IS+1(インフィニット・ストラトス・プラスワン)   作:暇人の鑑

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はい、第5話です。

今回はちょっとしたインターバルみたいな感じですな。


第5話 IS操縦はどう育てるか

「ではこれより、ISの基本的な飛行操縦を実践してもらう。織斑、オルコット、輝戸。試しに飛んでみせろ」 

 

 遅咲きの桜もほとんど散り、初夏の風が吹き始めた頃。

 

 僕は今日もIS学園の1年生として、授業を受けていた。

 

「早くしろ。熟練の操縦者なら展開まで1秒もかからないぞ」

 

 急かされて、意識を集中する。

 

 ISは、フィッティングをすると、操縦者の体にアクセサリーの形で待機している。

 

 例えばセシリアなら左耳のイヤーカフスだし、一夏は右腕のガントレッド。僕のは青い十字架のペンダントだった。

 

 別にクリスチャンじゃないんだし、僕も一夏のみたいなタイプが良かったけど、まあ仕方ない。

 

 頭の中でストライクの姿をイメージして……よし。

 

(ストライク、行きます)

 声に出さずに念じた言葉が、十字架を激しく光らせて…やがて、僕の身体には、グレーと黒の装甲が所狭しと付けられていた。

 

 PS装甲が展開していない、この状態はディアクティブ・モードと呼ばれており、ビーム兵器が使えないのである。

 

「よし、飛べ」

 PS装甲を展開し、いつものトリコロールカラーにしたところで、セシリアが先に急上昇して、遥か頭上で静止する。

 

それを見てから僕は軽く屈んでから、ジャンプするイメージで一気にバーニアを噴射する。

 

 そして、セシリアと同じくらいの高度まで行ったところで機体をホバリングさせた。

 

 最後に一夏の番となり、昨日習った「急上昇」を行なったが、そのスピードはストライクよりは早いものの、ブルーティアーズよりは遅かった。

「何をやっている。スペック上では白式はその3機の中で一番出力は上だぞ」

 

「そうは言っても、『自分の前方に角錐を展開させるイメージ』なんて出来ないって。

 流良はなんでできるんだよ?」

「いや、僕は高くジャンプするイメージでやってるから…」

 通信回線でぼやく一夏に返しているとセシリアがこちらにやってきて。

「イメージは所詮イメージですわ。自分がやりやすい方法でやるのが一番でしてよ」

「そうは言うけどなぁ。大体、空を飛ぶ感覚自体があやふやなんだよ。なんで浮いてるんだよ?これ」

 確かに、言われてみると不思議だ。

 

「説明しても構いませんが、長くなりますわよ?反重力力翼と流動波干渉の話になりますわよ」

「わかった。説明はしてくれなくて良い。多分覚えられないから……」

「ふふっ、それは残念ですわね」

「兎に角今はよくわかんないけどなんか飛べる、ってことで良いじゃない?細かいことは後で覚えれば良いし」

「ですが、よろしければ放課後に指導して差し上げますわ。なんなら2人きりで……」

と、3人で通信していたところにいきなり割り込んでくる声がした。

 

「3人とも何をしている!早く降りてこい!」

 山田先生からインカムを奪ったらしい箒のものだ。

 

 因みになんでその様子がわかるかといえば…

「ハイパーセンサーの調子は良好みたいだね」

 ISに搭載されているセンサーが視覚を補正してくれてるからだ。

 

「それでも機能制限がかかってるんでしてよ。元々ISは宇宙空間での稼働が想定のもの。この程度は見えてあたりまえですわ」

「へー。なるほどな」

「よかった、セシリアが普通の説明ができる人で…」

「篠ノ之さんのに比べたら誰だってそうなりますわよ」

 

 セシリアの説明に一夏が頷いている。

……まあ、説明に関しては箒のがアレすぎただけだけど。

「グッ、とする感じだ」「どんっ、と言う感覚だ」「ずかーん、と言う具合だ」

 

 元工業学生から言わせると、「ふざけるな」としか言えない説明だが、これを大真面目にやってくるのだから困った話である。

 

「アレでよくここに入れたもんだ…」

一夏に僕とセシリアが頷いていると、織斑先生の咳払いが入る。

 

「どうやら飛ぶのは出来たようだな。

 それでは急降下と完全停止をやってみせろ。目標は地上から10センチだ」

「了解です。ではお二人とも、お先に」

 すぐに返答したセシリアは、手本だと言わんばかりに地上に向かった。

 ぐんぐんと小さくなっていくが、あんな速度で事故ったりしないのか心配になる。

 

「へえ、うまいもんだなあ」

「だねえ」

 

 だが、さすがは代表候補生と言うべきか。

 完全停止まで難なくクリアした。

「よし、次は俺が……!」

 

 「背中の翼状の突起から、ロケットファイアーが噴出しているイメージを思い浮かべ、それを傾けて一気に地上へ降下する」

 これが教科書にあった急降下のイメージだ……まあ、ストライクにはそんなものがない訳だが。

 そう考えると、つくづく教科書泣かせな機体だなあと考えていたら、かなりの勢いの激突音が下から聞こえてきた。

 

「アレは墜落じゃないかな」

 どうやら怪我はしてないみたいだが、クスクス笑いに凹んでいるようだ。

 

「間抜けは気にするな。お前も早く降りてこい」

「わかりました」

 実の弟に対するドライな反応に若干引きつつも、言われた通りに急降下を行う。

 

 ストライクの場合はバーニアの噴射を切って地面に垂直落下し、地表に近づいてきたところで足裏のバーニアをまた一気に噴射。

 それで制動をかけて……よし、なんとか11センチあたりで止められた。

 

 とりあえず安堵する僕に、織斑先生がため息をつきながら。

「それは急降下と言うより自由落下だ。もっと早く降りられるようにしておけ。

墜落よりはマシだが、それでは良い的だ」

「そうは言いますけど、ストライクのバーニアって下方向へ噴射できるのがないんですが…」

「……ったく。面倒なISをよこしおって…」

 そんな文句はモルゲンレーテに言ってくれと思うが、口に出しても封殺されるのがオチなので何も言うまい。

 

 兎に角、墜落した一夏の様子を見にいくと、箒とセシリアが火花を散らしている。

 

 あの試合の後から、どうやらセシリアは一夏に恋をしたらしく、箒とはよく張り合うようになったのだ。

 因みに僕は2人から「他の女子が一夏(さん)に好意を向けないように、もっと頑張ってくれ」と言われたが、そんなの知った事ではない。

 

 そんな2人を押し退けた織斑先生が、立ち上がった一夏に武装を展開するように指示した。

 

 その指示に従い、突き出した右腕を左手で握った一夏の手の平から光が放出し、やがて一本の刀となった。

 

「遅い。0.5秒で出せるようになれ」

 初心者にも容赦のない織斑先生の一言にガクッときている一夏から、今度はセシリアが武装の展開を行う。

 

 左手を肩の高さまで上げ、真横に腕を突き出すと、一夏みたいな光の奔流ではなく、一瞬の爆発的な光でその手には狙撃銃が握られていた。

 

 さらには、視線を送る事でセーフティーが外れる。1秒とたたずに展開、射撃可能まで完了した。

 

 これには流石の織斑先生も…

「流石だな。ただし、そのポーズはやめろ。横に向かって銃身を展開させて誰を撃つ気だ。正面に展開できるようにするんだ」

 

 褒めるかと思えば注意が飛んできた。

 しかも、反論をひと睨みで黙らせるおまけつきである。

 

 で、次は近接装備の展開を指示されたが……

 

「えっ?あっ、はい……」

 頭の中で文句でも言ってたのか、いきなり振られた会話にびっくりしたのか、反応が鈍い。

 銃器を光の粒子に変換…『収納(クローズ)』して、新たに近接用の武器を『展開(オープン)』。

……しようとしたが、掌の光はなかなか像を結ばず、くるくると空中を彷徨う。

 

「まだか?」

「す、すぐです……ああっ、もう!《インターセプター》!」

 それに焦れたのか、武器の名前を半ばやけくそ気味に叫び、それによりイメージはまとまったのか、光はナイフ状の武器として構成された。

 

 だが、確かその方法は教科書の頭の方に書かれている、いわゆる初心者用のやり方だ。

 それをわかっているのか、セシリアは屈辱的な顔をしていた。

「何秒かかっている。お前は実戦でも相手に待ってもらうのか?」

「じ、実戦では近接の間合いに入らせません!問題ありませんわ!」

「ほう?織斑や輝戸との対戦では、初心者相手に簡単に懐を許していたようだが?」

「あ、アレはその……」

 

「なあ、俺初めて褒められたかも」

「それで良いの…?」

「いや、普段お叱りばっかりだから…」

 

と、一夏とその様子を見ながら話していると、今度は僕に。

「次はお前だ、輝戸。武装を展開しろ」

「はい」

 そう言われたので、ビームライフルを展開する。

 

「………」

一夏の驚きの視線を横から受けていると、今度は近接武装の展開か……よし。

「その腰のナイフはなしだ」

 先手を打たれてしまった。まあ、これはイメージの必要がないか。

 なら……

 

 頭の中でコマンドを思い浮かべ、僕はストライカーパックの一つである「エール・ストライカー」を装備した。

 

 そして、ライフルを腰にマウントし、背中にある近接武装「ビームサーベル」を引き抜いてスイッチを入れる。

 

 すると、某映画のライトセイバーよろしく、放出口からビームが出力されて展開完了だ。

 

 それを終えた僕は、今度はセシリアからの驚きの視線を受け、織斑先生からは。

 

「ISにおちょくられるのは初めてだが、展開速度は大したものだ……お前たちもこれくらいできるようになれ」

 

 と、何気に僕も、初めて褒められたのであった。

 

 まあ、なぜか一夏と一緒にその後グラウンドの整備をやらされたけど。

 

 

授業が全て終わり、放課後。

「へー…。すごいなコレ。ほとんどストライクそのままだ」

 一夏が、机の上にある人形を前に感想を述べている。

 その人形とは、モルゲンレーテから渡されたストライクのプラモデルの完成品だ。

 

「実機とパーツ構成がほぼ同じらしいから、コレでどう動くのかが分かるし、武装のイメージもやりやすくなるんだよ」

「しっかり塗装もしてある……なんか、俺もプラモデルやってみようかなー」

「ぐぬぬ……で、ですが!模型があったとは言えあんなに早く展開できるはずがありませんわ!」

 インターセプターの一件が悔しかったらしく、セシリアが食ってかかる。

 

 コレを見せたのもそれが大元の理由だが、それに関しては。

「先輩達から格闘ゲームのコマンドみたく考えると良いって教えてもらったんだ。あとはひたすらシュミレーションさ」

 やって来た整備室にある、シュミレーターを指差しながら返した。

OSの調整をしていた時に、整備室にいた先輩たちに教えてもらったのだ。

 で、後はひたすら反復練習をした成果である。

 

 と、ここまで話すと一夏は神妙な顔で。

「なあ、今度そのやり方俺にも教えてくれよ。なんかそっちの方がやりやすそうだ」

 すると……いや、ある意味当たり前なのか、箒とセシリアがガタンッと立ち上がり。

「なっ、一夏⁉︎私の教えが不満だと言うのか⁉︎」

「そうですわ!代表候補生たるわたくしのコーチングが、そんなお遊びみたいな覚え方に負けるのは納得いかなくてよ!」

 それで育った僕が目の前にいるのに失礼な話である。

「いや、なんかそのやり方が一番俺にあってる気がして……」

 

 迫られた一夏の言葉により、2人してセシリアと箒によるIS講座を聞かされる事になったのは、そのすぐ後のことだった。

 

 

「……うん、良い感じに飛んでる」

 

 あの後、門限ギリギリまで電子工作をしていた僕は、その成果を眺めて1人呟く。

 

 前から作りたかったロボット鳥を、やっとのことで完成させたのだ。

「モルゲンレーテのドローンの技術を見せてもらったのが大きいかも」

 

 ISを動かせてから、女子に囲まれ、授業と訓練ばかりの毎日だが…こう言う面での恩恵は、中々にありがたいものだ。

 

 初めてここに来てよかったとさえ思いながら、「織斑一夏クラス代表就任歓迎会」とやらに誘われてたので、ロボット鳥の「トリィ」を呼び戻し、気持ち急いで寮に戻っていると。

 

 

「ねえ、アンタここの生徒でしょ?総合受付って所に案内してくれない?」

 

 ボストンバックを片手に持った女子に、いきなり道案内を頼まれた。




いかがでしたか?
次回は鈴の本格参戦となります。

お楽しみに!
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