IS+1(インフィニット・ストラトス・プラスワン) 作:暇人の鑑
ここで1巻のストーリーが終わりとなります。
奇妙な胸騒ぎを覚えながら、エールストライカーを装備した「エールストライク」を展開して、僕は急いで第二アリーナに向かう。
すると、あの2機のうちの小さい方が、僕の前に立ちはだかった。
機体コードは……「UNKNOWN」としか出ない。
試合ですら1回しかないのに、いきなり初めての実戦に否応がなく高まる緊張感のなか、向こうから通信が飛んできた。
「初めまして、輝戸流良くん。
私はリディク・ル・クルーシヴル。どうやら……私が君を感じたように、君も私を感じたようだ」
「……あなたは、何を!」
その言葉に寒気のようなものを感じ、半ば振り払うように叫んだ僕に、その声の主は表情こそフルスキンのヘッドギアで見えないが、愉快そうに。
「いずれわかるさ……私は君になれなかった君であり、君は私にならなかった私なのだからな」
「……僕は僕であなたはあなただ!『なれなかった』も『ならなかった』もない!」
皮肉めいたものを滲ませながら、マシンガンを構えて迫ってきた!
side箒
「流良さん、どうして外に…⁉︎」
一夏と凰が、即席のコンビで異形のISと戦闘しているアリーナの上空では、輝戸のストライクが、もう片方の人型のISとの戦闘を繰り広げていた。
「おそらく、アリーナの外で観戦していたんだ。
だから、わたしたちのように閉じ込められることなく行動できだんだろう……」
明らかな緊急事態の中、いつも通りに冷静な千冬さんが、緊張を顔に隠さないセシリアに返す。
「ですが、不味いですよ織斑先生!織斑くんも凰さんも脱出しないで戦い出しちゃいましたし、生徒さんにもしものことがあったら……!」
山田先生が慌てふためくが、それもそうだろう。
先生達で構成された制圧部隊は、ここのアリーナにある遮断シールドの解除を行わないと援護に向かえない。
専用機持ちのセシリアがここで歯痒そうにしているのがいい証拠で……つまり、あの3人が倒してしまうか、突入まで粘るかの2つしか、選択肢はない。
「……ええい!」
いてもたってもいられず、私は管制室から飛び出していた。
side流良
マシンガンをシールドで防ぎながら放ったビームを、相手は旋回や急加速、急停止などを用いて躱す。
「動きが……うわあっ⁉︎」
「ほう……中々やるじゃないか」
その勢いで放ってきた蹴りを受けたが、スラスターを全開にして体勢を立て直し、お返しに……
「うおおおっ‼︎」
バーニアから放出しているエネルギーを取り込み、溜めを作ってから、一気に放出。その際に得られる慣性エネルギーを利用して、瞬間的に爆発的な加速を生み出す……「瞬時加速」を使い、突き放された距離を縮め。
ビームサーベルを振り下ろしたが、相手は持ち替えていた剣でそれを受けとめてくる。
その至近距離で、シールドに外付けされているガトリングを撃とうとしてきたので、咄嗟に盾を押し付けた。
相手のガトリングを潰すことには成功するが、盾はボロボロとなり、僕の腕も衝撃が響いたのか結構痛い。
「シールドエネルギーのダメージはないにしたって、衝撃がきつい…!」
ストライクの特性であるPS装甲が続く今は、実弾や物理攻撃は無力化してくれるし、盾で守ったりもしてるからシールドエネルギーの消費は殆どないが……体への衝撃に関してはそうもいかない。
さっき食らった蹴りで、危うく意識を持っていかれそうになったのだ。
ガトリングの斉射の衝撃を真っ向から受ければ、その衝撃は相当なものになる。
「ほう……中々やるじゃないか」
と、シールドをパージして、マシンガンと剣をそれぞれの腕に持った状態で迫ってくるのを、かわそうとするが……
「甘い!」
「しまった!」
左腕に装備された盾を弾き飛ばされてしまった。
この操縦者は言うまでもないが相当な実力者で、僕がここまで渡り合えてたのも、シールドの存在が大きい。
そんなシールドがなくなった今、PS装甲に頼る割合が多くなってしまい、それに使う電力が切れれば……いよいよ不味くなる。
「これならばどうかな!」
盾を失った僕に武装の切り替えはさせないと迫ってくるリディク。
それでこのままやられたら、あの変なISに加勢して、一夏達がさらに危なくなってしまうんだろう。
そんな思考の間にも、一撃離脱の動きをする向こうは、離した僕との距離を再び詰め、その速度のままに斬撃を振るおうとした時。
「ここでやられてたまるかぁ!」
僕は叫びながら、その剣を蹴り飛ばしていた。
「ぬっ⁉︎」
「まだだ!」
さらに、エールストライカーをパージして、落ちていくそれが足下にきたあたりで、それを足場にしてヘッドスライディングをするイメージでバーニアを噴射。相手に向かって突撃する。
「はあああッ‼︎」
そのまま相手の二の腕を、両腕で掴みながら、頭部バルカンを連射して……アリーナの建物の壁に叩きつけた。
すぐさまそこから飛び退き、パージしたエールストライカーを再装着。腰にマウントしていたビームライフルを構えて次の動きに備えていると、煙の中から放たれた筒には、さらなる煙が仕込まれていたらしく、僕の周りの視線は覆われてしまう。
「……待ってください!あなたは僕について何を知ってるんです⁉︎」
逃げようとしているのは予想がつくが、さっきの言葉の意味を知りたかった僕は、声を上げた。
ニュースで僕の名前と顔が世界に公開されたとはいえ、明らかにこの人は、もっと深い、僕に関する何かを知っている。
言い返しはしたが、引っ掛かってはいたのだ。
「その答えは、やがて君自らが悟るだろう……その時、君は何を思うだろうな」
だが、その煙の中から出てきた機体は、その質問に答えることなく消えた。
僕に、新たな謎を残して。
「……僕に、何があるんだ?」
side一夏
アリーナに何かがぶつかったような音がしてから少したち、千冬姉から流良がもう片方の人型のISを撤退に追い込んだと言う知らせが入った。
「なら後はこっちだけだな……」
俺と鈴の目の前には、ゴーレムと呼ばれたISが立っているが、戦っている中で変な違和感を感じていた。
「それで、アイツがどうしたのよ」
「いや、なんつーか……機械じみてないか?」
怪訝な顔をしていた鈴だが、次第にその顔は思案に耽っていく。
「…‥そういえば、さっきからあたし達が話してる時にはあんまり攻撃してこないわね」
そう、どことなく人が乗っているようには思えない行動をとってくるのだ。
「でも、あり得ないわ。ISは人が乗らないと動かない。そう言うものだもの」
確かに、教科書でも読んだ通り、ISは人が乗らないと絶対に動かない……と言うのは、あくまでその教科書を作る時点で、無人機のISが公表されてなかったってことだ。
例えば、最先端の研究でそれが解決していたとしても、それを黙っていれば、世界にはは存在しないと言うしかない。
「だから、もしも無人機だったらどうだ?」
「無人機なら勝てるって言うの?」
「ああ。人がいないなら容赦なく全力で攻撃しても大丈夫だからな」
そして、目の前の敵がその無人機だとしたら……雪片弍型の高すぎる攻撃力も遺憾無く発揮できるだろう。
それに……
「俺には策がある」
今、そいつは鼻息荒く準備を進めてくれているだろうから。
「でも、その全力にせよ策にせよ、当たらなきゃなんの意味もないわ」
「いや、当てる」
「………言い切ったわね。じゃあ、あんたのその作戦に乗ってやろうじゃない」
俺に策があると知ってか、鈴は不敵に笑った。
あれは……「もしヘマしたら、クレープ奢らせよう」って顔だ。
バイトをしている中学生から金をむしり取ろうとした悪人の顔のままだが、もう奢ることはない。
そんな訳で、俺は作戦の説明をした後、早速突撃態勢に入ろうとした時。
「一夏ぁっ‼︎」
アリーナのスピーカーから、大声が響いた。
side流良
「箒⁉︎」
アリーナの遮断シールドに空いてた穴から侵入した僕が見たのは、中継室から大声で叫ぶ箒だった。
その周りには、審判とナレーターがのびており、何か物騒な手段を使ったのだと推測できる。
「あれじゃあ、いい的だ」
何がしたいのかわからないその行動に、立ちくらみを覚えている僕の視線の先で、箒はまた叫ぶ。
「男なら………男なら、そのくらいの敵に勝てなくてなんとする!」
いや、違った。
あの焦っている表情からして、いてもいられなくて叫んだんだ。
「箒、逃げ……‼︎」
兎に角、あのゴーレムの視線を箒から逸らさないと、箒と…のびている人達が危ない。
攻撃をしてくる前になんとかしようと、ビームライフルを構えたその時。
「鈴、衝撃砲だ!」
「わ、わかったわよ!」
鈴に衝撃砲を撃つように指示した一夏が、なぜかその射線上に躍り出ていた。
side一夏
「馬鹿、何してんの?どきなさいよ!」
「いいから撃て!」
「ああもうっ……!どうなっても知らないわよ⁉︎」
文句を言いながらも、俺の指示通りに鈴が衝撃砲を放ち、その高エネルギー反応を背中に受けた俺は、「瞬時加速」を作動させる。
これの原理は、エネルギーを取り込んでから、一気に放出すること。
つまりそれは、自分でエネルギーを作らなくても、外部からのエネルギーでもいいって訳だ。
そして……その速度は使うエネルギー量に比例する。
背中にぶつかったエネルギーが、みしみしと身体を軋ませる中で…俺は加速した。
右手の雪片弍型が強く光を放つ。
それは、ひと回り大きく形成されたエネルギー状の刃の光だ。
零落白夜を使用可能という情報を、聞くまでもなく理解できる。
クリアーな五感、高解像度の意識、そしてなにより全身から感じる沸き立つような力。
「俺は守るんだ!関わるすべての人たち……皆んなを!」
そんな、想いを注ぎ込んだ『必殺の一撃』は、敵のISの右腕を切り落とした。
その後すぐに、俺に飛んでくる左拳。
さらに接触面から熱源反応。どうやらビームを叩き込むつもりらしいが……
「「一夏っ!」」
鈴と箒の声が重なるが………言っただろ?俺には考えがあるって。
俺は、視線を動かすことなくつぶやいた。
「……狙いは?」
side流良
「完璧ですわ‼︎」
よく通る声と共に、セシリアがブルー・ティアーズによる4機同時狙撃が敵ISを撃ち抜いた。
爆発と共に地上に崩れ落ちた巨兵を前に、僕は一夏の作戦をなんとなく理解する。
白式の持つ「バリアー無効攻撃」を叩き込み、シールドエネルギーを空にさせたところで、セシリアの不意打ちによる破壊を目論んだのだろう。
そんな、捨て身とも言えるような作戦を遂行したセシリアと一夏は、どうやらプライベートチャンネルで会話してるらしく、セシリアがさっきの凛とした声はどこへやら、アタフタとしている。
そんな光景を眺めつつ、終わったと胸を撫で下ろそうとしたその時。
地上から光る腕を向けていた敵を目にして、僕の中で何かが弾けたような感覚がした。
side鈴
イタチの最後っ屁というべきか、地上から一夏を狙おうと展開した無人機の腕を見て、咄嗟に庇おうとする前に、さらに上空から猛スピードで迫ってくる白い機体が見えた。
「やめろおおおおおッ‼︎」
輝戸の専用機であるストライクだが…その声はこれまでのアイツからはとても想像できないほど荒々しい。
何があったと困惑したが、その動きにはさらに困惑させられた。
輝戸の声に反応した無人機の放つビームの連射を、まるで弾道が見えているかのように速度を落とすこともせず、突撃しながら回避する。
あんなのハイパーセンサーがあっても、どれだけ機体の性能が良くても……搭乗して一年も満たないような初心者ができる芸当じゃない。
「……すごい」
「なんなんですの?アレ…」
呆気に取られている私達に構う様子もなく、勢いのまま振り下ろされたサーベルは、後ろに飛んだゴーレムの胴体を掠め、その表面に斜めの傷を作る。
だが、後退したゴーレムが反撃に移ろうとするよりも早く。
「……‼︎」
輝戸は懐に飛び込み、いつのまに持ち替えていたのか、右手に持ったナイフをその傷口に突き立てる。
ゴーレムの胸部から火花が散り、痙攣するように震えたが……やがて、糸が切れた人形のようにがくりと崩れ落ちた。
「………ふぅ」
side流良
張り詰めたような息苦しさから解放されたかと思えば、今度は質問攻めにあう。
「なんなのよさっきの動き!」
「何をしたのか説明を求めますわ!」
「いや、僕にもよくわかんないよ……なんか、種が弾けたような感覚がして、それから…」
だが…どう言うことなのか、僕もまた混乱していた。
突然何かの種が弾けたような感覚がして、その次の瞬間から、僕の五感はハイパーセンサーですら曇っていたかのようにクリアになっていた。
放ってくるビームが、その前の砲口の角度からどう撃たれるかがはっきりと見えるし……わかる。
そんな、今まで感じたことのないようない感覚のままとどめを刺したゴーレムを前に、アレはどう言うことだと詰め寄ってくる鈴やセシリア以上に困惑していると。
「……一夏!」
「そりゃそうよ!衝撃砲の最大出力を背中から受けちゃあ!」
「すぐに保健室に連れて行きますわよ!」
ばたりと言う音と共に、一夏が地面に倒れていたのを見て、僕らはすぐにそちらに駆け寄った。
「………本当になんだったんだろう、あれ」
数日後。
今回の騒動に関して、口外厳禁とのお達しが出たので、誰も言及も追求もできない状態となってから、学園内は普通の日常に戻らざるを得なかった。
「一夏さん?さあ、来月の対抗トーナメントに向けて、今回の対抗戦における反省をいたしましょう」
「待ちなさいよ!あの時一緒に組んでたのはあたしなんだから、あたしと2人っきりでやるのが筋でしょうが!」
「何を言う!ここは第三者たる私の視点からの反省を……!」
「えーっと……」
一夏の周りはさらに姦しくなり、もう来月の話を始めている。
僕なんて、自分に何が隠されているのか気が気じゃないのに……。
そんな僕の内心の葛藤は、3つの炸裂音と共に鳴りを潜めるしかなかった。
「いつまでやっている。もうSHRの時間だ」
今日もまた、IS学園の日常が始まる。
いかがでしたか?
今回新しく出てきたISの紹介をば。
シグー
和名 不明
世代 不明
国家 不明
分類 汎用型
装備 I重斬刀×1
重突撃機関砲×1
ガトリングシステム内蔵防楯×1
装甲 不明
概要
リディク・ル・クルーシヴルと名乗る人物が乗るIS。背部にある翼状のスラスターにより、高い運動性と機動性を確保している。また、全身装甲を採用しており、他のISと比べて高い防御性能を誇るがストライクのような特殊な装甲を搭載していないらしく、実弾に対してもダメージを受ける。
リディク・ル・クルーシヴル
ゴーレムと共に現れた謎の人物。声は男のものをしている。
冷静沈着ではあるが、流良がよく知らない形で流良とはなんらかの因縁を持つ。
ISに関しても高い操縦技術を持っており、代表候補生を超えている。
一応元ネタは「ラウ・ル・クルーゼ」と「シグー」です。あと、主人公の「種が割れたような感覚」も、「種割れ」を元にしています。
次回からは第2巻のストーリーが始まります。楽しみに待っていただけると幸いです。