて、降参の意を示す。
それでも、彼女はこちらを見ない。
「ユエ、そんなに怒ってるの? それとも、もう僕は君の隣にいちゃいけない?」
「…何考えてるか、思考読めばいいじゃない」
そんな無茶な。
あんな高等テクニック、魔力をどれだけ消費すると思ってるんだ。
シャナやユエ辺りで、やっと人の心が読めるレベルだというのに。
「ユエ? 流石にそれをしたら僕倒れる可能性があるんだけど?」
「…ん」
ユエが手を差し出してきた。
僕は素直にその手を取る。
途端、念話とは違う感覚でユエの思考や記憶が僕の中に流れ込んできた。
少し頭痛がして、頭を押さえる。
「アオ?! 大丈夫?!」
ユエが少し狼狽えて、僕から手を離そうとした。
だが、その手を離すまいと僕は彼女の手を握りしめる。
彼女が今日思っていた事とか、僕にどうして欲しいのか。
今後、僕とどうなりたいのか。
全てのイメージを受け止めて、僕はユエを引っ張った。
引っ張った動きで、少しゴンドラが揺れる。
「きゃっ!?」
「ねぇ、ユエ。僕に迫られて嬉しかったの? もっと迫られたいって、周りに見せつけたいって…君も大概、人の事言えないよね」
ユエを僕の腕の中に抱き込み、耳元で囁いた。
ピクリと、ユエの肩が揺れる。
チラリと見えた彼女の耳は赤く染まっていて、恥ずかしがっているようだ。
「や、あの…」
「僕に思考読ませたの、マズかったねユエ。シンクに口説かれてるユタカが羨ましいとか。僕だって君に愛を囁いているのに、まだ足りないっていうの?」
彼女を少し動かし、向かい合うように座らせる。
ユエは狼狽えて、口をあわあわさせていた。
「あの、そんなんじゃ…」
「じゃないよね、ユエ。それに、この僕も好きだけど、王太子モードの僕も格好良いし、父様みたいになってるのも格好良いだっけ? どっちともで攻められてみたい…って、欲張りだなぁ」
そこまで言うと、彼女は居た堪れなくなったのか、僕の肩に顔を埋めた。
まだユエとのリンクが残っているようで、読ませるんじゃなかった、と若干後悔しているようだ。
「ユエ、選ばせてあげる。夜伽が出来るようになったら、どの僕で攻められたい?」
「……意地悪」
どうやら降参したようで、僕の首に腕を回して抱きついてくる。
僕はクスクス笑い、彼女の背をリズムよくポンポンと叩いた。
「やだ、アオ…眠くなる…」
小さい頃、妹達にしていたように背中を軽く叩いていたら、ユエからそんな事を言われ苦笑する。
「寝てもいいよ。ちゃんと部屋まで送るから。その後はユタカに起こしてもらってね」
「…やだ…アオの部屋がいい…」
首を横に振り、ユエは駄々を捏ね始めた。
眠くなるとこうなるのか。
可愛い。
「シャナもいるけど?」
「アオ…と…一緒に、寝たいの…っ!」