IS+1(インフィニット・ストラトス・プラスワン)   作:暇人の鑑

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更新でございます。

ドロドロを経験せず、書くのも初めてなので拙い部分も多いですが、楽しんでもらえると幸いです。


第24話 歪の代償

 今回泊まりにきた花月荘には、僕達IS学園の一同以外にもう1組泊まるとは聞いていた。

 聞いていたけど……まさか、こんな形でアスラと再会を果たすとは思えず、僕はまだ夢の中にいるようだった。

 

「もう1組泊まってる別グループって、アスラ達だったんだ」

「ああ、まあな…」

 

 久しぶりの再会を果たした僕とアスラは、旅館のロビーで改めて話していた。

「二日目にやる新装備の稼働訓練に、俺たちも参加することになってな」

 アスラが話した理由に慌てて待ったをかける。

「確か部外者って参加できないんじゃないの?」

 

 今回の林間学校は『ISの非限定空間における稼働試験』という主題があり、各国から代表候補生宛に新型装備が山ほど送られてくるらしい。

 だが、情報漏洩を防ぐ狙いもあって、部外者は参加できない決まりとなっているが……。

「俺たちの稼働試験にお前が参加する、という体を取ったらしいぞ」

「ええ……それってセコくない?」

 屁理屈みたいなことを言い出したのに待ったをかける。

「その為俺たちは別所で行うことになるし、各国の装備を運ぶ揚陸艇の護衛を押し付けられたんだ」

「それで、君達も泊まるの?」

 

 話が見えて来た僕がそう聞くと、首を振った。

「いや、折角だから任務前にゆっくりしてこいって、フラガラッハ教官がおっしゃったんだよ」

 あの、平然と学食にいた人からそんな気遣いが飛び出すとは。

「ムウさんが……?あの人、そう言った気配りもできるんだね」

「それは流石に失礼じゃないか…?」

 咎めるアスラだけど、思い当たるところはあるのか。

 曖昧な笑みを浮かべたのが可笑しくて、つい笑ってしまう。

(こんなふうに笑いながら話すなんて、久しぶりかもしれない)

 こんな他愛もない雑談だが……気を使わなくても良い相手というのが本当に久しぶりだ。

 

 と、そんな時にアスラはトリィに目を向けて。

「にしてもまだあの設計図、持ってたんだな」

「うん。

 あの時は結局、市販のロボ工作キットを使ったんだけどさ。

 なんか、悔しくて……」

「…そうか」

 

 実を言うとトリィは、完全な僕のオリジナルじゃない。

 

 13歳の時の課題でマイクロユニット工作が出た頃、時を同じくして親の都合でオーブに帰ることになったアスラが、別れの日にくれた設計図をもとに、4年かけて作ったのだ。

 

「電子工作が苦手だったお前が、『肩に乗って、飛んで、鳴く鳥がいい』なんて言い出した時は、正直驚いたけどな」

 やれやれと言わんばかりに苦笑するが、僕だって物申したいことがある。

 

「驚いたと言えば、君もIS使えるってことだよ。世界には公表されてないよね?」

 なんとアスラはオーブの代表候補生であり、「イージス」と言う専用機まで持っているのだ。

 だが、そんな僕に彼は苦笑いして。

「それはお互い様だ……まあ、公表に関してはオーブの現代表の判断だな。

 PS装甲にしろ、小型ビーム兵器にしろ、下手に公表して盗まれると、損失が大きい。

 ストライクやM1をIS学園に出したのも、ウチの技術を世界に公表しても大丈夫かどうかの実験を兼ねてるんだ」

「へー…で、ところで」

「なんだ?」

  

 やっとこの違和感に突っ込める機会を得た僕は、あたりを見渡して。

「なんだか騒がしくない?」

「……俺たちが原因みたいだぞ」

 

 アスラの言葉にあたりを見渡すと、野次馬が大量に集まってきていた。

 

「流良、その人は?」

 その先頭にいた一夏が不思議そうに聞いてきたので。

 

「例のもう1組のうちの1人。小さい頃からの友達だよ」

「へー、幼なじみってやつだな。あ、俺は織斑一夏。よろしくな」

「アスラ・ザランだ。二日目の実習に参加させてもらうことになった。こちらこそよろしく頼む」

 

 と、アスラと一夏が握手を交わしていると黄色い歓声が鳴り響いた。

 

「……彼女達はなんなんだ?」

「いつものことだよ…」

「そ、そうか……」

 戸惑うアスラと、遠い目をする一夏である。

(新学期の自己紹介、いつもこんな感じだったな……)

 いつも同じクラスにいたけど、大体自己紹介で女子から歓声が上がるのだ。

 そして、寄ってくる女の子達を塩対応であしらい、ラブレターを靴箱に入れられれば、丁寧に送り主の下駄箱に返す。

 そんなアスラについたあだ名は「乙女心キラー」で……。

「本当、なつかしいなぁ…」

 

 織斑先生に爆速で沈静化させられる女子達と、それにさらに呆気に取られて見守っているアスラと一夏を見ながら、僕は備え付けてあった饅頭を1つ頬張った。

 

 

 そんなアスラとみんなの初対面から数時間経つ夕食の時間となると、アスラの仲間達も集まってきた。

 

「いやあ、流石はIS学園。可愛い子がよりどりみどりだねぇ!」

 そう口笛を鳴らすのは、ディアスカ・エルネマン。

 浅黒い肌に金髪のオールバックと、一見すると軽薄そうだが、これでも「バスター」と言うMSを持っている。

「馬鹿者!お前は女のことしか頭にないのか?ディアスカ」

「でもよアイザック。お前の母ちゃんもカタブツを心配してたぜ?

 息子に合いそうな、良い子見つけてきてくれって頼んできたくらいだしな」

「大きなお世話だ貴様!」

 そんなディアスカを注意したのは、銀髪のボブカットの『アイザック・ヴェール』。

 どことなくラウラを思わせる言動を持つ彼は、アスラのライバルを自称しており、『デュエル』と言う専用ISを持つ。

 

 そんな2人の漫才のようなやりとりを注意するアスラを、お膳を叩いていた最後の1人がやんわりと宥める。

「2人とも静かにするんだ、ほかの客の迷惑になるぞ」

「でも、こんなに国際色豊かな光景はそうありませんよ…音楽に覚えのある方もいらっしゃいましたし」

 彼の名はニコラス・アルマフィ。緑の癖っ毛を持つその子は、ほかの3人と比べると少し幼い印象を受けるが、言動には落ち着きが見受けられる。

 ピアノが好きで、一見荒事とは縁がなさそうだが……『ブリッツ』と言う専用MSを持っているんだから、人は見た目によらないものだ。

 

「と言うか、アスラはともかくほかの3人は浴衣着れたんだ」

 因みに食事を摂っている4人は浴衣姿であり、それがここの決まりらしい。

 七五三での着物着付けやら、夏祭りでの甚兵衛、一緒に行った小学校の体験教室など、浴衣に近いものを着たことがあるアスラは大丈夫として、他の三人が普通に着こなしていることに驚いている僕に、ディアスカが得意げに。

「昔から日本舞踊が趣味なんだ。その手関連の知識には事欠かないぜ?」

「へえ…なんか意外だね」

「よく言われるぜ。……ちなみに、アイザックは民俗学に凝っててな。

さっきここの土産屋でお守りを…」

「どこから見てたんだお前は⁉︎」

 

 またはじまった2人の漫才を見ているうちに、集合時間ギリギリとなっていたので、急いで大広間に向かうと。

 

「随分遅かったね?流良」

「…………すみませんでした」

 シャルロットの笑顔での手招きに、ものすごい圧を感じるのであった。

 

sideシャルロット

「……おい見ろよ流良、カワハギだぜ。しかも肝までついてる!」

「へえ……マグロやサーモンくらいしか刺身って食べないから、あんまり馴染みがないや」

「ならこの際食ってみろって!高校生の飯じゃねえレベルで美味いからよ」

 夕食の時間に出て来たのは刺身や小鍋と、まさに雑誌で見た「旅館のご飯」といったラインナップであり、一夏ほどじゃないにせよ、否応がなくワクワクさせてくれる。

 

「しかも本わさまで使ってるし……」

「本わさ?」

 そんな食卓の中で聞きなれない言葉が出て来たので聞き返すと、一夏が嬉々として教えてくれた。

「本物のワサビをすりおろしたやつが本わさ。

 学食とかで出てくるのは、練りわさって言って、ワサビダイコンかセイヨウワサビか……そう言ったに着色料やら何やらを混ぜて作るんだ」

「わさびなんてどれも同じだと思ってたよ…」

「まあ、最近のは練りわさでも美味しいのが多いしな」

「そうなんだ……はむ」

 僕はそれを聞きながらワサビを口に含んで。

 

 

「っ〜〜〜〜〜〜〜‼︎」

「おい、シャルロット⁉︎」

「大丈夫⁉︎わさびの山を丸ごと食べちゃダメだって!」

 その刺激のあまり、鼻をつままざるを得なかった。

 

「ら、らいひょうふ……風味があって、おいしい……よ?」

「そんな無理はしなくていいから!ほら、水……」

 

 

side流良

 食後の腹ごなしも兼ねて、外に出た僕たちは月明かりのもと、改めて話し込んでいたが。

「え?リノアおばさんが……」

「ああ、去年のバレンタインにテロでな」

 

 唐突な訃報に、驚きを隠せなかった。

 僕とアスラは、小さい頃から家族ぐるみの付き合いだった事もあり、アスラのお母さんの「リノアおばさん」のことも知っている。

 リノアおばさんは農業系の研究者をやっていて…よく職場で採れた野菜を郵送でお裾分けしてくれていたのだ。

「それで父上もおかしくなってしまって。今は精神科で入院しているが……」

「そう……なんだ」

 それを話すアスラの顔は、当たり前だろうが晴れない。

  

 昭和の頑固親父みたいな佇まいをしていた姿が思い浮かぶ。

「そう言えば、元々日本に来たのも政争から避難する為だったもんね」

 顔を合わせた事はないにせよ、アスラのお父さんである『リック・ザラン』はオーブで政治家をやっていたが、情勢が不安定になった事を鑑みて、リノアさんとアスラを日本に避難させたのである。

 

「母さんに伝えた方がいいよね、すっごく仲良かったし」

 母親同士でも仲が良かった事を思い出した僕が、きっと顔を曇らせるに違いない母さんのことを思い浮かべていると。

 

「流良……お前は、おばさん達を大切にしろよ。

 俺みたいに恩返しも親孝行もできなくなってから嘆いたって、どうにもならない」

 後悔と羨望がこもったようなその言葉に、僕は頷くことしかできなかった。

 

side一夏

「あれ、シャルロット?」

「あ、一夏」

 千冬姉とセシリアのマッサージを終えた俺は、誰も使っていない大浴場で汗を流し。

 風呂のために部屋を出た俺と入れ違いで入って行った箒達にジュースでも買って行こうとした所で、シャルロットと出くわした。

 

「千冬姉との話は終わったのか?」

「いや、僕は途中で抜け出して来たんだよ。まだ、箒達は中にいるんじゃないかな?」

「分かった……お?」

「どうしたの?」

 

 まだ部屋には戻らない方が良さそうだし、何をしようかと考えた俺の

視線の先に人影が映った。

 

「流良達だ。昼からまだ話してたんだな……」

 その人影は、流良とザランのものであり……よほど積もる話があったらしい上に、2人とも声を弾ませている。

 少なくとも、今までこんなフラットな流良の声なんて聞いたことがない。

「うん、そうだね……」

 

 そんな風に呑気に感心していた俺だが、その隣で寂しそうにするシャルロットを前に慌てて口をつぐんだ。

 

 シャルロットは、お袋さんを亡くしており、親父さんとは冷え切った仲。

 要は俺や流良みたいな、旧知の仲の人間がいないんだとか。

 

「なんか、すまん…」

「ううん、今の僕にはここのみんながいるから大丈夫だよ」

 そう笑う彼女の顔が、何だか無理をしているように感じたその時。

 

 

「だが、それを彼女に伝えなくて大丈夫なのか?」

「今のシャルロットに伝えられるわけないよ。ほぼ没交渉とは言っても、家族から命を狙われてるなんて……」

 聞こえて来た会話の内容に耳を疑った。

 

 

sideシャルロット

 

「……シャルロット?」

「………」

 流良の話に、僕は殴られたような衝撃を受けた。

 

「僕が……どうして……?」

 

 デュノア社の人たちからよく思われていないのは、よく分かっている。

 だが……殺されそうになっているだなんて聞かされて、動揺するなという方が無理な話であり。

 

「おい、大丈夫か……?」

「う、うん……」

 後ろに後退りしていた足がもつれ、転びそうになったところを一夏に助けられた。

 

 そんな僕の震えの前で、流良とザラン君の話は続く。

 その内容を聞くのが怖いけど……現実がその恐怖を汲むことはなかった。

 

「だが、それをお前1人で守れる訳がないだろ?

 彼女にもそれを話せば、代表候補生だしある程度の自衛はするさ」

「でも……やっと普通の女の子として生きられるようになったんだよ?

それをまた、針の筵に戻したくない。それに…」

 

 流良は、紛れもない苦しみに顔を曇らせる。

「僕はシャルロットの優しさに甘えて、傷つけた……」

「流良……」

 

 僕の中で、何かかガラガラと崩れ落ちていく音がする。

 

 僕の軽率な行いが、流良の心を望まぬ戦いに縛り続けてしまったんだ。

 

 そうして苦しんでいた彼に、僕はまた……!

 

 それ以上は居た堪れなくなって……僕は思わず旅館に駆け出していた。

「シャルロット⁉︎」

「ごめんね……流良……」

 

 暗がりの中、壁に背を預けて崩れ落ちる。

「僕たち……間違えたんだよね……?」

 

 翳りを帯びていた菫色の瞳を思い浮かべながらの後悔が、いっそ死んでしまいたいくらい惨めな気分の中から、湧き出てくるのを止める術を、僕は持ち合わせていなかった。

 

 

side流良

 

「シャルロット⁉︎」

 一夏の声にハッとした僕がそちらを向くと、シャルロットが泣きそうな顔でこちらを見ていた。

 

「まさか、さっきまでの聞いて……」

 

 なんとか言葉を捻り出そうとするよりも前に、シャルロットはごめんねと呟いた後、逃げるように走り去ってしまう。

 

 残ったのは、妙な空気に残されてしまった男3人だけだ。

 

「……追いかけないのか?」

 一夏の咎めるような問いに、半ば投げやりな気分で答える。

「追いかけて、何を否定しろっていうんだ……ほぼ全て真実なのに」

 遅かれ早かれ、僕とシャルロットの馴れ合いと同情が作った歪な関係が、長持ちするわけがなかったのかもしれない。

 

「流良……」

 アスラが苦い表情でこちらを見てくるのを、胸が締め付けられるような苦しみのまま、項垂れるようにつぶやいた。

「僕は、彼女に幻滅されても仕方ないことをしたんだ。

 

 これで良いんだ……」

 守られるべき女の子と、そのための捨て石……本来あるべき姿に戻れたんだと心に言い聞かせても、その打ちひしがれたような気分は少しも晴れなかった。

 

 




いかがでしたか?
ひとまず新しく出たキャラ紹介を。
アイザック・ヴェール
男 17歳
銀髪 ボブカット
オーブの士官学校卒のエリート。
負けん気が強く、真面目な熱血漢であり、アスラをライバル視している。
厳格な性格をしているが、民俗学が趣味と言う意外な一面を持つ。
モチーフ「イザーク・ジュール」

ディアスカ・エルネマン
男 17歳
金髪 オールバック
オーブの士官学校卒のエリート。
一見軽薄そうだが、世渡りとコミュ力によってムードメーカーとしての一面を持つ。
日本舞踊が趣味であり、浴衣などの和装にも適応できていた。
モチーフ「ディアッカ・エルスマン」

ニコラス・アルマフィ
男 15歳
緑髪 天然パーマ
オーブの士官学校卒のエリート。
他3人と比べると幼いながらも、落ち着きと聡明さを兼ね備える少年。
4人の中では弟分であり、ピアノが趣味。
モチーフ「ニコル・アマルフィ」

次回は銀の福音戦に向けて進んでいく感じですのでお楽しみに。
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