IS+1(インフィニット・ストラトス・プラスワン) 作:暇人の鑑
ここから少しずつオリジナル展開を挟んでいこうかなと思います。
この学校のカリキュラムにおいて、一つの節目となるのが6月だ。
6月からは、本格的なISの操縦訓練が始まり……いよいよ、普通の高校との差別化が進んでゆく。
それが最も顕著に現れてるのが、6月の学年別のトーナメント戦だ。
学年の全員が参加となり、そこで将来の有望株を見つけ出したりするらしい。
1週間近くもやるって言うんだから、その大きさは破格のものだ。
で、そんなトーナメント戦において、妙な噂が出回っていた。
「ねえねえ、輝戸君。
今度のトーナメント戦で1年の優勝者が、織斑くんと付き合えるって本当?」
「へ?」
もはや溜まり場となっている整備室にて、神戸(こうど)先輩がドリンクを渡しながら放った言葉に、OSの再調整をしていた僕は思わず間の抜けた声が出てしまう。
「私も後輩の子から聞いたのよ。いいなー、私も今だけ一年生に戻りたいなー」
「いや、流石にきついわよ。一年でお肌のハリとかも変わってきちゃうんだから」
「何よ樹里(じゅり)!彼氏がいるからって余裕ぶっちゃってさ!」
愛津(まなづ)先輩が羨ましそうにため息をこぼすのを、初江(ういえ)先輩がバッサリと切り捨てていた。
それに噛み付いた愛津先輩だが、ハッとしたかと思えば。
「ねえ?輝戸君って彼女いるの?もしいないならお姉さんが立候補しちゃおっかな〜?」
「えっ?いや……」
「やめなさいよ真響(まゆら)。輝戸君困ってるでしょ!」
いきなりしなだれかかってきた所に神戸先輩がチョップを食らわせていた。
「ごめんね?この子ったら…」
「愛津先輩なら、僕みたいなのよりも、きっといい人見つかりますって…」
と言うよりこの人の場合、目が肉食獣のそれである。
「残念ね。振られちゃった」
「いや、そうじゃなくて!」
「男日照りは深刻なのよ。……でも気持ちはわかるわ。輝戸君って可愛いもの」
初江先輩がフフフと微笑むが、僕も男の端くれとしてその評価はいただけない。
「……ちょっと男としては嬉しくない評価ですよ?」
「あはは…まあ変な意味抜きでも、私達にとって可愛い後輩だからね。困ったらまた色々教えてあげるから」
まあ、この人達が僕に色々教えてくれてたのもあってあんまり強く出ることができないのが現状ってわけだ。
そんな訳で、歯がゆい気分になりながらキーボードを叩いていると。
「………ん、新しい装備の資料?」
まさに今、モルゲンレーテからのメールがやってきた。
翌日。
僕と一夏が教室に入ると、クラスの女子たちがカタログを持って話し込んでいる。
「やっぱりハヅキ社製のがいいかなぁ」
「えー?あそこのってデザインだけって感じしない?」
「そのデザインがいいの!」
「性能的に見て、私はミューレイのがいいなぁ。特にスムーズモデル」
「でも、ミューレイのって高いんだよね」
その会話の横を通りかかると、女子たちはこちらに視線を向けた。
「ねえ、織斑君と輝戸君のスーツってどこの?見たことない型だけど」
「特注品らしいな。男用のスーツがないからどこかのラボが作ったんだとさ。えーと…イングリッド社のストリートアームモデルって聞いてる」
「ふーん……輝戸君のは?」
「僕のはモルゲンレーテ社のパイロット用の試作型ノーマルスーツだよ」
「ISスーツじゃないの?」
「ISも対応してるよって話みたい。だからヘルメットもつけるし」
クラスのみんなが見ていたのはISスーツのカタログ。
今日から自分用のスーツの注文が始まったため、どれにするかを見ていたのだろう。
因みに、学校からISスーツはもらえるが、早めに自分のスタイルに合わせたものにするのが一般的らしい。
「って、そんな話はいいんだった」
「新しい装備か?」
「うん。今回は結構色々あるみたい」
「良いよなー、そんなに武器が色々あって」
やってきた山田先生が、みんなとワチャワチャしているのをBGMに、新装備のデータに目を通していると、織斑先生がやってきた。
「今日からは本格的な実践訓練を開始する。
訓練機ではあるがISを使っての授業になるので、各人気を引き締めるように。各人のISスーツが届くまでは学校指定のものを使うので忘れないようにな。忘れたら学校指定の水着、それもなければ下着で受けてもらう」
どうやら今日からISを使っての授業になるらしいが……実戦を経験した後に訓練と言うのも変な感じだ。
そもそも、できれば戦いたくなんてないのに……ただの工業学生がどうしてこうなったのやら。
どことなくアンニュイな気分でいた僕だったが。
「ええとですね!今日は転校生を紹介します。なんと二人です!」
「「「ええええええ⁉」」」
HRの音頭を任された山田先生の言葉に、クラス中から驚きの声が上がった。
だが……僕はその情報に対して、すごく変な表情を見せていることだろう。
このよくわかんない時期にくるという事は、十中八九代表候補生。
そして、僕の中で代表候補生にあまりいいイメージがわいてないからである。
だって、知ってる代表候補生がセシリアと鈴だし……。
と、どこか冷めた気分でいたが、入ってきたその姿を前に、流石の僕も目をむいた。
「失礼します」
入ってきたのは……女子ではなく男子だったのだから。
「シャルル・デュノアです。
フランスから来ました。この国では不慣れなことも多いかと思いますが、皆さんよろしくお願いします」
入ってきた転校生は2人。
そのうちの一人であるシャルルは、にこやかな顔でそう告げて、一礼した。
あっけにとられるクラス一同から、一人が男?と言葉をを漏らす。
「はい。こちらに僕と同じ境遇の方がいらっしゃると聞いて、本国より転入を……」
人懐っこそうな顔。
礼儀正しい立ち振る舞いに、中性的に整った顔立ち。
金髪を首の後ろで丁寧に束ね、華奢ともいえるほどにスマートかつ、シュッと伸びた脚が格好いい。
そんな正しく「貴公子」が、嫌みのない笑顔をたたえて現れたら、あとはもうお察しだ。
僕は、ポケットから耳栓を取り出してはめる。
数瞬の後、クラスの中心から沸き立った歓喜の叫びは、あっという間に伝播したのを、ナーフされて聞こえてくる歓声とともに感じていた。
しばらくして、織斑先生の鶴の一声で静かになった皆は、もう一人の方に視線を移す。
いや、移さざるを得なくなったという表現が正しいか。
だが気持ちはわかる。
もう一人の転校生は、見た目からしてシャルルに負けないほどの異端さがあった。
輝くような銀髪を腰まで下ろし…整えているというよりは伸ばしっぱなしにしており。
左目には医療用のではないとわかる、黒眼帯を付けていた。
……中二病じゃないな。見てみてと言わんばかりのオーラがない。
むしろ、全てを等しく見下ろすようなゼロ度の赤い瞳は、かなりの小柄でありながら威圧感を覚えずにはいられなかった。
いや、これは実際見下していてもおかしくはない。
そんな、妙に張り詰めだした空気を破らんと、織斑先生がこえをかけた。
「挨拶をしろ、ラウラ」
「はい、教官」
どうやら、知り合いらしい。
わからないことの連続に、僕らがぽかんとした表情を向けている間にも、先生は面倒くさそうに。
「ここではそう呼ぶな。もう私は教官ではないし、ここではお前も一般生徒だ。
私のことは織斑先生と呼べ」
「了解しました」
一夏だけはああ、と納得の声を上げている。
あとで事情を教えてもらおうと企んだ僕をよそに、その転校生はこちらに視線を向け。
「『ラウラ・ボーデヴィッヒ』だ」
本当に名乗りだけのあいさつをした。
「あ、あの……以上ですか?」
「以上だ」
山田先生が精いっぱいのつくり笑顔で聞くが、帰ってくるのは無慈悲な返答。
若干涙目になってる先生に同情していると、そのラウラが何かのつぶやきの後、つかつかと歩いたかと思えば。
バシンッ‼
突然の、一夏への無駄のない平手打ちに、僕含めた全員がぎょっとする。
「いきなり何しやがる!」
殴られた一夏が食って掛かるが、ラウラは吐き捨てるように。
「私は認めない。貴様があの人の弟であるなど、認めるものか」
それだけ告げて、空いている席に向かっていく。
空気の悪さを見かねてか、織斑先生が、アリーナに向かうように促したが……そのあまりに痛烈な登場を前に、流石にみんなの動きがぎこちなかった。
「うわぁ⁉︎」
第二アリーナ更衣室に、素っ頓狂な叫び声が響いた。
その声の主は、ブロンドの貴公子ことシャルル。
「どうしたの?」
「荷物でも忘れたのか……って、なんで着替えないんだ?早く着替えないと遅れるぞ。シャルルは知らないかもしれないけど、うちの担任はそりゃあ時間にうるさい人で…」
「う、うんっ⁉︎き、着替えるよ?でも、その……2人ともあっち向いてて欲しいなーって……」
「いや、声を上げなきゃ注目しないんだけど…って、なんかすごい見てくるけど、何かあった?」
「み、見てない!別に見てないよ⁉︎」
両手を突き出し、慌てて顔を床に向けるシャルル。
そのおかしな行動に、僕と一夏は顔を見合わせるが……って、やばい。
「本当に急げよ?初日から遅刻とかシャレにならないし、あの人はシャレにしてくれない」
1年1組の黒い大魔神の怖さを身に知ってる以上、さっさと着替えないと本当にまずい。
まずいんだけど……
「シャルル?」
「な、何かな⁉︎」
やはり、こちらに向かう視線が気になってしまう。
しかも、なんかこちらに背を向けて、ISスーツのジッパーを……
「え、早くない?一夏のと同じタイプだよね」
「なんかコツでもあるのか?」
なんと、僕らよりも明らかに着替え始めが遅かったはずが、一番早く着替え終えていた。
「い、いや別に……って一夏、まだ着てないの?」
因みに、僕はジッパーを閉めれば終わりだが、一夏は今、全裸の上からISスーツを腰まで通した所だ。
「流良のみたいに下着脱がなくて良いのじゃないんだよ、これ。引っかかってなんか着づらいんだ」
「ひ、引っかかって⁉︎」
「おう」
「………」
「「?」」
顔をカーッと赤くしているシャルルを前に、一夏と思わず顔を見合わせてしまう。
「……まあ、着替え終わったんだし行こうか」
「う、うん」
そんな、シャルルの珍妙な行動に困惑しつつ着替えを終えた僕らは、なんとかギリギリでアリーナに着いた。
「では、本日から格闘及び射撃を含む実践訓練を開始する」
「はい!」
今日からは1組と2組の合同演習なので、人数はいつもの倍で、出てきた返事にも気合が入っていた。
「ねえ、流良。さっきのやりとりを見てて思ったんだけど、一夏ってモテるの?」
「ん?」
そんな中で、袖をクイって引っ張りながらのシャルルの問いに視線を向けると。
「くうっ……。何かというとすぐにポンポンと人の頭を…」
「……一夏のせい一夏のせい一夏のせい…」
頭を押さえたセシリアと鈴が涙目で一夏に鋭い視線を向けていた。
織斑先生の前で一夏と話し続けて、青空の下。
出席簿による快音をその頭で響かせたのだ。
「……あの2人ともう1人、合計3人かな」
「へ、へ〜……。すごいなぁ」
因みに後1人は、その光景にもどかしそうな視線を向けている。
と、コソコソと喋っていた僕らだったが、あまりやりすぎると2人の二の舞なのでヘマはしない。
そんな無言の返答をしていた僕の前では。
「今日は戦闘を実演してもらおう。ちょうど活力が溢れんばかりの10代女子もいることだしな。
……凰!オルコット!」
「な、なぜわたくしまで⁉︎」
模擬戦をやるらしく、鈴とセシリアの代表候補生コンビが呼ばれていた。
「専用機持ちはすぐに始められるからだ。いいから前に出ろ」
「だからってどうしてわたくしが…」
「一夏のせいなのになんであたしが…」
一夏はそんな抗議を聴こえないふりしてスルーする。
抗議をするレベルで、やる気を見せない2人だったが、織斑先生が小声で2人に何か告げてるようだ。
すると……
「やはりここはイギリス代表候補生、セシリア・オルコットの出番ですわね!」
「まあ、実力の違いを見せるいい機会よね!専用機持ちの!」
なぜか、2人ともやる気マックスに。
「なんで急にやる気に…デザートでも奢ってもらえるのか?」
「いや、むしろデザートが目の前にあると言うか…」
「あはは…」
一夏の固有スキル『唐変木』をシャルルに見せた所で、セシリアと鈴が相手を探して荒ぶっている……うわ、2人がこっち見た。
「……僕?いや、セシリアとは引き分けたし鈴とはやり合ったことないけど」
「すごいね、代表候補生と引き分けたんだ」
「でも、2対1も2連戦もやだよ…」
シャルルの驚きの視線を受けながら、セシリアと鈴からの圧の強まりを感じていると。
「慌てるなバカども。……対戦相手は」
織斑先生がそれを否定し、相手を指名しようとした時だった。
「ああああーっ!どいてください〜ッ‼︎」
空気を切り裂くような音に続いて、誰かの慌てふためく声がしたかと思えば。
「流良、みんなを!」
「うん!」
咄嗟に僕らがISの部分展開によりシールドを構えて、みんなの盾になろうとするより早く、一夏が数メートル吹っ飛ばされた後、地面を転がった。
本人は白式の展開が間に合ったのか、大した怪我はしてなさそうだが………それ以外は全部アウトだ。
なぜなら……
「そ、そのですね。困ります……こんな場所で……」
「わ、わぁ……一夏って大胆なんだねぇ…」
「……すごいな、一夏も山田先生も」
シールドを構えたまま、シャルルは顔を赤らめて、僕は
一夏の体勢は、仰向けの山田先生を押し倒す形となり。
その手は、山田先生の超大型胸部装甲「乳房」をがっしりとホールドしていたからだ。
いかがでしたか?
今回も新キャラの設定を。
神戸 麻衣(こうど あさぎ)
2年 金髪 ショートカット
整備室にいる先輩の1人。明るく活発な性格であり、真響と樹里も含めた3人組のリーダー格。専用機は持たないが、モルゲンレーテ社のテストパイロットでもあり、その点でも流良の先輩である。
元ネタはガンダムSEEDより「アサギ・コードウェル」。
愛津 真響(まなづ まゆら)
2年 赤茶髪 ボブカット
整備室にいる先輩の1人。恋に焦がれる肉食系女子であり、流良からは少し苦手意識を持たれている。同じくモルゲンレーテのテストパイロット。
元ネタは上と同じく「機動戦士ガンダムSEED」より「マユラ・ラバッツ」。
初江 樹里(ういえ じゅり)
2年 藍髪 セミロング
整備室にいる先輩の1人。メガネがチャームポイントで穏やかな性格のお姉さん気質。モルゲンレーテのテストパイロットであり、ジャンク屋業を営む彼氏がいるらしい。
元ネタは2人と同じく「機動戦士ガンダムSEED」より「ジュリ・ウー・ニェン」。
M1アストレイ
形式番号 MRP-01
和名 邪道
世代 第2世代
国家 オーブ連合首長国
分類 汎用型
装備 試作型ビームライフルx1
耐ビームコーティングシールドx1
ビームサーベルx2
頭部バルカン砲「イーゲルシュテルン」×2
飛行補助用オプションユニット「シュライク」
水風力発電ジェネレーターx1
循環型水風力駆動推進装置
大容量小型コンデンサー×1
装甲 発泡金属(特殊軽量化装甲)
仕様 非IS化
モルゲンレーテ社の量産型ISであり、麻衣達3人に貸し与えられた機体。
ストライクが装甲、機動性、運動性、拡張性等のさまざまな面の両立をコンセプトにしたワンオフ機であるのに対し、こちらは機動性と運動性を重視した、量産を前提とした機体である。
フランスのラファール・リヴァイブや、日本の打鉄に比べて、ビーム兵器の搭載によるコストの高さや、最低限の箇所に発泡金属を搭載するという、防御よりも回避を優先させたような設計が仇となり、あくまでオーブの国家防衛兼災害救助のために開発された機体である。
特筆すべきは、コアの取り外しによる非IS化により、本来使えないはずの男でも普通のパワードスーツとして運用できる点であり、絶対防御が搭載できない問題への対策としてフルスキンを採用している。
ある意味、国連が作った「鉄の棺桶」とも揶揄される「EOS」の完成形と言ってもいいだろう。
ISでありながら、ISではなくなる機能を持つことから、「邪道」を意味する「アストレイ」の名を冠しているが、この機体はパワードスーツとして開発された物をISとして使っているので、ある意味「ISにもできる」本機の拡張性の高さを示しているとも言えるのである。
オーブ連合首長国
日本と赤道の真ん中あたりに位置する、大小4つの島からなる小国。
さまざまな国からの移民により形成された多国籍国家であり、中でも特に日本人が多かったことから公用語は日本語で、文化は日本文化を基にした独自のものとなっている。政治体制も、民主主義と議会制をミックスした物とまた独特。
ISの浸透による女性優遇を好しとせず、「男女共同参画国家」「他国を侵略せず、また侵略を許さず」「男女平等」を掲げた、最早唯一無二の特徴を持った中立国であり、その理念に共感した人達が多数移住している。
また、優れた人材の誘致を積極的に行なっており、流良もその誘致の対象という事もあり、ストライクの開発の際に、手柄を独占できない共同開発を提案した。
世界からは「変わり者の掃き溜め国家」と揶揄されることも多いが、
さまざまな国の技術が融合した高い水準の技術や、理念に共感している国民一人一人の意識はかなりのものであり、それは国営企業の「モルゲンレーテ」が証明している。
また、島国という地理柄から、災害に向けての危機意識が高く、特に災害に対して深い知見と技術力を持つ日本とは積極的な技術交流を行なっている。
はい、今回は後々出そうと思っている設定もいくつか出しました。
これに伴い、3話の後書きに書いた設定に少し追加を加えてあります。
ガンダムSEEDと絡めるならオーブは出した方がいいなと思い、少し設定を変えつつ出した感じです。
因みにオーブの代表候補生も出します。モチーフはキラ・ヤマトの親友と言えば、なんとなくわかってくれるでしょう。
出てくるのはいつになるかわかりませんが、出る時をお楽しみに!
次回は……主人公に少しだけ曇ってもらおうかと。