ル・フェイ・オラトリア   作:わたーめ

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泉精霊の加護

 

「ふふ、気持ちの良い顔で寝ているのね。可愛いわね、リュー」

 

「はい、アストレア様。とても尊く感じます。リヴェリア様、セツナ様は本当に愛子様なのでしょうか?」

 

「あぁそれは間違いがないな。お前も感じているのだろう?」

 

「今身白を全て投げ捨てても良いとすら感じます」

 

抱き抱えている銀糸の妖精にリューは湧き上がる母性に戸惑いを覚え、そして子供特有の高い体温が心地よく感じさせる。

その長い銀糸の髪はさらさらと手触りが良く、撫でればお耳をぴこぴこと実に愛らしいく反応を示す。長い銀糸は黒い質の良いリボンで一纏めにされており、ポニーテールを崩さぬ様リューは注意しつつ撫で、油断すると唇をその頬に落としたくなる感情に揺さぶられてしまうのを感じていた。

 

「同盟とロキ・ファミリアの探索時の保護、私達で承るわ。ロキにはもう伝えたし、こんな可愛い子は守らないとね」

 

「神アストレア、感謝を。団長にはもう伝えてあるのか?」

 

「アリーゼにはある程度伝えてあるけれど・・・一目見たら勝手に守り始める気もするわね。『これが使命って奴ね!!』とか言って。」

 

しばし三者で軽く今後の事を話し合い、リューはそっとベットへとセツナを優しく寝かせた。

 

「御身は必ず御守りいたします。どうか安らかにお休み下さい。」

 

「すまない、手間をかけたなリオン。」

 

「いえ、もっと強く成らねばと自覚致しました。この地は未だ悪辣な悪意が蔓延っています。最低でもレベル4は欲しいと思える程に。」

 

「我々も同じ様な物だ。この子に出会えた事を大聖樹に感謝を。」

 

エルフ二人は遠く離れた聖樹へと祈りを捧げ、アストレア・ファミリアは黄昏の館を去っていくのであった。

 

「んゆ・・・まもらにゃば・・・」

 

「ふふ、お前を守るのは我々だぞ?」

 

ベットで眠る銀糸の妖精を、翠の妖精が優しく抱き締め、部屋を後にした。

 

 

 

「第16回!セツナたん緊急保護者会を発令やー!!!」

 

「朝からご機嫌だね、ロキ」

 

「うるさいぞ、明日にはダンジョンだと言うのに」

 

「セツナが起きてしまう、もう少し静かにしろ、ロキ」

 

ダンジョン探索を翌日に控え、若干のピリピリとした空気を漂わせ始めているファミリア。三幹部も他団員と大差は無く、まだ見ぬ強敵に想いを馳せている。

フィンは幾度と階層主までの道筋と戦闘、期間までのシュミレートを脳内で繰り返し、

ガレスは戦士たる思考にて戦意を昂らせ、

リヴェリアは沸き立つ心を眠るセツナを抱え、落ち着かせていた。

 

「おっと!せやな!とりまこれを見ればウチの爆上げテンションもわかるで!セツナたんまじ天使ぃぃ!!」

 

ばん!と机に叩き置かれた羊皮紙にはセツナのステイタスが写し出されており、集まった三人が読み込む。

 

 

■ ■ ■

 

セツナ・ル・フェイ

Lv.1

力: I 20

耐久: I 10

器用: H 100

敏捷: I 20

魔力: E 315

 

■発展アビリティ

神秘:I

 

■魔法

 

泉精霊の加護(アヴァロン・ブレス)

・対象者と自身へ水上歩行、汚れと穢れへと耐性を授ける

・任意での解除可能、常に微弱な魔力を要する

・レベル上昇により付与効果が変化する

 

詠唱文

 

『旅立つは勇者 授けるは儀典の観測者

 進め 前へ 振り返る事無く

 霧雨降り注ぐは 我が故郷が泉

 どうか どうか 彼の地へと至らん事を

 泉の虚より現れし 我が名はル・フェイ』

 

空きスロット5

 

■スキル

 

精霊の愛子(せいれいのいとしご)

・魔力成長に高補正

・魔法発現率超高補正

・精霊種からの好感に超高補正

 

幻想創造(ファンタズム・メイカー)

・魂に記憶されし道具の創造権

・レベルにより創造権の拡大

・魔力消費による射出と回収

・発展アビリティ神秘の獲得

 

魔力放出

・魔力消費による身体能力の向上

 

 

■ ■ ■

 

 

「これは・・・」

 

三者共に驚愕と、何よりも喜びの感情をすやすや眠る幼子へと向け、

にやにやと笑みを浮かべる主神が口を開く。

 

「かわええやろー?階層主がアンフィスバエナって分かってからのこの魔法の発現や、しかも・・・」

 

「あぁ、恐らくだがこの魔法は掛けられた者が解除しない限り『恐らく永続する』」

 

「せや、フィン。これがどんだけ凄いか、わかっとるな?」

 

「もちろんさ、安易に知られればマズイなんてものじゃない。ただでさえ多数のレアスキルに、魔法スロットが6つなんてね・・・」

 

「んあー、せやなぁ、たまーに四つやったり、逆に一つだけって子供もおるけどな。リヴェリアでもスロットは3つ。まぁスキル入れたら9通りになるんか?」

 

「そうだな、私が発現した魔法で言えば9つの魔法を使えると言えるであろう。」

 

「それにしても、魔力の伸びは凄まじいな、未だダンジョンにも行った事が無いと言うのに。」

 

「まぁ、才能って奴やろな。セツナたんの魔法はあれやな、昔話の精霊の加護によー似とる。というかほぼまんまや。精霊の血が濃いのは確定やな。恐らく自身の強い願いでバンバン魔法覚える可能性が高いで、変なトラウマとかは絶対にNGや。主神命令やから、ええな?」

 

ほんの少し神威を溢れ出しながら主神は眷属へと神意を下す。

 

「「「了解」」」

 

「とりまセツナたんが起きたら効果の検証やなぁ〜」

 

 

 

 

微睡みから目覚め、いつもの訓練所へと辿り着いた私は、主神より魔法の発現を教えられた。

 

嬉しい、とてもとても嬉しい。

効果は水上歩行と汚れへの耐性を半永久的に。

乙女の加護やぁー!とロキ様は狂喜乱舞。

 

訓練所へと集まった保護者たる三幹部へと向けて、私は魔法の検証に入った。

 

『旅立つは勇者 授けるは儀典の観測者

 進め 前へ 振り返る事無く

 霧雨降り注ぐは 我が故郷が泉

 どうか どうか 彼の地へと至らん事を

 泉の虚より現れし 我が名はル・フェイ』

 

身体から黄金に輝く魔力が立ち上り、キラキラと輝く。

 

「泉精霊の加護(アヴァロン・ブレス)」

 

意識をリヴェリアへと向けると、私から溢れ出した黄金の魔力がリヴェリアを包み込み、しばらく淡く発光してからその身体へと吸い込まれて行った。

 

「とても美しい魔法だね。どうだい?リヴェリア効果は感じるかい?」

 

「セツナの暖かみを感じる。水の上は・・・歩けるな。汚れは・・・・ふむ、衣服含めて弾いているのを感じる。魔力消費に関しては、感じる限りだと自然回復の方が勝っている。問題ない。」

 

あらかじめ用意した桶の水の上へと立ち、砂を衣服と肌にかけるも、サラサラと弾かれていた。

 

「ふむ、了解した。セツナ、まだ魔法は使えるかい?」

 

「ん!あと3回はできそう!!」

 

その後、フィンとガレスに魔法を使い、一度フィンが加護の効果を切ってから再度フィンに魔法を使った所で、三人の会話を耳に入れながら私の意識は途切れるのだった。

 

「これならば・・・・」

 

「ああ、前衛のーーー」

 

「安全性と探索時の汚れはーーーー」

 

 

「では、いってくるよ」

 

「おー!無事を祈ってまってるでえ!」

 

「ん!まってる!リューと!」

 

「帰って来たら私達の番ね!」

 

「セツナ様、髪が私の顔に・・・」

 

朝日が少しだけ顔を覗かせ始めた早朝、ロキ・ファミリアの主要人物達はダンジョンへと向かう。

黄昏の館へとアストレアファミリア一同がセツナを受け取りに訪れ、セツナはリューを見かけた途端に突撃からの抱っこを要求。

抱き抱えられ、ここが私の定位置なのだと言わん限りにむふーと鼻息を鳴らしつつ、家族の旅立ちを見送った。

 

『不思議と、大切な家族は大丈夫』と、謎の確信が胸の内に有り、セツナ自身は疑ってはいない。何処からその確信を得ているのかの思考すらせずに。

 

ロキがアストレアへとくれぐれも自分を守る事を言明し、セツナへは、「セツナたんがええと思ったんなら、魔法かけてあげ」と一頻り撫で回してから街の中央に屹立するバベルへと向かって行った。

 

まるでコアラの様にリューへとへばりついているセツナに大して、アストレアファミリア一同は可愛いやらなにやらかまおうとするも、アストレアとリュー以外には若干の壁が有り、返事は基本的に「ん」の一言と、嫌になってくるとリューの胸へと顔を隠してしまう。

絵も言えぬ優越感を感じ自然とドヤ顔になるリューに対して、アリーゼやカグヤ達団員は苛立ちを感じつつも、ホームへと向かうのであった。

 

 

「たっだいまー!」

 

アリーゼが大きな声で帰還を宣言し、どかっとソファへと座る。

 

「それにしても、えるふとは言え余程堅物へと懐いておりますねぇ。こんなに愛らしいのに、口惜しい。」

 

「カグヤ、セツナ様へと気軽に触れるな。近づくな。御身は世界の至宝なのです。」

 

「うわぁ、まるで神様みたいな扱い。セツナ殿も疲れるのでは?」

 

「矮小な身でセツナ様の御心を決めるな!私はいつもやり過ぎてしまうぞ?」

 

「あらぁ、野蛮なえるふは怖いわぁ」

 

カグヤ・ゴジョウノとリュー・リオンと言い合いをぼけっと眺めながらアリーゼが主神と小人族であるライラへと話しかける。

 

「しっかし、あのロキん所が急に子守と同盟はびっくりしたわね。なんか古代の王族?なんでしょ?あとめちゃ可愛い」

 

「そうね、可愛いわね、アリーゼ。家に来てくれないかしら?」

 

「闇派閥の前に探索系とバトルなんでごめんだぜ?勇者(ブレイバー)と知恵比べなんて負け確定じゃねーかよ」

 

「そうねぇ」

 

「ま!なんでも良いわ!目の保養だし、リューに任せて私達はパトロールと行きましょうか!!」

 

「了解だよ、団長。」

 

 

セツナは相変わらずリューにひっつき、事情を知っているとは言え、一度入浴時にリューが何やら顔を赤く染めるものの特に問題も無く数日過ごした。

黄昏の館での日々と基本は変わらないものの、リューとの鍛錬では、幻想創造での射出での命中率の訓練や、現状任意の場所から一つしか出来ない射出点を増やせないかと試行錯誤を繰り返すも成果はあがらず。

リューが眠ってる隙にセツナが加護を与えたり、微精霊にアストレアファミリア一同への『お願い』をしたりをする毎日を過ごす中、訓練の為アストレアファミリアのホームに有る内庭での訓練中に、セツナは『運命』に出会う。

 

 

 

 

「そうです。大分正確に的に当たる様になりましたね、セツナ様。

これならばゴブリンやコボルト程度であれば物の数では無いでしょう。

今は歩きながらが限界ですが、訓練を続ければ走りながらでも敵を穿つ事が叶うと思います。」

 

「ん!がんばる!」

 

リューが言うには魔力を沢山込めれば、レベル2では避けられない速度で打ち出せると褒められご満悦。もっとがんばるぞいと的を睨んでいると、外に『どうにも気になる』感じがして、視線を向ける。

 

「きれー・・・でも、とっても『つらそう』」

 

偶然なのか、必然なのか、『その人』が横目で私と視線が交わった。

白雪の様な白髪に金色の瞳

黒のドレスに包まれた紛れもない美少女

だけどお腹か胸の辺りに黒いモヤモヤがその輝く玉体を蝕んでいるのが見て取れる。

理由はわからない。

でも、絶対に『今』触れて、話して、魔法を使わなくてはいけないと思った。

 

不思議と魔法を使いたい相手は心の中から『わかる』

この人は今すぐに

この人はまだだめ

この人には絶対だめ

と、出会う人々を一目見ただけで、そう心が自動で判断する。

 

故に、足が勝手に動き出す。

 

「セツナ様!?・・・っ!?あれは!静寂!?いけません!レベル6です!ヘラ・ファミリアです!セツナ様!」

 

後ろから聞こえるリューの声を無視して、私は『その人』へとたどり着く。

 

「なんだ?お前は。エルフか?」

 

「む・・・・」

 

近くで見ても黒いモヤ・・・直感に従うならば病魔に対して、苛立ちと初めての感情が湧き起こる。言うなればこれは『殺意』。

目の前に現れたる病に対して、私は不倶戴天たる敵意を実らせ、口を動かす。

 

『旅立つは勇者 授けるは儀典の観測者

 進め 前へ 振り返る事無く

 霧雨降り注ぐは 我が故郷が泉

 どうか どうか 彼の地へと至らん事を

 泉の虚より現れし 我が名はル・フェイ』

 

「む?魔法か?敵意は・・・お前、まさか『見える』のか?」

 

「泉精霊の加護(アヴァロン・ブレス)」

 

溢れ出す黄金の魔法が、白い人へと吸い込まれる。

無事に加護が発動し、私は再度黒いモヤへと意識を向けると、多少収まってはいるがまだまだその身体を蝕み、犯している事に腹が立つ。

私はこの瞬間心に決めた。

 

『この黒い奴を何が何でもぶち殺す』と。

 

「これは・・・おい、そこの金髪エルフ。この銀髪のチビは何をした?ファミリアはどこだ?」

 

「っ!私はアストレアファミリアのリュー!このお方はロキファミリアのセツナ様だ!」

 

「アストレア・・・?あぁ、最近正義だ治安だと煩いガキ共か。

 それで?こいつは何を・・・っ!?」

 

何やら会話をしているが、私はそんな事に構う余裕が無い。

ずっと心の底からこの人を『助けろ』『なんでもしろ』『血を与えてみろ』と沸き立つ『何か』が溢れ出していてそれどころじゃない。

生憎ロキから恩恵の更新時に使う様な針は無いので、白い人の後ろを向いて、幻想創造にて剣を自身の腕が切れる様に射出する。

 

「「!?」」

 

二人の驚く声が耳入り、更にはとんでもない痛みに涙がポロポロと溢れ出す。

でも、だけど、『そんな事より』

ばっと腕を白い人に差し出しながら、

 

「のんで!!」

 

「お前、何を」

 

「セツナ様!?すぐにポーションを!!」

 

「おねがい、のんで」

 

黄昏の瞳をじっと見つめて居ると、一度白い人が目を閉じてから、私の血が溢れ出す腕を取り、口を付け血を啜った。

リューの怨嗟とも取れる叫びが聞こえるが、白い人が小さく『福音(ゴスペル)』と呟くと吹っ飛んでしまった。

 

「お前、いや、セツナ、これは?」

 

大分フラフラして意識が朦朧とするも、白い人の黒いモヤが大分小さくなり、『これで後は▫️▫️で』と『何か』から確信し、意識を失った。

 

 

 

偶々、アイテム類の補充の帰りだった。

リヴァイアサン討伐に向けての準備期間。

ファミリア全体で資金と、あわよくばのレベル上昇狙いの鍛錬と探索の日々の中、私は『それ』に出会った。

 

最初は拙いながらも珍しい魔法だとなんとなく見かけただけだったが、

視線がこの銀糸の妖精と合わさった瞬間に足が止まった。

 

とてとてと近くまでやって来たと思ったら、急な詠唱。

敵意は感じないし、私には『魔法』が効かない

それに妙な『受け入れたい』と自然に思い眺めて居ると、黄金の輝きが身体に降り注いだ。

じっと銀糸の妖精は私の『心臓』と『内臓』を睨めつけており、まさか『気がついている』のかと疑い、後ろから走り寄って来るエルフへと問いかけていると、その『子供』はあろう事か自身の腕を切り裂き、私に血に濡れた腕を差し出した。

 

「のんで」

 

2度、真っ直ぐな瞳を向けられながら懇願され、

そのポロポロ泣く姿に何とも言えぬ感情を覚えながら私は口をつけた。

 

その血を飲み込んでからの『体調』は劇的であった。

常にこの身体を苛む疲労と確実に擦り減っていた命の砂時計が変わる。

瞳を開けるのが億劫ではない。

身体を動かすのに苦痛を感じない。

身体から抜け落ちる『命』の量がこれまで滝の様だっが、今は小雨程度しか感じない。

ここまでされれば私は確信する。

 

こいつは、セツナと名乗るこの小さな妖精は

出会ったばかりの私を『救って』見せた。

 

これならば妹・・・メーテリアですらと確信を得る。

すぐにでも声をかけようとするも、セツナは失血により倒れ、駆け寄るエルフが木刀を出した為、少し吹き飛ばす。

 

即座にセツナを抱き抱え、『万能薬(エリクサー)』を飲ませると、傷は治り、穏やかな顔色で眠りについた。

 

「おい、そこのエルフ」

 

加減したとは言え、軽傷で戻って来たアストレアの眷族へと声をかける。

 

「っ!ぐ・・・やはり私では・・・」

 

「変な覚悟をしている所悪いがな、悪い様にはせん。ロキとお前の主神を連れて私達のホームまで来い。それまでセツナは預かる。」

 

手に持つ木刀に血を滲ませつつも、私がセツナにエリクサーを飲ませたのを気がついたのか、疾風の様に走りだすのを見送り、私はセツナを抱えてホームへと向かう。

 

「女神・・・いや、癒やしの精霊って所か・・・私をいきなり『救って』しまったのなら、メーテリアを必ず『癒して』貰うぞ?・・・ふふっ。可愛い顔だな、お前は。」

 

やりきったのか安心したのか知らないが、涎を垂らしながら眠るその顔がどうにも愛おしく感じるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

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