ノーム1の月。
僕らは2年に進級した。
進級した際クラス替えがあったみたいで、シンクが僕やシャナと同じになり、ツルギがユエとユタカのクラスになってしまった。
「何でだし…!」
「ユタカとイチャつきすぎたんじゃない? それに、王族は一纏めにしておいた方が、何かあった時避難させやすいとでも思ったんじゃないかな」
ユタカと離されて若干不機嫌なシンクに、僕はそう返答する。
そんな僕は顔を上げず、本を読んでいたのだが。
「お前、ユエと一緒のクラスになりたくなかったのかよ」
「なりたいって言ったって、先生達の采配なんだから仕方ないだろ。それよりは、シャナの方が重症だと思うけど」
先程から一言も話さないシャナに、僕らは目を向ける。
姉は机に突っ伏し、一切動いていない。
ツルギと離れた事が、余程ショックなようだ。
「まぁ、休み時間になったら会いにくるんじゃね?」
「どうだろ…ツルギだしなぁ…」
昼休みとかならまだしも、授業の合間の休憩時間毎にシャナに会いには来ないだろうと思う。
ツルギの今までの行動から、次の授業の準備とか予習でもしてそうだ。
シャナの事どう思ってるのか、後で問いただしておこう。
「シャナ、そんな落ち込むなよ…」
「落ち込んでないもん…眠いだけだし…」
声に悲壮感が漂ってるんだけど。
おばさんも少し、そこ考えてあげれば良かったのに。
僕やシンクはともかく、シャナの専属護衛はツルギなんだし。
「てか、まだ専属護衛の件決まんねーの?」
「お前もかよ。人の心読むな…今度入ってきた親衛隊の若い子達、下心あり過ぎてとても殿下達に付けられる状態じゃありません、ってこの間ニーナ隊長が言ってた」
親衛隊に志願したのも、僕達に近寄りたいあわよくば側妃に、なんて思ってる人達ばかりらしい。
昔みたいに、平民と結婚出来ないというわけではないから、玉の輿狙いなんだろうけど。
「母様が何の苦労もなく、父様と結婚できたわけねーだろうに」
「何だっけ、シンデレラストーリーってやつ? 母様は元々平民だったから、自分達もなんて思ってるんだろうけどね」
父様も婚約者はいたけど、魔王が現れた時に亡くなっているらしいし。
そのおかげで、シャルと結婚できたから、あれには少し感謝してやる、って言ってたけど…聞く限りすごい人だったみたい。
ユエがあんなじゃなくて良かったと、亡くなった人には悪いけど本気で思ってしまった。
そんな雑談をしていたら、教室にカヅキおばさんが入ってくる。
若干眠そうにしているのは、早朝の訓練のせいだろう。
今日、一回だけ母様に一太刀入れられたのだ。
それに対して高笑いを始めた母様が暴走しかけたのを、カヅキおばさんが必死になって止めていた。
あんまり魔力を引っ張りすぎると、躯体が壊れるとかなんとか。
母様の本体、あそこでずっと眠りっぱなしなのに、よくあんなに動けるなとは思っているけど。
流石カヅキおばさんの技術。
王太子でなかったら、弟子入りしたいくらいだ。
「私が受け持つクラスの諸君。おはよう。ふぁあ……担任の立花夏月だ。2学年になったからと、腑抜けないように。下に示しがつかんからな」
今確実に欠伸した貴女が言うんですか、カヅキおばさん…。
そう思うと、僕の方にチョークが飛んできたので、体を傾けて避ける。
僕が避けた事により、後ろの席のクラスメートに当たった。
ごめん、と心の中で謝る。
「避けるな、グンジョウ」
「反射神経の訓練ですか、立花先生? それとも、受け止めた方がよろしかったですか?」
ニコリと笑ってみせると、舌打ちされた。
何故だろうか。
最近心を読まれる事が多々ある為、あまり深く考えず他愛ない事を考えるようにしているというのに。
「グンジョウ、後ろに被害を出さないようにするなら、受け止めた方が良かったんじゃないか?」
「受け止めても良かったけど、威力がわからなかったし。流石に、昏倒するような威力で投げては来ないだろうとは、予想してたけど」
シンクがこっそり言ってくるが、僕は肩を竦めて答えた。
後ろを軽く振り向き、ごめんと後ろの席のクラスメートにジェスチャーで謝罪を伝える。
途端風切音がしたので、今度はそれを受け止めた。
身体強化を手に集中させたので、少し痛いだけで済む。
「立花先生、流石に周りに被害が出るのでやめていただけませんか?」
「後ろを向いていたお前が悪いだろう」
それはそうなんだけど、不意打ち気味で来るのやめてくれないかな、本当に。
受け止めた方の手のひらを見てみると、粉々になった赤のチョークがあって、少しゲンナリする。
いくらあまり使わないからって、学校の備品投げつける教師がどこにいるっていうんだ。
ここにいるけど。
「よーし、これから体育の授業を始める。お前らグランドに出ろ」
確かに一限目は体育となってはいたが、カヅキおばさんって数学教師じゃなかったっけか。
…なんか憂さ晴らしで、やってるような気がしてきたぞー。
◆◆◆
「グンジョウ、お前何かやった?」