IS+1(インフィニット・ストラトス・プラスワン)   作:暇人の鑑

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更新のお時間です。

SEEDFREEDOMのエピローグカット入りの上映、楽しみですね。

有給取って見に行こうかな?と思っております。


第23話 プレイバック

「なんだか今日はご機嫌ですわね」

 林間学校へ向かうバスの中、隣の席に座ったシャルロットさんはいつにも増してニコニコしていた。

「そ、そうかな…?」

ミトメタクナーイ!

 膝の上を転がるボール状のペットロボット「ハロ」のカタコトはそう言うが…その持ち主は制服の袖を少しまくる。

 

「エヘヘ…なんか、少し子供っぽかったかな?」

 その腕には銀色のブレスレットが付いており…翼の装飾があしらわれている。

 派手さはないが…流麗な趣のあるそれを見て、幸せそうに笑みをこぼした。

「それだけ喜んでくれるのなら、冥利に尽きますわね」

「夜更かししてまで、急がなくてもいいんだけどね…」 

 シャルロットさんの少し困ったような笑みを添えた視線は、ロボット鳥を肩に乗せて寝ている流良さんに向いていた。

 昨日のレゾナンスにて一悶着あったらしく、そのお礼らしいが……まさか、一晩でブレスレットとハロを作るとは。

 

 誠実なんだかお馬鹿なのか……。

「まあ、その心意気は買いますわ」

 なんとも言えない視線を向けていたが。

「お、それがシャルロットへのプレゼントか?」

「一夏さん⁉︎」

 突然後ろから話しかけてきた一夏さんに、思わず大きな声が出てしまう。

 そんな私とは対照的に、夢見心地の彼女は落ち着きを崩さない。

「うん、凄く器用だよね」

「だよなあ…」

 そのブレスレットを見て、羨ましそうに考えるそぶりを見せた彼は、思いついたように。

 

「セシリア、これまで特訓に付き合ってくれたお礼がしたいんだが、なんかしてほしいことあるか?」

「⁉︎‼︎」

「「何だと⁉︎」」

 千載一遇の大チャンスを提示してきた。

「……って、何でお二人まで乗っかってるんですの⁉︎」

「当たり前だ、私だって特訓に付き合ったのだぞ!」

「嫁の浮気を止めるのは亭主の役目だ!」

 

 鼻息荒く乱入してきた箒さんとラウラさんだが、こんなチャンスを譲るなんて、出来はしないのだ。

「よろしい、ならば戦争ですわ!」

「いや、2人にもそれ相応に礼を……」

「2人とも落ち着いて、そんなに騒いだら……!」

 仲裁に入ろうとした2人をよそに、戦いの幕が開かれようとした時。

 

「公共の場で騒ぐな、馬鹿者!」

「「「………‼︎」」」

 

 国際司法裁判所IS学園支部長官により、制裁が下された。

 

「オマエモナー」

「大きなお世話だ」

「アカンデー!」

 何でロボットに威圧できてるんでしょう?

 

side流良

「新しい量子サブルーティンを構築して、シナプス融合の代謝速度を40%向上させ、一般的なパイロットの神経接合に合うように、イオンポンプの分子構造を書き換えました」

 

 修学旅行の一日目は、まるまる自由時間であり。

 一年のほとんどが海に行ったことで、静かになった旅館の中。

 

 個室のエアコンを効かせた中で、僕はリモートで通話していた。

 

 パソコンの画面には、M1のデモンストレーションの様子が写っており、先日見せた強制ギプスをつけたようなぎこちない動きはどこへやら、滑らかな動きを見せている。

「カトウから話は聞いていたけど、よくそんなことをこの短い期間で!本当にすごいわね!」

 

 懐かしい教授の名前を出して称賛するのは、エリカ・シナモス技術主任。

 

マリアさんがストライク等の「Xナンバーズ」の開発に関わっているのに対して、この人はM1アストレイの開発に関わっているのだ。

 

「ええ……ありがとうございます。

 また何かあったら連絡ください」

 

 そうして通話を終えた僕は、敷いておいた布団に潜り込む。

 

 エアコンをガンガンに効かせた中で布団をかぶっての昼寝。

 

 グータラな僕にとってこれ以上の夏の贅沢はないし、つけっぱなしを誰にも怒られないのも素晴らしい。

 寮でもできないことはないが、ホテルの部屋みたいなあそこでやるのは何か違うのだ。

 

 そんな訳で至福の時間を過ごそうとしていたら、控えめに扉がノックされた。

 

 

sideシャルロット

「あの……いや、約束のことを忘れてた訳じゃなくて。

 

 ブレスレット、ハロ、OSの為に徹夜して眠かった訳でもなく。

 

 あれ以上の夏の贅沢を知らなかった訳でありまして……」

「別に?僕はちっとも怒ってないよ?」

「思いっきり頬膨らませてるじゃない……」

 疲れたように愚痴をこぼす流良と並んで歩く僕は、内心地団駄を踏んでいた。

 

 海で一緒に遊ぼうとしたのに、買った水着はお店の紙袋に入れっぱなし。

 

 一日目を昼寝とグータラで終わらせようとして。

 

 何より、折角選んでくれた水着と、渡してくれたブレスレットをつけたのにそれに気づかずスルーしたのだ。

 

 乙女心を一刀両断するようなこの仕打ちに、怒らずにいられなかったのである。

 

「流良のバカ…」

「…でも、仕事を残したまま遊ぶの、後ろ髪引かれちゃうことってない?」

「その後思いっきり昼寝しようとしてたでしょ。

 僕は一緒に海に行くの、楽しみにしてたんだよ?」

「いや、悪かったって……」

 責任感の強さはいいところかもしれないけど、肩透かしを喰らった乙女心の無念は、そう簡単には収まらない。

 

 そんなもやっとしていた気持ちは、この唐変木をどうしてくれようかと考えた末に結論を出した。

 

「……ん」

「……サンオイル?」

「これ塗ってくれたら、許してあげる」

「えー……」

「いや?」

「お仕置きなの?これ」

 

 お仕置きというより、セシリアがやろうと企んでいるのを見てやりたくなっただけなんだけど。

「僕達、もうそれ以上のことしてるじゃない」

 お互い生まれたままの姿で、大人になった事に比べれば、もはや今更………いや、その慣れは完全にダメなやつだ。

「自分で言って照れないでよ…自爆テロ反対」

「……なら言わせないでよ、流良のえっち…」

 

 と、なんだか不毛な争いをしながら海への道を歩くと、青い空と白い雲に、みんなのはしゃぐ声。

 それと潮風の香りが鼻腔をくすぐり、自然と足取りが軽くなっていった。

 

 

side流良

「サンオイルを女子に塗る」

 そんな漫画やアニメでしかない様なイベントを、実際にやるとは思わず、僕は否応がなく緊張していた。

 

「じゃあ、お願いします……!」

 目の前では、シートの上でビキニのトップの紐を解き、背中をさらけ出して寝そべるシャルロット。

 

 悪あがきを兼ねて周りを見渡しはしたものの……一夏はセシリアにサンオイルを塗っており、箒とラウラはいない。鈴は一夏の方にいるし、その他大勢の生徒は、一夏にサンオイルを塗り直してもらおうと、ザブザブと海に入っている。

 

「その、そんなに嫌ならやらなくても……」

「いや、そう言う訳じゃないよ」

 

 少し悲しそうに言うシャルロットに慌てて否定した。

 

 別に嫌な訳ではない。

 むしろ、女尊男卑の社会でここまでの機会に恵まれていることは、むしろ幸運なんだろうが……。

 

 僕が甘えて傷つけた、僕が守らなくちゃいけない人なのに。

 

 こうして無防備な姿を晒して、慕ってくれているそんな彼女に惹かれてしまっている自分がいるのだ。

 

 むしろ幻滅でもしてくれたら。

 ただただ被害者として、駒として利用してくれていれば、そう言うものだと割り切れるのに、そんなふうに優しくされてしまうと……

 

 その想いにまっすぐ向き合えていないことが、申し訳なく思えてしまう。

 

 どうにもならない苦しさを感じつつ、僕は海の家で特別に譲ってもらった新品のハケを取り出した。

 

 守らなきゃいけない人に、これ以上入れ込んじゃダメな気がして。

 

sideシャルロット

 

「どう?上手く塗れてる?」

「う、うん……」

 流良にサンオイルを塗ってもらっていた僕はその……かなり大変な状態だった。

 

 よほど肌のキメが細かいのか、触れてくる感触はとてもすべすべしていて……。触り方も、ものすごくソフトで。

 

 なんというか、全身をくすぐられているような……そんな感覚にゾワゾワとなりっぱなしである。

 

(へ、変な声漏れてないよね……⁉︎)

 

 流石に、他のみんなも見ている中で変な声を出したくないが……んんッ⁉︎

「ンッ……そ、そんなところまで行くの⁉︎」

「え?だって全身にしっかり塗らないと…あ、前は流石に自分で塗ってよ?」

「う、うん…」

(だ、大胆すぎないかなあ⁉︎)

 

「アッ……フゥッ……!」

 なんと、お尻や内股の方にまでオイルを塗りだす。

(誰か止めてくれる人はいないのかなぁ…?)

 なんだかいけない気分になりそうになるのを抑えてはいるが、さすがにえっちすぎる。

 しかも、ほかの人はなんというか同情の目を向けてくるばかりで止めるそぶりはない。

(も、もう……!)

 思う存分弄られ、身体は色々とまずい状況で。

 これ以上はダメだと制止の声を上げようとした時。

 

「また面白い事をしているね…焼きとうもろこし食べたくなってきたじゃないか」

「よく知ってますね………って、アイシャさん、それは!」

 聞きなれない声と、焦りを孕んだ流良の声がした。

 

 

 

 「焼きとうもろこし」⁉︎

 

 水着のブラを抑え、慌てて後ろを振り向くと。

 

 

「………あ」

 

 「しまった」という顔の彼の右手にはハケ、左手にはサンオイルを入れた皿があった。

 

 その光景を前に、何をしていたかを一瞬で理解した。

 お菓子を作る時、生地の表面に卵黄を塗るように、ハケでオイルを塗っていたのだ。

「輝戸君?ちょっとお話ししようね?」

「アイシャさん、助けて!」

「乙女心を弄ぶ男は、馬に蹴られて死ぬといい……誰かがこう言っていた気がするよ」

「くっそおおお!」

 脱兎の如く駆け出した流良を捕まえんと、僕はブラの紐をつけながら立ち上がった。

 

 

side一夏

 

「ちゃんと塗ったし、セクハラもしてないのになんで怒ってるの⁉︎」

「あんなの反則だよ!せっかく勇気出したのに…!」

 珍しく顔を真っ赤にして怒り心頭のシャルロットと、そのまた珍しく慌てふためきながら、逃げる流良の追いかけっこを眺めていた俺は、視線の先でうろちょろしている奇妙な物体が気になって仕方なかった。

 

 小柄なそれは、バスタオルで体を覆う化け物の様だが……一体中には誰がいるんだ?

 

 鈴は別館に行ったし、セシリアや箒の身長にしては低すぎる。

 そうなると…………もしかして。

 

「ラウラか?なんでそんな格好を」

 すると、いつもとは考えられないほどか細い声で。

 

「いや、その、心の準備が………」

 珍しく歯切れの悪い様子のラウラが可笑しくて、笑いそうになるのを堪えつつ。

「そんな恥ずかしがる事ないじゃないか?」

「な⁉︎

……く、来るんじゃない!いくら嫁とはいえど、心の準備があると言って………。

 

ええい!」

 タオルを剥がそうと近づくやいなや、それを振り解いたラウラが半ばやけくそ気味にタオルを剥ぎ取る。

 

 それにより陽光の下に現れたラウラは…黒の水着かつ、レースをふんだんにあしらったものであり、一見すると大人の下着の様だが……。

 

「わ、笑いたければ笑うがいい……!」

 そう、左右一対のアップテールを揺らして恥ずかしそうにモジモジする姿は、いわゆる「ロリータ」的なものを感じさせた。

 

「いや、普通に似合ってるぞ?」

「しゃ、社交辞令などいらん…!」

「それに可愛いし」

「かわ……ッ⁉︎」

 その言葉が予想外なのか、ラウラは驚きに一瞬たじろいだ後、そのままカーッと赤面して。

 

「お世辞じゃねえぞ?」

「……ッ‼︎」

 明らかな狼狽の後、顔を真っ赤にして脱兎の如く、別館の方に逃げていった。

 

「何があったんだ…?」

「それはこっちのセリフだ馬鹿者」

 ラウラの反応に戸惑っていると、今度はまた違う黒が俺の前に現れた。

 

「ち、千冬姉…」

「織斑先生と呼べ」

 出席簿なしにこの威力、うちの姉はもはや人間を超えた何かなのでは…?

 暴虐と美貌を兼ね備えた姉の一撃を受け、俺もまたその場に倒れた。

 

side箒

「姉さんがこの場にいるのなら、私の専用機はもう…」

 更衣室へと向かう道すがら、わたしの前にあったのは地面に埋まったウサミミ。

 私はスルーしたが、構った一夏によりそれはやはり姉だった。

 

 その場では何も言われなかったが…おそらく、私の専用機である『紅椿』が、そう遠くないうちに私の手に渡る可能性が高い。

 

 となれば、私のやることは一つ。

 

 己の精神を鍛え、研ぎ澄まし。

 

 その力に呑まれない様に心を強く持つことだ。

 

 そうして私は宿に戻り、精神統一の修行をしていたのだが……。

 

「……一夏ってば……」

「一夏め。私が……可愛いなどと……」

 

 宿に戻ってきた、鈴やラウラの気恥ずかしそうな様子が気になってしまう。

 

「一夏の馬鹿者め……」

 やはり私の心を掻き乱すことにおいて、無類の才を誇る一夏を前に、私の焦りは掻き立てられるばかりであった。

 

 

「……いかんいかん」

「アンタ、この暑い中、座禅なんてよくやるわね……」

 

side流良

「なんとか逃げ切った……!」

 涙目で顔を真っ赤にしながら、追いかけてくるシャルロットから逃げおおせた僕は、荒い息を吐きながら休みを取っていた。

 

 だが……今思えば大人しく怒られていた方が良かった気がする。

 

 どうせこの後戻れば、十中八九鉢合わせするからだ。

 

 今から気が滅入ってきた僕だったが、ふと思い出す。

「……そういえば、トリィはどこにいった?」

 

 全力疾走の時には頭から抜け落ちていたが……今、僕の元にトリィがいないのだ。

 

「参ったな……あれ作るのめちゃくちゃ大変だったのに」

 

 このまま見つからなければ、おいていくしか無くなってしまう。

 

 そんな訳で探しに行こうとした時。

 

……トリィ………

 

 運良く、電子的な囀りが聞こえたのでそちらに向かうと、どうやら誰かが見つけてくれたみたいだ。

 

「すいません、そのロボット鳥……!」

 

 

 そんな恩人に礼を言おうと近づいた僕だったが……その人物を見た時、僕は冗談抜きに固まった。

 

 

 そこにいたのは、僕と同じくらいの年代で。

 

 

 記憶に焼き付いてるほどによく見ていた藍色の髪と、緑の瞳。

 

 そして何より……持ち主の僕以上に、トリィがしっくり来ていた。

 

 なにせそのトリィの設計図を作ったのは………!

 

  

「……………アスラ?」

 

「……流良?」

 お互い、意識しないうちに名前がこぼれ落ち。

 意志の強そうなその瞳が、僕の姿を映して見開かれていた。

 

 

 目の前にいる男の名は、「アスラ・ザラン」。

 

 トリィの設計図を作り、僕に託した張本人で。

 

 3年前に別れるまで、ずっと一緒にいた親友の姿だった。




いかがでしたか?
いつも通りの初出オリキャラの紹介をば。

エリカ・シナモス
モルゲンレーテの技術主任。
マリアやカトウの同僚であり、M1アストレイなどの「アストレイシリーズ」の開発を担当している。 
元ネタはガンダムSEEDより、「エリカ・シモンズ」。

Xナンバーズ
 モルゲンレーテが開発した国防用パワードスーツ群の一つであり、特徴としては「小型ビーム兵器の装備」「PS装甲の搭載」「IS転用可能」が挙げられ、オーブ製新技術の試作機としての側面が強い。
 現在は初期型の五機「デュエル」「バスター」「ブリッツ」「イージス」「ストライク」が存在する。

アストレイシリーズ
 モルゲンレーテが開発した国防用パワードスーツ群の一つ。
 こちらは制式採用機として、「質と数と汎用性の両立」を開発指針としている。
 現在「M1アストレイ」が存在しているが、MSとして使用する際の課題を抱えており、流良に技術協力を依頼した。


 ここから前々から出していたSEEDキャラモチーフの人たちを一気に出していきます。

 一応この後は3馬鹿とイザークとディアッカモチーフのキャラを出そうとは思ってます。

 そして次回は、いよいよ束さんを出そうかと思ってますので、お楽しみに。
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