IS+1(インフィニット・ストラトス・プラスワン) 作:暇人の鑑
SEEDの小説版を読み返してます。
個人的には4巻が一番好きですが、皆さんはどうでしょう。
シャルルの一件があってから2日後。
放課後の第2アリーナにて、僕は神戸先輩たちに連れられ、対抗戦に向けての特訓をしていた。
1年の一般生徒だと流石に模擬戦相手にもならず、かと言って専用機持ちは手の内を晒すことになるとの事で、上級生の自主練に混ぜてもらうことになったのだ。
「はあああっ!」
「遅いっ!」
2年の先輩が乗る打鉄が右上からIS用ブレードを振り下ろしたのを、体を捻ってかわす。
そのまま前に向かって突進し、勢いのまま腹部に飛び蹴りを叩き込んだ。
「え、何あの動き…」
「輝戸君、いつの間にあんな強くなって……」
「うん。明らかに1年生の動きじゃないわね」
足裏についているショックアブゾーバーはバネのような構造をしているため、相手に衝撃を与えやすく、また吹っ飛ばしやすい。
その反動を急停止で抑えてから、安全に着地した。
リディクとの戦いで気づいたが、ISの絶対防御は外傷こそおわせないものの、衝撃は完全に殺せない。
しかも大抵のISは絶対防御がある以上フルスキンなんかする必要がないと、腹部や頭などは露出してある。
……逆に顔までヘルメットとギアで防御しているストライクの方が稀と言われるくらいには。
つまり、アーマーがないところを攻撃をすればシールドエネルギーを減らしやすくなり、その中でもパンチやキックなら無駄に電力を消費しなくて済むし、武器による攻撃に混ぜ込みやすい。
それで気を失ってくれでもすれば、無駄に傷つけることもないだろう。
……なんで、戦うことばかり上手くなってるんだろうか?
「うぐっ……でもまだまだっ⁉︎」
だが、流石に操縦に慣れているのか、直ぐにブレーキを効かせて踏ん張り、アリーナの壁に激突するのを防いでいる。
そんな姿勢制御の隙をつくようにジャンプ。
「今度はこっちの番だよ!」
「……なら!」
その間を狙われないように盾を投げつけ、相手のバーニア噴射による前進を妨害する。
突然眼前に迫るシールドを避けようとした急制動によりたたらをふんだ所で、ランチャーストライクに換装。
「また……きゃあ⁉︎」
そして、走り幅跳びの着地に巻き込むように蹴り倒した。
そのまま地面に擦り付けるように、左足で踏みつける形で地面に降り立ち、アグニを構える。
「ひっ…」
「このぉ!」
ゼロ距離からの一発をモロに喰らい、打鉄のシールドエネルギーは0となり……この模擬戦は僕の勝ちになった。
「表情が見えないから、なんかすごく怖いわ…」
「そ、そうですか?」
数分後。
「負けちゃったわ……でも、すごいね輝戸君。
下手したら1年の中ではかなり上の方じゃない?」
「ええ。私たちのアストレイが人形に見えるほどの暴れっぷりよ」
「むしろ、私たちが色々教えてほしいくらいだもの」
「いえいえ…‥流石に訓練機相手に負けるような、やわな機体設定にはしてなかったんで。
同じ訓練機同士なら間違いなく負けてましたよ」
戦闘のVTRを見ながら、愛津先輩や初江先輩、模擬戦相手の先輩と談笑していると、その前に相手をしてくれた神戸先輩が懐かしむように。
「入学した時からずっとOSいじってたもんね。それは間違いなく、ブラッシュアップを続けてた君の努力の成果だよ」
「そっち関連なら大好きですしね。戦うのは嫌ですが」
すると、また何かを狙う目をした愛津先輩が。
「じゃあ、次は私とヤらない?お姉さん張り切っちゃおうかな……いたたたた!」
「隙あらば汚そうとするんじゃないの。不純異性交遊よ」
「模擬戦ですか?愛津先輩とはやったことないですし、いいですけど……」
「そっちじゃないわ……真響、言質とったような顔しない。やってることが完全に痴女のそれよ」
「あ、そっち……」
げんなりした顔の初江先輩に、チョークスリーパーを決められてるのを横目に、アリーナの出入り口に向かうと。
「お疲れ様、いい特訓になった?」
シャルルが、心なしか頬を膨らませつつもタオルを手渡してきた。
sideシャルル
「なんかやったっけ?僕」
「別に何もしてないよ」
身に覚えがないと言いたげに、問いかけてくる流良に思わずそっぽを向いてしまう。
(なにさ、薄着の先輩たちに囲まれてチヤホヤされちゃって……!)
対戦相手になるかもしれない相手に、手の内を晒すことになるリスクは避けたいと言う理由は納得できる。
でも、目の前で異性で薄着の先輩達に囲まれ、チヤホヤされているのを見てると……なんとなくモヤッとしてしまうのだ。
しかも、1人のアレは完全に狙ってる目だったのが、妙な焦りを抱かせる一因になっている。
(僕だってその気になれば……って、何考えてるの⁉︎)
2日前に助けてくれたあの時から、時折変なことを考えてしまう。
きっと彼に、そんな下心はないのに……。
「……ひょっとして女の子の日?それなら薬局にナプキンが売ってるってクラスメイトが話してたような……いたたたっ⁉︎」
「ちょっと、それは言っちゃダメ!」
悶々としていた僕だが、いきなりの爆弾発言に慌てて脇腹をつねって止める。
正体を知っているのは一部だけで、今の僕はシャルル・デュノアという男の子であることを、忘れてもらっては困る。
そもそも、盗み聞きというのは良くないし、女の子相手にそんな気遣いの方法は……ああ、もう!
「それは気安く口にしないほうがいいよ⁉︎」
「あ、ごめんごめん……」
思わず腰に手を当てて、お説教みたいな感じになってしまったが……その表情はなんとも締まらないものだろう。
(でも、僕のことを女の子として見てくれてるなら……)
「全く、流良ってば…」
色んな感情のミックスに歯痒さを感じていると、一夏と篠ノ之さんが。
「お、お前らも特訓か?」
と、僕らに気づいて手を挙げた。
side流良
「第三アリーナが空いてるから、一緒にどうだ?稼働時間は長いほうがいいだろう」
「わかった。篠ノ之さんの動きも少し気になるところがあったし、それの直しをしよう」
「感謝する。お前はどうだ?輝戸」
先ほど特訓はやってきたし、シャワーを浴びたいんだけど……まあ、敵情視察も大事か。
「僕も行くよ」
こうして僕も参加するときまり、一夏はほっとしたような表情を浮かべた。
どうやら、女子二人と練習するのには慣れてるとは言え、シャルルには着替えを迫っていたことを気にしているのかもしれない。
「よし。それなら急ぐか。うまくいけば模擬戦ができるかもしれないし」
「うん、一夏の射撃訓練も続きをやりたいし、僕も参加しようかな」
まあ、このメンツだとほとんど技量や戦い方なんて割れているし、別にそこまで気にする必要はないのかもしれない。
と、男女4人で和気藹々と第三アリーナに向かっていると、なんだか人だかりができている。
「よくわかんないけど……観客席から様子でも見てみる?」
「そうだな。いやな予感がするし、急ごう」
シャルルの提案に一夏がうなずき、それに伴って僕ら4人はアリーナの観客席に走り、最前列に急ぐ。
「模擬戦闘でもしているのかな?」
「だが、あの人だかりと騒ぎ方は変だろう。この時期なら普通だと先輩から……」
首を傾げた僕に、箒がそう言いかけたところで、爆発音が、黒煙とともにアリーナへこだました。
sideセシリア
中国とイギリスが手を組むというのは何とも不思議な光景だが……今、目の前にいる漆黒のISを前にして、そんな些細なことを気にしている暇はなかった。
「くっ……。噂には聞いていましたが、ここまでの完成度とは」
「こうまで相性が悪いとはね………正直きついわ」
現在、ブルー・ティアーズの状態は装甲の所々が破壊され、シールドエネルギーも心もとない。
それは、即席タッグの相方である鈴さんの甲龍も同じだろう。
「くらえっ!!」
彼女は肩部の衝撃砲を展開し、最大出力で発射するが……その衝撃は、目の前で回避もせず、不敵な笑みを浮かべる敵に届くことはなかった。
「ふん、無駄だ。このシュヴァルツェア・レーゲンの停止結界の前では」
「A•I•C(アクティブ・イナーシャル・キャンセラー)……慣性停止能力ですわね」
ISにはP•I•C(パッシブ・イナーシャル・キャンセラー)と言う浮遊や加速、停止に必要な機能がある。
それは、加速や停止、浮遊など……慣性を半ば無視したような動きを可能にする働きを、常に付与してくれるものだ。
それを自動ではなく能動的…アクティブに行うと言うことは、飛んでくるものの運動を、自由に操作できることになる。
いくら衝撃砲の弾丸が見えなくとも、あるのなら砲身の角度から予測して、止めれば良い…‥それゆえ、鈴さんの甲龍との相性は最悪と言ってよかった。
しかも……あのISとラウラさんの武器はそれだけではない。
動き回る鈴さんを、肩に搭載されているワイヤーのついた剣のようなもので追い回し……やがて、複雑な軌道を描くそれから逃げきれず、彼女の右足が捕まってしまった。
「そうそう何度もさせるものですか!」
戦闘開始直後から見たその光景を、繰り返させまいと射撃し、その間にビットを射出するが……。
「理論値最大稼働のブルー・ティアーズならいざ知らず、この程度とは笑わせる」
視覚外からのビットによる攻撃を、なんてことはないようにかわされてしまい、突き出した腕の先にあったビット達は動きを止められてしまう。
だが……これで!
「動きが止まった、とでも言いたそうだな」
「なっ⁉︎」
狙撃のいい的と狙ったビームは、大型のカノンの一撃で相殺されてしまった。
更には……
「それは貴様とて同じ!」
「きゃあああッ⁉︎」
それと同時に、ワイヤーで捕まえていた鈴さんを、こちらに投げつけてきて、それに激突した私は、態勢を崩してしまった。
そう、彼女とそのISは戦闘力も桁違いなのだ。
「くだらん種馬を取り合うようなメスに、この私が負けるものか」
想い人を侮辱した、許せない相手だとは言え……流石に、詰みの一言が頭をよぎり出していた。
「負けてなるものですか!」
「それはアタシのセリフよ!」
side一夏
「何してるんだ……おい!」
アリーナのシールドに阻まれ、届かない声をあげてしまう俺の前では、セシリアと鈴が諦めずにラウラに向かうが……その状況はさらに不利になりつつあった。
「この……ッ、しつこい!」
「ふん、無駄な足掻きを」
ラウラは、計6本のワイヤーブレードを生き物のように動かし、2本の青龍刀で捌こうとする鈴を嘲笑うように攻撃をかすめていった。
「くっ!」
それらを吹き飛ばそうと、衝撃砲のチャージを始めるが…それを見逃してくれるほど甘いわけもなく。
「甘いな。この状況でウェイトのある空間圧兵器を使うとは」
発射されることなく、ラウラの実弾砲撃によって破壊されてしまった。
肩アーマーを吹き飛ばされ、大きく体勢を崩した鈴に、ラウラはすかさず距離を詰め、腕に装備されていたプラズマ手刀……流良のストライクにあるビームサーベルの親戚みたいな武器を突き刺そうとするが。
「させませんわ!」
間一髪の所で2人の間に割って入ったセシリアが、手持ち武器のスナイパーライフルを盾に使って、必殺の一撃を晒し。
「これでどうですの⁉︎」
同時にウェスト・アーマーに装着されている、弾頭型ビットをラウラに向けて発射した。
そんな、半ば自殺行為じみたことをしたセシリアは、鈴共々地面に叩きつけられる。
「無茶するわね、あんた……」
「苦情はあとで。けど、これなら確実にダメージが……」
だが……それを受けたはずのラウラは、ダメージなんてほとんどなかったかのように、宙に浮いていた。
「やっと終わったか?なら、次は私の番だな」
そこから始まったのは……もはや、ただただ一方的な暴虐だった。
sideシャルル
「止めろ、どうして……!」
流良が泣きそうな声でそう叫ぶが、目の前の蹂躙はそれで止まらず。
「ああああっ‼︎」
ワイヤーブレードで2人の体を拘束し、その体にボーデヴィッヒさんの拳が、蹴りが叩き込まれる。
「不味いぞ、アレ以上は2人が……!」
それぞれのシールドエネルギーはあっという間に減り、機体の維持どころか……生命の維持すら脅かされ始める。
「2人のISが強制解除されたら……下手したら2人が!」
それは、ドイツの代表候補生である彼女はわかっているはずなのに……それでも、その攻撃を止めることはない。
ただ、淡々と殴り、蹴り……ISアーマーを破壊し、とにかく弄りのかぎりを尽くす。
「……篠ノ之さん、誰でもいいから先生を!」
「わかった!」
いつも変わらないようなその無表情な口元が、確かな愉悦に口元を歪めだすのを見て、これは不味いと確信し。
篠ノ之さんに応援を任せて、流石にこれ以上好き勝手はさせないと、リヴァイヴを呼び出そうとした時だった。
「おおおおっ‼︎」
一夏が白式を展開し、同時に雪片弍型を構築。そのままその単一仕様能力(ワンオフ・アビリティ)の『霊落白夜』……「バリアー無効化攻撃」を使用して、アリーナのバリアーに叩きつける。
その間を突破し、一直線に3人の元へ飛んで行った。
「その手を離せ‼︎」
side流良
「ふん……。感情的で直線的、絵に描いたような愚図だな」
鈴とセシリアを摑んだラウラに、刀を振り下ろした一夏。
そうして始まった新たな戦いを前に、僕の中で何かが弾けるような感覚があった。
「…………」
「流良……?」
シャルルの声が、どこか遠くなっていくのと引き換えに、雫越しのように揺らいでた視界は、クリアになっていく。
その瞬間、先ほどまで感じていた絶望や悲しみ、戦いをやめさせなきゃといった心はどこかへ消え去り、僕の頭には全てを焼き尽くすような怒り……いや、それによって精錬された、ただ純粋な殺意。
「な、なんだ⁉︎くそっ、身体がっ……!」
「やはり敵ではないな。この私とシュヴァルツェア・レーゲンの前では、貴様も有象無象の一つでしかない。消えろ」
目の前でセシリア達をボロボロにし、今度は一夏をもその手にかけようとする目の前の敵に対して、それだけが頭を占めた。
「………ストライク」
「どうしたの流良⁉︎なんか変だよ、落ち着いて……!」
肩の大型カノンが接続部から回転し、ぐるんと一夏に銃口を向ける。
それをしっかり目に焼き付けるのと同時、ストライクのビームライフルが火を噴いた。
いかがでしたか?
ここで前回紹介しそびれたものを。
国際救難チャンネル
あらゆる国家の人間が使用可能な、災害や事故、人権侵害など全世界にリアルタイムで情報を発信できる国際チャンネル。
それによる要請は、各国が極力応じなければならならず、また、救難以外での使用に関しては、厳しい罰則が設けられている。
次回は、少しだけエロ要素が入るかもしれません。胸糞ではありませんが、あくまで予定です。
話半分にお楽しみに!