IS+1(インフィニット・ストラトス・プラスワン)   作:暇人の鑑

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はい。福音編のラストです。


第32話 閃光に消える

「白式が変わった……まさか、一夏のも第二形態になったって事⁉︎」

「………案外第二形態ってすぐなれたりするの?」

「ケンカ売ってんの?アタシらのが第二形態に見えるかしら?」

 

 新しい姿になった白式が、福音から箒を助けたのを見ながら……僕たちはポカンとしていた。

 

 重傷を負っていた筈の一夏が、普通に戦闘に参加してきたことの意味がわからないし、いつぞやラウラにボコられた2人のISほどの損傷を受けていたはずが、こんな短期間で進化して戻ってきたのも意味がわからない。

 

 そんな奇跡の連続を見せられれば、流石に戦闘中でもこんなマヌケな事態になるのもやむなしである。

 

「……アタシ達はみんなの救助をするわよ」

「うん,分かった…」

 

 あの2機の「規格外」の乱闘に入れる気がしなかった僕は、鈴に従って海に落とされた3人の元へ向かった。

 

sideアスラ

 

「許せないんだよ!お前はぁ‼︎」

 グゥルで急接近するや否や、飛び上がったアイザックが、無人機を蹴り飛ばすが、お返しと言わんばかりに紅い弾雨が襲い掛かる。

 

「ちくしょう、全部は無理か!」

「しまった、足にかすってバランスが……!」

 ディアスカが機雷を打ち込んで誘爆させ、その攻撃をかき消そうとするが……完全には消しきれず、1発が足のスラスターに直撃した。

 

「アイザック、今救助に……」

「アーマーをパージすれば問題ない!俺のことはいいから貴様らはアイツを…!」

 アイザックが心配だが……補給してもらったとは言えど、そう長くは戦えない。

 なら,ここは少しでも攻撃に集中すべきだろう。

 

「分かった……!」

「死ぬんじゃねえぞ!」

 

 そうして俺とディアスカは,再び無人機との戦闘に意識を向けた。

 

 

side一夏

「一夏っ、一夏なのだな⁉︎体は、傷はっ……!」

「おう,待たせたな」

 箒の元に飛んでいくと、箒は慌てて声を詰まらせていた。

「よ、よかった……本当に……!」

「あ,なんだよ泣いてんのか?」

「泣いてなどないわっ!」

 そう言いながらぐしぐしと拭われた目元は、バッチリと赤い。

 

「どうやらよほど心配してくれたみたいだ」

「心配などしてないぞ……!」

 変な強がりばかり言う箒だが‥‥やはり,ポニーテールでないとらしさがない。

 

「うん,ちょうど良いな。これやるよ」

「…‥なんだ,これは?」

 俺が箒に渡したのは、白いリボン。

 

「7月7日………誕生日だろ?今日」

「あっ……」

 前のやつが、少しほつれていたのを見て、この誕生日のために用意していたのだ。

 

「せっかくだから使えよ」

「あ、ああ……」

 

 よほど意外だったのか、素直にリボンを結ぶ箒だが……その後の言葉は後回しだ。

 

「じゃあ……行ってくる。まだ終わってねえからな!」

 そんなわけで、こちらに向かってきてきた福音はと急加速し、正面からぶつかり合った。

 

「さあ、再戦といくか!」

 

side流良

 セシリアを回収した僕は、鈴が指定した座標に向かいながら、あの戦闘の光景を中継で見ていた。

 

「零落白夜のシールド……ビーム攻撃を打ち消す代わりに,シールドエネルギーの消費がやばそうだ」 

「それは、私にとっては由々しき事態ですわ…」

 一夏の白式の第二形態「雪羅」は、新たにクローアーム付きのシールドを手に入れており、そこからはなんと零落白夜のクローとシールドを出すことが出来るのだ。

 

 だが、ただでさえエネルギーをドカ食いする零落白夜を使う武装が増えたとなれば、よりエネルギーに気を配らなければいけなくなる上に、引き撃ちに徹されれば,早々に自滅もありうる。

「話は後だよ。今は寝ないと…」

「ええ,お手数おかけしますわ……」

 セシリアのダメージは相当なものらしく,今こうして話している中でも顔は苦痛に歪んでいた。

 ラウラやシャルロットも似たり寄ったりな状態らしいので、早く連れて行ってやろうと急がせようとした時。

 

 

「………新手、ロックされた⁉︎」

 3つの機影が,こちらをロックしていたのでシールドを構えるや否や、強い衝撃が走った。

 

 どこの所属かはわからないが……今のセシリアにISは装着されておらず,戦闘に巻き込まれたらひとたまりもない。

 

「鈴!セシリアを乗せたグゥルをそっちに飛ばしたから、回収お願い!」

「流良さん、何を……」

「僕は大丈夫……それに、君達に何かあったら、一夏に合わせる顔がない!」

 とりあえず,セシリアが逃げ切る時間を稼ごうと……僕は再び打ちかけられたビームを避け,ビームライフルを向けた。

「エネルギーは心もとないけど、最悪刺し違えてでも……!」

side箒

 一夏と福音の戦いは、それは壮絶なものだった。

 光の翼を用いて弾幕を貼る福音と、四基に増設されたスラスターと、複合兵装らしき左側の武装を用いて突撃する一夏。

 

 一夏が絶体絶命の危機を救ってくれたという事実に,嬉しいを飛び越えそうだが……今はそれよりも。

 

 共に戦いたい、あの背中を守りたいと強く思い……願った。

 

 強く…‥これ以上なく強く。

 

 そして、その願いが届いたかのように紅椿の展開装甲から赤い光に混じって黄金の光が溢れ出す。

 

「これは…‥エネルギー回復か?」

 

 その光と比例するように、増大していくシールドエネルギー。

 

 突如表示されたメッセージによると,この光はワンオフアビリティーのものらしい。

 

「『絢爛舞踏』……兎に角,まだ戦えるんだな」

 

 詳しいことはわからないが……今は一夏の元へ向かおう。

 

 紅椿が、『攻めろ』と言っているような気がしたから。

 

 

side一夏

「くっ、やっぱすげえ大食漢だなお前…!」

 機体のエネルギー残量が20%を切り,残り時間は約3分。

 

 対して相手の残りエネルギーはわからないと、長引く時間は俺に焦燥をもたらしていく。

 

「決め切らねえと……って,やべえ!」

 

 そうして動きに精細が欠いてきていたのか、フェイントに引っかかり、ゼロ距離へと誘い込まれてしまった。

 

 このままじゃ前の二の舞だと,少ない時間で必死に考えていた時。

 

 

「一夏ァ‼︎」

「⁉︎」

 黄金の輝きを纏った紅椿が、踵による回し蹴りで福音の攻撃をカットした。

 

「箒⁉︎お前,シールドエネルギーは!」

 吹き飛ばされた福音に追い打ちをかけるように荷電粒子砲を放ちつつ、問いかけると自信満々に。

「エネルギーは大丈夫だ。それよりこれを!」

 手を差し出してきたので,よくわからないままその手を取ると…‥エネルギーが回復した⁉︎

 

「おい、これどういう……」

「考えるのは後だ!ここで決めるぞ一夏!」

「お、おう!」

 

 確かに、箒の言う通りだ。心変わりなんてされたらたまらない。

 

 意識を切り替え、雪片弍型のエネルギー刃を最大出力まで高める。

 

 そうしてできた巨大な刀を両腕で構え、俺は突撃した。

 

 そのまま振るった横薙ぎの一撃は、縦軸の一回転でかわされてしまい、福音はこちらを再び視界に据えるや否や光の翼を………!

 

「させるかぁ!」

 向けようとしたところで、紅椿の二刀流に切断された。

「ここで決めると言ったろう!」

 

 予想外の攻撃に姿勢を崩された福音に、箒は急加速の回し蹴りを決めて蹴り飛ばし。

 

 

「おおおおおおおおッ‼︎」

 

 吹っ飛ばされたところへ畳み掛けるように、俺は福音の胴体へ刃を突き立てた。

 

 確かな手応えと共に、全ブースターの出力を最大までにして追い討ちをする。

 

 押されながらも、俺の喉笛に手を伸ばそうとしたところで。

 

 

 

………ありがとう……………

 

 

 

 銀色のISは、ついにその動きを止め。

 

 

 アーマーを失った操縦者は、海へ落ちる前に箒に回収された。

 

「終わったな」

「ああ……やっと、な」

 

 

 

「お疲れ,助かったぜ……」

 待機状態の福音を手にした俺は、操縦者を抱えた箒に駆け寄ると、箒は改まったように。

「ああ……それで,お前は本当に大丈夫なのだな⁉︎」

「おう!体に目立った傷もなかったしな……」

「そんなわけないだろ⁉︎どれだけ心配したと……」

 

 箒が食ってかかるが…‥正直俺もなんでかはわからない。

 

 あんなに痛かったのに、目覚めたら全快してましたは……ゲームじゃないんだし、普通はありえないだろう。

 

 それを成立させたのは,おそらく……

 

「お前、本当にただのISなのか…?」

 

 前例もないようなことをした相棒に、少し怖くなりながらも、箒に帰ろうと声をかけたその時。

 

 

「……なんだあれ⁉︎」

「わ、わからん……」

 

 空が,突然閃光に染まった。

 

 

sideアスラ

「くそ!時間切れかよ⁉︎」

 バスターがパワーダウンで離脱したことで、俺と無人機によるタイマン状態となったのを皮切りに、互いに斬り合い,ぶつかっては離れを繰り返しての戦闘が始まった。

 

「お前がアイツを………ニコラスを殺したぁ‼︎」

  

 出撃した時の冷静さなど、友の仇を前にして既に吹き飛んでいて、視界には敵の姿しかない。

 

「てやあああッ‼︎」

 その片隅には、目の前で爆散した戦友とのやりとりが鮮明に蘇り……その命がもう無いことを,看過などできない。

 

 どのシーンを思い返しても……その無邪気さや、ピアノを弾いていた時の嬉しそうな顔は、あまりにも若すぎる。

 

 "アスラ………逃げて……"

 最後に聞いた掠れた声が蘇り,俺を責め立てた。

 

 最後まで気遣ってくれた優しさが,とても痛い。

 

 それほどまでに優しく……祖国の平和のためと言えど、考えるほどに、戦場なんて似合わないような子だった。

 

 アイザックやディアスカもきっと同じ気持ちで……だからこそ、ニコラスの死を悲しみ、その仇であるこの無人機を憎んだ。

 だから……コイツだけは。

 

「俺がァッ! お前を、撃つッ‼︎」

 

 その時、頭の中で何かが弾けると同時、無人機の翼が地上からの攻撃で抉り取られた。

 

「これがニコラスからの形見分けだ、受け取れぇ!」

 

 これまでが曇っていたかのようにクリアーになった視界には、アイザックがブリッツのトリケロスを無人機に向けているのが見えた。

 

 所々が破損しているものの……奇跡的に,機能は死んでいなかったようだ。

 

 そうして放たれた一本のランサーダートが、無人機の不意をつく形で一矢報いたわけだ。

 そして…みんなが紡いでくれた機会を前にして俺は、いつの間にか浮かんでいた自分のなすべきことを機体に反映させる。

 

 

 腕と足に搭載されたビームサーベルを全て展開し、幾重にも斬りつけ……ついに胸に付けた裂け目から,ISコアの露出を確認する。

 

「はああああッ!」

 そして……敵の両腕を釘づけにするように、腕のサーベルを突き刺し、ゼロ距離でスキュラを発射する態勢を作り出した。

 

 

殺った………‼︎

 

 その戦慄にも似た勝利感に酔いながら、スキュラのトリガーを引くが……!

 

 

 その瞬間,フェイズシフトが落ちた。

 

「何⁉︎どうして……」

 一瞬何が起こったか理解できず、何回もトリガーを押して……ようやく、耳に入った警告音に気がつく。

「アスラ!お前もエネルギー切れじゃんかよ!」

「そんな……!」

 

 目の前には、腕と足を釘づけにされた無人機がおり、刺さった発信機をなんとか振り解こうとしている。

「くうっ………!イーゲルシュテルンもダメか!」

 

 今ならやれるのに、そのための武器がないなんて……!

 

 その状況に呻き声を上げるが……先ほどまで沸騰しそうだった頭からは考えられないほど冷徹に,その言葉は即座に否定された。

 

 俺はすぐさまテンキーに素早く暗証番号を打ち込み、この機体だけの最後の形態を発動させ……半ば反射的な動きで脱出する。

 

 

 そうして10秒という時間の後………閃光が視界を灼く。

 

 

 激しい爆発……イージスの自爆装置によって起こったそれは、俺の身体を宙に投げ飛ばした。

 

side流良

 

「くそ……!パワーもスピードも向こうが上か……」

 新たな3機を前に、僕は絶体絶命のピンチを迎えていた。

 

 黒いハーピーみたいな機体にはスピードで負け、カーキ色のカメムシを頭にかぶったような機体にはビーム兵器が通用しない。

 唯一まともに人型をしている青緑の機体には火力で負けているのだ。 

「しかも、実弾が通用してない………」

 更には、PS装甲みたいなものを持ってるのか、バルカンが通用しないのだ。

 

 援護が来るまで持つかと冷や汗をかいていたが……その時、強烈な閃光が空を灼いた。

 

 しかも……それと同時にイージスの反応が消える。

 

「アスラ⁉︎」

「何よそ見しちゃってんの?」

 思わず声を上げるが…返答の代わりと言わんばかりに、突っ込んできた黒い機体にシールドを弾き飛ばされる。

 

 

「落ちろおおおお‼︎」

「うわああああッ⁉︎」

 そして、青緑の機体が放ってきた砲撃の嵐をまともにくらい………その衝撃と熱にストライクは色を失い、小島に叩きつけられるが砲撃は止まず、シールドエネルギーは空になり、砕けた装甲が皮膚に突き刺さっていく。

「みんな………ごめん………」

 痛みと熱と轟音の中……僕の意識は真っ暗になっていった。

 

sideシャルロット

 

「え………?」

「SIGNAL LOST」の表記を前に、僕は言葉を失った。

 

 少し前に、巨大な爆発があったかと思えば………ストライクの反応が消えたのだ。

「アスラの反応もない……!アイザック、ディアスカ!アイツは…」

「わからん!無人機を自爆で倒したらしいが、どこへいったかが…!」

「どこかに飛ばされたのか……⁉︎その座標を教えてくれ、私も出る‼︎」

 カガリさんが青い顔をして通信に呼びかけているが、その知らせを受け付けられないのか、頭は回らない。

 

「鈴、何があったんだ…⁉︎」

「わっかんないわよ!アタシだって何が何だか……!」

「そんな……!」

 一夏が鈴に呼びかけるが、返ってきた返事は慌てふためくようなものだけであり、セシリアが口で顔を押さえている。

 

 みんながみんなそれぞれに混乱している中……織斑先生が。

 

「作戦は終了だ。全機,帰還しろ……2人は,MIAと認定する」

「教官……」

「織斑先生だ!」

 戦いの終わりを、苦々しく宣言した。

 




いかがでしたか?
 最後に出てきた3機は大体みなさんのお察しの通りです。

 次回から4巻編…‥とはなりません。どっちかというと「慟哭の空」辺りの雰囲気となりますので,お楽しみに!

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