IS+1(インフィニット・ストラトス・プラスワン)   作:暇人の鑑

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第18話 強さの意味

 (また負けるのか、私は………)

 

 相手の力量を見誤ったことは間違いない。

 

 だが…その結果、私は2度目の敗北を喫しようとしていた。

 

 負けられない、負けるわけにはいかないと思考は繰り返すが…シュヴァルツェア・レーゲンはもうボロボロであり、相手の2人はいまだ健在。

 

 その事実があるのに、それを認めたくない…いや、認めるわけにはいかなかった。

 

 あの人を……強く、凛々しく、常に堂々としていたあの人に、届くためには。

 

 戦いのためだけに作られ、戦いに関することだけを教わってきた私は、常に優秀であった。

 

 だが…ISが現れたことで一新した世界に、私は取り残されてしまったのだ。

 

 適合性向上のために行われた処置『ヴォーダン・オージェ』。

 

 疑似ハイパーセンサーとも呼ばれるそれは、脳伝達信号への爆発的な速度向上と、超高速戦闘状況下における動体反射の強化を目的とした、肉眼へのナノマシン移植処理のことを指す。

 

 その不具合によって、私の左目は金色へと変質し、常に稼働状態のままカットできない制御不能状態へと陥った。

 

 それまでとはまるで生まれ変わったかのように強化された感覚に対応できず……いつしか私は、IS訓練において後れを取ることになり、出来損ないと蔑まれるまで、そう時間はかからなかった。

 

 そうして取り残されるどころか、闇へ闇へと転げ落ちていった私に、初めて差し込まれた光が、教官……織斑千冬だったのだ。

 

「ここ最近の成績は振るわないようだが、心配するな。一ヶ月で部隊最強の地位へと戻してやろう。何せ、私が教えるのだからな」

 

 その言葉に偽りはなかった。

 あの人の教えを…‥特別な訓練を課されていたわけでもないのに、忠実に実行したその教えは、再び私を最強の座へと押し上げた。

 

 そこに安堵はないし、自分を疎んでいた部隊員なんてどうでもいい。

 

 

 憧れたのだ。

 

 あの人の強さに、あの人の凛々しさに。

 

 堂々とした姿に、自らを信じる姿に、強烈に、深く。

 

 

 焦がれた。

 

 こうなりたいと、この人のようになりたい………と。

 

 それから私は、教官が帰国するまでの半年間……時間さえあれば話に行った。

 

 いや、話なんてできなくてもいい。

 

 そばにいるだけで、その姿を見つめるだけで……体の深い場所から、『勇気』と言う感情に似た力が湧いてくるのを感じることができた。

 

 

 そんな、私にとっての理想に影を差したのがあの男……織斑一夏。

「私には弟がいる」

 

「あいつを見ていると、わかる時がある。

 

 強さとはどう言うものなのか、その先に何があるのかをな」

 

「いつか日本に来ることがあるなら、会ってみるといい。

 

 だが、一つ忠告しておくぞ。アイツは……」

 

 強く、凛々しく、堂々としていたあの人じゃない。

 

 その時の優しく、どこか気恥ずかしそうな表情は……私が憧れていたあの人とはかけ離れたものだった。

 

 その時から、私の中には「憎しみ」と呼ばれる感情が芽生え出す。

 

 そんなふうに教官を変えてしまう弟が、どうしても許せず…認められない。

 

 認めるわけにはいかなかった。

 

 

 だからこそ、敗北させなければ。

 

 あの男を、私の力で完膚なきまでに叩き伏せなければ、あの人は戻ってこないし……私の気が済まなかったのだ。

 

 それなのに、今の私のこの体たらくはなんだ?

 

 数週間前にはあの平和ボケの極みのような、織斑一夏ですらない男に手玉に取られ。

 

 今は、織斑一夏とそのお仲間相手に、こうまで追い詰められている。

 

 私は、動かなくなるまで徹底的に壊してやらなければならないのに⁉︎

 

 

 力が欲しい。

 

 輝戸流良を……なにより、織斑一夏を叩きのめせるほどの、力が!

 

 そこまで思った私の奥底で、何かが蠢いた。

 

 

 そして、囁いた。

『自らの変革を望むか?より強い力を欲するか?』

 

 言うまでもなかった。

 

 そこに力があるのなら、得られるのなら。

 

 この血肉の、何から何までくれてやる!

 

 だから寄越せと叫ぶ。

 

 比類なき最強を、唯一無二の絶対を‼︎

 

 

 そして、蠢く何かは囁いた。

 

 Damage Level……D.

 

 Mind Condition……Uplift.

 

 Certification……Clear.

 

《Valkerie Trace System》……boot.

 

 

side流良

「これは……マリア」

「ええ、間違いなくVTシステムね」

 

 ハッとしたようなムウさんに、マリアさんが冷や汗混じりに頷く。

 

 周りを見ると、セシリアや鈴、先輩達もまさかと言う表情をしており、僕と鷹月さんの2人だけは、意味がわからずに顔を見合わせる。

 

「VTシステム……?なんなんです?それ」

 鷹月さんの言葉に、なんで知らないんだと言わんばかりの視線が突き刺さるが、それを瞬時に収めていた。

 

「《ヴァルキリー・トレース・システム》……その名前の通り、過去のモンド・グロッソの部門受賞者の動きをトレースできるシステムの事よ」

「各国のパワーバランスと競技を崩壊させかねないとして、ありとあらゆるところでの研究・開発・使用が禁止されておりますの」

「それで織斑先生に似てたんだ…」

「まあ、あの人への執着は相当なものだろうしね」

 

 つまり、誰でも部門優勝者の動きができてしまったら、もはや試合にならない。

 

 自分の意思もなく…ただ戦うお人形達のパペットショーになってしまうのだ。

 

「でも、あの反応的に知っていたわけじゃなさそうね」

「極秘裏に取り付けられた、って所じゃない?で、何かしらの条件で発動した、みたいなね」

 愛津先輩と初江先輩がそのラウラだった人影を見て、いつもとは違う緊張感をその顔に見せていた時。

 

「……坊主!ストライクを起動しろ!」

「…り、了解です!」

 ムウさんの言う通りに展開すると同時、アリーナのシールドを切り裂いたそれが、僕に向けて迫ってきていた。

 

 

 

sideシャルル

「ぐあっ……クソ、無視するんじゃねえ!」

「落ち着け一夏!どうしたというのだ!」

 

 飛びかかったのを跳ね飛ばされた一夏が、尚も向かって行こうとするのを、打鉄を再装着した篠ノ之さんが抑える。

 

それを無視したボーデヴィッヒさんだった異形は、来賓のいる観客席に向かっていったのを見て、慌てて追いかける。

 もし、それで怪我でもさせたら大問題だと言うのはわかってるはずだが……この状態になると理性が働かなくなるのかもしれない。

 

 突然の行動に焦りながら追いかけていた僕だが。

「ストライク、行きます!」

「流良!」

 観客席から迎え撃つように流良がストライクを展開していた。

 

 なんでオルコットさん達と来賓席に堂々と座っているのかはわからないけど…いてくれたのはファインプレーだ。

「アストレイのお嬢ちゃん達は観客席の来賓の護衛をしてやってくれ!

 

 坊主はそいつを観客席からできるだけ引き離すんだ!」

「「「了解!」」」

「はい!」

 一緒に見ていたであろう金髪の男性に頷きながら、ソードストライカーを展開。

 アリーナのシールドを破壊したボーデヴィッヒさんが繰り出した横なぎの一撃を受け止めていた。

 

 だが、鍔迫り合いの状況になってしまっては引き離すことはできないため、近接ブレードを構えて迫る。

 

 銃を使えば、来賓に当たる可能性があるので片手に持ちはすれども使えない。

 

 そうして振りかぶった僕に反応してか、流良との距離を一旦離して素早く後退してかわすが……それで良い。

 

 僕はそこから少し離れた所まで行ってから向き直るが、それだけあれば…流良は、割れたガラスのように開いた穴から、アリーナの中に入れるようになる。

 

 地面に降りるようなコースで動きつつ、バルカンを連射している流良の隣に駆けつけて、2人で弾幕を張りながら、地面に降り立つが。

 

「うおおおおっ‼︎」

「シャルル、一夏に何が…」

「僕にもよくわからないよ……」

 怒りに任せて突っ込む一夏は、簡単にいなされてしまい、さらにはカウンターの一撃を食らってしまう。

 

 突っ込んだ時に零落白夜を使った事で、先ほどまでの戦闘によるダメージも合わさりシールドエネルギーが尽きてしまったのか、体にはうっすらと血が滲んでいる。

 

 そこに畳み掛けるように、異形が振るう刀を回避するが。

 

 それが最後の力だったのか白式は光の粒子となって消えてしまう。

 

 

 でも……怒り心頭の一夏が、それで治まることはなかった。

 

「うおおおおっ!」

 拳を握って殴りかかろうとしたところを、打鉄を装備した篠ノ之さんが引き戻す。

 

「何をやってるんだ、生身で勝てるわけがないじゃないか!」

「死ぬ気か、馬鹿者!」

「離せよ!あいつふざけやがって……ぶっ飛ばしてやる!」

 だが、一夏はまだもがき、暴れていて…完全に頭に血が上っているようだ。

 

 異形の動きに対応できるように、ショットガンを呼び出して構える。

「どけよ2人とも!邪魔するってんならお前達も……!」

 

 と、そこまで行って駆け出そうとした時……

 

 流良が一夏の頬を引っ叩いた。

 

 腕を振り上げようとした篠ノ之さんは目を丸くする。

 

 普段はおとなしい流良からは、考えにくい行動だし、僕も驚きはしたものの。

 

「いってえな!なにしやがる……」

 横向きに転がった一夏が、文句を言いかけるが。

「気持ちだけで、一体何が守れるって言うんだ!」

 どことなく悲壮感を感じるような声に一夏はハッとした後、怒りの根元を折られたようにうなだれた。

  

 

 

side流良

 

 どれだけ強く思っても、思うだけじゃ何も守れない。

 

 セシリアや鈴達のあの騒ぎも……もっと前の、ラウラと一夏が一触即発になった時も。

 

 結局、思うだけじゃ何も変わらないし、止められなかった。

 

 力だけがあれば良いってわけじゃないけれど……力無き思いなんて、ないのとあんまり変わらないのだ。

 

 そもそも……怒りだけでどうにかなる程、目の前の相手は甘くない。

「悪い、頭冷えたわ」

「アレはなんだと言うのだ。わかるように説明しろ…」

「あいつ……あれは、千冬姉のデータだ。千冬姉のものだ。

 

千冬姉だけのものなんだ!それを……くそっ!」

「怒り」だけで、一夏にとっての「織斑先生」を守れはしない。

 

「こっちの攻撃に対応するタイプなのかな?でも、それならなんで僕に」

「多分、あのシステムになんらかの感情が必要なんだと思う。

 怒りとか……焦燥とか、戦意とか。

 

 彼女がそれを抱く対象に、流良もいたから…この場でまとめて叩きのめそうとしたんじゃないかな」

 あくまで推測だけどね、と付け加えて話すシャルルを加えて作戦を考えようとする僕らの前では。

 

「お前は……いつでも千冬さん千冬さんだな」

「それだけじゃねえよ。あんな、わけわかんねえ力に振り回されてるラウラも気に入らねえ。ISとラウラ、どっちも1発ぶん殴ってやらねえと気がすまねえ」

「理由はわかったが、今のお前に何ができる?白式のエネルギーも残ってない」

「ぐっ…」

 

 箒の正論に一夏が歯痒い顔をしていた。

 

 確かに、ラウラの方も大したエネルギーは残ってないだろうが、一撃を加えないと意味がない。

 今の白式では一撃どころか、装甲展開すらもできない。

 

「私たちの中で止められるとすれば、輝戸のストライクくらいだろうし……」

 箒が顎を動かした方向では、トーナメントの試合中止と、鎮圧の為に教師部隊を突入させる報せが入り、非難する人たちを3機のM1が護衛している。

 

「聞いての通り、お前がやらなくても事態は収拾されるだろう。だから……」

 

 確かに、ここで僕らが浅知恵を働かせるより、大人しくまっていた方が良いだろう。

 

 だが……

「無理に飛び込む必要はない……ってか?

 

 違うぜ箒。全然違う。

 

『やらなきゃいけない』じゃない。『やりたい』んだよ。

 

 他の誰かがどうとか、知るか。

 

 大体……」

 

 一夏は少しの間を置いて、言い切る。

「ここで引いちまったら、そんな俺を俺が認めない……そんな逃げ腰野郎は織斑一夏じゃない」

 

 

 それを見ていた僕の手をシャルルがそっと触れた。

「流良、助けてあげたいんでしょ?」

「…気持ちを否定する気はないからね」

 気持ちだけじゃ、何かを守れないし、何かを貫けはしない。

 

 でも…気持ちのない力なんて、そんなのただの押し付けにすぎない。

 

 気持ちを表すのが力なら、力を操るのが気持ちなんだ。

 

「殴っちゃったお詫びも兼ねてるんだけど……ちょっとクサいかな?」

「ううん。良いと思うよ…助けたいのは僕も同じだし」

 

 そしてしばらく視線を通わせて、僕らは笑った。

 

 それは、初めて肌を重ねてから、どこかぎこちなかった僕らが……久しぶりに心から笑い合えたと思った。

 

 そうして、歯噛みする箒とテコでも動かんと言わんばかりの一夏の前に立ち。

「ええい、わからず屋の馬鹿者が!なら一体どうすると」

「なければ持ってくれば良い。でしょ?一夏」

「僕らに考えがある」

 僕たちは、不敵な笑みを浮かべていた。

 

 

 

「じゃあ、始めるよ。………リヴァイヴのコア・バイパスを開放。エネルギー流出を許可。流良、タイミングを預けるよ」

「了解……ストライクおよびリヴァイヴ。シールドエネルギーの流出を開始します……一夏、白式のモードを一極限定にして。それで零落白夜が使えるはずだから」

「おう」

 ストライクとリヴァイヴのから伸びたケーブルが、待機状態の白式に繋がれており、そこから2機のISによるエネルギーの補給が行われていた。

 

「すごい悪食だね…この装備の予備を含めたバッテリーの総量はマルチプルアサルトと同じくらいなのに、一瞬で空だ」

「まあ、僕の方があまりなかったからね……うん、僕の方も受け渡しが完了したよ」

 シャルルのリヴァイヴが光の粒子となって消え、僕のストライクは装甲が色を失っていく。

 

「まさか、こんなうってつけの装備があったなんて」

 装備を解除して、素体だけの状態でデータを確認する。

 

 先程まで取り付けていたのは、『ライトニング・ストライカー』。

 

 紺色の戦闘機のような見た目が特徴で、電磁加農砲……つまりはレールガンによる狙撃と、高速機動。エネルギーの補給を可能とした特殊なストライカーパックだ。

 

 で、その補給機能とリヴァイヴのエネルギー受け渡しによって、シールドエネルギーを取り戻した白式の装甲は、両腕の装甲と雪片弍型のみ展開される。

「でも……ごめん、流石にそこまでが限界だった」

 

 だが、これではノーガード。当てればそれでいいが、一撃でも当たればよくて重傷か即死と言う、いわば1発限りの賭けだ。

「充分さ。じゃあ…行ってくる」

 そうして、向かおうとした一夏に箒が。

 

「一夏……死ぬな!絶対に死なないで……勝ってこい‼︎」

「……俺を信じて、待っていてくれ。祈りも心配もいらない。

 

 必ず勝って帰ってくるさ」

 

 不器用な送り出しを投げかけ、一夏は静かに頷いた。

 

「一夏……絶対に負けないで」

「大丈夫だよシャルル。一夏は絶対に勝つ」

 これ以上僕らができることと言ったら…‥信じるくらいだ。

 

 

 

side一夏

「行くぜ、偽物野郎」

 

 流良からは鋼鉄の平手打ちをもらった。

 

 シャルルからはエネルギーをもらった。

 

 箒からは祈りをもらった。

 

 そこまでもらった俺ができるのは……こいつを倒すことだけだ。

 

「零落白夜、発動」

 俺の右手に握りしめた雪片弍型が、意志に呼応して刀身を開く。

 

 ヴン…‥と小さな反応が、まるで返事のように聞こえ、全てのエネルギーを消し去る絶対向こうの力を持った刃が本来の刃の2倍くらいの長さになって現れたが……違う。

 

 今回必要なのは長さじゃない。

 

 速度と鋭さ、素早く降り抜ける洗練された刃だ。

 

 そのイメージだけに、俺は意識を集中させた。

 

 まるで、暗闇の中に差し込む、一筋の光。

 

 それを細く、鋭く尖らせていき……やがてそれは、普段のエネルギーを放出するだけのものじゃなく。

 

 柄から上は全て零落白夜の光を纏った、一振りの日本刀の形に集約した姿だけが残った。

 

 それを腰に添え…居合いの構えで、黒いISに向かう。

 

 その構えは……初めて、千冬姉に習った『真剣』の技。

 

 その時の教えを、鮮明に思い出す。

「良いか、一夏。刀は振るうものだ。振られるようでは剣術とは言わない」

 

 その重さに汗を滲ませ、構えることすらできなかったあの時とは違い、今はこうして構えることができるが……それが持つ重さの意味は、今も昔も変わらない。

 

「重いだろう。それが、人の命を絶つ武器の、その重さだ。

 

 この重さを振るうこと、それがどういう意味を持つのか、考えろ。それが強さというものだ」

 

 あの時から、俺はその強さとは何かを追い求めている。

 

 その答えはまだないが‥‥少なくとも、目の前の黒い紛い物ではないことはわかる。

 

 目の前で同じように構え、その動きに注視しているそれには、思いがない。

 

 ただその力の強さしか見ておらず、プログラム通りに動作を真似ただけだ。

 

 いくら、鋭く早い袈裟斬りでも……そこに自分意志や、重みに対する覚悟はない。

 

 そんな、千冬姉への愚弄とも言うべき黒いISの斬撃を、腰から抜き放って横一閃に、刀ごと弾く。

 

 そして、すぐさま頭上に構えて。

 

「お前は、ラウラ・ボーデヴィッヒだ!千冬姉じゃない!」

 

 縦にまっすぐ、相手を断ち斬った。

 

 紫電が走り、真っ二つに割れた黒いISからは、気を失うまでの一瞬であろう俺とラウラの目があった。

 

 眼帯がなく、顕になった金色の瞳。

 

 その一瞬の交錯に、「助けて欲しい」と思ったのか。

 

「………まぁ、ぶっ飛ばすのは勘弁してやるよ」

 

 力を失って崩れるラウラを抱き抱えて、俺は流石に嘯いた。

 

 ラウラに聞こえたかって?それは知らないな。

 

 

 

side流良

 

「お疲れ様」

「うん、お迎えありがと」

 事情聴取から解放されたシャルルと一緒に、僕らはある場所へと向かっていたが、僕らの話題は別のものになる。

 

「……そういえば、トーナメントはどうなったの?」

「中止だってさ。ただ、データ取りをするから一応一回戦は全員やるみたい」

 

 そう、あの騒動を受けてトーナメントは中止となった。

 

 まあ、国際条約で禁止されているものが積まれてましたとならば、さもありなんという話だ。

「まあ、そのおかげで僕の試合は明後日になっちゃったけど」

「……まあ、トーナメントじゃないならそりゃ早まるよね。話題性は一夏に勝るとも劣らないし。

 

 ところで、ボーデヴィッヒさんは?」

「打撲で痛がってたけど……まあ、なんか肩の力は抜けたみたい」

 

 で、当人は現在保健室行きとなっているが……見舞いに行った時、びっくりした。

 

 彼女が普通に笑ってる姿を初めて見たからだ。

 

「きっと、ここから始まるんだよ。ラウラ・ボーデヴィッヒは」

 

"誰でもないのなら、ちょうど良い。

 

お前はこれからラウラ・ボーデヴィッヒになるがいい。

 

何、時間は山のようにあるぞ。

 

何せこの3年間はこの学園に在籍しなければならないからな。

 

その後も、まあ……死ぬまで時間はたっぷりある。

 

たっぷり悩めよ?小娘"

 

 一緒に見舞いに行った織斑先生の言葉通りに。

 

 そんな僕の顔のどこが可笑しかったのか、シャルルは微笑んだ。

 

「そっか。……ところで、一夏が先に見舞いに行くらしいけど?」

「場所は教えてあるから、多分迷わないはず…」

 

 と、どこかくすぐったい感覚に身を委ねつつ、食堂へ向かおうとした時。

 

 

 ドカーン!という破壊音が、その教えた場所から響いた。

「……何が⁉︎」

「行こう、シャルル」

「うん!」

 

side一夏

 

「一夏!アンタねえええっ!!!」

 

 怒りのあまり、肩で息をしている鈴がいる。

 

「待て!俺は悪くないだろ⁉︎」

「あんたが悪いに決まってんでしょうが!

 

 全部!絶対!アンタが悪い!!!」

 その姿はまるで毛を逆立てて怒る猫のようだが……そんなことを言ってる状況ではない。

 

 肩には衝撃砲が開いた状態で浮遊しているし、目の前にいるのは鈴だけじゃないのだ。

 

「ああら、一夏さん?どこかにお出かけですか?私、実はどうしてもお話ししなくてはならないことがありまして。

 

 ええ、突然ですが急を要しますの。おほほほほほ」

 レーザービットを浮遊させ、スナイパーライフル《スターライトmkⅢ》を構えたセシリアが、血管マークを5つはつけている。

 

 

 更には……日本刀を構え、絶対に殺すと言わんばかりに目を据わらせた箒まで。

 

 

 で、そんな3人の羅刹を前にこの騒動の元凶かつ、俺のファーストキスを奪った奴は、顔を赤らめつつ言い放った。

 

 

「日本では気に入った相手を『嫁にする』というのが、一般的な習わしだと聞いた。

 

 故に、織斑一夏を私の嫁にする。

 

 決定事項だ、異論は認めん!」

 

 誰だそんなデタラメを言ったやつは⁉︎

 

sideラウラ

 

「一つ忠告しておくぞ。あいつに会うことがあれば心は強く持て。

 

 アレは未熟者の癖にどうしてか、妙に女を刺激するのだ。

 

 油断してると惚れてしまうぞ?」

 

 そんなふうに言った教官の言葉が、今真に理解できた。

 

 無数にある強さの一つ……その極致のような奴が、目の前にいる。

 

『強くなりたいから強い』

 

『強くなったら、やってみたいことがあるんだよ』

 

『誰かを守ってみたい。自分の全てを使って、ただ誰かのために戦ってみたい』

 

『お前も守ってやるよ。ラウラ・ボーデヴィッヒ』

 

 私の胸が、初めての衝撃に強く揺さぶられる。

 

 そう言われて、私は……ときめいてしまったのだ。

 

 早鐘を打つ心臓が教える。

 

 コイツの前では私は優秀な兵士でも、戦うための人形でもない。

 

 ただの15歳なのだ。

 

 ラウラ・ボーデヴィッヒという、ただの『女』なのだと。

 

 織斑一夏。

 

 私はコイツに……心の底から惚れてしまったのだ。

 

 




いかがでしたか?
 
ここで新しいものの設定を。
ライトニング・ストライカー
形式番号SP-04
分類 遠距離狙撃型
武装 
長距離狙撃用電磁加農砲(分割式)x1
大容量予備バッテリーx2
水風力式発電装置×1

ランチャーストライカーがアグニにガンランチャー、ガトリングなどによる弾幕の形成による広範囲の殲滅を目的としているのに対し、こちらは電磁加農砲(レールガン)による狙撃と、MSに搭載した際の稼働時間の延長を目的としている。
加農砲は分割したものを連結することで使用可能となり、分割状態の場合は両腕に単装砲として装備されている。
何より特徴なのは、ISにさえも味方機に対して、ケーブルによるエネルギーの補給が可能ということであるが、レールガンとエネルギー源を共通化しているため、濫用ができない。

ラウラのストーリーをまとめるのに苦労して、ここまで遅くなってしまいました。
次回は流良の戦闘回です。

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