IS+1(インフィニット・ストラトス・プラスワン)   作:暇人の鑑

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第30話ですね。

今回と次回で福音戦は終わりにするつもりでいますが,果たして終わるのか?




第31話 瞬く光 想いの翼

 気づけば,俺は海辺にいた。

 

 しかも,気を失う前に着ていたISスーツではなく、学園の制服だ。

 

 ここはどこで,今はいつなのかもわからない。

 

 わからないが……俺は歩き出していた。

 

 ふと聞こえた歌声が、どうしても気になって。

 

sideアスラ

「ニコラス……⁉︎」

「馬鹿な……⁉︎」

 

 小さな小島にたどり着いたらしい2人が、目の前で起こった唐突な死を前に、驚愕しているのが聞こえた。

 

 その声には、俄には信じ難いと言う思いが滲み出ている。

 

 俺もそう思いたかったが……海上に散らばっているブリッツだった鉄塊という現実に,その思いは打ち砕かれた。

 

「アスラ、一旦下がって!」

 

 その光景に,誰もが言葉を発せないでいた中、流良が無人機と俺の間に割り込む。

 

「カガリ、アスラのイージスにエネルギー譲渡を!ライトニングストライカーならやれる!」

「………すまない……」

 そうして戦闘に突入した流良を尻目に、ノロノロと島に上陸すると……アイザックが詰め寄ってきた。

 

「クッソォ!なぜ,あいつが死ななきゃならない⁉︎

 

 こんな所で……!ええっ⁉︎」

 その言葉に,抑えていたものがプッツンと切れる音がして、デュエル

 につかみかかっていた。

 

「言いたきゃ言えばいいだろ………⁉︎

 

 俺のせいだと!俺を助けようとしたせいで死んだと!」

 

 通信越しに聞こえる歯軋りが、アイザックの悲憤を否応なしに突きつけてくるが、爆発した感情はそう簡単に収まる訳もなく、俺たちは機体越しに睨み合う。

 

「アスラ……アイザックも止めろ!

 

 こんな所で喚いたって仕方ないだろ⁉︎

 

 俺たちがやらなきゃいけないのはアイツを落とすことだ!」

「分かっているそんな事は!」

 そこに意外にもディアスカが間に割って入り、正論を説くが……その声にはみじんも納得も割り切りもできてない感情が混じっていた。

 

 日頃ニコラスの慎重さを「臆病者」とからかってはいたものの……その死を傷まずにはいられなかったらしい。

 確かに、軍に身を投じ、戦場に出て来た以上……こうなる可能性は考慮しておかなければならないが。

 

「あの時撃たれるのは,俺のはずだった………‼︎」

 たった15の、ピアノ好きな優しい少年が、亡骸も残らないような無惨な殺され方をされなければいけない理由なんて、考えたくもなかった。

 

side流良

「また……人の命が………」

 

 戦場でこんな嘆きをするのはおかしいのかもしれない。

 

「なんで……何でこうも簡単に……⁉︎」

 

 だが……あまりに唐突に奪われた、若すぎる命の光を前にして、叫ばずにはいられなかった。

 

 とは言え、悲しみに暮れてもいられない。

 

 アスラのイージスがフェイズシフト・ダウンしている以上、下手に攻撃がいくと一瞬でシールドエネルギーは尽きてしまうだろう。

 あの無人機の攻撃は、一撃一撃の威力が試合用に性能へリミッターを付けた学園の機体とは訳が違うのだ。

 

「そっちの座標をキャッチした、今行くぞ!」

 カガリが補給を終えるまでは、何としても時間を稼がなくてはならない。

 

「もう、誰も死なせない………死なせるもんか!」

 

 クローによる斬撃をかわし、バックパックの左右に取り付けられた、

WSPの最大火力「レールガン」を、海面に向かって撃ち込む。

 

 それにより飛沫が上がり,視界を悪くした隙に海中に潜ると。

 

 水面越しにあの赤い針千本が通り過ぎていく。

 

 そうして撃ち終わったのを確認してから、再び浮上。

 左右のレールガンの横につけられた「単装砲」を使ってちょっかいを掛けつつ、二刀流で切り掛かったが。

 

 向こうはクローで受け止め、ゼロ距離でビームを撃とうとしてきたので、前蹴りで勢いを付け、後ろへの瞬時加速でかわす。

 

 その態勢を整えようとする僕に迫って来たので、海面を背にしながら互いに剣と爪を振るいあい……その間に火花が散った。

 

 

sideシャルロット

「カガリさんは、無事ザランくんのところに行ったみたい…」

「それより何ですの、アレは………⁉︎」

 セシリアが顔を青ざめさせた視線の先には、光の繭みたいなものが浮かんでいた。

 

 鈴の火炎放射をくらい、箒が放った踵落としにより海面に叩きつけられた後、海面が光り出したのだ。

 

「まるで,蝶が羽化する前の蛹みたいな……」

 

 そう評する鈴と同じように、突然の行動に困惑していた僕達だったが、ラウラがハッとしたように。

 

「………まずい!これは……第二形態移行《セカンド・シフト》だ!」

 

 そう叫んだ瞬間、その声に反応するかのように福音が顔を向ける。

 

 

 無機質なバイザーに覆われた顔からは、何の表情も読み取れない。

 

 けれど、そこには確かな敵意があるとリヴァイヴが警鐘を鳴らしたが………。

 

 

『キアアアアアア………‼︎』

「なにっ⁉︎」

 それよりも早く,獣のような咆哮をあげた福音はラウラに飛び掛かる。

 

 その早すぎる動きに反応できず、脚を掴まれたラウラを解放すべく近接ブレードを片手に突撃しようとしたが。

「ラウラを離せぇ!」

「よせ!コイツは……」

 

 ラウラが言い切るよりも前に、福音は眩いほどの輝きと美しさを併せ持ったエネルギーの翼で彼女を包み。

 

 

「ラウラぁ‼︎」

 閉鎖空間でのエネルギー弾の雨……正に『死の抱擁』ともいうべき攻撃で、ズタズタにしたその体を海中へと沈めた。

 

「よくもっ……!」

 ブレードを持ってない方の手にショットガンを呼び出し、顔面へと銃口を当てて接射するが。

 

「きゃっ…⁉︎」

 

 胸部から、腹部から、背後から、装甲がまるで卵の殻のようにひび割れ、小型のエネルギー翼が生えた。

 そして、その翼から発射されたエネルギー弾の迎撃にふきとばされ、僕の体もまたその弾と同じ運命を辿っていった。

 

 

sideアスラ

「…‥大丈夫か?お前」

「ああ………」

 

 一旦ISを解除した俺は、カガリの「ストライクルージュ」からのエネルギー補給を受けている間………自分でも驚くほどに平静だった。

 

 そうだ、あくまで落ち着いてなければならない。

「2人とも、いいな?」

「………貴様こそ」

 先程までブチギレていたアイザックは、なんとか抑え込んだような声で返す。

 

 デュエルは、ストライクルージュからグゥルを借り受け。

 

「ああ、ニコラスの敵討ちだ……ヘマはしないぜ」

 バスターは、切断されたインパルス砲のかわりにストライクのビームライフルを装備している。

Xナンバーズの中でも、100系フレームはお互いの武器を専用の調整無しで使えるという個性があるため、現地での応急処置がしやすいのだ。

 

 もうこれ以上、仲間を……友を殺させはしない。

 

 そうして決意を固めた所で、イージスの補給が終わる。

 

「ありがとう、カガリ………エネルギーが心許ないだろうし、俺達が出たら君は下がってくれ」

「ああ……あと、これを持ってけよ」

 

 後ろにいるカガリのほうを向くと、彼女は何かを首にかけた。

 

 そうして首に下げられたのは、小さな赤い石。

 

 たしか、これは……

「ハウメアの護り石だ」 

 そうだ、オーブで信仰されている神「ハウメア」の加護があるとされている鉱石だ。

 

 でも、確かこれは………

「………これ、確かウズミ代表から頂いたものじゃ」

「…お前、危なっかしいから、これに守ってもらえ」

 通信越しに見る金色の瞳が、不安げに揺れている。

 

「……アイツの仇を取るまでは死ぬつもりはないよ」

「その後も死ぬなって事だよ!

 死なば諸共とかって考えてるだろ?お前」

………女性の勘を侮ってはいけない。

 

 それを改めて感じつつ、俺はイージスを再度展開した。

 

 

 待っていろ、ニコラス………‼︎

 

 

side流良

「ラウラ……シャルロット⁉︎」

 福音が姿を変えたと思ったら、ラウラとシャルロットのISの反応が消えた。

 

 慌ててそちらに目を向けると、セシリアが射撃をするが……超高速で迫る福音に対応しきれず、落とされてしまう。

「何ですの…‥軍用と言え、あまりに……!」

「セシリア‼︎……くそっ!」

 

これで向こうに残ったのは鈴と箒だけだが……近接戦闘主体の2人では、福音の良いカモにしかならない。

 

 何とかして助けに行きたくても、無人機は今も攻撃を止めることはない。

 

「何とか隙を見つけて……!」

 行かなくちゃという焦燥感と、残り少ないエネルギーという事実を前に歯噛みしていると。

 

 横から放たれた散弾が無人機に直撃した。

「流良,ここは俺たちがやるからお前は福音を………散開!」

「ここでカタをつけてやる!」

「こっから先へは行かせねえよ!」

 その方向を見ると、アスラ達3人がただならぬ戦意を秘めながら、無人機への攻撃態勢をとっており……これは、大人しく従ったほうがよさそうだ。

 

 

「……わかった、頼む!」

 

 そうして僕が改めて福音に視線を戻すと。

 

「…‥まずい!」

 

 箒の首を片手で掴んでいた福音が、紅椿をエネルギー翼の繭に取り込もうとしていた。

 

side一夏

 歌声の主の元へ歩いた俺が見たのは、1人の女の子だった。

 

 決して優雅でも,流麗でもないけれど。

 

 思いのままに踊るその姿に懐かしさをかんじて、いつの間にか目を奪われていたが…‥唐突にその動きを止める。

 

 そして、ジィッと空を眺めたまま動かないので、何かあったのかと聞きに行こうとしたら。

 

「呼んでる…‥行かなきゃ」

「え?」

 

 意味深なことを呟きながら,その姿を消してしまった。

 

「うーん」

 波の音だけが響く海岸ではやることもないので、そこにあった木のベンチに腰掛けようとする。

 

 すると……背中に声をかけられた。

「力を欲しますか……?」

「え……?」

 急いで振り向くと………波の中、膝下までを海に沈めた女性がたっていた。

 その姿は、白く輝く甲冑を纏った騎士さながらの格好であり、大きな剣を自らの前に立て、その上に両手を掲げている。

 

 「あなたが私のマスターか」とでも聞いてきてもおかしくないなと、ぼんやり考えていると、今度ははっきりと。

「力を欲しますか……?何のために……?」

「また難しいこと聞くな………」

 

 単純ゆえにじっくり考える機会もそうないであろうことに,少し戸惑ったが……俺の口は,いつの間にか言葉を紡いでいた。

「でも……仲間を守るためって言うのは、確かなことだよ。

 

世の中戦いばっかりだろ?……それに、理由が不条理だったり、道理が通らないものも多い。

 

 そう言ったのから、この世界で一緒に戦う仲間を守りたいんだ」

 

 自分でもまとまりがないなと思わず苦笑してしまうが、その言葉を聞いた女性は、小さく頷く。

 

 すると………

 

「なら………いかなきゃね?」

 後ろから,また別の声がかけられた。

 

 

 振り向くと,そこにはワンピースを着た女の子が立っていた。

 

「ほら、ね?」

 

 どこへ行こうというのかも、そもそもどこの誰かもわからないが……その声を前に、俺は不思議と手を伸ばす。

 

 そして、二つの手が重なった時。

 

 

 

「な、なんだ?」

 俺の世界が、真っ白な輝きに包まれていった。

 

 

side箒

 

「ぐっ……くっ………」

 

 ギリギリと締め上げられた喉から,苦しげな声が漏れるが……その手の力が緩まることはない。

 

 更には、エネルギー状へと変化した「銀の鐘(シルバーベル)」が、紅椿を包み込む。

 

「くそっ!これが第二形態だって言うのか?びくともしない…!」

「んなこと言ってる場合じゃないわよ!とにかく撃ちまくりなさい!」

 

 輝戸と鈴が銀色の繭を壊そうと砲撃をしているらしいが……目の前に広がる暴力的なまでの輝きは少しも静まらない。

 

(これまでか……!)

 もはや、一斉砲撃まで秒読みの中で…私の頭の中には、ある一つの想いだけが浮かんだ。

 

 

 会いたい。

 

 今すぐに会いたい。

 

「一夏に会いたい………!」

 

 そんな私の願いをよそに、翼は輝きを強める。

 

……これが、報いだったのかもしれない。

 

 力に溺れたものが、より強い力の前になすすべもなく打ちのめされる。

 

 そんな、惨めな末路が……!

 

 思わず目を閉じたその時。

 

 

 

 

 

「俺の仲間は誰1人としてやらせねえ!」

 

 一筋の光が、銀の福音を吹き飛ばした。

 

 




いかがでしたか?

次回は3巻におけるラストまでいけたらなと思ってます。


それではお楽しみに!
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