IS+1(インフィニット・ストラトス・プラスワン)   作:暇人の鑑

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 お久しぶりです。

 色々考えていたら時間がかかってしまい,申し訳ありませんでした。

 今回は初デート回ですが、ストーリーは11巻のフランスでの出来事を先取りした感じとなってます。

 そっちでは本題に集中したいんで……。


第38話 デュノア×コスモス

 初めてできた彼女と,初めての海外旅行。

 そんな一大イベントを前に,僕はある場所に意見を伺いに行っていた。

 

「へー…ついにお前も彼女持ちとはな。やるじゃんか」

「しかも、初デートがフランスって……スケールが違い過ぎてびっくりだよな〜」

「まあ、ただのデートってわけじゃなさそうだけどね」

 彩都と透がパーツを組み上げるのを横目に、プログラムを作りながら答える。

 

 そう,僕が向かったのは元母校である工業カレッジだ。

 

 なんでもカトウ教授の新研究の手伝いをしてほしいという事で、こうして久々のカレッジの空気を吸いながら、女の子とのデートについて教えてもらおうとしていたわけである。

 

 透と美里は付き合っているし、彩都はいい所のお嬢様と遠恋中。和樹は情報収集が趣味であり、その知見に期待が持てそうだ。

「流良,何かあったら守ってあげなきゃダメよ?いくらその子の方が強いとは言ってもね」

「あと、蛙化現象だったっけ?……それにも気をつけた方がいいよ」

 

 

 そう言いながら美里が和樹と共に持ってきたのは……。

 

「うわー,懐かしい。実験農場からパクってきたやつ?」

「そんなわけないでしょ。アンタ達それがバレてこってり絞られてるの見てんだから」 

「いや,さつまいもの時は秋だったからなあ?」

「うん、秋だったしねえ?」

 彩都が出した懐かしい話に笑いが上がる中、透が真剣な顔で。

「和樹、味は大丈夫だったか?」

「お、俺が見てた限りでは問題なかったはずだよ」

「失礼ねアンタ達!あたしだって成長してるわ!」

 おずおずと答えた和樹に食ってかかった美里特製の、おにぎりと茹で卵と言う僕らの軽食の定番だった。

 

 

 そんな、まるでIFルートかのような1日を過ごしてから,さらに数日後。

 

 夏休みも後少しと言うところで……。

 

 

「いやー,いろいろなマナーがあるねぇ」

「まあ、最近は日本食のお店があったりとかでそこまでうるさくは無いと思うけど」

 飛行機の中、持ち込んでいた本を読み込み、内容を頭に叩き込む。

 郷に入りては郷に従え…と言う諺もあるように,フランスでの常識やマナーを知っておくことに越したことはない。

「でも、デュノア社にいくんだし多少はね」

 何より、変な事をして彼女に恥をかかせるわけにはいかないと、腹を括る僕の隣で。

 

「………」

 シャルロットはその顔を青くしていた。

 

sideシャルロット

「……大丈夫?なんか顔色悪いけど」

「え?そんな事ないよ……」

 流良の不安げな顔に慌ててかぶりを振るが、僕の内心は穏やかじゃなかった。

 デュノア社が近づいてくると思うと……あの日々が次々と蘇ってくるのだ。

 心をすり減らし、泥棒猫の娘と睨まれ。

 

 貞操の危機も迎えて……誰の助けもなく、壊れそうだったあの日々が。

 そうして深く沈んでいこうとした思考は、温かい感触がつなぎ止める。

 

「……深くは聞かないけど,忘れないで。もう、君は1人じゃ無いよ」

 

 いつの間にか身につけた,落ち着きを纏った微笑みを向けていた。

 

「……うん」

 その笑みに毒気を抜かれたように、緊張がほぐれていく。

「ありがとね、流良…」

 ほぐれた体は自然と隣にいる彼に委ねていた。

「………なに、どうしたの?」

 そうだ。僕はもう1人じゃない。

「ごめん。少しだけこのままでいてほしいな…」

「え?う、うん……」

 そう、僕の心の中にはいつも君がいてくれるから。

 

side流良

 今回フランスに行ったのは,メインこそ旅行だが……ただ旅行に行くだけじゃない。

 

 前回の襲撃で専用のカスタムリヴァイヴが大破した事を受け、オーバーホールの必要性があり、それによりデュノア社からの呼び出しを受けたんだとか。

 で、幸か不幸か僕らの旅行とタイミングが被ったため、僕はシャルロットの護衛としてデュノア社に向かうことになって今に至るんだけど……。

 

「あのー、やたらと近くないですか?」

「何を言う!このジェームズ。貴様が我が未来の主君たるお嬢様の相手としてふさわしいか見極めようと言うのに!」

 リムジンの中、初老の執事がさっきからうるさいのだ。

「お嬢様なんてガラじゃないよ,落ち着いて…!」

「え?ちょっと待って下さい、そんな大事に?」

「何をぉ⁉︎貴様,お嬢様とは遊びのつもりだったと言うのか⁉︎」

「それができるほど薄情なら,ここまで付き添いませんよ」

 と言うかそもそも、彼女の人生を弄んだデュノア社の人達が言えたセリフじゃないだろう。

 

 暗殺の危機があったとは言え……親を亡くし,犯されそうになったのを放置し,捨て駒にしようとしたことを棚にあげていい理由なんてあっちゃいけないのだ。

「それに、彼女がどんな思いで生きてきたか、誰も気にもしなかったクセに……」

「……痛いところをついてくれる」

「流良…?その,僕はもう気にしてないから、ね?」

 忸怩たる表情をするジェームスに、表情を翳らせるシャルロット。

 

 そんな最悪な空気を生み出してしまった事を少し後悔しつつ、せめてこの訪問で、少しは変わる事を願わずにはいられなかった。

 

sideシャルロット 

 デュノア社の本社に着いた僕達は、早速試験用アリーナに通される。

 

 そして社長……つまり父から放たれた言葉は、強烈な拒否反応を及ばすには十分すぎた。

 

「乗り換えって………僕はリヴァイヴを降りるつもりはありません!」

 僕達が呼ばれた理由とは,表向きはリヴァイヴの修理と報告だったが……その実、第3世代機の受領が目的だったのだ。

 

 だが、苦楽を共にした相棒であり……もう,自分の一部と言っても過言ではないリヴァイヴを取り上げられるなんてことを、はいそうですかとすんなり受け入れられはしない。

「お前の意見など聞いていない。これはもう決まった事だ」

 

 だが、その意志は無用と言わんばかりの頭ごなしに、ミハエルのことで見直しかけていた情は無駄だったと悟る。

 

「……あなたはいつもそうやって!

 

リヴァイヴの事や……母のことも、あなたは何もわかってない!」

 冷静でなければいけないとわかっていても,流石にこれ以上冷静ではいられない。

 

「行こう、流良。時間の無駄だったよ」

 流良の手を引いて,アリーナから出ようとしたが……彼は静かに首を横に振った。

 

side流良

「‥‥悪いけど、これに関しては僕も乗り換えた方がいいと思うよ」

 シャルロットの気持ちはわかる。

 でも……だからといってこのままでいいとは,どうしても思えなかった。

「そんな…!」

「これから先,AISFみたいな組織がまた襲ってくるかもしれない……製造元の前で言うのもアレだけど、リヴァイヴじゃキツすぎる」

 ストライクで負けたあの3機や、銀の福音……アスラ達が捨て身で倒した黒いゴーレム。

 

 アレらの敵がまた現れた時、技量ありきの低スペック機で味方されても‥むしろ不安しかない。

 

「……なかなかの慧眼だな。代表候補生でもないのに」

 カチンときた様子のフランス代表候補生を制して、その言葉も否定した。

「そんなんじゃないです……ただ」

「ただ、なんだね?」

 アルベルトさんの言葉に僕は苦いものを思い出してこぼす。

「もう、誰も殺したくないし……目の前で死んでほしくないだけです」

 そして,何より……他の誰かがそんな目に遭うなんて堪えられない。

 

 だから僕は戻った。

 

 この戦場に。

 

 しばらくの沈黙の後、アルベルトさんはため息をついて。

 

 

「………では、こうしよう」

 

 ある条件を提示してきた。

 

 

 

 

「今から最新鋭機2機との模擬戦を行う。

 その2機よりリヴァイヴの方が戦闘力が上だと証明できるのなら、今まで通りの無茶を許そう。

 ただ,できなかった場合はこちらで選出した方を受領してもらうぞ」

 嬉し恥ずかしの初デートが、なんでこんなことになったのやら。

 

 

 デュノア社のコンペを観戦することになった僕は、やる気満々と言わんばかりのシャルロットの方ではなく……アルベルトさんの方にいた。

 

「君に見せたいものがある」と言われ、なぜ僕にと思いながらついて行ったが……その理由が明かされた今,確かにこれは僕に見せるものだと確信できた。

 

「……こっちは、君に託そうと思っていた」

 

 その機体は、見た目のベースこそリヴァイヴだが……ところどころにストライクのパーツが散見される。

「モルゲンレーテと共同開発した、完全なISとして設計したストライク。

 

 名はストライク・ラファールと付けている」

 

 渡された電子端末には機体のスペックが映される。

 この機体は、言ってしまうとリヴァイヴのパーツ構成をしたストライクであり……PS装甲の通電箇所の削減による継続時間の向上や、リヴァイヴのバススロットの追加による、より極まった汎用性の確保に成功している。

 

 そして,ビーム兵器はカートリッジ式にする事でシールドエネルギーを消費しない仕様となり……正に、ストライクとリヴァイヴの融合と言った感じだ。

 

「でも、僕にはもうフリーダムがありますし」

「分かっている。だからシャルロットの新たなる機体の一つとして用意した。

 そして、もう一機は「コスモス」……我が社がようやく開発した、第3世代機だな」

 

 もう一つのデータを読み込ませると、そこにはリヴァイヴを順当に強化させた第3世代機である「コスモス」が表示される。

 

 コスモスの特徴としては「強化されたリヴァイヴ」であり、既存技術の組み合わせで拡張性を高めた「ストライクラファール」と違い、最新技術の試験評価機と言う印象が強い。

 

 第3世代兵器「《花びらの誘い》"ル・ブクリエ・デ・ぺタラ"」は、実弾兵器を受け流すエネルギーシールドを、花びらのように展開している。

 

 更にはハイブリッド・ロングライフル「ヴァーチェ」はエネルギー弾と実弾を組み合わせた射撃を行うPS装甲を意識したかのような武装だ。

 

「でも、兵器にコスモスって…」

「フリーダムのパイロットが言うのはどうかと思うが……まあ、らしくはないだろうね」

 そう言われればそうだが……それまでの機体と明らかに名前の意匠が異なってる気がしたのだ。

 

「…コスモスは,シャルロットの本当の母親が好きだった花なのだ」

「でも、それって……」

 その意図をなんとなく察するが、その意図がもたらすものに待ったをかけないわけにはいかない。

 

「今のご夫人の神経を逆撫でしてしまうんじゃ……」

 昔の女を引きずってると思われても仕方ない行為だし……それでシャルロットへの風当たりがさらにキツくなりはしないだろうか?

 

 だが、アルベルトさんは分かっていると前置きした上で。

「ロゼンタにはこの真意を話してはいない。

 そして,シャルロットの本心はともかく‥私はこの機体を彼女に渡す事で、少しでも詫びになればと思っている」

 どこか苦しげに語っているけど、それをなんで言ってあげないんだ……。

 

 歪な感じを覚える僕に、社長は話は終わりだと背を向けて。

「………では、君の健闘を祈るよ」

「え?」

「ここまで企業の極秘情報を,タダで開示すると思うかね?

 それに……ストライクの名を冠するISを出すのなら、まずは君のデータがなくてはな」

………ついでに,とんでもないこと言い出したなこの人!

 

 

 sideシャルロット

 

「……何の用でしょうか」

 模擬戦に向け、リヴァイヴの最終調整を進めていた僕の元に、予想外の人物が顔を見せた。

 

 それはロゼンタ・デュノア。

 現社長の本妻であり…戸籍上は継母ということになる。

 

 そして‥‥この人との接点は今までほとんどなかったものの、その数少ない接点ですら,決して良いものではない。

 

「泥棒猫の娘が」と、まるで汚いものを見るような目と共に放たれた拳は今でも覚えてる。

 

 苦い記憶に沈む心をなんとか落ち着かせ、本題を促すと彼女は意を決したように。

「………あの時はごめんなさい。

 あなたに罪はないのに…‥どうかしていたわ」

 

 深々と頭を下げてきた。

 

「………は?」

「‥‥無理もないわね。あんな事してしまった後にこれなんですもの」

「社長から何か命じられたんですか?」

「いいえ……これは私個人の意思よ」

 

 その光景があまりにも予想外で、思わず勘繰ってしまうが……どうやら本当に違うらしい。

 

「でも,なぜこんな時に……社長にも言いましたけど、僕はリヴァイヴを降りるつもりはありません」

 とりあえず,釘を刺しておくと夫人の顔は無理もないと言いたげだが、これだけは伝えたいと言う顔で。

 

「私としては複雑だけど………少しだけでいいから、あの人の気持ちも考えてあげて。

最新鋭機の一つに、コスモスと名付けたその意味を」

「……コスモス……」

 ただの妨害工作として割り切ろうにも……その花の名前を前にして、どうしてもそれはできなかった。

 

 

side流良

 まさか、初デート最初のイベントが初対戦だとは思わなかった。

「……流良。慣れない新型かもしれないけど、今回は手加減はしてあげられないよ」

「OSはストライクの時のやつに書き換えてあるから,そこまで気にはしてない……」

 やむなくストライクラファールを装着した僕は、リヴァイヴを装着したシャルロットと向かい合うが…セリフとは裏腹に心なしか、彼女の顔は迷いを孕んでいる。

 

「それに……大丈夫なの?なんか顔が暗いよ」

 それを指摘すると、いつもより張り詰めた声で否定した。

「そんな事ないよ……それに、今回ばかりは譲れないんだ。

 

 たとえ流良が相手でも……負けられないからね」

 そして、それを気に病めるほど相手は弱くないし甘くもない。

 

 だが……彼女を危険な目に合わせたくない以上、こっちだって勝たなければいけないのだ。

 

「僕だって同じだ。その為に今は……」

 

 試合開始を告げるカウントが近づくのを耳にして、お互いの意地がぶつかり合う音がする。

 

 そして,そのカウントがいっぱいになった時。

 

 

「「君を撃つ!」」

 

 奇しくも同じセリフで、互いに向けて得物を構えた。




いかがでしたか?

今回も新機体の設定をまた。

ストライク・ラファール
和名 攻撃(疾風)
型式 SR-01
所属 フランス
分類 換装型万能機
世代 第3世代
装甲 PS装甲
衝撃吸収性サードグリッド装甲
武装
カートリッジ式ビームナイフ×2
カートリッジ式ビームライフル×1
耐ビームコーティングシールド×1
胸部バルカン
大容量小型コンデンサー×1
腕部エネルギーパック×4
仕様
大容量バススロット(高速化処理)
マルチウェポンラック
ストライカーパックシステム

 フランスのデュノア社がモルゲンレーテの技術を参考にして開発した、リヴァイヴとストライクのコンセプトを受け継いだ「デュノア社版ストライク」。
 リヴァイヴをベースとしつつ、動きに合わせた装甲分割による運動性の向上や、PS装甲の搭載による防御力の向上など、ストライクの血を感じさせる。
 また、装甲で覆う面積が少なくなったことによる、PS装甲使用時の電力消費の軽減が施されており、ストライク以上の航続時間を確保することに成功している他、カートリッジ式のビーム兵器の搭載により、機体の電力消費を克服とPS装甲への対策の両立を可能とする。
 尚、モルゲンレーテ製のストライカーパックも使用可能だが、主に専用の「ラファール・ストライカー」を基本装備としている。
本来はストライクが大破した流良を取り込むための新たな専用機として用意していたが、フリーダムを受領した事でシャルロットの新たな専用機候補となった。

ラファール・ストライカー
武装
アサルトライフル「ヴェント」
アサルトカノン「ガルム」
パイルバンカー「灰色の鱗殻」
ビームサブマシンガン「グレイン」
腕部装備型物理シールド
近接ブレード「ブレッド・スライサー」
その他多数
ストライクラファール用に開発されたストライカーパック。
「ラファール・リヴァイヴ・カスタムⅡ」を装備にした形となり、シャルロットの搭乗を前提にしている。ストライカーパックシステムの運用方針における本家ストライクとの違いを表すパックである。

まあ,要はISっぽくなったストライクみたいなイメージですね。

次回から亡国興業のキャラをちょこちょこ出していこうかと思いますので,どうぞよしなに。
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