IS+1(インフィニット・ストラトス・プラスワン)   作:暇人の鑑

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第6話です。


第6話 嵐を呼ぶ女孩

「随分と遅かったな。どうしたのだ?」

「いや、転校生の道案内をしてたんだけどね…」

 一夏のクラス代表就任パーティー会場は、なぜか他のクラスの女子まで交えたものとなっており。

 そのついでに質問攻めにあった事でどっと疲れた僕は、同じく少し疲れた様子の箒と、人だかりから少し離れた所で話していた。

 

 その表情はどこか面白くなさそうで……まあ、愛しの一夏は女子に囲まれてるんだから当然か。

 

「その……代表候補生って癖が強いのしかいないのかなって」

「何があったと言うんだ……」

 頭にはてなを浮かべる箒を横目に、先ほどのことを思い出していた。

 

 

 

「転校生?地図とか持ってないの?」

「そんな焦れったいことしたくないから、アンタに案内してもらおうってわけよ」

「はぁ……まあ、良いけどさ」

 

そう話す女子の風貌は、一見すると日本人に似ているが、よく見ると目の当たりが中国人のそれである。

 

 とは言え、言葉の節々から感じるのは……なんというか、初対面の時のセシリアと似たようなものを感じた。

 

 そうなるとやることは一つ。さっさと案内して別れることだ。

 

 

 そんな訳で、さっさと学園に案内しようとすると。

「……!」

「ちょ、どうしたのさ急に?そっちは総合案内じゃ……」

 一夏を見て急に走り出したかと思えば、機嫌が悪くなり。

 

 総合案内に案内したかと思えば、クラス代表交代の交渉をするとか、物騒なことを言い出して去っていったのだ。

 

「まあ、どうせ一夏の知り合いっぽいからそこまで気にしなくても良いかな…」

「待て、一夏の知り合いだと?それについて詳しく…」

 

 ハーレムラブコメの主人公みたいな事になっている、目の前の男に想いを馳せつつ、僕はカップ麺の蓋を開けた。

 

 なんだかんだで、夕飯を食べ損ねたからだ。

 

 

 

 

 翌日。

「おはよう2人とも。ねえ、転校生の噂聞いた?」

 教室に入ってきた僕と一夏に、クラスメイトが話しかけて来た。

 

「昨日それっぽい子に道案内したから知ってるけど……」

「今の時期ってのが変だよな。ここって転入条件が厳しかったはずだろ?」

 一夏が、怪訝な顔をして聞き返す。

 

 実際、ここへ転入しようとすれば、国の推薦が必要になるのだ。

 

 つまり、その噂の転入生は……

 

「代表候補生でも来るのかな?」

「うん。中国のだってさ」

「ふーん…」

 

 国からその将来を見込まれて、技術習得のために送り込まれた、代表候補生のパターンがほとんどらしい。

 

「てことは、やっぱりあの子か……」

「朝言ってたやつか?」

 

 僕から昨日の子の話を聞いた一夏が、覚えでもありそうな顔で話そうとした時、箒が。

 

 

「そんなこと気にしても仕方ないだろう?このクラスに転入してくるわけでもあるまい。

 

 そもそも、今のお前にそんな余裕があるのか?来月にはクラス代表対抗戦があるんだぞ」

 

 面白くなさそうな顔で、一夏のそばにやって来た。 

「そう!そうですわ!そうとなれば、今日からはより実践的な訓練をいたしましょう。

 心配なさらなくても、このわたくしが相手なら優勝間違いなしでしてよ!

 何せ、クラスでは専用機を持ち、尚且つ一番その経験が豊富なのはこのわたくしなのですから!」

 更には、セシリアも興奮した様子で胸を張る。

 

 因みにクラス代表戦とは、その名の通りクラス代表による一対一での試合を行うイベントのことであり、優勝したクラスには、半年の間、学食デザートのフリーパスがもらえるという話である。

 

 コレは、確かに女子なら欲しくなる内容だけど……。

「正直、僕らにメリットあまりないような…」

「まあ、俺もあんまり間食はしないからなあ…」

 

 僕らからすれば、あまり魅力的に映らない。

 寧ろ、単位の一つでもくれた方がありがたい話である。

 

 と、そんな訳であまり乗り気じゃない僕らだが、そんな少数派の意見はこの場では無力であり。

「まあ、やるだけやってみるか」

「そんな弱気では困りますわ!一夏さんには勝っていただきませんと!」

「そうだぞ。男たるものもっと強気にいけ」

「そんなこと言わずに!織斑君が勝てばみんなが幸せなんだから〜」

 

 セシリア、箒、クラスメイトによる数の暴力に封殺されていた。

 

「でも、そう考えるとうちのクラスって専用気持ちが多いよね。

 

 他のクラスにいなかったら、圧倒的な出来レースじゃない?」

 そんな中で、僕がふとこぼした疑問に女子一同がハッとしたように。

 

「そうじゃんそうじゃん!今のところ専用機を持ってるクラス代表って、1組と4組だけだから余裕じゃない⁉︎」

「うんうん!コレならフリーパスもいただきだね!」

 

 と、更なる話題沸騰になりそうな所に。

 

 

 

「その情報、古いよ」

 

 なんだか昨日聞いたような声が、クラスの入り口から聞こえて来た。

 

 

 視線を向けると、やはり昨日会ったあの転校生の子だ。

「2組も専用機持ちがクラス代表になったの。そう簡単には優勝できないから」

 腕を組み、片膝を立ててドアにもたれていたのは………

 

 そういや、名前聞いてなかった。

「鈴……?お前、鈴か?」

 そんな僕の失念をサポートしてくれたのは、我らが1組のクラス代表様だ。

 

「そうよ。中国代表候補生、凰鈴音(ファン・リンイン)。今日はその宣戦布告に来たってわけ」

 で、二組のクラス代表としてやって来たあの転校生が、フッと気取った笑みを…。

 

「何格好つけてるんだ?すげえ似合わないぞ」

「んなっ…⁉︎なんて事言うのよ、アンタは‼︎」

 浮かべていた所、一夏に速攻でメッキを剥がされていた。

 

 と、そんなこんなで騒いでいるが……お忘れだろうか。

 

 SHRの時間にやってくる、一年一組の黒い悪魔の存在を。

 

 そして、悪魔は転校生だろうと…

「おい」

「何よ⁉︎」

 バシンッ!

 お馴染み出席簿アタックを食らわせる程、容赦というものを知らない事を。

 

「もうSHRの時間だ。教室に戻れ」

「ち、千冬さん……」

「織斑先生と呼べ。さっさと戻れ、そして入り口を塞ぐな。邪魔だ」

 

 どうやら、あの2人も面識があるらしい……まあ、一夏の知り合いらしいから、当然と言えば当然の話だ。

「また後で来るからね!逃げないでよ、一夏‼︎」

「さっさと戻れ」

「は、はい!」

 

 そんな訳で、二組に戻って行った凰を見送った僕ら一組。

 

「あの子がその代表候補生だったんだ。まあ、さっきの話の流れならそうなるよね」

「さっきの話の子、鈴のことだったんだな。てか、IS操縦者なんて初めて知った」

 嵐のような登場と退場に唖然とした空気をなんとかすべく、適当に話題を振ってみたが……それが不味かった。

 

「……一夏、今のは誰だ⁉︎知り合いか?偉く親しそうだったな?」

「い、一夏さん⁉︎あの子とはどう言う関係で⁉︎」

 

 と、クラスメイトからの質問集中砲火を……

 

「席につけ、馬鹿ども」

 モグラ叩きがごとく、織斑先生の出席簿がみんなの頭に炸裂していった。

 

 コレでクラス内で食らってないのは僕だけだが……まあ、当然だ。

 

 君子危うきに近寄らず、触らぬ魔神に祟りなし、と……。

 

 バシンッ!

 

「……さて、このクラス全員の共通項ができたところで、SHRを始めるぞ」

「……‼︎………‼︎」

 

 とりあえず、とてつもなく痛かった。

 

 

 

 昼休み。

「お前等のせいだ!」

「あなた達のせいですわ!」

 凰の登場によるものか、山田先生に5回注意され、織斑先生の出席簿を3回も食らった箒とセシリアが、開口一番文句をつけて来た。 

 

「幼なじみが転入して来たなんて、漫画やアニメじゃそう珍しくもないよ」

「全くだ……まあ、話なら飯食いながら聞くから。とりあえず学食行こうぜ」

 

 一夏の促しに、仕方ないと言いながらも頬が緩む2人と、その他クラスメイト数名での大所帯で学食に移動し、各々券売機で食券を買う。

 

 そうして買った、ポークカレーの食券をおばちゃんに渡すべく、列に並ぼうとした時。

 

「待ってたわよ、一夏!」

 

 と、早速噂の凰鈴音が、ドーンと言う擬音でも着きそうな感じで、待ち伏せていた。

 

 

「………うどん伸びちゃうよ?」

「わかっている。だが…」

「目が離せませんわ…!」

 

 きつねうどんと洋食ランチに手をつけず、再会に話を咲かせる一夏達を見つめている箒達。

 

 そんな2人を半ば放置みたいな形で、他の女子達と同様に聞き耳を立てながら食事を食べすすめていると、もう我慢できないと言わんばかりに詰め寄った。

 

「一夏、そろそろどう言う関係か説明して欲しいのだが」

「そうですわ!一夏さん、まさかこちらの方と付き合ってらっしゃるの⁉︎」

 

 そんな、恋する乙女の棘のある声と、他のみんなの野次馬的な視線に、凰はワタワタと。

 

「べ、べべ、別にあたしは付き合ってる訳じゃ…」

「そうだぞ?なんでそんな話になるんだ、ただの幼なじみだよ」

 若干期待したような声を上げたが。

 

「…なんで睨んでるんだ?」

「なんでもないわよっ!」

 

 バッサリ切り捨られて、一夏は棘のある視線をもらっていた。

 

……あれ。

「幼なじみ?確か箒ともそうだったなら、面識あるんじゃないの?」

 ふと、僕は疑問を口にする。

 

「あー、小4の終わりに箒が引っ越して、小5の頭に鈴が引っ越して来たんだよ。で、中2の終わりに国に帰ったから、会うのは1年ちょっとぶりなんだ」

「へー……だから知り合いっぽかったんだ。あ、僕は輝戸流良。よろしく」

「凰鈴音よ。面倒だから鈴でいいわ。昨日はありがとね」

 一夏の補足に頷きながら、鈴と挨拶を交わす。

 よかった。最低限のコミュニケーションは取れるらしい。

 

 そんな僕らを見た一夏は、顔を顰める箒に視線を移し。

「で、こっちが箒。小学校からの幼なじみで、俺の通ってた剣術道場の娘」

「ふーん、そうなんだ」

 

 鈴はそんな箒をジロジロと見て、箒も負けじと見返している。

「初めまして、これからよろしくね」

「ああ、こちらこそ」

 そうして挨拶が交わされたが、2人の間では火花が散っているように見えた。

 

「また面白いことになって来たね」

「呑気なこと言ってる場合じゃありませんわ!

 わたくしの存在を忘れてもらっては困りますわね、凰鈴音さん?」

「誰?」

「だっ…⁉︎」

 

 水を飲む僕に突っ込みながら、セシリアも会話に入っていくが、一言で一蹴された。

 

「あたし他の国とか興味ないし。どこの誰子ちゃんかもわからないもの」

「な、な、なっ…⁉︎」

 

 僕らの時以上にそっけない反応に、怒りで顔を紅潮させていくセシリア。

「イギリス代表候補生のセシリア・オルコットですわ!わたくしあなたのような方には負けませんわよ!」

「そ。でも戦ったらあたしが勝つよ。悪いけど強いもん」

 どこからそんな自信が湧いてくるのかわからないが、妙に確信じみた言い方をしている上に、決して嫌味な感じはしない。

 

 素で、そう思っているのだろう……まあ、自信家っぽいのは初対面でなんとなく感じてたから、さもありなんといった所だ。

 

 無言で箸を止めている箒と、怒りでワナワナと震えているセシリアを横目に、食べ終わった僕は他のクラスメイト達と同じように席を立った。

 

 

 放課後。

 一夏の特訓の為、アリーナにやって来た僕は思いもしないニューカマーに面食らっていた。

 そして、それはセシリアと一夏も同じようで。

 

「打鉄?専用機じゃないよね?」

「訓練機を借りて来たんだ。……どこかおかしいか?」

「いや、おかしいって言うより…」

「どうしてここにいるんですの⁉︎」

 

 ぐぬぬと言わんばかりの歯軋りをしていた。

 そんな、貴族らしからぬセシリアに対して箒は涼しい顔で。

「一夏に頼まれたからだ。近接格闘戦の訓練が足りてないだろう。私の出番だ」

 そう言って、刀型の近接武器であるサムライブレードを装備する箒は……なんか、すごくマッチしている。

 

 因みに打鉄は日本製のISであり、安定した性能を持つガード型の機体だ。

 その操縦性から色んなところで使われており、この学園の訓練機も大体コレとのこと。

 まあ、僕としては重くて遅いからあんま好みじゃないんだけどね…。

 

 そんな打鉄を装着した箒は、一夏にその剣先を向けて。

 

「では、始めるとしよう……お前も剣を抜け」

「お、おう…」

 

 と、一夏と箒の模擬戦が始まろうとした時、セシリアが食ってかかってきた。

 

 そして、その勢いのまま2人は戦闘を始めてしまう。

 

「血の気が多い奴らだな……なあ、流良。前やってたシュミレーターのやり方教えてくれよ」

「そうだね…あの2人はしばらく放っておこう」

 

 と、そんな話をしながらピットに戻ろうとしたその時だった。

 

「……輝戸?抜け駆けとはいい度胸だな」

「一夏さんも一夏さんですわ!なんで私達じゃなくて流良さんに…そこはこちらから1人選ぶ流れでしょう⁉︎」

 

 と、先ほどまで戦闘をしてたとは思えないような息の合い様を見せて、僕らの前に立ち塞がる。

「いや、そもそも思い違いじゃなければ、俺が頼んだのは流良だけなんだが…そもそも、お前等どっちかに味方したら怒るだろ?」

 

 そんな2人を前にした一夏の発言により、なぜか2on2のタッグバトルが始まってしまうのであった。

 

 

 

 そんな、新たな仲間を加えた一年生寮の最初の夜。

「なんで膝詰めで説教なんかされたんだろ、僕…」

 セシリアの部屋にて、作戦会議という名の愚痴聞きと、抜け駆け(?)の説教を食らった僕は、自分の部屋にトボトボと帰っているところだった。

 

 にしても……あの部屋はすごい。

 ほぼ全ての家具が、全て特注品のインテリア。

 壁紙から照明まで取っ替えた、完全なお貴族様仕様だった。

 

 アレじゃあ、居住スペースのほとんどを奪われた、同室の女子が気の毒すぎるが……僕は今の個室が心地よいのでこっちに来るかい?とかはしない。

 

 そんな訳で、まずはシャワーと自室に向かう道すがら。

 

「……‼︎」

「ウワッ⁉︎」

 真正面から何かが突っ込んできたらしく、僕は尻餅をついた。

 

「ごめん、怪我は……って、鈴?」

 とりあえず、相手に怪我はないか声をかけようとしたら……目の前にいるのは例の新たな仲間。

 

 しかも……泣いてる?

「何かあったの?」

 出会ってまだ1日だが、彼女と泣くという行為のギャップを感じてしまった僕に、彼女は。

 

「……ちょっと付き合いなさい!」

 どこからそんな力が出ているのか、僕は首根っこを掴まれ、どこかに連れて行かれるのだった。

 

「はあ……」

 なんだか、ゼミでの平穏な日常が恋しくなってきたなぁ……。




いかがでしたか?

次回は1巻の終盤であるクラス代表対抗戦に入っていきます。

お楽しみに!
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