「ユエ、そういうとこだと思う…」
「ユタカは黙ってて」
少し落ち着けという風にユタカが声をかけるけど、ユエはニコニコしながら彼女に黙れと告げる。
まぁ、僕がシスコンなのは認めるけど。
家族以上にユエが大切なのに。
だから、隠し事は無しにしてもらいたかっただけだ。
前にユエだって、僕が隠そうとしていた事を根掘り葉掘り聞き出してきたのだし。
「う…それは…」
そう思うと、ユエはバツが悪そうに目を逸らした。
そんな彼女の様子を見て、僕はため息をつく。
僕ら以外のメンバーはもう先に行ったようで、この場には僕とユエしかいない。
「…結構便利だね、これ。喋らなくても意思疎通できるの。僕、もう一切喋らないから。僕の意識、勝手に読み取ってくれる? ユエ」
じゃあ、食堂に行こうかと彼女の横を通り過ぎようとしたが、ユエから腕を取られ、引き止められた。
「ちょ、待ってアオ!」
「………」
どうかしたのだろうか?
早く行かないと、お昼食べられないで終わるんだけど。
思いつつユエを見ると、少し涙目になっている。
少し意地悪し過ぎたかな。
でも、先にやってきたのはユエの方だ。
ちゃんと謝るまで、これは続けるつもりだった。
「ごめ…やだ…アオの声聞けないの…やだ…」
ちゃんと、ごめんなさいって言って欲しいんだけどな。
あまり意地悪すると、ユーリおじさんに殺されるだろうか。
こんな痴話喧嘩に父親出てくるかな…?
別の思考をしていると、後ろから紙袋を当てられた。
そちらを振り向くと、呆れた目をしたシンクが僕を見ている。
紙袋を受け取り中を見ると、軽食類が入っていた。
どうやら長引くと思われたらしい。
ありがたく貰う事としよう。
「あんま彼女いじめんなよ。泣きそうになってんじゃん」
「いじめてるつもりないんだけど…。先にユエがやったんだから、僕だってそれをする権利があるよね? って言いたかっただけ」
ユエは僕らの背後をチラリと見る。
彼女が見ている方に目をやると、ユタカが呆れたようにユエを見ていた。
まぁ、シンクがユタカを置いてくるわけがないので、いるのはわかっていたが。
「ユタカぁ…」
「私、シンクにバレてるのわかってて、黙ってるだけだよ? でも、さっきのやりとり見てて思ったんだけど。ユエ、グンちゃんの隠し事暴いたんでしょ? それはそう返されても仕方ないと思う」
ユエが情けない声をあげたが、ユタカが正論で斬り伏せる。
うっ、という声を出し、ユエは俯いた。
四面楚歌というやつだな、と彼女を見てて思う。
「ユエ…少しは気の強いとこ直さないと、グンちゃん疲れると思うよ? こういう喧嘩も増えるよ? あんまり喧嘩したくないって、この間言ってたじゃん」
「…わかってるよ…」
声が震えてきてて、ユエが泣きそうなのがわかった。
僕はため息をついて、今回は折れる事にする。
「もういいよ、ユエ。ごめんね。話してくれるまで待つから」
「……っ!!」
僕の腕を掴む手に力が込められる。
別に痛くはないけど、圧迫されてるなぁ、となんとなく思う。
瞬間、景色が変わった。
目の前からシンク達が消え、何処かの森だと思われる木々が、僕の目に入る。
「ユエ…これ、カヅキおばさんに怒られるやつだと思うんだけど。てか、ここ何処? 校舎の近く?」
「…ごめんなさい…隠し事して、ごめんなさい…」
問いかけると、ポロポロ涙を溢しながらユエが謝ってきた。
僕は苦笑しながら、彼女を抱きしめる。
「うん、許すよ。でも、君が言ったんだからね? 隠し事はなし、って」
「うん…」
反省しているようで、ユエは素直に頷いた。
彼女の頭を撫でながら僕は聞く。
「で? 何を隠していたの?」
「……ユタカと2人で、それぞれの彼氏に手編みのマフラー…編んで、あげようって…アオ達の誕生日、寒い季節だから…今から頑張れば、ちょうど良いねって…」
あぁ、だから言いたくなかったのか。
僕は愛おしさで、ユエの顔を上げ、そのままキスをする。
唇を離した後、彼女の目尻にもキスを落とした。
「アオ…」
「楽しみにしてる。好きだよ、ユエ」
私も、とユエは言い、僕の背に手を回して抱き返してくる。
暫くそうしていたのだが、魔力の揺らぎを感じて彼女を僕から離した。
「…アオ?」
首を傾げていたユエだが、僕がある一点を見ているのに気付き、そちらに顔を向け…身体ごと強張ったようだった。
「ユエ、貴様…校則違反だぞ? わかってやったなら、反省文何枚必要になるだろうなぁ?」
「マ、ママ…」
誰もが見惚れるような笑顔で、ドスの聞いた声を出しながら、ユエへ語りかけるカヅキおばさん。
流石ユエの母親だ。
怒り方そっくり。
「グンジョウ、貴様もだ。ユエにこんな行動させたのは貴様だろうが。責任逃れするんじゃねぇぞ?」
「いつ誰が、責任逃れしたんですかね立花先生。反省文を書けというなら書きますよ。何なら、経緯とかも書きましょうか?」
僕がそう反論すると、カヅキおばさんは面白そうなものを見る目で僕を見た。
珍獣か何かなのか、僕は。