IS+1(インフィニット・ストラトス・プラスワン) 作:暇人の鑑
今回でついにあの伝説の機体を出すことができます。
「ストライク!」
ISを展開しようとした僕は、いつも首に下げていたものがないことに気づく。
「……あれ、ない⁉︎」
もしかしたらベッドに忘れてきたのかと,慌てて取りに行こうとした時。
「落ち着け流良!ストライクは今修理中だ…」
「そんな!それじゃあ……」
アスラの気まずそうな声に、絶望が頭をよぎった。
「何も守れないじゃないか!僕が守らなきゃいけないのに……!」
戦いたくないのは今もそうだ。
でも……それでシャルロットを守りきれず、ニコラスのようになってしまうと考えたら,そっちの方がずっと嫌なのに!
「……たしか、フランス代表候補生だったな」
「僕が傷つけた……僕が守ってあげなくちゃならない人なんだ……!」
そこまで言ったところで,アスラの平手が飛んできた。
ぐるぐると回った思考が一瞬でリセットされ、ヒリヒリする頬を押さえてその顔を見ると、その顔は険しい。
「良い加減にしろ!一体何を守っているつもりだ⁉︎」
「何って……」
「代表候補生が、素人に守られなきゃいけない程,弱いわけがない!」
叱りつけるような言葉が飛んでくるが……それで納得なんてできない。
「それに……自分を守ることばっかりで、彼女の言葉や気持ちなんて何一つ聞いちゃいないだろう、お前は!」
その言葉にカッとなった僕は食ってかかる。
「違う‼︎僕がやらなきゃダメなんだ…!嫌だけど、僕が巻き込んだんだから……」
だが,それもまた2発目の平手打ちに遮られた。
「その贖罪のつもりか⁉︎彼女が本当に、お前が血反吐を吐きながら差し出す平穏を望むと……本当に思っているのか⁉︎」
「………ッ!」
自分を突き動かしていたものを完膚なきまでに叩き潰され、支えを失ったように膝から崩れ落ち…‥情けなさに涙がこぼれた。
そうして少し間を置いて、アスラはため息混じりに。
「お前達2人がどんな関係か、俺はよく分かっていないが………デュノア社社長に啖呵を切ったのは、どうしてだ?」
「……どうして,それを」
唐突に出されたそれに,ポカンとする僕にアスラは確かめるように視線を合わせ。
「デュノア社社長から聞かされていたんだ。
彼女をデュノア社の計画から助けたんだろう?それに対して,よくもやってくれたなと恨まれたりしたのか?」
「そんな……ことはないけど。でも僕は……甘えて,傷つけて…!」
「本当にそれで彼女が傷ついていたのか?っていう話だよ。例えば……お前が勝手にそう思ってるだけ、とか」
「………」
思えば,あの時の彼女はそうしたかったから,と笑っていた。
それを……気を遣ってくれているだけだと、同情しているだけだと、いらない疑いをかけていたのは僕だけだったんだ。
「………彼女は,どう思ってるのかな?」
打ちひしがれたような気分でアスラに聞くと、さらりとした様子で。
「不安なら会って聞いてみろよ。前にも言ったろ?
漫画やアニメじゃないんだし、テレパシーや読心術なんてないんだ…‥言葉がなければ伝わらないし、他人の本当の気持ちなんてわからないさ」
そうして差し伸べられた手を…‥僕は取る。
そうして立ち上がった時には、先ほどの焦りはなかった。
「アスラ、M1とかある?僕…‥IS学園に戻るよ」
アスラは目を少し見開いた後……データに目を通し。
「………相手の戦力は未知数だ。量産型のM1じゃ,ストライクみたいな力は出せないぞ」
どこか,試すような目を向けてきた。
確かに、M1じゃ専用機のストライクより性能は落ちる。
あの3機ほどの相手が来たら,まず太刀打ちできないだろう。
でも……
「いかなきゃ……いや、行きたい。あそこには守りたい人がいるんだ」
やっと伝える覚悟ができたんだ。不完全燃焼なんかで終わりたくない。
僕があの時立ち上がったのは、何の打算もなくただ………守りたかったからだ。
「太刀打ちできないって言って、ここで動かないなんてできない……それじゃあ,何も変わらない。
何も,始まらないから……!」
そうして視線を交わしていると。
「答えは出たみたいですわね」
キュナスさんが、研究者らしき人を伴ってこちらにやってきた。
ターミナルの開発部門「ファクトリー」。
その中でもトップシークレットらしいエリアに通された僕とアスラの前に、山野博士は待ち構えているように佇んでいた。
「…‥ここに連れてきたということは,覚悟はできているということでよろしいかな?」
「ええ、かまいませんわ」
「能力的にも彼らなら問題ないでしょう」
キュナスさん達はさらっと言ってのけるが、僕たちはどういうことかわからず困惑する。
「…‥分かった。君たちの判断を信じよう」
話が見えてこないでいた僕が,早く行かないとまずいと抜け出そうとした時。
「…‥ここに何かあるのか?キュナス」
「こちらをご覧いただければ,自ずとわかりますわ」
一斉に照明がつき,暗闇にぼやけていたシルエットが鮮明に浮かび上がった。
その姿は………
「………ISか?」
「これは我々ファクトリーが生み出した最新鋭MS……『フリーダム』と『ジャスティス』です。まあ、コアを積めばISとしても使用可能ですがね」
鉄鋼色の四肢を持ったパワードスーツが,ケーブルに繋がれた姿で佇んでいた。
「フリーダムは流良君に。ジャスティスはアスラ君に授けたいと思う」
「………え?いや,流石にオーブ軍人がファクトリーの機体を使うのは……」
「問題ありませんよ。既にこの機体の所属はオーブにしてあるので」
「もうなんでもありだな、ウチは…」
唖然とするアスラをよそに、フリーダムに視線を集中させる。
ストライクと顔こそ似てるが他はほぼ別物であり、特にウイングは……白式のウイングスラスターに酷似していた。
「…‥これを,なぜ僕に?」
思わず口から出た言葉に、キュナスさんは透き通った声で。
「今のあなたには必要でしょう?」
何を今更と言わんばかりに頷く彼女と、手渡された新たな剣。
「流良の願いに……行きたいと望む場所に、これは不要ですか?」
それさえあれば助けに行けるという期待と、この力に呑まれずにいられるだろうかという不安がある状態となっていると、山野博士は。
「確かに……この機体は扱いを間違えれば、文字通り世界の破滅を招くだろう」
世界への沈黙を破る事への苦悩をにじませながらも、はっきりと。
「だが……だからこそ,君たちに託したい。
力に真っ当な怯えを……疑いを持てる強さを持つ君たちに」
「思いだけでも,力だけでもダメなのです……2人はそれをもう知っているはずですわ」
2人の強い頷きに、僕はひとつ息を吐く。
思いだけがあっても、力がなければ何もできない。
力だけがあっても、それだけでは何もわからない。
思いを振るう力があるように、力を振るう思いがある。
なら,僕は……!
「………ありがとう」
今、伝えたい思いのために,この剣を取ることを決めた。
sideアスラ
「………キュナス、いいのか?」
「なんです?」
まだ完全に怪我が治ったわけではない為,俺は流良についてやることはできない。
ガラス越しに赤いパイロットスーツを着てフリーダムに向かう流良を見守っている中で、待機所にやってきたキュナスに声をかけた。
「流良のこと、好きだったんだろ?」
「………気づかれてましたの?」
「婚約は破棄されたと言えども、それなりに長い付き合いだぞ?俺と君は」
療養中の流良と話すキュナスは…‥なんというか、カガリと話す俺に似ている気がしたのだ。
「その割には随分と乗り換えが早い様子でしたが?」
「そ、それはお互い様だ」
少し悪戯めいた笑みを浮かべた彼女とのやりとりが途切れ,しばらく同じところを眺めていると、キュナスは。
「………確かに,あの方は好きですわ。
でも………残念ながら,彼はシャルロットさんのことばかり。入る余地もありません」
「……そうか」
と,少し悔しそうにしながら,遠い目をしていた。
side流良
…‥私も歌いますわ。あなたの意思と共に。
「キュナスさん……ごめん」
頬に触れた唇の感触が残るが,それを振り返ることはできない。
彼女を受け入れてあげられない事への苦しさがよぎるが……せめて、この先の世界で、この機体を託してくれた事への恩返しくらいはしたい。
……っと、いけない。久しぶりの実戦なんだから気を張らないと。
「にしても,なんか変な感じだな…」
アスラ達と同じ赤いスーツに身を包んだ僕は、機体のスペックに目を通しながら機体を立ち上げていくが,そのどれが凄まじい火力だ。
「すごい…‥どの武装もアグニやレールガンに匹敵する。合計のパワーで言えばストライクの4倍以上だぞ……?」
これだけのパワーをどうやって……と、目を走らせると,ある一言に目がとまる。
「エターナルサイクラー……⁉︎」
その源を知った時、博士のあの苦悩の表情の意味がようやく分かった。
この機体は,永久機関が生み出す無限のエネルギーにより、PS装甲や実弾以外の武装に関する時間的制限が無いに等しく、ISコアがPICの付与や、シールドエネルギーと言うHPの概念によるリミッターとしてしか意味を成していないのだ。
改めて,託された思いの大きさを感じながら,キーボードを走らせる。
「CPC設定完了、ニューラルリンケージ。
イオン濃度正常、メタ運動野パラメータ更新。
サイクラーとの連動完了、パワーフロー正常。
………全システムオールグリーン」
初期設定を終え、展開していなかった武器類とPS装甲を展開する。
たちまち色づいていく装甲に呼応するように、頭上のシャッターが開いていき、やがて青空になった。
「思いだけでも…‥力だけでも………」
キュナスさんの言葉を,誓いのように繰り返し、蒼天を見据える。
そして。
「輝戸流良。"フリーダム"…‥行きます!」
遥か彼方にある約束の地に向けて、僕は飛び出した。
その手に自由の剣を託されて。
sideシャルロット
鈴が龍砲の連射で敵を蹴散らす。
「何よ,この数……!」
「強くは無いけど数がすごいね……!」
IS学園に襲撃をかけてきたのは、AISF…反IS連合という組織であり、狙いは夏休みにより警備が手薄くなったところを壊滅させようというものだった。
そして,それを迎え撃つべく僕達は出撃したんだけど…‥相手の数に圧倒されていた。
「にしても,これがストライクダガー……」
ストライク,という単語に苦いものが頭をよぎるが…今はそうも言ってられない。
この機体は、AISFが生み出したMSであり、ビーム兵器を標準搭載していながら、量産機として数を揃えるのが容易と言う汎用性と火力のバランスが良いことが特徴だ。
そして、無人機としても扱うことができるため……こうして数に物を言わせたような弾幕を貼る事で、IS相手でも張り合うことができる。
「くっそ…‥これじゃあ処理しきる前にエネルギーが尽きちまう……!」
特に,接近戦仕様で一体ずつ倒さなくては行けない上に、燃費が悪い白式や紅椿とは最悪の相性だった。
「箒、絢爛舞踏はまだなの⁉︎」
「ダメだ!集中しようにも,こうもちまちまやられては……!」
こんな時に弾幕を張れるセシリアや、動きを止めて対処できるラウラ、山田先生はいない。
他の専用機持ちは元の国家に帰っているし、先生達の訓練用ISはあまり当てにならない。
このままではすり潰されると言う考えが頭をよぎった時、新手を示す反応が。
こんな時にと歯噛みしつつ,そちらの迎撃にあたろうとした僕だったが……通信に映った顔を見て凍りついた。
その相手とは……!
「ここにいたの?会いたかったよシャルロットちゃん……」
本国のデュノア邸で僕を犯そうとしてきた男……ミハエル・F・デュノアがあの時と変わらない下卑た笑みを浮かべて突撃してきた。
「ひっ……!いやあああああ⁉︎」
side鈴
「シャルロット⁉︎」
シャルロットが滅多に聞かないような悲鳴をあげて後ずさり、それを新手の男が追いかけ回す。
片やトラウマを刺激されたかのように恐怖で歪み、片や明らかに欲情したかのようにぎらついた目をしていた。
恐らく,昔に何かあったのだろうと女の勘が働き、そこに割り込もうとするが……。
その機体の姿は,間違いなくISのそれであり…‥どう言うことかとアタシの中で困惑が鎌首をもたげた。
「邪魔をするな下賤のものよ!とりおさえい!」
「きゃっ……⁉︎」
こちらにチラリと目配せしたかと思えば、ダガーの大群が蜂球のように覆いかぶさってくる。
「フフフ………君が小賢しくも抵抗してくれたせいで、私は家を追い出されたが……今度こそ一つになろう……!」
「いや………いやです!こないで……!」
「シャルロット⁉︎貴様…‥恥を知れ!」
箒が瞬時加速を使って振り切り、その男に迫るが……
「汗臭いメスが来るな!穢らわしい……」
狙いはあくまでシャルロットらしく、箒の突撃を横に避け、マントを箒の顔めがけて被せた。
「全く……そのだらしない体で私によるとは,無礼にも程がある。簀巻きにして、下っ端どもの慰みモノにでもした方が世のためになる物だ」
「何を……⁉︎」
虫唾が走るような言葉と共に、一瞬視界を奪われた箒をワイヤーで縛り上げ、胸を鷲掴みして吐き捨てた。
「ッ……貴様ぁ‼︎」
「下衆野郎が!箒を放せぇ!」
「言われなくとも放してやるよ!こんな乳牛に用はない!」
それにブチギレた一夏が迫るが……ゴミのように箒を投げつけられ、それを一夏がキャッチすると同時に。
「汚物は消毒しとくがね……感謝したまえよ」
ある程度整った顔立ちを台無しにするような下卑た笑いと共に、ワイヤーを起爆させ…‥巻き込まれた一夏にも大ダメージを与えた。
「コイツ……どうしようもないクズの割に強いわね」
「お子様に何を言われてもね……さて」
「何ですって………」
ブチギレかけたが、目の前の景色に言葉を失う。
シャルロットはワイヤーで両手足を拘束され、X字に引っ張られていたのだから。
sideシャルロット
「懐かしいなあ……1年前、せっかく僕の女として仕込んであげようと思ったのに,君はそれを拒んだ」
獲物を前に舌なめずりする猫のように、舐め回すような視線が身体中をまとう。
生理的な嫌悪と恐怖を前に,必死でもがくが……痛いくらいに四肢が引っ張られ、ブースターも破壊されてしまった事で逃げられない。
そんな,まさに無防備な状態の僕を前に、ミハエルはまるで自らの不運を嘆くかのように責任転嫁をする。
「そのせいで僕は実家を追い出され,路頭に迷ったけど………やはり,運命は僕の味方だね」
サーベルがアーマーのない部分のスーツをツーっと切り裂き、肌が露出する。
恥ずかしさに震えている前、嘲るような顔で。
「そうだ、輝戸流良……だっけ?アレももういない。我々AISFの名の下に粛清した」
「……そんな⁉︎よくも……!」
「僕にそんな目を向けるんじゃないよ!」
「ああっ⁉︎」
振るわれたムチの電撃に痺れ,声を出すことも難しくなった僕に。
「僕をコケにしたその罪は重いよ………ま,自業自得だよね」
諦めろと言わんばかりにサーベルを伸ばしてきたのを前に,思わず目を閉じたその時。
「⁉︎」
突如,爆発音と共に拘束が解けた。
side一夏
「なんだ…⁉︎」
あの下衆野郎をぶちのめそうと突撃しようとした俺の目の前で、シャルロットの四肢をワイヤーで引っ張っていた4機が、何かに撃ち抜かれて爆散し。
更に警告音がなったかと思えば………奴が持っていたサーベルが,空から落ちてきた何かに腕ごと切り払われる。
そんな突然の出来事に誰もが言葉を失っていると、その落ちてきたそれは空高く舞い上がり………その姿をあらわにした。
「な……に……?」
輝く白い四肢、ボディは黒と青のツートン。
頭部には角のような4本のアンテナがあり………どこか、ストライクと似ていながらも,その姿は全く共通するところが見受けられなかった。
未知の機体は悠々と、巨大な6枚の翼を広げ、青白い光と熱を辺りに散らした。
その姿はかつて戦った福音と被るが………あちらと違い,前情報も無いことから、まるで天使のようにも思える。
そんな、全く未知の存在から。
「こちら輝戸流良……援護します。今のうちに後退を!」
聞き覚えがあり…‥もう,聞くことはないんじゃ無いかと危惧していた声がした。
「さす……ら……?」
いかがでしたでしょうか。
一応新キャラと新機体の紹介をば。
ミハエル・F・デュノア
男 26歳
デュノア社の本妻の血筋の人間であり、性格は典型的なドラ息子。
デュノア社にきたばかりのシャルロットに性的暴行を加えようとしたことがあり、それに激怒したアルベルトによりデュノア家を追放されている。
「自分を拒んだシャルロットが悪い」と言う逆恨みからAISFに所属。IS学園を「魔女狩り」と称して襲撃した。
モチーフはフランスのあるシリアルキラー。
セクス・デシーバー・スーツ
男でもISが使える方法を模索したAISFが開発したISスーツの亜種。
有人のISを鹵獲し、搭乗者のデータを抜き取った後,そのデータをもとに作るという手法を取ることで,機体に本人が操っていると誤認させることができる。ついでにその搭乗者を憎しみの吐け口として使用できる、ある意味「魔女狩り」の戦利品とも言える。
また、それによって奪われたISは「ウィッチ・シェル(魔女の抜け殻)」と呼ばれており、ある意味女性優遇社会への挑戦状である。
尚,このスーツで操るISは自己修復機能などの基本機能は扱えるものの、自己進化機能はないためただの兵器としてしか使われなくなる。
ミハエルはこのスーツの着用により、ISを扱うことができた。
いかがでしたか?今回はシャルロットの女バレ回でちょろっと書いたことを膨らませる形となりました。
次回は,フリーダムの初陣,そしてシャルロットとのようやくの対面を描ければなと思います。