my way of life   作:桜舞

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99話『喜怒哀楽の喜と楽しかない』

結果論で言えば、確かにそうなのだが。

 

「というか、ネヴァーマインドって家あったっけ…?」

「ベルカからの留学生だって言ってたぜ。白々しく、別人格を装ってな。大体、うちの下流から中流にミドルネームが発現するわけねーじゃん」

 

そう。

だから引っかかったのだ。

 

僕ら王族や、上流貴族である21貴族には、生まれた時に教会で洗礼を受けて、神からミドルネームを貰う。

王族は花、21貴族は宝石のミドルネームだ。

 

なんでそうなっているのか、誰も知らない。

 

おおかた最高神の趣味でしょ、なんて母様は言っていたけれど。

 

「一体何が目的で、ここに来たんだ…?」

「あの、俺が聞きに行ってきましょうか…?」

 

ツルギが手を挙げるが、僕とシンクは却下する。

 

「この脳筋! またやらかす気かお前は?!」

「流石に、今度はシャナが泣くと思うよツルギ?」

 

シャナの名前を出され、ツルギは姉の方を見た。

少し不安そうに自分を見るシャナと目が合ったのか、すみませんでした、と僕らに謝ってくる。

 

「明日全員で行ってみる?」

「ツェリちゃんと同じクラスだったの? そこは調べてあるんだよね、シンク?」

 

ユタカが提案し、ユエはジロリとシンクを見た。

もうユタカは僕を好きではないし、シンクもシンクで、ユタカを溺愛しているのは変わらないけれど、彼女のための自己犠牲をしようとはしていないと思う。

ユエは何がそんなに、気に入らないのだろうか。

 

「お前らに紙袋渡した後、後つけたよ。同じクラスだった。明日行くのは賛成。俺を見ても動揺はしなかったが、グンジョウが行ったらまた違う反応をするかもしれんしな」

 

シャナが冷蔵庫からきゅうりの漬物と麦茶を出してくる。

姉の主婦度が上がっている気がしたが、ギロリと睨まれたので、僕の思考はシャナには筒抜けなのだろう。

ごめん。

 

「僕が行ったところで、何も変わらないかもしれないけど? 大体、桃華の性格最悪じゃないか。あんなに感情がぐちゃぐちゃしてる子、初めて見た」

 

笑ったかと思えば、その笑った顔が不気味に歪むし、怒ったかと思えば、笑うし。

情緒不安定なんだろうか、彼女は。

むしろ喜怒哀楽の喜と楽しかないのではないだろうか?

 

それにツェリ。

あれ以来、別人のようになってしまった彼女を、僕は苦手に思ってしまっていた。

幼馴染だったはずなのに。

 

「アオ…」

 

少し不安そうに僕を見つめるユエに、微笑みかける。

 

「大丈夫。みんなで行くんだろ? 僕一人じゃないし、ユエもいるから」

「あーあ、羨ましいー」

 

食事を終えたシャナが、麦茶を飲みながら棒読み加減で言った。

ツルギが横で少しあたふたしているが、シャナも彼の様子に気づいていないようだ。

 

似たもの同士なのになぁ…。

 

そう思いつつ、僕はユエに念話を飛ばす。

 

〈ねぇ、ユエ。聞いてもいい?〉

〈周りに聞かせられない話? 別に良いけど…こういう時のアオ、結構爆弾投げてくるから怖いんだよね〉

 

投げてるつもりは全く無いんだけど。

疑問に思った事を聞いてるだけで。

 

〈そう言うなら、聞くのやめるよ〉

〈別に良いよ。で、何?〉

 

僕ら以外は別の話に花を咲かせ始めたので、意識が逸れてくれて助かった。

その話の中心にいるのはシャナとシンクなので、僕とユエが話しやすいようにしてくれているのかもしれなかったが。

察する能力が高い姉弟で、本当に良かった。

 

〈なんで君、シンクにそんなに突っかかるの? まだ気に入らない?〉

〈あー、それ? 考えてもないヤバい事とか、聞かれるのかと思った〉

 

僕を何だと思っているのか、彼女は。

あとヤバい事とは何だろうか?

 

〈思ってる事わかるけど、何となくでしか言ってないから、根掘り葉掘り聞かないでね? アオに隠し事なんてもうないから。えーと、シンクが気に入らない理由、だっけ? あのにやけ顔と、なんでも見透かしているように見てくる目。あとたまに、なんか諦めたような表情して、ユタカを心配させてるとこ〉

 

チラリとシンクを見ると、楽しそうにツルギをイジっている所だった。

僕の観察眼が足りないという事なんだろうな、きっと。

 

〈そっか。まだ夕陽について引き摺っているのかと…〉

〈私の夕陽君は、アオだけだし。それとこれとは別。大体アオと同じ顔で、あんなにやけ顔とか…多分ユタカのためなんだろうけど。一体いつまで続けるのやら。まぁ私も、アオと同じ顔だけど別の色だから許せてるわけで〉

 

机の下で、ユエは拳を握りしめて震わせている。

顔は窓の外を眺めているけど、光の反射で鏡となっている窓から映る彼女の表情が、ムッとしているのはわかっていた。

 

シンクは今、髪も目の色も赤にしていて青に戻していない。

ユタカは吹っ切れているとは思うんだけど。

 

僕は彼女の手に自分の手を添える。

ユエが手を広げてきたので、その手に指を絡めて握った。

 

〈愛してるよ、ユエ〉

〈いきなり突拍子もなく、そう言うところ陛下そっくりだねアオ。でも、私も。愛してる、アオ〉

 

僕の方を見て微笑む彼女は、本当に可愛い。

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