IS+1(インフィニット・ストラトス・プラスワン)   作:暇人の鑑

27 / 38
はい、更新です。



第27話 飛翔する休止符

 僕達5人が宴会用の大座敷・風花の間に到着すると、既に1年の専用機持ちと教師陣が揃っていた。

「すみません、遅れました」

「謝罪はいい、早く席へつけ」

 部屋は照明を落としたのか薄暗く、ぼうっと大型の空中投影ディスプレイが浮かんでいる。

 

 そうして席についた事で、織斑先生が再び口を開いた。

「では、現状を説明しよう。2時間前、ハワイ沖で試験稼働状態にあったアメリカ・イスラエル共同開発の第3世代型の軍用IS『銀の福音』が制御下を離れて暴走。監視空域より離脱したとの連絡があった」

 いきなりの説明に僕と一夏はポカンとしているが、他のみんなは真剣な面持ちとなっているので、なんとかそれっぽい表情を作っている間にも織斑先生の説明は続く。

「その後、衛星による追跡の結果、ここから2キロ先の空域を通過することがわかった。時間にして50分後。

 学園上層部からの通達により、我々がこの事態に対処することになった」

 つまり、「軍用ISが脱走したよ!ここら辺通るから捕まえてね」と言うことらしい。

 そうして聞いていたニコラスが、ポツリとつぶやく。

「普通そういうのって逃したところが責任持って捕まえるものじゃ…」

「まあ、各国の最新鋭ISがここには揃ってるからな……下手したら小さな国の軍隊よりも戦力を持つ非政府組織みたいなものだし、頼るのも無理はないさ」

「だが、実戦経験なんてないひよっこにやらせるとは……学園の戦力の消耗が狙いか?」

「高みの見物ってやつじゃねえの?趣味悪いぜ」

 アイザックの言葉に代表候補生達が顔を顰めるが、織斑先生が咳払いしたことでとりあえずといった感じで引き下がる。

 まあ、ニコラスとディアスカの言葉にも思うところはあるようだし当然か。

「話を戻すぞ……それにおいて、教員は学園の訓練機を用いて空域及び海域の封鎖を行う。

 よって本作戦の要は専用機持ち9名と、オーブ軍所属ザラン隊4名、計13名に担当してもらう」

 

 見ると、アイシャさん達もおり、どうやら専用機の修復は終わったようだ。

「それでは作戦会議を始める。意見のあるものは挙手するように」

 

 そうして唐突に始まった作戦会議。

 まず最初にセシリアの要求のもと、今回のターゲットのスペックが開示された。

 

「広域殲滅を目的とした特殊射撃…‥オールレンジ対応型か」

「私のブルー・ティアーズと同じですわね」

「あたしの甲龍よりもスペックは上よ。それに攻撃と機動に特化した機体ってことは相当速いわよ」

アスラにセシリアが頷き、そこに鈴も自分の機体のスペック表と見比べたのか、うへえと声を漏らす。

「この特殊兵装が曲者って感じがするね。ちょうど本国から防御パッケージが届いたけど、連続での防御は難しい気がするよ」

 シャルロットの言葉に今度はアイザックが反応した。

「しかも特性はビームか…PS装甲もあまり役には立たなそうだな」

「先回りして、網を張って待ち構えるか?弾幕を張れるバスターなら足止めくらいはできるぜ」

 

 ディアスカの提案にアイシャさんが。

「なら、その砲撃を確実にするためにマティーナのAGCで釘付けにするのも良いだろうね。私のISでは海上戦は無理だ」

「…それを気取られないようにする為のステルスならブリッツのミラージュコロイドが使えますよ。

 一機だけなら展開したミラージュコロイドを付与できますし」

 ニコラスがアイシャさんの提案に乗っかる隣で。

「格闘性能が未知数だな……持ってるスキルもわからん。偵察は行えないのですか?」

 

 ラウラの質問に織斑先生が首を振った。

「無理だな、この機体は超音速飛行を続けている。アプローチは1回が限界だろう。

 それに、網を張って待ち構えたとしても、空域に対して網が小さすぎる。たとえ罠に引っかかっても速いのは変わらんし、気休めがいいところだな」

「一回きりとなると……その一回で確実に止めるためには、一撃必殺の攻撃力で持った機体で当たるしかありませんね」

 

 山田先生の言葉に、その場の全員の視線が一夏に向く。

「ひょっとして……俺?」

「山田先生の案を取るなら、一夏の零落白夜しかないよ」

 

 僕がだめ押しすると一夏は目を見開くが、他のみんなはそれでいくしかないと言わんばかりだ。

 現に、さっきまでの会議は何処へやら、移動の足をどうするかと言う話になっている。

 

「ちょ、ちょっと待ってくれ!俺がいくのか?」

「「「「当然」」」」

「まあ、さっきの罠張りを保険にしてもメインはそっちだね」

 

 キッパリ言い切った女子達を前にして、どこか怖気付いた顔の一夏に、織斑先生が問いかける。

「織斑、これは訓練ではない。実戦だ。

 

 もし覚悟がないのなら、無理強いはしない」

 その問いを前にして一夏は……。

 

 

「やります……やってみせます」

 覚悟を決めたように、その作戦を了承した。

 

sideシャルロット

 

 作戦開始まで40分もない中、僕達は言葉を失っていた。

 

「はにゃ?あれ?なんでみんなお通夜みたいな顔してるの?誰か死んだ?変なの」

 

 そんな中、心底不思議そうに話すのは篠ノ之束博士。

 

 本来部外者であるはずのこの人が語ったその内容とは……

 

「……世界がまだ第3世代を作り始めたばかりなのに、もう第4世代?」

 箒のために作ったIS「紅椿」が、世界初の第4世代であり。

 

「…‥すごい、展開装甲未使用時でこの数値って」

「使ったら倍プッシュ。まさに世界最強なのだ!」

 

「こんなの、乗り手が乗り手なら軍用ISですら勝てるか怪しくないか…?」

「俺たちの機体とは比較にもならねえぞ……」

 エルネマン君が半ば呆れたように言うように、その性能は、正にオーバースペックと言って差し支えないものということだった。

 

「そりゃ、この天才束さんが直々に作ったものだよ?パチモンには負けないからね!」

「お、おう……」

「話が進まんからそこまでだ……それに」

 

 そんな、篠ノ之博士以外の誰もが目の前の紅椿に息を呑んでいる中、厳しい視線を投げかける人がいた。

「やりすぎるなと言ったはずだぞ、束」

 深いため息の後の言葉だが、博士はやりすぎちゃったと能天気な顔を崩さない。

 

 そんな、どこか超然とした恐ろしさを感じる中で。

 

「…‥ともあれ、今はどうこうも言ってられんな。では本作戦では織斑・篠ノ之の両名による目標の追跡及び撃墜を主目的とする。作戦準備は30分後。各員、直ちに準備にかかれ」

 

 織斑先生の号令で、僕達は動き出した。

 

 

sideセシリア

「納得いきませんわ」

 

 本来なら、私のブルーティアーズの高速戦闘用パッケージ「ストライク・ガンナー」を用いて、一夏さんとのフライトをこっそり企んでいたのに。

 

 箒さんの専用機たる紅椿がその役割を担い、私は……

「はあ?誰だよ君は」

 

「うるさいなあ。あっちいきなよ」

 

 篠ノ之博士に嫌われ、作戦の要から外された挙句。

 

「なんでこんな固定砲台みたいなことを…!」

「そんなカリカリすんなよ…後ろで警護よりはマシだぜ?」

「そう言う問題ではありませんわ!」

 軽薄そうな声の男「ディアスカ・エルネマン」と共に、狙撃位置の一つに待機させられていたからだ。

 

「ニコラスのステルスで運ばれたマティーナちゃんが、ダウンフォースで福音の動きを阻害。

 

 そこに俺達が弾幕を張って足止めした所に、白式と紅椿だっけ?その2機で接近して仕留めるって腹じゃねえの。

 

 それで、保険でアンタの狙撃って訳だ」

 ため息まじりに宥めてくるが、それだけじゃない。

「あの箒さんはどこかうわついた様子でした!あれでは…!」

 紅椿をもらってから、彼女の顔つきがどことなく浮き足立っているような感じがして……あれでは何かをやらかす新兵そのものではないか。

 

「一夏さんがいるならなんとかなるかもしれませんが…」

「どうだかな…」

 信頼と乙女心の板挟みに歯痒さを感じていた時。

 

「AGCを展開します。お二人とも高く飛びあがらないように気をつけてください」

 

 聞きなれない声が飛んできて、私達はおしゃべりをやめ、会敵予想時刻の到来を待ち構えていたが……突然、ハイパーセンサーが多数の敵を捕捉してきた。

 

 

side流良

「流良……」

 作戦15分前に、セシリア、マティーナさん、ディアスカとニコラスの4人がそれぞれのポジションに向かっていくのを、積荷の護衛をしていた僕が見送っていると、後ろから声をかけられた。

 

「シャルロット…」

 

 その顔を見て、否応が無しに罪悪感が襲いかかる。

「僕に何か……?」

「えっと…その……」

 数日前まで普通に話ができていたのに、今となってはこのぎこちなさ。

……昨夜のアレを聞かれてから、僕達は一言も会話をしていなかったんだ。

 謝らなければいけない。

 

 でも……何を?

 

 何から謝ればいい?

 

 覚悟もないのに外に連れ出したこと?

 

 彼女に甘えて、傷つけてしまったこと?

 

 それとも……すべて?

 

 お互い言葉が出ず、刻々と迫る任務開始時刻に急き立てられ、何か話さないとと、必死で頭を回転させていたその時。

 

「2人とも、急いで専用機を起動するんだ!」

「え⁉︎わ、わかった!」

 突然個人通信回線からアスラの声が響き、慌ててストライクを展開するが。

 

「行くよ、リヴァイヴ……あ、あれ⁉︎ISが起動しない⁉︎」

 

 続いて展開しようとしたシャルロットが、珍しく困惑の声をあげた。

 

side千冬

 作戦開始直前というこのタイミングで、レーダーに多数の反応が出てきた。

 

 しかも、それだけじゃない。

「ちょっと!あたしの甲龍が出ないんですけど⁉︎」

「私のシュバルツェア・レーゲンもだ……これは、ジャミングか⁉︎」

 

 既にISを展開していたオルコットとダコス、慌てて起動させた輝戸、ザラン以外の専用機持ちのISが、なぜか待機状態のまま動かなくなっているのだ。

 

 

「映像の中に、巨大なアンテナを持つ機体がいます。おそらくあれがIS展開を妨害する電波かウイルスをばら撒いてるのかと俺は推測しますが」

「ええ⁉︎それじゃあ作戦は」

「これでは出来るわけが…」

 と、この場にいた教師陣や生徒達が青ざめていた時。

 

「千冬姉⁉︎

なんかすごい数がこっちに近づいてるけど、一体何があったんだ?」

 一夏からの通算が入ってきた。 

「織斑先生と呼べ!突然ISの展開ができなくなったが、お前達はどうだ?」

 それを受けた2人は、怪訝な顔をしながら待機状態のISを……

 

「できたぞ?」

「わたしも同じく」

 普通に展開させていた。

 その場の皆は困惑と安堵を顔に浮かべているが……私は、この騒動の首謀者の顔が頭をよぎったが、瞬時に抑制し。

 

「……よし、今動けるメンバーは、2人を護衛し、迫ってくるアンノウンの迎撃を!織斑と篠ノ之は時刻通りに発進しろ」

 

 私はとりあえず指示を出しておいた。

「……お披露目の邪魔をするなどでも言いたげだな、束?」

 

side流良

 こちらに迫ってくる敵はISの他に空戦型のMSである『ディン』と、水中用MSの『グーン』であり、その数は合わせて30機程。

 

 ディアスカとセシリア、マティーナさんは福音の方に向かったので、こちらは僕とアスラ、アイザックの3人で迎え撃つことになるかと思った時。

「地上は私に任せて。君達は前衛を頼むよ」

「アイシャさん⁉︎」

 アイシャさんが「ジェネラル」を纏った状態でこちらにやってきた。

 

「ウイルスは大丈夫だったんですか?」

「あの博士の口ぶりがどうも怪しかったからね…何かあると思ってみれば、大当たりさ」

 

 そう肩をすくめるが……言われてみれば確かにそうだった。

 

 白式と紅椿は今回のウイルスの影響を受けてない。

 つまり紅椿の性能を誇示できる上に、他のメンバーの邪魔が入らないこの状況は、開発者の技術試験としては好都合が過ぎるのだ。

「あの人は何を……」

 考えているかはわからないが、僕もどこか嫌な予感を感じたが。

 

「馬鹿者!今はそんなことを考えている場合ではないぞ!」

 アイザックに咎められ、一旦思考の隅に置くしかなかった。

 

……あ、そうだ。

「シャルロット。その……帰ってからしっかり話そう」

「……うん、分かった。帰ってから……ね」

 帰ったら、シャルロットとの問題にも決着をつけなくちゃ。

 

「輝戸流良。ストライク……行きます!」

「話はまとまったな……アスラ・ザラン。イージス、出る!」

「ふん……アイザック・ヴェール。デュエル、出るぞ」

 そう、帰って来れたら……!

 

side一夏

「行くぞ、紅椿」

「来い、白式」

 

 時刻は11時半。

 晴れ渡る空の下、俺と箒はそれぞれ専用機を展開させた。

 

 眼前には戦闘の光が散らばるが、俺たちの目的は銀の福音だ。

 

 つまり、見捨てざるを得ないわけだが……そこはみんなを信じるしかない。

  

 そして、俺たちも絶対に作戦を成功させなければならないのだ。

 

 セシリアや鈴、ラウラに山田先生から教わった高速戦闘についてのいろはを今一度思い返していると。

 

「それにしても、たまたま私たちがいたことが幸いしたな。私たちが力を合わせればできないことなどない。そうだろう?」

「ああ…でも、先生達も言ってたけどこれは訓練じゃなくて実戦だ。

 現に今、緊急事態が起こってるし…何が起こるかわからない。十分に注意して……」

 やけに機嫌が良さそうな箒の言葉に、注意を飛ばすが……

「無論、分かっているさ。ふふ、どうした?怖いのか?」

「そうじゃねえって。あのな?戦場ではしゃぐんじゃ……」

「ははっ、心配するな。

 本来、女の上に男が乗るなど私のプライドが許さないが、今回ばかりは特別だ。

 ちゃんと運んでやるから、大船に乗ったつもりでいればいいさ」

 帰ってくるのは、どこかうわついたような声だった。

 

 確かに、機体はすごいんだろうが……乗ってる箒はまだ、専用機をもらいたて。

 しかも、もらって嬉しいのか知らないが、どうにも浮かれすぎているような気がして、不安が尽きない。

 

「織斑、どうも篠ノ之は浮かれているようだ。あんな状態では何かし損じるかもしれん。その時のフォローは頼むぞ」

 そして、それを感じていたのは俺だけじゃないらしく、作戦説明をした千冬姉も俺に目を光らせるように忠告してきている。

 

「それでは、はじめ!」

 どうもすっきりしないような感じを抱えつつ、千冬姉の号令と共に、俺たちは一気に地上300メートルまで上昇していった。

 

「な、なんだこのスピード⁉︎」

「振り落とされるなよ一夏!

 

 暫時衛星リンク確立……情報照合完了。

 

 目標の現在位置を確認……一気に行くぞ!」

「おう!」

 

 

 

 

 

 

 




いかがでしたか?
解説を挟ませていただきます。
グゥル
MSの空中戦用に開発された無人飛行型のサブフライトシステム。
さまざまな国家や勢力で使われており、ISにも使用可能という高い汎用性を持つ。
武装は左右一対にミサイルポッドが付いており、火力の増強も同時に行うことができる。

次回は福音戦の前半となりますが、グーンが出てくるということはあの方が出てきます。
そしてそれすなわち、そういうことですね。

楽しみにしていただけると幸いです。
 
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。