IS+1(インフィニット・ストラトス・プラスワン)   作:暇人の鑑

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久しぶりの日常回です。



第21話 乙女心は共振へ

 夜空を見ながら、私はある番号に電話をかけようとしていた。

「あの人の力を借りるのは、あまり好ましくないが……」

 

 そう口には出すものの、私の脳裏にはこれまでの光景が蘇る。

 

 私は一夏の隣で、共にありたいのに……いつもそれができないでいた。

 

 先月の無人機襲来の時も。

 

 今回のトーナメントでもそうだ。

 

 鈴やシャルロットのように隣で戦う事も出来ず……輝戸やセシリアのように力になることもできなかった。

 

出来たことと言えば、ラウラに良いように使われたくらいだ。

 そんな状況が続くようでは……一夏の隣に立つことなんて、もはや夢のまた夢。

 

 だから…‥力が欲しい。

 

 隣に並び立つための強い力が……私だけの専用機が。

 

 そうして、番号を呼び出した私がケータイを耳に当てると。

 

「やあやあやあ!ひさしぶりだね!ずっと、ずーっと待ってたよ!」

 

 忘れもしない声が…‥私の姉、篠ノ之束の声が響いた。

「………姉さん」

 色々と言いたいことはあるが、それを押さえ。

 かろうじて出た返事に、能天気な声は。

 

「うんうん、用件はわかっているよ。欲しいんだよね?

 

 君だけのオンリーワン、代用なきもの(オルタナティブ・ゼロ)!

 

 そんな箒の専用機が!

 

 もちろん用意してあるよ、最高性能にして規格外仕様!

 

 そして、白と並び立つもの!

 

 その機体の名前は…………『紅椿』(あかつばき)だ!」

 

 まるで取引を持ちかける悪魔のように響いた。

 だが……その言葉には悪魔的な魅力があった。

 

sideシャルロット

 

 一年生の寮にて。

「流良、起きてる?そろそろ起きないと遅刻するよ?」

 ある部屋のインターホンを押すと、しばらくしてから出てきた彼はシャワーでも浴びたのか心なしかホコホコしていた。

「……夜更かしはダメって言ったよね?僕」

「夜更かしじゃないよ、徹夜だよ……「ん?」ごめんなさい」

 キリッとした顔でそんな訂正をしないでほしい。

 僕の足元を転がっていた、オレンジのハロも「アカンデー」と元の主人に注意を飛ばす。

 流良は、作業に没頭すると平気で夜更かしするから、僕が同室だった時は釘を刺していたんだけど………どうやらブレーキ役がいなくなったのがダメだったらしい。

「いやー、つい作業に熱が入っちゃって」

「もう……授業で居眠りして、織斑先生に怒られても知らないからね?」

 なんだかお母さんみたいな口ぶりになってしまう僕の前では。

「気をつけるよ……じゃ、食堂行こう」

 

肩にトリィを乗せ、案の定少し眠そうにしていた。

 

side流良

「ラウラがいない…?訓練でもしてるんじゃないの?」

「そう思ったんだけど、どこにもいないみたいで…」

 シャルロットの相談に、あまり覚醒してない頭で答えると、こんな朝からしっかり動いてるシャルロットは首を傾げていた。

 

「昨日、ケンカしたとかは?」

「そんな事はないと思うけど…」

 ラウラとうまくいってないのかと心配したが……そう言うわけではないらしい。

 

 と言うかそれ抜きにしても、僕との同室から変わってから、休みの日以外はほとんど毎日。

 

 シャルロットが朝にやってくるのだ。

 夜更かしや徹夜はやるとは言っても、一応、朝起きられないってわけじゃない。

 なんだか通い妻かアニメで良くあるお隣さんみたいで、悪い気はしないが……何があったんだろうかとそわそわしてしまう。

 彼女がどう思うかはさておき、今、僕は彼女を守らなきゃいけないのだから。

 

 そんな疑問を頭に置きつつ、一夏の部屋に向かった時。

 

「ちぇ、チェスとおおおおお‼︎」

 

 なんだか気合の入った叫び声と共に、何かが壊れる音がした。

 

 sideシャルロット

「もう、なんで裸で一夏の布団に裸で入り込んでたの……?」

「嫁との営みだ」

「いっ…⁉︎」

 真剣を片手に猛る箒と、全裸で一夏と同衾するラウラ。

 騒ぎを聞きつけた僕と流良の2人が見たのはそんな光景だった。

 

 そして、遅れて駆けつけた山田先生に怒られた僕達4人は、食堂で朝ごはんを口にしていた。

「なんで僕とシャルロットまで怒られたんだろう…」

「い、一夏がしっかり断らないから悪いのだ!あんな不埒な事を朝っぱらから…!」

 ストレートなラウラに、赤くなってしまう頬を仰ぐ前では流良のジト目に言い訳をする箒が、気まずそうにしていた。

「俺だってびっくりしたわ!夜這いにくるわノックもせずに入るわで…!」

 そこに一夏がちょっと待ったと言わんばかりに、捲し立てたその時。

 

「朝からやかましいぞ、さっさと食べろ」

 鶴の一声と言わんばかりに、僕含めた5人の頭に出席簿が降り注いだ。

 

「な、なんで僕達も……」

「い、痛い……」

「連帯責任だ」

 みんなが織斑先生を恐れる理由がわかった気がする。

 

side流良

 

 天下のIS学園と言っても、一応普通の高校な訳で。

 7月の半ばに期末テストはあるし、それで赤点を取ろうものなら、夏休みの連日を使った補修があるため、なんとしても避けたいところだが。

 僕達1年生の前には、勉強の意欲を削ぐ事間違いなしのトラップのようなイベントが待ち構えていた。

 

 放課後。

「そう言えば、そろそろ一年生は林間学校じゃない?」

 モルゲンレーテからの依頼で、M1のOSの調整をしていた僕は、神戸先輩に聞かれて、作業の手を止める。

「あ〜…そう言えばそうでした」

「林間学校にそのリアクション取るのなんて輝戸君くらいのものね」

 このOSは、非IS化したM1…要は、MS(モビルスーツ)としてのM1のものだ。

 PICを搭載しておらず、駆動補助もISほどではないMSとしてのM1は、あまり良い動きはできないのだ。

 ぎこちなく、なおかつノロノロと動くくらいが精一杯という有様で……国連が作っているEOSよりはマシだが、正直どんぐりの背比べだ。

 棒立ちでビームを打つことくらいならできるが…運動性を活かした接近戦なんてお察しである。

 

「こうしてプログラムやってる方が好きですし」

 で、それをなんとかしようと僕に白羽の矢が立ったと言う事である。

 まあ、多分トーナメントの時にやったOSの書き換えで目をつけられたんだろうな……。

 戦いたくなんてないのに、今この仕事は戦う事で得られたもので……その仕事で、自分の心の平穏を保っているのが今の僕だ。

 

 なんだか複雑な気分でいた僕に、愛津先輩が端末を操作して見せてくる。

「そーんなこと言って、本当は期待してるんじゃないの?女の子の水着に。どう、お姉さんのこのカラダは?」

 そこには、1年前らしい3人が写っているが…褒めてもセクハラななりかねないし、塩対応しても女のプライド的にダメだろうし、どう反応しろと言うんだ。

 と、針の筵状態に陥った僕を助けてくれたのは、初江先輩だった。

「もう、隙あればセクハラすんじゃないわよ…お客さんも来てるって言うのに」

「お客さん?マリアさんでも…」

 そして、そんな彼女が手招きしたのは…。

「流良、今いいかな?」

「シャルロット……?」

 どことなく緊張した面持ちのシャルロットだった。

 

sideシャルロット

「あ……あのね?今度の日曜日、水着を買いに行きたいんだけど…」

 噛まないか心配になりながら、お買い物に誘おうとしたら、流良は首を傾げて。

「‥‥Amazonでポチるのじゃダメなの?」

「実際に見て回りたいんだよ?」

 身も蓋もない事を言い出したので、慌てて止める。

 これはお買い物であり…デートだ。

 ネットショッピングで代用できるものじゃない。

 

「……でも、なんで僕と?トレンドなんて知らないし、他の女子といったほうがいいような気がするけど」

「それは……ほら、前に色々案内するって約束してくれたでしょ?だから……どうかな?」

 それに……こうして女の子として出歩ける時が来るなんて、思ってもいなかったのだ。

 はしゃぎすぎてしまうかもしれない為、流良といないとどうなるかわからない。

 

 すると、しばらく考え込んだ後。

 

「……わかった、空けとくよ」

「うん!」

 儚げな笑みを浮かべて首肯した流良に、僕は声を弾ませた。

 

「……でも、僕でいいの?本当に」

「流良がいいんだよ♪」

 いろんなことがあって……成り行きでえっちしちゃって、順序がおかしくなっちゃったけど。

 こうして1人の女の子に戻れた今、これから流良に伝えていきたいんだ。

「ありがとう」と「大好き」を。

 

side一夏

 林間学校に必要なものを買いに行くべく、俺はモノレールに乗っていた。

 

 正直、実家に帰れば揃うので、掃除しに行く時に持ってくればいいんだが……。

「き、今日はいい天気だな?一夏」

「ん?おお、梅雨も明けたしな」

 学年別トーナメントに優勝した時、箒の買い物に付き合う約束をしたのを思い出して声をかけたのだ。

 約束は早めに果たしてやりたいからな。

……「そんな事だろうと思ったわ!」と、なぜか本人からは蹴りをもらったけど。

 せっかく綺麗な顔してるのに、そんなに怒ってばかりじゃ損するぞ。

 

 そんな訳で、IS学園の夏服に身を包んだ俺たちは、目的の駅にたどり着いた。

 

 ここら一帯の商業を総なめしている駅前のショッピングモール、「レゾナンス」に。

 

 

sideシャルロット

「だ、大丈夫だよね……?」

 レゾナンスに降り立った僕は、早速デート存続の危機に立たされていた。

 

「よし殺そう、今殺そう、すぐ殺そう……」

「オホホホホホホホ……」

 

 どうやら一夏と箒もお買い物に来たらしく、それをただならぬ雰囲気と一緒に追跡しようとする鈴とセシリアを目の当たりにしたからだ。

 

 流石にこんな街中で騒ぎを起こさないとは思うけど……言い切れない何かがそこにはある。

 

「……じゃないや。流良との待ち合わせに遅れちゃう」

 

 放っておけないけど、せっかくのデートなんだし今回ばかりは何事も起こりませんようにと祈るしかない。

 

 

 そうして後ろ髪を引かれつつも待ち合わせの場所に向かった時。

 

 

 

「………‼︎」

 そこには、緑のロボット鳥と戯れる妖精さんがいた。

 

side流良

「久しぶりに着たな、これ」

 

 懐かしい格好に身を包んだ僕は、トリィを飛ばしながらシャルロットを待っていた。

 

 同じ研究室の仲間達と悪ふざけで買った服で……初めてISに触ったあの日も、これを着ていたのだ。

 

 ベルトを散りばめ、なぜかチョーカーまでついたこの黒ジャケット。

 

 なかなかのセンスな服だが……思い出の一品であり、壊れた日常の形見でもあり、他が文字Tシャツくらいしかないので比較的オシャレなのがこれである。

「みんな、高等部でうまくやってるかな…」

 

ちょっとしたホームシックみたいなことになっていた僕の目の前で。

 

「流良、お待たせ」

 半袖のホワイトブラウスと、ライトグレーのティアードスカートに身を包んだ、夏のご令嬢が手を振った。

 

……そう言えば、女子と2人きりで出かけたことってないかもしれない。

 

 

side箒

「お、あれは流良とシャルロットか?あいつらもいたんだな……せっかくだしみんなでッ⁉︎」

「女心を考えろ、馬鹿者め…!」

 とんでもない事を言い出した一夏を叩いて止める。

 

 トレンドはあまりわからないが、あの2人の空気がデートのものというのは流石にわかるし、邪魔しようものなら殺されかねない。

(そもそも、私がいるんだから私と楽しめばいいのだ……)

 と言うか、隣にいる私を差し置いてあの2人に目移りするとは…!

 

 冷静を装っている箒だが、内心では女心のわからない一夏に地団駄を踏んでいた。

 

「ほら、行こ?」

「ちょっと、そんなに引っ張らなくても…!」

 目の前では、私たちに気付いてないらしいシャルロットが、満面の笑みで輝戸の手を引いている。

 あの2人が付き合っているといった噂は聞かないが……おしゃれな格好をして、手を繋いでる様は側から見てもお似合いのカップルだ。

 

(私だってあれくらい…!)

「い、一夏!こんな広くて人が多いと迷ってしまうな!」

「え?昔行ったことあるだろうし、お前はここ知ってるんじゃ…」

 勇気を振り絞った私のアプローチだが、やはりこの朴念仁には届かないよう

「まあ、なら手でも繋ごうぜ」

だ、と諦めムードでいた私の手を一夏はなんてことないように取って歩き出した。

 

 されるがままに手を引かれた私は何をどこから言えばいいのか、しばらく言葉が出なかったが……ただ一つ。

「嫌か?」

「嫌ではない、全く仕方ないやつだ……」 

 頬は緩みっぱなしだろうが、直そうとか引き締めようとかは、今は全く思わなかった。

 

side鈴

「ねえ……手握ってない?」

「握ってますわね」

 アタシとセシリアの目の前では、許されざる光景が広がっていた。

 

 一夏が箒の手を取り、店が立ち並ぶストリートに歩き出したのだ。

「そっか、見間違いでも白昼夢でもなく、やっぱりそっか……」

 

 アタシにはそんなことしてくれないくせに、箒にはあんなにすんなりと……!

「よし、やっぱり殺そう……!」

「うふふふふふ…!」

 甲龍とブルー・ティアーズは修復済み。

 腕に装備された小型の衝撃砲や、ティアーズの低出力ビームを使えば周りの人を巻き込むこともないだろう。

 

 そうして、裏切り者の緩んだ顔に照準を合わせた時。

 

「ほう?楽しそうな事をしているな。なら私も交ぜるが良い」

 と、突然の声に後ろを振り向くと。

 

「ラウラさん⁉︎」

「アンタいつの間に⁉︎」

 

 そこに立っていたのは、わすれもしない怨敵…とまでは言わないが、好印象を抱けるはずもない相手こと、ラウラだった。

 

「そう警戒するな。今のところお前達に危害を加えるつもりはないぞ」

「し、信じられるものですか!再戦と言うなら受けて…」

 流良の試合で話したのもあって、多少はマシになったものの猜疑心がまだ残っているであろうセシリアが、アタシと同様警戒の視線を向けるが、ラウラはスタスタと一夏達のところへ向かおうとする。

 

「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!何するつもり⁉︎」

「決まっているだろう。

一夏を追い、交ざる。嫁を守るのが亭主というものだからな」

 

 さらっと言ってのけるラウラに、アタシとセシリアは逆に怯んでしまう。

 

 こうまでストレートに言われてしまうと、羨ましいのか恥ずかしいのかわからないからだ。

 

 だが……アタシと同じくらい付き合いの長い箒にリードを許すのはマズいのは確かだ。

 

「分かったわ。でも……未知数の敵と戦うにはまずは情報収集が先決よ。

 それに、アタシにとってここは庭みたいなもの。案内人は欲しいでしょう?」

「そ、そうですわ!ここはまずあの2人の関係がどのような状態であるかを見極めるべきじゃなくて?」

 

 似たような事を思ったらしいセシリアと、もはや阿吽の呼吸で止めにかかると、ラウラは少し考え込む仕草をした後。

 

「なるほど、一理あるな。ならそうしよう」

 

 唐変木抹殺部隊に、新メンバーが加わった。




いかがでしたか?
ここで一応キャラ紹介を。
美里(みさと)
流良のカレッジ時代の同じゼミの友達。
快活なしっかり者で、女尊男卑に染まっていない貴重な人種である。
元ネタはガンダムSEEDより「ミリアリア・ハウ」。

透(とおる)
流良のカレッジ時代の同じゼミの友達。
陽気な性格をしており、美里とは交際している。
元ネタは上と同じく「トール・ケーニヒ」。

彩都(さいと)
流良のカレッジ時代の同じゼミの友達。
落ち着きのある理知的な性格をしており、みんなのまとめ役でもある。
元ネタは同じく「サイ・アーガイル」。

和樹(かずき)
流良のカレッジ時代の同じゼミの友達。
やや引っ込み思案なところはあるものの噂好きな面があり、どこからともなく情報を集める。
元ネタは同じく「カズイ・バスカーク」。

 カレッジ時代の友達として、ヘリオポリス組の方々モチーフのキャラを紹介しました。ちなみに美里だけは2話か3話に出てきてます。

 彼らは今後出てきますので、どこで出るか予想してみてくださいな。

 それでは、次回もお楽しみに!
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