IS+1(インフィニット・ストラトス・プラスワン)   作:暇人の鑑

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16話です。


第16話 見えない孤独

 ラウラとの戦闘が起こった日の夕食時。

 僕、一夏、シャルルの3人で話し合った結果、一夏とシャルルのコンビになった。

 

 一夏の一撃必殺の戦闘スタイルと組み合わせるなら、隙なくさまざまなフォローができる器用さを持つシャルルが適任だろう。

 ストライクの形態はそれぞれに特化しすぎていて、フォローに必要な手札の多さがない。

 マルチプルアサルトやIWSPみたいな全部乗せはあるが…正直扱いにくい。

 ラウラとの戦いであそこまで使いこなせていたのが自分でも不思議なレベルだ。

 そんな訳で余った僕には、早速そこにいた同学年の女子達から私と組んでコールが集中して浴びせられたので。

 希望者全員の協力で作ったくじの結果、同じクラスの鷹月さんに決まったのであった。

 

 

 整備室にて。

「すごいね、このM1アストレイ。打鉄より軽いし動きやすいよ。

 しかも、武器もそこまで多くないから覚えることが少なくて済むし」

「間違いなくいい機体だからね……でも、その分回避振りで脆いし、運動性重視で、リヴァイヴほどの拡張性はないから気をつけて」

「うん……でも、このヘッドギアはなんとかならない?その、ヘルメットで髪型が崩れて…」

「手数を補える頭部バルカンが、使えないのは厳しいよ…そこは我慢してもらうしか」

「うーん…」

 訓練機として新しく配備されたM1アストレイの慣らし運転を行った鷹月さんに感想を聞いていた。

 モルゲンレーテはIS産業においてはフランス以上に最後発の部類に入り、まだ一からISとして作られたISがない。

 そのため、稼働データはいくらあっても良いと言えるほど、重要なのである。

 

「それ以外で何か質問とかは」

「大丈夫よ」

 今回の学年別トーナメントは、専用機持ちが4人だ、それが入っているペアは僕らを除けば2組だ。

 それらとあたった時に打鉄は防御はともかく、火力と機動性、運動性において、流石に厳しいものがある。

 数で補う集団戦を得意とする機体だが、流石に二人組じゃあまり意味はない。

 リヴァイヴだと使える武器は多いものの、多すぎてシャルルほどのスキルがないと十全に扱いきれない。

 

 そして、ストライクは集団戦に向かないため、武装や運用コンセプトが似たM1を、相方に貸し出すことにしたのだ。

 

「兎に角、本番まで時間がないからシュミレーターと模擬戦で、徹底的に鷹月さんを鍛える方向でいこう。

 1人1殺なら単純な技量勝負に持ち込める」

 両方訓練機なら、ストライクとの性能差でこっちがゴリ押しして、2対1にしてから安全に倒す。

 

 専用機……例えばラウラが来たら僕が足止めをし、訓練機同士での戦いを早く終わらせて2対1に持ち込む。

 

 両方専用機の一夏とシャルルのペアだったら、PS装甲で無効化できる実弾兵器しか持っていない、シャルルのリヴァイヴは僕が相手して、一夏相手には引き撃ちや回避で時間を稼いでもらう。

 

 そうすれば武器の特性上、勝手にジリ貧になっていくことだろう。

「うん……よろしくお願いします」

「じゃあ、早速始めよう」

 

 そんな訳で、僕らはシュミレーターに篭っての特訓を開始した。

 

 

 特訓を終えた僕達は、寮への道を歩いていると、どこからかコーヒーの匂いがした。

「どこかで淹れてるのかな?」

「……そういえば、カフェとかである豆を挽いてのコーヒーって飲んだことないかも」

 大抵インスタントか缶コーヒーであり、スタバやらドトールなんてお洒落なところなんて行かない。

「なら、明日学園のカフェテリアに行かない?確かあそこはその場で豆を挽くんだよ」

 

 鷹月さんが思いついたようにしてくる提案に、断る理由がない僕が頷こうとした時。

 

 

「あいや待った!」

 

 突然かけられた声に、僕達はギョッとしてその方向を見ると、テーブル付きのベンチに腰掛けながら、コーヒーを淹れている少女がいた。

 

「……スウェーデン代表候補生の、アイシャ・バルフェさんね。1年3組のクラス代表でもあるわ」

「でも、専用機持ちじゃない……そうか、イコールって訳じゃないんだ」

 僕らの会話を聞いた彼女は、呑気というか、豪胆というか。

 本を片手にお湯を粉の入ったフィルターに注ぐ。

「まあ、そんな所だけど……そんなのはどうでもいいわ。

 

 折角コーヒーを淹れてるのに、別の日に。

 

 しかも他所で飲もうだなんて野暮なことを言い出したものだから、ついね」

 

 と、残念そうに言った後。

 「それよりも、私のコーヒーを飲んで行かないかい?

 

 これでも、ここのカフェよりはいい豆を使ってるし、私はそこの店員よりコーヒーを愛してる自負があるわよ」

 心外だと言わんばかりに、目の前でマグカップを差し出してきた少女を前にして、僕と鷹月さんは目を見合わせた。

 

 

「うーん、コーヒーが美味いと気分がいいね。さあ、自慢のブレンドだよ」

「は、はい…」

 バルフェさんがカップを傾けて、満足げに頷く。

 鷹月さんは友達との約束があるとのことで、僕1人にカップが差し出される。

 

 正直、まだまだコーヒーの味の良し悪しなんてわからないお子様なのにと思いつつ、ブラックコーヒーを啜ると……何というか、反応に困る味だった。

 

 確かに、拘ってるんだろうなとは思う。

 

 だが…拘りすぎてごちゃごちゃしているのか、普段飲んでるコーヒーと比べてスッキリ飲めないのだ。

 まあ、飲める分セシリアクッキングよりはマシなんだけど…。

 

「……お、おいしいです」

「それは良かった。クラスメイトにはあまり受けなかったんだ」

 

 とは言え、機嫌を悪くさせるわけにも行かないが……クラスメイトもとんだ災難だ。

 

 だが、バルフェさんは上機嫌から一転、周りをつまらなそうに。

 

「みんなして、トーナメント戦の特訓だ、誰々の対策だと………もっと穏やかに生きられないものかね?」

 どこか嘆くような問いかけに、これまでを思い返してしまう。

 

 毎日鬼軍曹の扱きを受け、国家の顔として歪み合い。

 

 何をしても奇異の視線にさらされて、今回のトーナメント戦。

 

 それでできたことといえば、戦うことと、自分のわがままをぶつける事。

「そうですね。

 国のメンツにかかわるだの、解釈違いだのって。

 どうして、そんなことで戦おうとするんだろうって……思うことはあります。

 誰かを救えるはずの力で…」

 それに巻き込んだ女の子の、優しさに漬け込んで……。

 

 今朝の登校時、どことなく歩きにくそうにしていたのを見てしまった以上、あの夜のピロートークを素直に受け取ることは、もうできない。

 

 僕達は……どうして、こんなところに来てしまったんだろう?

 

 答えのない問いから生まれる虚しさを煙に巻くように、そのごちゃ混ぜのコーヒーを口にする僕に。

 

「寂しいのかな?君は…」

 どこか、労わるような目を向けできたので、慌ててかぶりを振るが。

 

「多数の者に囲まれていても、その心を打ち明けることができず、苦しみを吐き出せる場所もない。

 その孤独に身を置いた者は、悲しみばかりを背負い、やがて自分に向けられた優しささえも霞ませてしまう……まさに、今の君ね。

 それを寂しいと言わず何という?」

「………」

 その、全てを見透かすような言い草に、僕は反論できないでいた。

 

 何せ、今の僕そのものだったからだ。

 

「それを隠すための隠れ蓑みたいなものかな?

 

 君にとってこのブレンドは」

 まるで、獲物を品定めする肉食獣のような視線に、警戒を向けていると。

「なに、咎めてる訳じゃないさ。

 美味いブレンドに、この国のこの時期にしては心地よい夜風。

 上機嫌のあまり、つい口が滑ってしまったんだよ。

 

 私の悪い癖だね」

 

 あっさりとその目線を崩したかと思えば、セットを片づけ出す。

「もっと話したいのは山々だがそろそろ食堂が閉まる。

 流石にコーヒーだけで食欲は満たせはしないよ」

 それに呆気に取られている僕の前で、バルフェさんは席を立ち。

 

「それじゃあ。君と話ができて楽しかった…また、どこかで会おう」

 

「待ってください、どこかって……」

 言い回しが気になった僕が、思わず待ったをかけると。

「いつかまた今みたいに、どこかのテーブルを囲むか……はたまた、敵として向かい合うかだね」

「……敵?」

  

 彼女は、なにを今さらと言わんばかりに。

「忘れた訳じゃないでしょう?同じチームじゃない以上、私と君は敵同士よ」

 

 去り際のそのセリフに、僕は呆然としていた。

 

 この、風変わりながら微塵も敵意を抱けない人とも、戦わなければならないかもしれないという事実に。

 

sideアイシャ

 

「……どうでした?実際に会ってみての感想は」

「普通の男の子だったよ……あのデータの数々に似つかわしくないくらいには」

 

 輝戸君と別れた後、本国における私の侍女であり、頼れる副官の「マティーナ・ダコス」に、ブレンド比率を記した手記に目を配りながら答える。

 

 そう、入学して数週間後のクラス代表決定戦。

 それまで、人生を楽しもうとしながらも、コーヒーのブレンド以外退屈なことばかりだった私は、あの白い機体…ストライクとその操縦者にに釘付けだった。

 

 自身も代表候補生であるからこそ、イギリスご自慢のBIT兵器の厄介さは知っているし、それをほぼ初見で攻略した時は珍しく感心したものだ。

 

 それから、クラス別対抗トーナメントの際に起こった、襲撃者との戦闘に、その後の無人機との戦い。

 

……あれだけ無茶苦茶な起動をしておいて、ただのISだと言われて納得できるほど、呑気でもない。

 

 そして、その2戦における彼の動きは、目を見張るものがあり……それまでのIS戦のセオリーを完全に無視したような、そのメチャクチャな戦い方や、圧倒的な動きは私を完全に虜にした。

 

 おまけに、そんなメチャクチャなことをする操縦者に会ってみれば、どこにでもいる普通の少年だった。

 

 人生は驚きの連続とは、よく言ったものである。

 

 マティーナにはよく嗜められるが、そう言ったイレギュラーに目がない私にとって彼は、今この学校におけるどんな事よりも、興味深く、退屈させないコンテンツだった。

 

「…‥是非とも、お手合わせしたいものだね。どんな動きを見せてくれるか、楽しみだ」

「…‥わかりましたよ」

「まだ、何も言ってないんだがね」

 またはじまったと言わんばかりの態度だが、もはやいつものことなので気にしない。

 聡い副官を持つと、説明の手間が省けて苦労しないというものだ。

 

「なら、ついでに新しいブレンドを考えたんだ。その感想を……」

 げんなりしたような顔の彼女を従えつつ、私はどんな作戦を用意しようかと、思いを馳せていた。

 

……なんか、日に日に扱いが雑になってる気がする。

 

sideシャルル

 

「シャワー浴びたよ‥‥って、どうしたの?それ」

 シャワールームから出た僕の目に映ったのは、大量のボールが入った箱を傍に、キーボードを叩いてる流良の姿だった。

 

 その肩には緑色のロボット鳥が止まっており……正直色々とカオスだ。

 

 そんな僕の質問に、流良は机の上に置いてあったボールを見せながら。

「これ?ラウラ対策だよ」

 

 と、さらに訳のわからないことを言い出す。

 

「……ボーデヴィッヒさんは犬じゃないよ?」

「正確にはAIC対策だね」

 思わず突っ込む僕だったが、差し出されたそれを手に取ると。

 

 

「ハロ、ハロ」

「うわぁ⁉︎」

 いきなり喋り出したそれに驚き、思わず取り落としてしまうが……ん?

 

 それは地面に落ちると同時に、ボヨンという電子音声と共に飛び跳ねる。

 

「もう!何なのこれ?」

 更には、コロコロと自分から転がったり、彼の肩から飛び立ったロボット鳥と戯れたりと、僕は混乱しっぱなしだ。

 

 そんな僕に、流良はよくぞ聞いてくれましたと言わんばかりに。

「これはハロっていうペットロボットだよ。飛び跳ねて、転がって、色々できる小さなお友達さ」

 飛んできたそれをキャッチする流良は、何だかイキイキしている。

「それがAICとどう関係するの?」

「これをラウラの周りに解き放って、AICの発動に必要な集中力を削ぐ……やり合った時に思いついたんだ」

「……そっか」

 

 おそらく、それだけじゃないんだろう。

 

 あの時のことがちょっとしたトラウマになっていて、それをかき消そうと……。

 

「もし良ければ、シャルルにも何個かあげようか?破壊されるのは織り込み済みだし、作ろうと思えばすぐ作れるよ」

「もしボーデヴィッヒさんと当たった時に、借りようかな……ほら、シャワー空いたし、入ってきたら?」

「え?もう少し調整しようと…」

「いいから!」

「わ、分かったよ……」

 

 そうして流良をシャワールームに押しやってから。

 

 

 思わず、そのドアにへたり込んだ。

 

「……ごめんね」

 

 その目に映った、暗い影を思い出しながら。

 

 




いかがでしたか?
とりあえず、キャラ設定を。

アイシャ・バルフェ
16歳
 スウェーデン代表候補生で軍人。
 陽気な性格だが、鋭い観察眼と洞察力、冷酷なリアリストの面も併せ持つ少女。
 飄々とした口ぶりから、年上に見られがちなのを気にしてはいるものの、治す気配はない。
 好奇心が強く退屈が嫌いであり、流良の戦いぶりに興味を持ち、接触してきた。
 コーヒーをこよなく愛しており、農場で豆を育てるほどの入れ込み具合を見せる。
 周りの人にも自作ブレンドを試飲させるが、こだわりすぎて当たり外れのぶれが大きく、あんまり評判は良くないものの、本人はそこまで気にしてない。
元ネタはガンダムSEEDより「アンドリュー・バルドフェルド」と「アイシャ」。

マティーナ・ダコス
16歳
 アイシャの副官であり、秘書のような立場の少女。
自由奔放なアイシャのお目付役兼お使いとして、苦労人な日々を過ごすが、それだけアイシャからの信頼は厚く、また有能な人材である。

元ネタはガンダムSEEDから「マーチン・ダコスタ」。

ハロ
流良がAIC対策として用意した球体状の小型ペットロボット。
手足がついており、飛び跳ねたり転がったりと、不規則な動きをする。

 また、言語学習機能を積んでおり、簡単なコミュニケーションが可能。
 流良が、小さい頃から兄弟同然に育った親友と一緒に作った思い出の品であり、今でも時折作っているほど、その思い入れは強い。

 元ネタはガンダムSEEDの「ハロ」。

 次回からは学年別トーナメントに入っていきますので、お楽しみに!
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