my way of life   作:桜舞

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96話『あんま彼女いじめんなよ』

「ユエ、そういうとこだと思う…」

「ユタカは黙ってて」

 

少し落ち着けという風にユタカが声をかけるけど、ユエはニコニコしながら彼女に黙れと告げる。

 

まぁ、僕がシスコンなのは認めるけど。

家族以上にユエが大切なのに。

だから、隠し事は無しにしてもらいたかっただけだ。

 

前にユエだって、僕が隠そうとしていた事を根掘り葉掘り聞き出してきたのだし。

 

「う…それは…」

 

そう思うと、ユエはバツが悪そうに目を逸らした。

そんな彼女の様子を見て、僕はため息をつく。

僕ら以外のメンバーはもう先に行ったようで、この場には僕とユエしかいない。

 

「…結構便利だね、これ。喋らなくても意思疎通できるの。僕、もう一切喋らないから。僕の意識、勝手に読み取ってくれる? ユエ」

 

じゃあ、食堂に行こうかと彼女の横を通り過ぎようとしたが、ユエから腕を取られ、引き止められた。

 

「ちょ、待ってアオ!」

「………」

 

どうかしたのだろうか?

早く行かないと、お昼食べられないで終わるんだけど。

 

思いつつユエを見ると、少し涙目になっている。

少し意地悪し過ぎたかな。

でも、先にやってきたのはユエの方だ。

ちゃんと謝るまで、これは続けるつもりだった。

 

「ごめ…やだ…アオの声聞けないの…やだ…」

 

ちゃんと、ごめんなさいって言って欲しいんだけどな。

あまり意地悪すると、ユーリおじさんに殺されるだろうか。

こんな痴話喧嘩に父親出てくるかな…?

 

別の思考をしていると、後ろから紙袋を当てられた。

そちらを振り向くと、呆れた目をしたシンクが僕を見ている。

紙袋を受け取り中を見ると、軽食類が入っていた。

どうやら長引くと思われたらしい。

ありがたく貰う事としよう。

 

「あんま彼女いじめんなよ。泣きそうになってんじゃん」

「いじめてるつもりないんだけど…。先にユエがやったんだから、僕だってそれをする権利があるよね? って言いたかっただけ」

 

ユエは僕らの背後をチラリと見る。

彼女が見ている方に目をやると、ユタカが呆れたようにユエを見ていた。

まぁ、シンクがユタカを置いてくるわけがないので、いるのはわかっていたが。

 

「ユタカぁ…」

「私、シンクにバレてるのわかってて、黙ってるだけだよ? でも、さっきのやりとり見てて思ったんだけど。ユエ、グンちゃんの隠し事暴いたんでしょ? それはそう返されても仕方ないと思う」

 

ユエが情けない声をあげたが、ユタカが正論で斬り伏せる。

うっ、という声を出し、ユエは俯いた。

 

四面楚歌というやつだな、と彼女を見てて思う。

 

「ユエ…少しは気の強いとこ直さないと、グンちゃん疲れると思うよ? こういう喧嘩も増えるよ? あんまり喧嘩したくないって、この間言ってたじゃん」

「…わかってるよ…」

 

声が震えてきてて、ユエが泣きそうなのがわかった。

僕はため息をついて、今回は折れる事にする。

 

「もういいよ、ユエ。ごめんね。話してくれるまで待つから」

「……っ!!」

 

僕の腕を掴む手に力が込められる。

別に痛くはないけど、圧迫されてるなぁ、となんとなく思う。

 

瞬間、景色が変わった。

目の前からシンク達が消え、何処かの森だと思われる木々が、僕の目に入る。

 

「ユエ…これ、カヅキおばさんに怒られるやつだと思うんだけど。てか、ここ何処? 校舎の近く?」

「…ごめんなさい…隠し事して、ごめんなさい…」

 

問いかけると、ポロポロ涙を溢しながらユエが謝ってきた。

僕は苦笑しながら、彼女を抱きしめる。

 

「うん、許すよ。でも、君が言ったんだからね? 隠し事はなし、って」

「うん…」

 

反省しているようで、ユエは素直に頷いた。

彼女の頭を撫でながら僕は聞く。

 

「で? 何を隠していたの?」

「……ユタカと2人で、それぞれの彼氏に手編みのマフラー…編んで、あげようって…アオ達の誕生日、寒い季節だから…今から頑張れば、ちょうど良いねって…」

 

あぁ、だから言いたくなかったのか。

 

僕は愛おしさで、ユエの顔を上げ、そのままキスをする。

唇を離した後、彼女の目尻にもキスを落とした。

 

「アオ…」

「楽しみにしてる。好きだよ、ユエ」

 

私も、とユエは言い、僕の背に手を回して抱き返してくる。

暫くそうしていたのだが、魔力の揺らぎを感じて彼女を僕から離した。

 

「…アオ?」

 

首を傾げていたユエだが、僕がある一点を見ているのに気付き、そちらに顔を向け…身体ごと強張ったようだった。

 

「ユエ、貴様…校則違反だぞ? わかってやったなら、反省文何枚必要になるだろうなぁ?」

「マ、ママ…」

 

誰もが見惚れるような笑顔で、ドスの聞いた声を出しながら、ユエへ語りかけるカヅキおばさん。

流石ユエの母親だ。

怒り方そっくり。

 

「グンジョウ、貴様もだ。ユエにこんな行動させたのは貴様だろうが。責任逃れするんじゃねぇぞ?」

「いつ誰が、責任逃れしたんですかね立花先生。反省文を書けというなら書きますよ。何なら、経緯とかも書きましょうか?」

 

僕がそう反論すると、カヅキおばさんは面白そうなものを見る目で僕を見た。

珍獣か何かなのか、僕は。

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