IS+1(インフィニット・ストラトス・プラスワン)   作:暇人の鑑

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はい、更新のお時間ですね。


第28話 銀の福音

 ディンの攻撃をかわし、ビームを打ちかけようとするが、海に潜むグーンからの攻撃にカットされる。

 

「クソッ、イカみたいなくせして……こちらの攻撃が当たらん!」

 少し離れたところでは、アイザックが以下のような流線的なボディをしている水中用MS『グーン』にレールガンやミサイルを打ちかけるが、海中をスイスイと泳ぐ相手にはかすりもしない。

 

「ええい!」

 アスラの方はグゥルを突っ込ませ、それをトンボみたいな羽を持つ空戦用MSのディンにかわされるが。

 その隙に懐に入り、つま先についていたビームサーベルによる蹴りを食らわせ、頭を切り落としていた。

 

 その光景にひやっとしたが、首からは鮮血ではなくなぜかコードが見える。

 つまり……

「相手は無人機だな……そうなると、どこかにそれをコントロールしてる奴か、母艦があるはずだが…流良、アイザック!それっぽいやつはいないか⁉︎」

「この状況で判別できるか!」

「ディンは実弾しかないにしたって、下のグーンがきついよ!まずはあれをなんとかしないと……」

 

 

 

 空中のディンが攻撃。海中のグーンは相手の攻撃の妨害や撹乱と言う形のフォーメーションを組んでおり、僕たちは苦戦を強いられる。

 

 ISは宇宙や空中、さまざまなシチュエーションにおける最強の兵器として君臨しているが、水中においてはそうは行かない。

 

 一挙手一投足全てにAGCを掛けられているようなものであり、例えPICがあっても、水の抵抗の無視はできないためだ。

 厳密には水中を移動はできるものの、水中戦はあまり想定されていない、ということになる。

 

 だが、この戦況ではグーンを対処しないとどうにもならない。

 そうなると……もう、手は一つしかない。

 

「アスラ、海に降りるから援護して!」

「何⁉︎」

「グーンを何とかしなくちゃ、このままじゃすり潰されるよ!」

 そう言いながら、機体の計器類の調整を行う。

 Xナンバーズに搭載されている循環型水風力駆動推進装置とは、大気中において空気を取り込み、排出して推力に変えるものだが、空気を水に変えても使えるはずだ。

 殆どビーム兵器しかないイージスじゃ水中の敵は無理だし、デュエルは絶対防御がない上にアサルトシュラウドを着込んだ状態での水中戦は入水自殺みたいなもの。

 

 そうなると、消去法でこのストライクしかないのである。

「確かにそうだが、大丈夫なのか?」

「やらなきゃ、どうしようもないじゃないか!」

「……わかった、だが絶対に無理はするなよ」

「了解!」

 

 そうして調整を終えた僕は、エールストライカーを収納。

 バズーカとシールドだけの状態にしてから、グゥルから飛び出し。

 

「えええい!」

 海面に出てきたグーンに、イーゲルシュテルンを撃ち込みながら、海へとダイブした。

 

sideセシリア

「ターゲットが引っかかりましたわ!」

「OK!あの2人が来る前に蜂の巣にしてやるぜ!」

「操縦者の救護も任務内容ですよ、くれぐれもお忘れなきように…」

「行きます!」

MSの相手を流良さん達に任せてから少しして。

 

 作戦のターゲットである「銀の福音」がこちらにやってきたのを確認した私たち4人は、早速一夏さん達が来るまでの足止めを開始した。

 

「お行きなさい!」

 ビットを射出して、多方向からの射撃を開始するが、それを福音はまるで車線の合間を縫うように飛ぶ。

「AGCがかかっている中でもあの動き……でも!」

「無茶苦茶な機動しやがって……今度はこいつだ!」

 その動きをついたマティーナさんがブレードを持って突撃し、その間をエルネマンさんとアルマフィさんが援護射撃するが、ひらりとかわされてしまう。

 

 そして……

『敵機を確認。攻撃行動を開始する』

 無機質なアナウンスと共に、銀色の翼の装甲が開かれ。

「いけない!マティーナさん、距離をとってくださいな!」

「アレが例の可変翼ですね…!」

 いくつもの光がマティーナさんに向けられようとした時、緑の火線がそれを妨害した。

 

 エルネマンさんが腰だめのライフルから、ビームを打ちかけたのだ。

 

 続け様に放たれるビームをかわした福音は、ターゲットを彼に変更するが。

 

 

「下手な鉄砲も数撃ちゃ当たるってか?

 でも、突っ込んでくるだけならこれがあるぜ!」

 

 放たれた銀色の雨を、先ほどとは反対の腰に構えていた砲身から放たれた、散弾のようなものでかき消しつつも距離をとってかわしていた。

 

 正直、こんな芸当ができるとは思ってなかった私は思わず感心してしまうが。

「セシリア、撃て!」

「名前呼びを許した覚えはありませんわよ!」

 その後の発言で、その感心は気の迷いだったと確信する。

 

 だが……私が残っている間に、足を止める攻撃をするとはいい度胸だ。

 

「頂きましてよ!」

 そうして「スターライトMk-Ⅱ」から放つビームが、銀の福音の翼を……

「増援…⁉︎オルコットさん、避けて!」

「きゃあ⁉︎」

 

 撃ち抜く前に、逆にライフルが撃ち抜かれた。

 

 

side一夏

「おい、何だよあの数!」

 今回の目的は、暴走した軍用ISの鎮圧だったはず。

 

 それがなぜか、目の前に広がるのは大混戦だった。

 

 流良達の方には「ディン」と「グーン」と言う、局地戦用のMSがいて。

 

 こっちには銀の福音と、西洋甲冑みたいな見た目をしたMS…レーダーによると『ジン』が多数存在していた。

 

「もしかして、この騒ぎってかなり色々入り組んでるんじゃ……」

「よそ見をするな一夏!目的まで後10秒だ!」

 嫌な予感がしてたまらない俺を咎めるように、箒が刀を抜いたので、俺もそれに続いて。

 

「みんなはあの群れを!こいつは俺たちでやる!」

 

 箒の背中から飛び出し、突っ込むと同時に零落白夜を発動させた。

 

 

 

side流良

 海に飛び込んだ僕の視界は、機体を包み込むような泡に覆われたが……その後すぐに警告音が響いたと同時。

 

「くあっ…!」

 後ろから迫ってきていたグーンからの体当たりをまともに食らってしまった。

 

 突き飛ばされながらも何とかバズーカを構え、グーンに撃ち込むが。

 

「水中用MSは伊達じゃない……!」

 水を得た魚の如く、自由自在に動く相手にはかすりもしない。

 

 今、僕が相手しているグーンは、イカみたいなフォルムをした、水中での運用に特化したMSであり、陸では遅いものの、水中ではさながら戦闘機のようなアクロバットな動きが可能。

 武装は魚雷やフォノンメーザー砲……つまりは、熱を持った音のレーザーと、水中向けのものばかりな局地戦用の機体であり、ISとは言え汎用機のストライクにとっては苦しい相手なのは間違い無いだろう。

 

「ぐっ…」

 お返しなど打ち込まれた魚雷をバルカンで撃ち落とそうにも、水中ではただ弾を出しただけになってしまう。

「流石にこの水の中じゃ…!」

 水の抵抗に負けて、弾速が出ないのだ。

 仕方ないのでシールドで防ぐが、その数秒でで後ろから再び接近してきたグーンに撥ね飛ばされ、バズーカをはたき落とされてしまった。

 

「しまった…うわあっ⁉︎」

 態勢を崩された僕は、それからUターンして迫ってくるのを前にして。

 

「こうなったら……!」

 シールドを捨て、丸腰の状態で待ち構え……突っ込んでくるグーンの後ろに搭載されている、突起物を咄嗟に片手で掴んだ。

 

 

 その瞬間、凄まじいスピードで動くグーンに振り回されるが、ここで振り落とされるわけには行かない。

 

 必死でしがみつき、何とか真上を取ることに成功した僕は。

 

「このおおお!」

 

 腰から引き抜いたアーマーシュナイダーを、その背中に突き立てた。

 

 

sideリディク

 

「ほう……大したものじゃないか。アレから腕を上げたようだな?」

『貴様、そんなことを言っている場合か!』

 

 乱戦から離れたところで、私は海中の激闘を観戦していた。

 

 お目当てはもちろん流良君。

 

 ひと月前、IS学園でのあの夜から彼がどうなっているのかを見ておきたかったのだ。

 

 因みに通信の相手は「モルコ・マラシム」。

 国際手配されている海賊グループ「深海の鯱」の首領であり、今回の作戦……と言うより、篠ノ之束からの『お願い』における協力者である。

 まあ、捨て駒に何か以上思うこともあるまい。今は目の前の戦いだ。

 

 ナイフを突き立て、グーンを一機倒した彼は、続いて迫ってくるもう一機に対して。

 

『ディンの‥‥一か八か‼︎』

 海上の戦いで、撃墜されたディンの残骸から重機銃をむしり取り、それを片手にグーンの体当たりを真正面から受け止めた。

 

 そのまま銃口をグーンの砲門に向けて接射し、2機目も倒す。

 

 そして残るは「ハンス」と呼ばれたマラシムの部下が乗る、グーンの親機のみとなった。

「ええい、ハンスめ不甲斐ない……!こうなったら私も出るぞ!」

「せいぜい気をつけることだな」

「貴様のような若造に、いわれるまでもないわ!」

 そんな部下に痺れを切らしたのか、マラシムは戦場へ急行していく。

 

「さて、私も昔の部下に挨拶してこようか………『シグー』、出るぞ!」

 それ続いて私も、目的地に飛翔した。

 

side一夏

「くそっ、何つー弾幕だよ!」

 福音との戦闘に突入した俺だが、早速出鼻をくじかれていた。

 

 こちらの攻撃は、回避に特化した動きにことごとくかわされ、相手は爆発するエネルギー弾丸を、ものすごい速さで連射してくるのだ。

 

 しかもこちらは時間をかければやがてジリ貧となる。

 

 そんな、焦りを覚え始めた俺を叱り飛ばすように。

 

「一夏!私が動きを止める!」

「箒⁉︎」

 

 箒が二刀流の構えで、福音に突っ込んで行き……突撃と斬撃を繰り出した。

 しかも、それだけじゃなく…腕部の展開装甲が開き、そこから発生したエネルギー刃が自動的に発射し、追尾を行う。

「はああああ‼︎」

 さらに箒は、紅椿の機動力と展開装甲による自在な方向転換、急加速を使って福音との間合いを詰めていく。

 

 その猛攻には、さすがの福音も防御態勢を取り始めた。

「バケモンみたいな機体だな……!」

 

 改めて第4世代機と言うものの凄さを感じていたが、そこに福音は反撃の構えをとる。

 

 歌うように、甲高いマシンボイスと共にウイングスラスターの砲門を全て‥‥36門を開き、全方位に向けての一斉射撃を始めた。

「やるな……!だが、押し切る‼︎」

 

 それを紙一重でかわした箒は追撃し、ようやく出来た隙を前に、突撃しようとしたが……。

 

 

「……⁉︎」

 視界の端に映ったものを目にして、俺は血の気がひくと共に……そちらへ向けて全速力で向かった。

 

 

「お、おい一夏⁉︎」

「くそっ、間に合ってくれ……!」

 福音とは真逆の方向へと。

 

side箒

 

 一夏が向かった先は、一隻の民間船だった。

 どうやら、あの福音の光弾が当たりそうになったようだが……たしか、この海域は先生達が封鎖していたはず。

 

 となると、それにもかかわらずこの場にいるあの船は。

 

「おいおい、ありゃあ密漁船じゃねえか!」

「しかも、今の猛スピードでエネルギーを使い切ったみたいですわ‥‥これじゃあ作戦は!」

「失敗‥ですね」

「アスラたちにもその旨を……あ、でも。とりあえずあの船を拿捕しなくちゃ!」

 

 ジンの群れを撃退した4人が、一夏の行動とその結果を前に呆然としている。

 

 つまりは、犯罪者集団のためにアイツはこの絶好のチャンスをわざわざ不意にした、と……⁉︎

 

「一夏‼︎貴様、自分が何をしたかわかってるのか⁉︎あんな、犯罪者なんかのために…!」

 

 思わず、一息ついてる風な一夏に詰め寄るが。

 

「箒‼︎」

 その一喝に思わず身をすくませる。

 

「そんな悲しいことは言うな‥‥言うなよ。

 力を手にした途端、弱いもののことなんか目に入らなくなっちまうなんて、いつもの箒らしくない……らしくないぜ」

 

 あれだけの準備をダメにしておいて、宥めすかすような口振りへの苛立ちが一瞬よぎるが……それよりも。

 

 必死で抑えていた「あの感情」を、抑えきれていなかったことに愕然とした私は。

 

「そんな………私は……!」

 打ち砕かれた戦意のまま、手にしていた刀を落としてしまっていた。

 

 

side流良

「ソードストライカーを……!」

 

 奪った銃を捨て、最後のグーンの攻撃をかわした隙に、僕はソードストライカーを装着した。

 

 バズーカが思った以上に当たらなかったため、今度は対艦刀「シュベルトゲベール」を、ビーム切った状態でも実体剣として使える「ソードストライク」で行こうと言うわけだ。

 

 ついでに、バッテリーの回復をしないと不味かったので、一石二鳥である。

 

 それを見たグーンは、なぜか後退しての引き撃ちをやりだす。

「何…?今までなら御構い無しに突っ込んできてたはずなのに」

 

 確かに、近づかなければいけない「ソードストライク」にとって遠距離船に持ち込まれるのは厄介だが……明らかに今までと動きが違う。

 

「まさか、あれには人が乗ってるのか?」

 アイシャさんのように、他のグーンを遠隔操縦していたのかもしれない。

 一瞬感じた寒気を振り払い、ミサイルをかわす。

 

 そこから急加速で一気に距離を詰めようとした時。

 

「その機体、バラバラにしてくれるわぁ!」

「うわぁ⁉︎」

 怒号と共に突っ込んできた何かに、思いっきり跳ね飛ばされた。

 

 何とか態勢を立て直した僕が、目の前に立ちはだかった機体に視線を向けると。

 

 

「なんだ、アレ……?」

 先ほどまで戦ってたグーンとは明らかに違う、まるで半魚人のようなフォルムをした濃緑の機体が、モノアイを光らせていた。

 

「ハンス!貴様は空の奴らを援護しろ、こいつは私と『ゾノ』でやる!」

 




はい、今回も新キャラがいるので解説します。

モルコ・マラシム

 国際手配されている海賊「深海の鯱」の首領。亡国企業の一員であるリディクが、束からの依頼の遂行のために協力を要請した。
 モチーフは「マルコ・モラシム」。
深海の鯱 国際手配されている海賊組織であり、ディンやグーン、ゾノなどの海上及び水中戦用MSを保有するが、亡国企業からは疎まれており、今回の合同作戦の際に始末する計画を立てられている。

ディン 
武装 マシンガン
   ショットガン
   マルチランチャー
 空戦用MSであり、背部のトンボの羽のような翼が特徴。
空中での自由飛行を可能としているが、その際装甲を削っての軽量化を図っているため、防御能力はあまりない。

グーン
武装 腕部魚雷発射管
   額部フォノンメーザー砲
   背部ライフルダーツ発射管
   頭部キャビテーティング魚雷発射管
水中用MSであり、イカみたいなフォルムをしているのが特徴。

腕を前に出したうつ伏せの状態(巡航形態)となることで水中を高速かつ自由に行動できる上に、武装のほとんどは水中で真価を発揮するものとなっている。
   
ジン
世界初の実用化されたMS。背部に大型の羽のようなスラスターを装備しており、ISには大きく劣るものの、それなりの機動性と運動性を発揮する。
 様々な軍や組織で使われており、それに見合った汎用性を持ち合わせているが、空中での単騎での飛行は不可能であり、グゥルによる空中戦闘におけるサポートが必須となっている。

 ゾノに関しては次回にガッツリ出てくるのでそちらをお楽しみに。

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