my way of life   作:桜舞

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91話『嫌ならこのまま寮に帰るけど』

「…しみじみ飲んでる…」

「歳の割には、ジジくさいとは思ってるよ…」

 

僕が拗ねてそう言うと、ユエがクスクス笑い出した。

とりあえず頼んだ物は全て食べて、お会計をした僕らは店の外に出たのだった。

 

◆◆◆

 

もうそろそろ日が傾いて、寮に帰らなければなとユエと手を繋いで歩いている最中思った。

 

「帰りたくないなぁ…」

「帰りたくないって気持ちはわかるけど、そうもいかないでしょ。ユーリおじさん達が、僕らが外泊をしても何も言ってこないならまだしも、ちゃんと怒られるし、これから訓練じゃん」

 

そうなんだよねぇ、とユエは僕の腕に頭を付けてくる。

その動作が可愛らしくて、僕は彼女の頭を撫でた。

気持ち良さそうに目を細めて笑うユエにキスをする。

 

「アオ…だから…」

 

非難めいた目を向けられて、僕は微笑した。

ユエが可愛いのがいけない。

目でそう語ると、ユエはこちらから顔を背けてしまった。

 

「ユーエ?」

「知らないもん」

 

怒らせてしまっただろうか。

何回か彼女の名前を呼ぶが、それでも顔を見せてくれない。

 

少し困った僕は、ユエに提案した。

 

「ねぇ、ユエ。ちょっと寄り道するのと、このまま帰るのどっちが良い?」

「…どこ行くの」

 

ユエからの返答だけで、僕は彼女への愛しさで自分の表情が綻ぶのを感じる。

 

「この近くに、かなり大きい観覧車があったろ? それに乗らない? 確か、乗車時間15分くらいだったかな……嫌ならこのまま寮に帰るけど」

「…乗る」

 

やっぱりこっちを見てくれないユエに苦笑し、僕は携帯でチケットを取り、観覧車へと向かう。

乗り場に到着し、携帯のチケットを見せて彼女と乗り込んだ。

 

観覧車の窓から外を見る。

だんだん地上から遠ざかっていく景色が、夕陽と相まって綺麗だと感じた。

 

「……」

 

ユエはこちらを見ず、ずっと窓の外を見ている。

無言がこの場を支配していたが僕はそれが心地よく感じ、彼女自身も一枚の絵のようで、僕は窓からユエの方に視線を向けた。

 

「…そんなに見ても、何も出てこないよ」

「出してもらいたくて、見てるわけじゃないんだけど……悪かったよ。もう人前で君とイチャつこうとはしないよ。周りの男への牽制だったんだけど、君の機嫌を損ねるならやめるさ」

 

僕は両手を上げて、降参の意を示す。

それでも、彼女はこちらを見ない。

 

「ユエ、そんなに怒ってるの? それとも、もう僕は君の隣にいちゃいけない?」

「…何考えてるか、思考読めばいいじゃない」

 

そんな無茶な。

あんな高等テクニック、魔力をどれだけ消費すると思ってるんだ。

シャナやユエ辺りで、やっと人の心が読めるレベルだというのに。

 

「ユエ? 流石にそれをしたら僕倒れる可能性があるんだけど?」

「…ん」

 

ユエが手を差し出してきた。

僕は素直にその手を取る。

 

途端、念話とは違う感覚でユエの思考や記憶が僕の中に流れ込んできた。

少し頭痛がして、頭を押さえる。

 

「アオ?! 大丈夫?!」

 

ユエが少し狼狽えて、僕から手を離そうとした。

だが、その手を離すまいと僕は彼女の手を握りしめる。

 

彼女が今日思っていた事とか、僕にどうして欲しいのか。

今後、僕とどうなりたいのか。

 

全てのイメージを受け止めて、僕はユエを引っ張った。

引っ張った動きで、少しゴンドラが揺れる。

 

「きゃっ!?」

「ねぇ、ユエ。僕に迫られて嬉しかったの? もっと迫られたいって、周りに見せつけたいって…君も大概、人の事言えないよね」

 

ユエを僕の腕の中に抱き込み、耳元で囁いた。

ピクリと、ユエの肩が揺れる。

 

チラリと見えた彼女の耳は赤く染まっていて、恥ずかしがっているようだ。

 

「や、あの…」

「僕に思考読ませたの、マズかったねユエ。シンクに口説かれてるユタカが羨ましいとか。僕だって君に愛を囁いているのに、まだ足りないっていうの?」

 

彼女を少し動かし、向かい合うように座らせる。

ユエは狼狽えて、口をあわあわさせていた。

 

「あの、そんなんじゃ…」

「じゃないよね、ユエ。それに、この僕も好きだけど、王太子モードの僕も格好良いし、父様みたいになってるのも格好良いだっけ? どっちともで攻められてみたい…って、欲張りだなぁ」

 

そこまで言うと、彼女は居た堪れなくなったのか、僕の肩に顔を埋めた。

まだユエとのリンクが残っているようで、読ませるんじゃなかった、と若干後悔しているようだ。

 

「ユエ、選ばせてあげる。夜伽が出来るようになったら、どの僕で攻められたい?」

「……意地悪」

 

どうやら降参したようで、僕の首に腕を回して抱きついてくる。

僕はクスクス笑い、彼女の背をリズムよくポンポンと叩いた。

 

「やだ、アオ…眠くなる…」

 

小さい頃、妹達にしていたように背中を軽く叩いていたら、ユエからそんな事を言われ苦笑する。

 

「寝てもいいよ。ちゃんと部屋まで送るから。その後はユタカに起こしてもらってね」

「…やだ…アオの部屋がいい…」

 

首を横に振り、ユエは駄々を捏ね始めた。

眠くなるとこうなるのか。

可愛い。

 

「シャナもいるけど?」

「アオ…と…一緒に、寝たいの…っ!」

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