IS+1(インフィニット・ストラトス・プラスワン)   作:暇人の鑑

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更新のお時間です。
今回は日常回の後半となります。




第22話 日常の意味

 レゾナンスとは、平たく言えば駅前のショッピングモールだが、色々とすごい場所だ。

 地下鉄、バス、電車にタクシーと、交通網の中心であるため、市内のほぼ全てにアクセス可能であり…品揃えやジャンルは老若男女よりどりみどり。

「ここになければ市内のどこにもない」と言わせしめるほどだし、実際余程の掘り出し物でなければ、多分ないだろう。 

 

 で、そんな場所の水着売り場に来た僕とシャルロットはその景色に圧倒されていた。

「うわあ…すごい種類だ」

「うん、目移りしちゃうね…」

 

 色にしても形にしても、とんでもない種類があり……まあ、圧巻の一言である。

「男物とのやる気の差をひしひしと感じるよ…」

「あはは…」

 因みにその大半は女物であり、男物はその隅っこにぽつんとあるだけだ。

 決して種類が少ないとか、適当とかじゃないし、あまり悩まなくて良いから楽ではあるけども…それでも、分母は大きかった。

 

「じゃあ、お互い買ったら落ち合おう。30分後でいいかな?」

 案内は済んだし、適当に自分のを選びに行こうとした僕の服の袖が引っ張られる。

 何かと思って振り向くと、少し逡巡して。

「そ、その…流良も一緒に選ばない?僕も流良の選んであげるから」

 またハードルの高い事を言い出した。

 

 生まれてこの方女友達なんてそんなにいない僕が、シャルロットの水着を?

「え?いや……本気?その、恋人でもないんだし」

「本気!ほら、全く違う目線からの意見って大事だと思わない?」

「ええ……」

「だめ……かな……?」

 なんで上目遣いまでして僕の意見を聞きたがるんだ。

 なんだかいつもより強引な気がするが……まあ、久しぶりの娑婆の空気の美味さにハイになってるのかもしれない。

「分かったけど…センスはあんまり期待しないでよ?」

「えへへ…ありがと」

 無邪気に喜ぶシャルロットを前に、僕は適当に選んで落ち着くのを待つことにした。

 

……そうだよ、なんか気恥ずかしいんだよ!

 

sideシャルロット

「ありがとうございましたー」

 店員さんに見送られながら、僕は水着の入った紙袋を抱えていた。

 

 この中には、流良の選んでくれた水着…オレンジと黒のビキニが入っているのだ。

「リヴァイヴみたいであってるような気がしたんだ」

 と、照れくさそうに差し出してきたのを思い出して、つい笑みがこぼれてしまう。

 僕も、同じような事を思ったから。

「同じ気持ち……なんか良いなぁ」

 

 なんかこう…同じ思いで繋がってるみたいな温かい感じがするのが、心地よい。

 

 そんな、夢見心地な気分で水着店を出た僕だったが。

 

 

「僕は、殴られる筋合いはないですよ!」

 

 フードコートで、言い合う声がした。

 

side流良

「ちょっと、そこ僕が先に!」

 先に店から出ていた僕が売店に並んでいると、僕と同じくらいの女子達3人が急に横入りしてきたので、慌てて待ったをかける。

 

 すると、その3人は露骨に嫌そうな顔をしてきた。

 まるで、こちらが何か良くない事をしてるかのようだが…この点に至っては被害者は僕だ。

「え?うちら女だよ?後ろに並んでるのみんな男じゃん」

「そーそー、ならアタシらの方が先でしょ」

「そんなことも知らないの、バカじゃね?」

 だが、その3人は濃い化粧でバカ笑いした後、それで話は終わりだと注文をして……ん?

 

「……なに?」

 差し出された手を見て首を傾げると、その3人はさも当然と言わんばかりに。

「慰謝料。アタシらを不快にさせた罪」

「さっすが!頭いいー!」

「自分の立場をわきまえてないからそーなんの。

 ほら、早く払えよ。彼氏が待ってんだから」

 それをげんなりとした気分で見ていた僕は、シャルロットが来るのを待ってればよかったと後悔した。

 

 女差優遇が浸透したとは言っても、大体の人は男の社会的立場をある程度受け入れてくれている……まあ、女のために男が働くのが当然という考え方はあるけど。

 

 で、目の前にいるのはその大体の人から外れた方であり……ゴリゴリの女尊男卑に染まった「イマドキの女子」という奴だ。

 

 見知らぬ男をパシリにしたり、気に入らないから小遣い稼ぎをしようと、冤罪をふっかけたり。

 

「ISを使える女は偉い」=「女である自分達は偉い」という思考回路の元、やりたい放題やってくるというわけだ。

 だが…この3人にIS学園の入試をくぐり抜けられるような頭があるとは思えないし、待機状態の専用機の反応もない。

 

 つまりISが使えないこの3人の立場なんて、男とそこまで変わらないのである。

 

「そっちこそ早く自分達のお金払ってよ。みんな待ってるんだからさ」

 

 そうして突っぱねた僕に、3人はやれやれと言わんばかりに首をしゃくる。

 

 すると、どこからともなく現れたのは…その彼氏らしき3人の男だった。

 その姿は金髪にピアスだったり、刈り上げていたりと様々だが、悪趣味な金のネックレスや不快な笑みから、類友の一つと容易に察することができた。

「アタシらに口答えするとか生意気。ボコっちゃっていいよ」

「その後警備員に突き出せば、終わりだけど…まあ、逆らったのが悪いんだよ」

 その3人はいわゆる「陽キャ」であり……その顔は明らかに僕を下に見ている。

 

 女尊男卑が浸透したことにより、男の地位は下がりまくっているが…一部例外がある。

 

 ホストやアイドルなど、それなりに容姿が良く、また取り入るのが上手い場合は、女性から重宝されるし、また男の方も「女に愛されて当然」と考えるようになる。

 更にはいわゆるDQNと呼ばれる集団となれば……女が好き勝手やるための隠れ蓑兼用心棒となって。

 女同士でのマウント合戦に勝ちたく、わがままを通すための腰巾着がほしい女と、他の男にマウントを取りたく、好き放題やりたい男での、嫌なwin-win が成立するのである。

「陰キャは大人しくしてりゃいいんだよ!」

 そのうちの1人が見るからに陰キャの僕を前に、余裕の笑みと共にパンチを繰り出すが……その拳はあまりに遅い。

 

 突然の不意打ちというわけでもなく、ただただ余裕をひけらかすような拳をかわし、そこに合わせようとしたもう1人が攻撃に移るより前に懐に飛び込み、鳩尾に貫手をお見舞いする。

 その後ろから殴りかかってきた3人目をギリギリまで引きつけてからかわし、鳩尾への一撃に悶える2人目に突っ込ませた。

 

「調子乗んな!」

 プライドを傷つけられたのか、屈辱で赤黒くなった顔で突っ込んでくるが……不安定な足場での、バクゥによる突撃に比べれば脅威にもならない。

 やはりさっきと同じようにかわし、今度は腕をねじり上げた。

 みっともなく床に転がるのを後の2人が目を丸くして見る。

「僕は、殴られる筋合いはないですよ!」

 

 やっと回ってきたこちらのターンに、抗議の声を上げた僕に、ムキになったのか。

 

「くたばれクソ陰キャ!」

 

 ナイフを片手に突撃してきたその時。

 

 

「バカに刃物とは、よく言ったものだな」

 白金の長髪を靡かせたラウラが、そのナイフを持つ手を手刀で叩き落とした。

 

 

 突然の闖入者に、その場にいた全員がポカンとしている間にも、ラウラは、3人をけしかけてきた女達に絶対零度の視線を向ける。

「そして、その後ろで威張ってるだけの貴様らは…」

 

 それにビビったのか、あるいは自らの不利を悟ったのか。

「まじつきあいきれねー」

「よえー」

 よくわからない捨て台詞と共に、男達を見捨てて逃げようとしたが。

 

「逃げ切れると思ってるのかな?」

 警備員を連れているシャルロットが、ゾッとするほどの笑顔を見せていた。

 

 

sideシャルロット

 絡んできた6人が警備員に連れてかれ、野次馬に囲まれだしたその場から慌てて逃げてきた僕達は、ベンチに腰掛けていた。

 

 

「……む、流石我がドイツの名産だな。この国でも美味い」

「ケチャップついてるよ…そう言えば、どうしてあの場に?」

「セシリアたちとはぐれていた時に、あの騒ぎがあってな」

 ティッシュを渡す流良が首を傾げると、子供用ビールの泡をひげのようにつけたラウラがソーセージを齧りながら返す。

 屋台で買ったソーセージと、子供用ビール片手に3人で並んでおり……これではデートではなくピクニックだ。

 

(でも、ピクニックなんていつぶりだろう)

 デュノア社にいた時には出来なかった……やろうとすら思えなかった。

 友達と並んで買い食いなんて言うのも。

 

「…フフフ」

 願っても無駄だと諦めだらけだった僕に、ああしたい、こうなりたいと思うことを取り戻してくれた彼には、やはり感謝してもしきれない。

 

 しみじみと思う僕は、ソーセージ片手に、ハロとトリィに囲まれるその2人の微笑ましい姿を……

 

「シャルロットも食べるといい。美味いぞ」

 眺めてるだけじゃない、こうして一緒に楽しめることの幸せを、改めて噛み締めていた。

 

「…うん、美味しい!」

 

side箒

「おい、なんで俺まで更衣室にいるんだ」

「静かに!セシリア達に見つかってしまう!」

食ってかかる一夏に釘を刺しつつ、私はカーテンの外の様子を伺っていた。

 

「いちかぁ…?でてらっしゃぁい?」

「オホホホホホ…」

 その視線の先では、セシリアと鈴が殺気立ちながら、何かを探すように辺りを見回している。

 

(まさか、あの2人につけられていたとは…!)

 せっかくのデートを台無しにされた恨みと、あの状態の2人の前に出たら何をされるかわからない恐怖が同時に押し寄せてくる。

 

(折角一夏の好みを聞こうと思ったのに…)

 いい機会だからどんなのが好みかを聞こうと、タイミングを伺っていたらこの有様である。

 

 胸のサイズ的に選択肢がそこまで多くはできないものの、それでも…やはり、意中の相手にはドキッとしてほしい。

 そんな箒の乙女心が燻る後ろで、一夏はギョッとした。

 

 水着を吊るしていたハンガーがミシミシ言い出したからだ。

「おい、箒!水着のハンガーが…!てか、お前そんな大胆なの着るのか?」

「大胆…?」

 ハッとした箒がその手を見ると……いわゆるビキニタイプの水着が。

 

「き、貴様!何を不埒な想像を!」

「してねえ!してねえって!」

 

 猛る箒に震えた一夏は、いきなり連れ込まれたことから始まった騒動に耐えきれず、更衣室から脱出を試みるが。

 

「何をしている、お前達は…」

「だ、ダメですよ!2人とも不健全です!」

 

 その先にいたのは、我らが担任にして大魔神「織斑千冬」と、副担任「山田真耶」の2人であった。

 

side流良

 

「何が起こったの?」

「僕もよくわからないよ…」

 先程の騒動で、助けてくれたお礼をしたいと申し出た僕に、ラウラとシャルロットはあるお願いをしてきた。

 

 で、そのお願いを叶えるためのパーツを買い、シャルロット達が待ってるベンチに戻ると、なぜかラウラは目を回して倒れていた。

 

 シャルロットの介護を受けているが……熱中症ではなさそうだ。

 

 水着屋の紙袋を片手に顔を赤くするラウラに、話しかけようとすると。

 

「なあ流良。わ、私は可愛いらしいぞ……?」

 息を絶え絶えに、また珍妙なことを言い出す。

 

「一夏と織斑先生の話を聞いてたらしくて…」

「貰い事故?」

「多分」

 少し前の傍若無人、唯我独尊の擬人化とも言うべきラウラが、すごい変化をしたものだ。

「お、お前はどう思う…?」

 

 どう思うって……。

「ラウラもシャルロットもかわいいよ」

「ゴフッ…⁉︎」

「ふえ…⁉︎流良、不意打ちはダメだよ⁉︎いや、ダメじゃないんだけど……」

 ここで可愛くないなんて言おうものなら、どんな目に遭うか分からないから、そう答えたまでなんだけど…どうやらこれでもダメだったらしい。

 

「僕にはもう、どうしたらいいか分からない……」

「そう言うことはこう、順序とタイミングを……」

 ラウラが今度こそ倒れ、シャルロットは照れたように捲し立て、僕はポカンとしている。

 

 そんなカオスな状況を前にしていた僕は、肩に止まってきたトリィと共に聞き流すことにした。

 

「お前らもいたのか?」

「何が起こったと言うのだ……」

「いちっ…⁉︎」

 またさらにカオスが増した⁉︎




いかがでしたか?
次回からは修学旅行のあたりのお話となります。

お楽しみに。
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